なのはが仮面ライダー2号に、またユーノ・BLACKが仮面ライダーV3に助けられていた頃、
ディケイドは同じく救援に来ていた1号と共にユリトルーパー及びG3・G3-Xの軍団と戦っていたのだが、
余りにも数が多すぎて未だ埒が明かないでいた。

「ユリー! ユリー!」
「規制! 規制!」
「こいつ等同じ事しか言わないから鬱陶しいな…。」

 だがここでディケイドがライドブッカーから一枚のカードを取り出していた。

「俺に考えがある。これから俺があるカードを使い、奴等を一箇所に密集させる。その隙に一網打尽にするんだ。」
「分かった。他に手らしい手が無い以上君の提案を呑もう。」
「だが…変な突っ込みは入れるなよ。」
「突っ込みを入れるな…? どういう事だ…。」

 ディケイドの最後の一言の意味が1号には理解出来なかったが、ディケイドは構わずカードをディケイドライバーに差し込んでいた。

『プリキュアラーイド! ルージュー!』
「はぁぁぁぁ!?」
「だから突っ込むなっつっただろ!!」

 ディケイドはプリキュアライドでキュアルージュの姿になっていたのだったが、そこを即効で1号に突っ込まれていた。
そりゃ1号とてディケイドが他のライダーに変身出来る事は知っていたが、流石にプリキュアにまで変身するのは初耳だった。
しかも例によってディケイドルージュの声はやはり門矢士のままなのだから相変わらず凄い違和感だ。

「有害情報発見! 規制します!」
「規制規制!」

 ディケイドがルージュに変身した途端、G3・及びG3-X軍団が目の色を変えてディケイドルージュへ向けて駆け寄せて来た。
彼等が青少年を有害情報から守ると言う名目で美少女キャラクターを規制しようとしているのならば、真っ先にディケイドルージュに
反応すると考えていたのだった。それ故にG3・G3-Xの軍団はディケイドルージュへ攻め寄る余り、一箇所に密集する形となっていた。

「よし今だ!」
『アタックライド! ファイヤーストライク!』

 ディケイドルージュは再度カードをディケイドライバーに差し込む。それはキュアルージュの必殺技・ファイヤーストライクのカード。
炎を操る力を持つキュアルージュの力によって炎の球を作り出し、それをサッカーボールの様に敵へ向け蹴り飛ばす技である。
ディケイドルージュはファイヤーストライクによって炎の球をG3・G3-X軍団へ向けて蹴り飛ばし、そこへさらに…

「電光ライダーキィィィック!!」

 1号の電光ライダーキックが打ち込まれ、その勢いの分速度を数倍にまで上げた火球がG3・G3-X軍団へ向けて突き進み、
さらに数倍にも増した速度は着弾時の爆発力さえも数倍に高め、一気に吹き飛ばしていた。しかしまだ百合ショッカーのユリトルーパー隊が残っている。
ディケイドルージュと1号は迫り来るユリトルーパー隊の迎撃に移っていたのだった。

「ユリー! ユリー!」
「とぉ! とぉ!」
「何かさっきより辛くなって来た気がするぞ。」

 ディケイドルージュと1号は次々迫り来るユリトルーパー隊を倒していたのだったが、ユリトルーパー隊にとっても敵であった
G3・G3-X軍団がいなくなってしまった分、二人にユリトルーパー隊が集中して逆に先程より辛くなると言う皮肉な事になっていたのだが…

「ライダーキィィィック!!」
「ディバインバスター!!」
「ユリィィィィィ!!」

 ここでBLACK・2号・V3のライダーキック、そしてなのはのディバインバスターがユリトルーパーを次々に蹴散らして行った。

「助けに来たよ!」
「おお、恩に着る。」

 こうして1号・2号・V3の協力を得たなのは・ユーノ・ディケイド・BLACKは何とかユリトルーパー隊の撃破に
成功し、ここで双方が向かい合う形で立っていた。

「お前達が助けに来てくれなければ危なかった。恩に着る。」
「礼を言う事は無い。我々にとっても百合ショッカー及び都条例の世界の連中は世界の平和の為に倒すべき敵だ。」
「でも百合ショッカーに立ち向かっていたのは私達だけじゃなかったんですね? そう考えると心強く感じて来ました。」

