6:メロンブックスの世界の一幕編
様々な世界へ侵攻する百合ショッカーと、各世界でそれぞれ百合ショッカーに抗う勇士達の戦いは続く。
しかし、中には戦う力を持ちながら戦うに戦えない者もいた。
百合ショッカーの侵攻の影響なのか、元々人気の高かったヒロインが、恋人が出来た途端にファンの多くが掌を返してアンチとなり、
ネットでビッチビッチと叩きまくったり、DVDやらフィギュアやら破壊しまくったりする光景が世界各地で見られた。
「今は男女が真っ当に愛し合う事も許されないのか…悲しい時代になった物だ…。」
恋人が出来た途端にファンに非難され、没落して行くかつての人気ヒロインの姿を悲しげな表情で見つめる一人の男の姿があった。
「しかし…今の私に何が出来る…。人間同士の争いに介入してはならない…それが我等の掟…。」
彼には助けたくても助けられない理由があった。故に助けを求める人の姿に表情を渋ませながら
その場を立ち去るしか無かった。
男が向かった先はメロンブックスの世界だった。
「私が一人の人間として今出来る事と言えばこの位の事だ…。」
男は買い物カゴを片手にメロンブックスの世界にある同人誌を選び、これはと思った物をカゴの中へ入れていく。
「最近はなのは×ユーノ同人誌もめっきり減ったな~…。元々数が少なかったけど…。」
またも男の表情は悲しげな物となる。メロンブックスの世界はまだ百合ショッカーの侵略が及んでいなかったにも
関わらず、なのは×フェイトの百合同人誌が大半を占め、彼の求めるなのは×ユーノ同人誌は殆ど見当たらなかった。
「仕方が無い。この位で良いだろう。」
男は辛うじて手に入ったなのは×ユーノ同人誌をレジに通して購入。このままメロンブックスの世界を後にしようとした時だった。
「うわー! 何か沢山来るぞー!?」
「!?」
群集の中から叫び声があがり、思わず男はその方向を向いた。
「まさか近頃評判の百合ショッカー!?
「ちっ違う! 宇宙人だー!」
「宇宙人の軍団が攻めて来たー!!」
群集の中から再びその様な声が上がる。このタイミングで突如雪崩れ込んで来る大軍団と言えば百合ショッカー以外に
考えられない…はずだったのだが、彼らは百合戦闘員でも百合怪人でも無かった。
「宇宙人だと!?」
突如メロンブックスの世界に雪崩れ込んで来た者達…彼等は宇宙人だった。
「しかもアレはマグマ星人だー!」
「一体どうなってるんだー!?」
彼等は宇宙人の中でも『マグマ星人』と呼ばれる宇宙人だった。メロンブックスの世界に雪崩れ込んで来る
マグマ星人の軍団の前に人々は大パニックに陥り、散り散りになって逃げ出すしか無かった。
だが、逃げる事無くむしろマグマ星人の前に立つ者の姿があった。『彼』である。
「私は人間同士の争いに介入する事は出来ない。しかし、宇宙人の侵略であるならば話は別だ。」
男はそう呟くと共に懐から赤い眼鏡状の物体を取り出し、目に掛けていた。
「デュワ!」
その直後であった。男の全身が眩い光に包まれ、その姿が変化していく。
「うっウルトラセブンだー!!」
「ウルトラセブン!!」
何と言う事だろうか。男の正体はウルトラセブンだったのである。元々M78星雲の恒点観測員340号として地球を訪れた際に
地球の素晴らしさに感激し、幾度と無く地球を宇宙人の侵略から守って来た宇宙の戦士。しかしそんな彼も百合ショッカーの
各世界侵略には手を出す事が出来なかった。M78星雲の戦士として、同じ人間同士の争いには介入出来ない掟なのだ。
しかし、マグマ星人と言う宇宙人の侵略に対しては話は別だった。
そしてウルトラセブンは真っ向から堂々と単身マグマ星人の軍団の前に立ちはだかる。
「おっお前はウルトラセブン!」
「マグマ星人! お前達の狙いは何だ!」
ウルトラセブンの登場に一瞬浮き足立つマグマ星人の軍団に対し、セブンは指差し力強く叫ぶ。
その様はつい先程までの無力感を漂わせていた男とは別人の様ですらあった。
「我々は百合ショッカーマグマ星人傭兵部隊だ!」
「百合ショッカーマグマ星人傭兵部隊だと!?」
マグマ星人は決して百合ショッカーの各世界侵略によって起こった騒ぎに乗じて侵略行動を開始したわけでは無かった。
彼等もまた百合ショッカーに参加していたのである。しかし『傭兵』と言う肩書きから、完全に傘下に入っているわけでは無く
おそらく外部協力者と言う形を取っていると思われる。
「我々宇宙人の中でも百合を愛する者達が集い、傭兵として百合ショッカーに参加したのだ。」
「まあそんな事よりも、これは俺達が作った百合同人誌だ。」
マグマ星人は自分達で作った百合同人誌を持ち寄っており、しかもそれをセブンに見せ始めたのだった。
「ローラン×シーモンスの百合同人誌だ。どうだエロいだろう?」
「………………。」
ローランとは『宇宙で一番美しい怪獣』と言われ、マグマ星人の中にもそれに求婚した者もいる程の
鳥類型宇宙怪獣で、またシーモンスは南の島に住むと古くから伝説として伝えられていた四速歩行の雌怪獣であった。
マグマ星人はその両怪獣による百合同人誌を作っていたのだった。しかし………
「いや…幾ら百合がブームだからと言っても…流石にこれは需要無いだろ…。」
