クラナガンの高速道路をディケイドの乗るマシンディケイダー、BLACKの乗るバトルホッパー、
クウガの乗るトライチェイサー2000、そしてユノクロWがディエンドのカメンライドで出してもらった
仮面ライダーW専用バイク・ハードボイルダーに乗り、その後になのはがしがみ付き乗る形で爆走していた。
「気を抜くなよ。また何が来るとも限らないからな。」
「ああ。」
クラナガンを時速数百キロの速度で爆走しながらも皆は注意深く周囲を見渡す。百合ショッカーライダーが
今後も現れないとは限らないし、そうでなくても百合戦闘員及び百合怪人の出現は想像に難くなかったからである。
ちなみに、元々からライダーだったディケイド達はともかくとして、今日始めてライダーになったユーノ&クロノは
当然今日始めてハードボイルダーに乗る事になったわけだが、当然ハードボイルダーは見て分かる通り運転するには
大型自動二輪免許が必要である。しかし、ユーノにせよクロノにせよ普通自動車免許は持っているだろうが
とても大型自動二輪までは持っているか微妙であった。しかし、その事は皆あえて考えない様にしていた。
今は非常事態であり、そういう事を考えていられる様な状況では無いからだ。むしろ本当に問題と言えるのは…
「所でさ士…あの子どうするんだよ。」
「はわわわわわわ~。」
クウガがディケイドにそう訪ねる。クウガの視線の先にはバトルホッパーに乗るBLACK…の背中に
必死にしがみ付き震えている諸葛亮孔明、つまり朱里ちゃんの姿があった。うらやましいな~こん畜生。
そう、ディエンドの三国ライドによって呼び出された朱里ちゃんは、既にユリユリンダにやられてしまった
五虎大将と違い、後方ではわわはわわしていた事もあってまだ消滅せずに残っていたのである。
「はわわわわわわ~。」
ディエンドの三国ライドによって呼び出された実体ある幻影とは言え、突然見ず知らずの世界に
呼び出された上に一人きりにされてしまって…何て可哀想な朱里ちゃん………
「とりあえずこのまま連れて行こう。」
「え? 大丈夫なのかよ…。」
「腐っても孔明だ。何かの役に立つだろう。筆者も喜ぶしな。」
「え? この子があの孔明なんですか!?」
ディケイドはとりあえずこのまま連れて行く事を提案していたが、ここで始めてなのは達は朱里ちゃんの事が
かの有名軍師・諸葛亮孔明であると言う事実に今更気付いて驚いていたのであった。
「もしもこの子があの孔明だとしたら凄い歴史的大発見だよ! 無限書庫にもそんな記述の文献は無かったのに…
いや…もしかしたらただ見付かっていなかっただけなのかもしれないけど。」
「いや…あくまでも別の世界の話だから…あんまり気にするな。」
「はわわわわわ~…。」
なのはのみならずユノクロWの内のユーノの部分も驚き慌てていたが、そこをディケイドがあくまでも
別の世界の孔明であると説明しつつ落ち着かせていた。それでもあたふたする朱里ちゃん可愛い。
「あ、そう言えばあの青いライダーの人はどうなったんですか?」
さりげなく何時の間にかにディエンドがいなくなっていた事になのはは気付いていた。
「ああ、アイツはバイク持ってないからな。」
「えぇ!? ライダーなのにバイク持ってないんですか!?」
「それってさりげなく凄い事だと思うんだけど!」
仮面ライダーはバイクに乗ってナンボであるが、ディエンドはバイクを持っていなかった。
この事にはなのはのみならずユノクロWも慌てていたのだが、ディケイドは冷静に答える。
「気にするな。海東の奴ならまたひょっこり出て来る。」
「え…大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。」
ディエンドはバイク持っていないが、それでも一体どういう手を使っているのか徒歩のままでも
ひょっこりと何処にでも現れる不思議な男であった。故にディケイドはあまり気にする事では無いとしていたのである。
こうして、一時高速道路を爆走していた面々であったが、その騒がしくも平穏な走行は何時までも続かなかった。
「そこまでだ珍走野郎ども…。」
「むっ!」
面々の中で先頭を走っていたマシンディケイダーに乗るディケイドが前方に何者かの姿がいる事に気付いた。
それはヴィータ・シグナム・スバル・ティアナの四人だった。
横一列に並び立ち睨み付ける四人の姿に、ディケイド達はそれぞれのバイクを一時停めていた。
「ヴィータちゃん…シグナムさん…スバル…ティアナ…本当に戦わなきゃいけないの?」
「当然だ。」
なのはの悲しげな問いかけも空しく彼女等は聞く耳を持たず戦闘態勢を取っており、
そしてヴィータが前に出つつこう訴え始めた。