 なのはは例によってフェレットの姿のままであったユーノを優しく抱っこしながら微笑んでいた。
百合ショッカーの各世界侵攻に対し抗っていたのは自分達だけでは無かった。この三人の様に他にも立ち向かう人々が
いる事を知り、精神的に楽になって来ていたのだった。

「うむ。その通りだ。我々だけでは無い。今も各世界のライダーやその他様々な勇士達が百合ショッカーに立ち向かっている。
我々は君達を助けるのは勿論だが、百合ショッカーと戦っているのは君達だけでは無い事を伝えに来たのだ。」
「そうか……皆も戦っているんだな…。」

 1号達三人の言っている事が本当ならば、なのは達が想像している以上に百合ショッカーに立ち向かっている人々は
いると言う事になる。これ程頼もしいと思える事は無かった。

「しかし百合ショッカーの勢力が圧倒的なのもまた事実だ。」
「奴等は世界各地の百合厨や801好きの腐女子を味方に付け、どんどん勢力を拡大している。」
「だからその予備軍になるヲタと、そいつ等が好みそうな物を規制せねばならないのだぁぁぁぁぁ!!」
「誰だ!!」

 突然響いた謎の声。敵の新手が来たのかと思った皆がとっさにその声の方向を向くが、そこに立っていたのはスーツ姿の老人だった。

「誰……?」
「あれは鉄原都知事!」
「鉄原都知事!?」

 突如現れた謎のスーツ姿の老人に対し1号は『鉄原都知事』と呼んだ。なのは達四人は思わず1号に注目していたが、
今度は2号が説明を始めるのだった。

「鉄原都知事…奴は都条例の世界の支配者で、腐敗した警察官僚と手を組み百合ショッカーの為に世界が混乱した隙に乗じて
G3・G3-Xの軍団を各世界に送り込み、青少年の健全育成と有害情報の規制の名の下に罪無き人々を虐げる張本人だ。」
「あれが………。」

 なのはとユーノは呆然とした面持ちで再度鉄原都知事の方に目を向けていたが、彼の表情は凄まじく険悪な物だった。

「規制して当然だ! こんな物を子供に見せられるか!」

 鉄原都知事の手には如何にもなエロ漫画雑誌が握られており、それを見せ付ける事によって自身を正当化させようとしていた。
確かにそういうのから子供を守ると言う大義名分なら人々からの共感も得られやすいわな。だが、ここでなのはやライダーの皆さんを指差し…

「だがそれだけでは足りん! お前達の様な子供が変な影響を受けかねない物は何だって規制せねば子供は守れない!」
「何だと!?」
「それは幾らなんでも子供をなめ過ぎ…と言うかアレは良いの!?」

 なのはは未だ彼方此方に転がっているG3・G3-Xを指差しながら反論する。確かになのはには相当数のヲタが付いてるから
規制したい人間が目を付けたがるのも分かるし、ライダー等のヒーローものが昔から乱暴だと非難されていたのも事実。
しかし、鉄原都知事もG3・G3-Xを使っていたのは良いのかと…そう言いたかったのだが…

「我々は良いのだ!」
「おい!」

 即答する鉄原都知事の態度に皆はますます彼を信じられなくなっていた。

「これは青少年の健全育成なんてやるつもり無いな…。」
「所詮人々からの共感得る為の方便で、実際やりたいのは思想統制なんじゃないの?」
「百合ショッカーの方がまだマシだよね~。」

 口々に言う彼等の態度に、鉄原都知事の方も苛立ちを露としていた。

「おのれ…有害情報どもが勝手な事を言いおって…。こうなったらこの私自らがお前達を規制してやる!」
「規制するって…爺さん一人で何が出来るってんだよ!」

 今この場にいるのはディケイド等及び鉄原都知事のみである。無論鉄原都知事に味方するG3・G3-X軍団は
もはや全滅に近い状態であり、戦力になるか分からない。しかしそれでも鉄原都知事は不敵な笑みを見せ付けていた。