これにはウルトラセブンもほとほと呆れてしまう。確かに今は百合がブームではあるが、流石にローラン×シーモンスの
需要は見込めないであろう。勿論ヲタ受けする様に美少女化して描いているわけでは無く、そのままローラン×シーモンスなのだから。
ギャグとかネタ的方向で楽しむならともかく、これで興奮するには相当な技量が必要となる。
「そんな…マグマ星のヲタの間では相当売れたのに…。」
「地球人はお前達とは美的感覚が違うんだ。諦めて星に帰れ…。」
自分達の持ち込んだ同人誌をダメ出しされ落ち込むマグマ星人の肩にセブンが優しく手を乗せ、説得しようとする。
何事も戦わずに事が解決出来るならそれに越した事が無いのだが…しかしここで突然マグマ星人がセブンの手を払っていた。
「諦めるか!! 我等の同人誌を評価してくれる地球人はきっといるはずだ!!」
「って言うかお前! 何時の間にかにゼロとか言うガキをこさえていたそうじゃないか!」
「それがどうしたと言うのだ…。」
確かにウルトラセブンにはゼロと言う名の息子がいるが、それを引き合いに出してマグマ星人は何を言いたいのだろうか。
「お前本当取り返しの付かない事をしてしまったな! お前が何時の間にかあんなもんこさえてしまったおかげで
宇宙中の801好きの腐女子星人を敵に回したんだぞ!」
「何だと!?」
今マグマ星人がさりげなく凄い事を言った。セブンは本人が知らない内に宇宙中の801好き腐女子星人を敵に回していると言うのである。
「考えても見ろ! お前にゼロと言うガキがいると言う事はそれすなわち、やる事やってると言う事だ。
それは801好きな腐女子星人にとって凄いショックな事なんだぞ!」
「えぇ~~~~~~?」
百合厨が女性同士の絡みを好むならば、801好きは男同士の絡みを好む。その為、セブンがやる事やってゼロと言う息子を
作っていた事は801好きな宇宙人にとって裏切られたも同然だったのだろう。
「それだけじゃないぞ! お前はダン×アンヌ派も裏切ったんだ!」
「ぐぬぬ…。」
そう。セブンは地球で暮らす際はモロボシ=ダンを名乗り、地球人女性アンヌと恋愛やらかしたりした。
しかしゼロと言う息子の存在が地球に来る以前から既婚者だった事を証明し、大勢のダン×アンヌ派を涙させていたのだった。
「しかもお前、そのくせ何なのは×ユーノ同人誌買い漁ってんだよ! ますます許せん! やれー!!」
「うおおおおお!!」
さらにはセブンが先程メロンブックスの世界でなのは×ユーノ同人誌を買っていた事も挙げ、マグマ星人は
一気にセブンへの攻撃を始めるのだった。次々にセブンへ跳びかかっていくマグマ星人。
「デュア!! デァー!!」
しかしセブンのパンチが、キックが、次々とマグマ星人へ打ち込まれ倒されて行く。
「動機はともかく、お前達が侵略しようとしている事は変わらない。ならば私も全力で介入、阻止させてもらう。」
セブンは両手を握り締め、構えていた。何しろセブンは昔マグマ星人に酷い目にあわされた事があった。
マグマ星人の侵略を阻止するのは勿論の事、その時の恨みを晴らしリベンジせんと言わんばかりの勢いが感じられていた。
「ええい怯むな! 相手はたった一人だ! やれやれー!」
マグマ星人は腕に装着された剣を振り上げ次々にセブンへ襲い掛かるが、セブンもそれを次々と倒し投げ払っていく。
「デュァ! デァー!」
セブンは頭部に装備するアイスラッガーを勢い良く投げ放ち、さらに自身の念力によってその軌道をコントロールして
マグマ星人を次々に切り裂いて行く。あっと言う間にマグマ星人の軍団もそれを率いていた隊長格一人になってしまった。
「後はお前一人だぞ!」
「おのれ~…こんな事ならばギラスを連れて来るんだった…。」
過去にセブンに大きな傷を負わせたのはマグマ星人が使役する怪獣ギラスである。しかし、いない者に頼っても仕方が無い。
マグマ星人部隊隊長はたった一人でもセブンに立ち向かう様子であった。
腕に装着された剣を構えるマグマ星人に対し、セブンもアイスラッガーを右手に握り締め構える。
同じくメロンブックスの世界にいた沢山のヲタ達が見守る中、その決着は一瞬の内に決した。
「デュァ!」
剣を振り上げ襲い掛かったマグマ星人を、セブンがアイスラッガーで剣ごと切り裂いていたのだった。
そしてセブンは右手に握るアイスラッガーを頭に装着し、ゆっくりを上を向いていた。
「宇宙人達が百合ショッカーと協力して世界を侵略しようとしている…。これで私が介入する大義名分が出来たと言う事だが…
それは果たして喜ぶべき事なのか…悲しむべき事なのか……。デュアァ!」
こうしてセブンは天高く飛び立った。マグマ星人が傭兵として百合ショッカーに協力していたのならば、
他の百合厨な宇宙人も百合ショッカーに協力している事は想像に難くない。M78星雲の戦士として、人間同士の争いに
介入は出来ないが、宇宙人が関与しているのならば話は別である。少なくとも百合ショッカーに参加している
宇宙人だけでも倒すべくセブンは飛び立つ。こうしてウルトラセブンの参戦が決定した。
最終更新:2011年04月02日 09:34