「甘いな。私にはこれがあるのだよ。」
「あっ! あれはガイアメモリ!」

 鉄原都知事が何処からか取り出したUSBメモリ状の物体。それは『Wの世界』に存在するガイアメモリだった。
しかし、一体何のメモリだと言うのか? そして鉄原都知事はそのガイアメモリを自身に突き刺す様に当てていた。

『規制ー!』

 その様な電子音と共に鉄原都知事の姿が怪人然とした姿へと変わって行く。ガイアメモリを直接人体に差し込み
怪人化する存在の事を一般的に『ドーパント』と呼ぶのであるが、『規制』のガイアメモリを使用した鉄原都知事の
変化したドーパントは、言うなれば『規制・ドーパント』とでも呼ぶべき姿だった。

「規制だ規制! 私の気に入らない物は何だって規制してやるのだ!」
「それが本音か!」
「政治家の風上にも置けない野郎だな…。」

 規制のガイアメモリで規制・ドーパントになる事によって溢れる力に奢り高ぶったか、鉄原都知事はつい本音を
さらけ出してしまった。だが逆に言えばここでなのは達を規制の名の下に屠り葬る自信があると言う事にもなる。

「これはもはや奴をここで倒しておかなければ大変な事になるぞ。」
「ただでさえ百合ショッカーだけでも忙しいのに…。」
「あんなのまで加わったら何が起こるか想像も出来ん…。」
「と言うか、気に入らないから規制なんて…あの人のやってる事の方がよっぽど子供じゃない!」

 皆は鉄原都知事の変身した規制・ドーパントを前に戦闘態勢を取っていた。大きな寄り道にもなり得る事だが
ここで奴を倒しておかなければ大変な事になる…誰もがそう確信していたのだから。

「行くぞ!」
「おお!」
「来るなら来い! お前達全員規制してやる!」

 皆は一斉に駆け出し、規制・ドーパントはそれを真正面から迎え撃った。

「まずは私達が! アクセルシューター!」
「チェーンバインド!」

 ディケイド等、ライダー達が規制・ドーパントへ仕掛ける前になのはとユーノの魔法が発動した。
ユーノのチェーンバインドが規制・ドーパントを縛り上げ動きを止め、さらになのはのアクセルシューターを
側面や背後等、規制・ドーパントにとって死角となりそうな部分へ撃ち込むと言う作戦だったが…

「ふん!」
「うあああ!」

 規制・ドーパントは元になっている人間が老人であるとはとても思えない物凄い怪力を発揮し、
逆にチェーンバインドを掴みユーノを引き飛ばしてしまうのみならず、そのチェーンバインドを振り回して
なのはのアクセルシューターを全て打ち落としてしまうのだった。

「ユーノ君大丈夫!?」
「あ…ありがとう…。」

 規制・ドーパントにチェーンバインドごと振り飛ばされたユーノをなのはが慌てて救出していたが
丁度その時には五人ライダーが規制・ドーパントの近接距離まで接近し、双方の格闘戦が始まっていた。

「とぉ! とぉ!」
「ふん!」
「うおぁ!」

 しかし規制・ドーパントは強かった。五人ライダーの猛攻をたった一人でいなし、逆に跳ね除けていたのである。

「強いぞコイツ!」
「まだまだぁ!」

 ここで1号と2号が同時に高々と跳び上がり、ライダーキックの体勢を取った。

「ライダー! ダブルキィィィック!」
「腰が入っとらん!」

 何と言う事か、規制・ドーパントは1号・2号のライダーダブルキックさえ腕の力で弾き飛ばしてしまった。
だがダブルライダーもすぐさま体勢を立て直し、その規制・ドーパントの両腕へ組み付いていた。

「今の内に攻撃するんだ!」
「おお!」

 ダブルライダーが規制・ドーパントの両腕を掴み押さえ、動きを止めている隙にV3とBLACKがそれぞれに
右腕の手刀を振り上げ接近する。

「V3チョォォォップ!」
「BLACKチョップ!」

 V3&BLACKのチョップ攻撃が規制ドーパントへ向けて叩き込まれ様としたのだったが…

「させるかぁぁぁ!」
「うお!?」

 規制・ドーパントは再び物凄い怪力を発揮し、両腕を掴み押さえていたダブルライダーを
V3・BLACKへ向けて振り飛ばしていたのだった。

「うおあぁぁぁ!!」

 規制・ドーパントによって振り飛ばされたダブルライダーはそのままV3・BLACKに直撃して
その二人をも跳ね飛ばし、さらにはその後方にいたディケイドまでをも巻き込む形となっており、さらに…

「お前達全員規制じゃぁ!! 規制ビィィィィィム!!」
「うああああ!」

 規制・ドーパントは『規制ビーム』なる光線を口から発射し、忽ちの内に物凄い爆発が巻き起こっていた。

「くっ…なんて強さなんだ……。」

 皆は必死に起き上がろうとするが、ダメージが大きく上手く立ち上がれない。その間も規制・ドーパントは
ゆっくりと歩み寄ろうとしていたのだったが、そこで彼は足元に何かが落ちている事に気付いていた。

「ん? 何だこの人形は…。」

 規制・ドーパントが拾い上げたのは女の子の人形だった。そしてそこへ、一人の少女が恐る恐る近寄っていた。

「そ…それ…私の……返して………。」

 その少女が人形の持ち主と思われるが、余程大切な物なのだろう、規制・ドーパントのグロテスクな姿に
恐れをなしながらも勇気を振り絞り一生懸命に哀願していた。そしてその光景を見たディケイドも言う。

「お前が守りたいと言った子供の頼みだ。それを返してやれ。」

 例えなのはやライダー達を敵視していても、規制・ドーパント=鉄原都知事が力無き子供を守ると言う想いは
変わらないはず。本当に子供を守る気があるならば素直に返してやるべきだと考えていたのだったが…

「これも有害情報だ! 規制だ!」
「ああぁ!」

 何と言う事だろう。規制・ドーパントは少女の目の前で人形を踏み付けグシャグシャにしてしまうのだった。

「ああああー! 私のキュアマリンのお人形がー! やめてよー!」
「ええい近寄るなクソガキが!」
「ああ!」

 あろう事か人形を取り返そうと必死に駆け寄った少女をも蹴り飛ばし、なおも人形を踏み付ける。

「何がキュアマリンだ! あんな如何にもヲタクが喜びそうな卑猥な格好の上にあんな暴力的な内容…
こんな物があったら子供が影響されて乱暴になるのは目に見えている! いずれはプリキュアの世界にも
攻め込んで規制しまくってやるわー!!」
「もうやめなさい!!」
「なのは!?」

 その時だった。なのはの全身が桃色の光を放ち始め、次第にその輝きが強くなっていく。

「確かに世の中には行き過ぎて過激な描写をしてる漫画とかもあると思う……けど……
例え手段は違っていても…子供を守りたいと言う想いは変わらないと思っていたのに……
結局子供を泣かし乱暴を振るう様な事をして……許せない…絶対に許せない!!」

 なのはの表情に怒りの炎が灯り、桃色の光を発しながらその姿が元の大人の姿へ変わって行く。

「おい! 何なんだ!? いきなり大人になったぞ!」

 これにはなのはの事を余り知らない1号・2号・V3・BLACKは戸惑うばかりだったが、
ディケイドがそこを説明していた。

「慌てるな。あくまでもあれが奴の本当の姿だ。今までは疲弊して低下したパワーを回復させる為に
消耗の少ない子供の姿を取っていただけに過ぎん。」
「だが子供ならいざしらず、大人であんな魔女っ子(死語)的な格好は余りにも…。」
「俺達のこの格好だって余り言える立場じゃないだろ。それよりも…アイツのパワーはまだ完全に
回復しきってはいなかったはずだ。だと言うのに何故あれだけのパワーを?」

 1号・2号・V3・BLACKそれぞれの世界ではまだ『魔法少女』と言う概念は広まっておらず
魔法を使う女の子と言えば『魔女っ子』と呼ぶ傾向にあったのだが、まあそういうのはどうでも良いよね。
問題はまだ回復が完全では無かったなのはが何故大人の姿に戻り、物凄い魔力を放出出来たかの事である。
それに関してあえて説明するならば、先程の少女が規制・ドーパントに虐げられる様を見たなのはが
怒り心頭になり、『高町なのは激情態』と呼べる形態となったと言うべきであろう。

「規制・ドーパント! いや…鉄原都知事!! 私は…私は絶対に許せ無い!!」

 激情なのはは物凄い表情で規制・ドーパントを睨み付け、レイジングハートの先端を向けていた。
そしてディケイドもまた立ち上がり、こう続ける。

「鉄原ぁ! そう言えばお前、昔はエロ小説書いてたそうじゃないか。しかもかなりヤバめな内容の。
そのくせあえてその事を棚に上げて俺達だけを規制しようだなんて都合が良すぎるんじゃないのか?」
「小説は良いんだよ! それにそっちこそ何を偉そうに…貴様一体何様のつもりだ!」
「俺は通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」

 得意の捨て台詞を言い放ち、ディケイドは一枚のカードをライドブッカーから取り出していた。

「俺もここで流れに乗らせてもらう。」
『プリキュアラーイド! マリンー!』
「あっ! キュアマリン……。」

 ディケイドはプリキュアライドでキュアマリンの姿に変身していた。この姿で戦う事によって
先程規制・ドーパントによって大切なキュアマリン人形を壊されてしまった少女への
せめてもの慰めになると考えていたからであった。

「海よりも広い俺の心もここらが我慢の限界と言う奴だ。」
「やっぱりキュアマリンじゃない~…。」

 姿こそキュアマリンになっても声は門矢士のままなのだから、その凄まじい違和感により少女から思い切り引かれてしまっていた。

「おのれぇぇぇ! 私の前で堂々とコスプレとは…許せぬ! 規制だ! コスプレ規制条例作って提出するぞー!」
「その前にお前をここで叩き潰す!」

 激情なのはとディケイドマリンが同時に跳んだ。

「はぁぁぁぁぁ!!」

 まずは激情なのはがレイジングハート先端を規制・ドーパントへ向ける形で突撃して行く。
なのはに関して砲撃力ばかりに目が向けられがちであるが、小回りこそ利きにくいが
直線的なスピードは中々の物で、それを生かした突進力は目を見張る物があった。
しかも今のなのはは激情態。普段の様な相手を労わる甘さを排除したその攻撃は
従来のそれを遥かに上回る事は想像に難くなかった。

「そんなナマクラな槍がこの私の身体を通る物か! この筋肉で弾き返してやる!」

 規制・ドーパントは自身の胸筋・腹筋に力を込め、なのはの突撃を弾き返さんとする…が…その時だった。
あと数センチでレイジングハートの先端が規制・ドーパントの腹部に突き刺さる…と思われた所で
なのはが急停止していたのである。

「何!?」

 レイジングハートを槍の様に突き刺して来ると考えていた規制・ドーパントはなのはの
意表を突いた行動に思わず驚いてしまうのだが、その直後だった。

「全力全開! ディバイィィィンバスタァァァァァァ!!」
「何ぃぃぃぃ!?」

 これがなのはの作戦だった。あえて寸止めして意表を突いた所を至近距離からディバインバスターを撃ち込む。
その強力な魔力砲撃に押される形で規制・ドーパントは思い切り吹き飛ばされて行く。

 一方、ディケイドマリンはライドブッカーからカードを取り出し、ディケイドライバーに差し込んでいた。

『アタックライド! 心の種! レッドの光の聖なるパフューム! シュシュッと気分でスピードアップ!』

 『ハートキャッチの世界』におけるプリキュアは様々な効果を持つ心の種を使用する事によって、その能力を駆使する事が出来た。
そして今ディケイドマリンが使ったのはその内の一つ、使用者に超スピードを与える赤い心の種である。

「行くぞぉぉぉぉ!!」
『アタックライド! おでこパンチ!』

 全身に真っ赤なオーラを纏ったディケイドマリンが猛烈な速度で駆け、ディバインバスターに押し飛ばされていた
規制・ドーパントを追い越し、さらに背後から猛烈な頭突きを加えていた。

「うぉぉぉぉ!!」
「まだまだ! ディバインバスター!!」
『アタックライド! マリンインパクト!』

 ディケイドマリンに背中を頭突きされ前向きに吹っ飛び始めた規制・ドーパントに対し、再びなのはがディバインバスターを放つ。
正面からそれを受けた事によって今度は前向きに吹き飛び始めた所を再びディケイドマリンが追い越し、背中に拳を撃ち込む。
それを何度も繰り返していたのだった。

「えげつない事するな~。」

 激情なのはとディケイドマリンのコンビネーション攻撃は客観的に見ると結構えげつない物であり、
1号・2号・V3・BLACK・ユーノは半ば呆れドン引きしていた。

 しかし、この攻撃も何時までも続かなかった。

「おのれぇ! 調子に乗るなぁぁぁぁ!」

 怒り心頭に来た規制・ドーパントは力を振り絞ってなのはとディケイドマリンの攻撃の嵐から脱出していた。
そして大地を踏み締め、反撃の体勢を取ろうとする。

「この有害情報どもがぁ~。これ以上好きにはさせ……うあああああ!!」

 彼の言葉を遮るかの様になのはのディバインバスターが再び規制・ドーパントへ撃ち込まれる。
普段のなのはならば話を最後まで聞いていたであろうが、激情態である今のなのはにそんな優しさは無かった。
さらにディケイドもマリンへの変身を解き、再び一枚のカードをライドブッカーへ差し込んでいた。

『ファイナルアタックライド! ディディディディケイド!』
「とぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 激情なのはのディバインバスターで押し飛ばされていく規制・ドーパントへ向けてディケイドが高々と跳んだ。
そしてディケイドと規制・ドーパントそれぞれを直線で結ぶ空間に十枚の光のカードが現れ、ディケイドがそれを
次々と潜っていく形で規制・ドーパントへ向けて突き進み、ディヴァインオレ鉱石製の足先から来る猛烈な蹴りを打ち込んでいた。
それこそディケイド版ライダーキックである『ディメンションキック』

「うあぁぁぁぁ!」

 ディケイドのディメンションキックをモロに受けた規制・ドーパントは手足をバタ付かせながら宙を舞うと共に
地面に思い切り叩き付けられていた。

「おのれぇぇぇ! 私はまだ死ねん! 世界を腐敗させる若者文化の全てを規制し終えるまでは死ねんと言うのに……うぉぉぉぉ!」

 その様な断末魔を残し、規制・ドーパントは木っ端微塵になって爆散するのだった。

「終わったな…。大きな寄り道となってしまったが、これで都条例の世界の連中も少しは大人しくなるだろう。」
「それも時間の問題だろうがな。その内また新しい都知事が誕生し、青少年の健全育成と称し
奴等にとって気に入らない物の規制の為に他世界へ侵攻する事も考えられる。」
「だが、今まず倒すべきは百合ショッカーの方だ。」

 規制・ドーパントこと鉄原都知事を倒したが、都条例の世界の連中がこれで完全に潰えたわけでは無い。
しかし、現状においてはまず百合ショッカーの方を倒さねばならないのもまた事実であった。

 そして再度なのは・ユーノ・ディケイド・BLACKと、1号・2号・V3が向かい合い立っていた。

「さっきも言った通り、百合ショッカーと戦っているのは君達だけでは無い。今も様々な世界で様々な勇士達が
百合ショッカーと戦っている。」
「そして俺達もこれから俺達の戦いへと戻る。君達とは別ルートから百合ショッカーへ向かう。」
「いずれ百合ショッカーアジト近辺で合流し、再び力を合わせ戦おう。」
「ああ…。」
「ありがとうございます。」

 1号・2号・V3の三人はこうして去って行ったが、なのは達には彼等の言葉がこの上無く頼もしく、
そして何よりの励ましとなっていた。

「よし、俺達も行くぞ。」
「うん。」

 こうして、なのは・ユーノ・士・光太郎の四人も秋葉原の世界を後にし、再び次の世界へ向かうのだった。
ちなみに、なのはは激情態の時に思い切り力を使いまくった為に、再び子供の姿になって
省エネしなければならなかったのは言うまでも無い。

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最終更新:2011年04月02日 09:32