「考えても見ろ。今はもう百合要素が無けりゃヲタどもは金を落としちゃくれねーんだよ。金が無けりゃメシだって食えん。
下手をすれば百合厨どもが欲求不満を起こしてどんな犯罪を起こすかも分からねぇ。しかし逆に百合要素一つあればヲタどもは
喜んで金を落としてくれるし、落ち着きもする。そうすれば美味いもんだって沢山食えるし、治安も守れる。
それに奴等の落とした金によってミッドチルダの経済は活性化してより強力な軍隊を組織して皆を守る事も出来る。」
「た…確かに…そうだけど…。」
ヴィータ達は決して百合に魂を売って百合ショッカーに力を貸しているわけでは無かった。
百合がもたらす経済的な利益等、現実的な要素を見据えた上での行動だったのだ。
これにはなのはも気まずい顔になってしまう。
「我々とて好きで百合ショッカーに手を貸しているわけでは無い。しかし、それでも『この世界』を存続させる為には
百合厨を利用して外貨を稼ぐしか手は無いのだ。」
「早い話が必要悪と言う奴ですね。」
「その為になのはさんにはフェイトさんの所に帰って来て欲しいんですよ。分からないんですか?」
彼女等は確かに百合ショッカーに協力しなのは達の敵となってしまっていたが、あくまでもその目的と理由は
前述の通り、現実的な面を見据えた故の行動。百合ショッカーの力を利用しつつ、なのはとフェイトを再び一緒にする事が
『リリカルなのはの世界』を守り維持する一番の方法だと考えていたのである。しかし…
「確かになのフェイの組み合わせに喜ぶ者は沢山いるだろうし、金儲けだって出来るだろうな。
だが、それは親友としての意味で言ってるのか? 違うだろう? コイツはレズビアンの真似事するのと、
なのフェイ人気の陰でユーノがアンチから叩かれて辛い思いしてるのが嫌だから逃げた。それを無理やり連れ戻して何になる。」
「もっと他に方法は無いのか? 両方が納得出来て皆で笑顔になれる方法があるはずじゃないのか?」
ディケイド・クウガはその様になのはを庇うが、それもヴィータ達をより怒らせる結果にしかならなかった。
「部外者が偉そうな口叩いてんじゃねーよ! お前何様のつもりだ!」
「俺は通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ。」
「はわわわわわ……。」
ヴィータに怒鳴られても平然と何時もの決まり文句で返すディケイド。相変わらずあたふたしてる朱里ちゃん可愛い。
「もう良いヴィータ。口で言っても分からないのならば実力で取り返すのみ。」
「あ…ああ…。」
レヴァンティンを握るシグナムに諭され、ヴィータも心落ち着かせグラーフアイゼンを握り締めていた。
「この間は仮面ライダー2号に邪魔されて不覚を取りましたが、今度はそうは行きません。」
「ディケイドにBLACK…。既に百合ショッカーからの資料や
その他の戦闘データは見せてもらいました。負ける要素はありません。」
「おい俺の事無視すんなよ。」
「僕達も今はライダーなんだけど…。」
「はわわわわ…。」
スバル・ティアナもまた戦闘体勢を取っていたのだが、クウガとユノクロWは眼中に入れられてないのが
ちょっと二人(厳密には三人)にとって少し悔しかった。そんな状況下でも相変わらずな朱里ちゃん可愛い。
「やれやれ。やっぱりやるしかないのか。」
ヴィータ達四人に睨まれながらもディケイドは渋々ライドブッカーから一枚のカードを取り出し、
ディケイドライバーに差し込んでいた。
「真田アサミには真田アサミだ。」
『ブロッコリーライド! でじこ!』
ここでディケイドはデ・ジ・キャラットことでじこにライド変身した。今でこそ真田アサミと言えばヴィータだが
一昔前には真田アサミと言えばでじこと言う時代があったのだ。
「コイツが報告書に書いてたカメンライドって奴か。プリキュアにもなれると言う話は聞いていたが、まさかここまでとはな…。」
「さあ何処からでもかかって来い。」
「うぁ…声はそのままなのか…凄い違和感だ…。」
でじこの姿になっても声はやっぱり門矢士のままなのだから、ヴィータ達もその違和感に退いてしまっていた。
しかし、ディケイドでじこは構わずライドブッカーから取り出したカードをディケイドライバーに差し込んでいた。
『アタックライド! 目からビーム!』
直後、ディケイドでじこの両眼から光線が放たれた。でじこの得意技、目からビームである。
残念ながらヴィータ達四人は咄嗟に回避して直撃は無かったが、射線上に建っていたビルが一撃の内に吹き飛んでしまっていた。
「何て火力だ…。」
「さあ…どんどん行くぞ。」
ディケイドでじこは二射、三射と目からビームを連発する構えを見せていたのだが……
「ちょっと待ったぁぁぁぁ!!」
「!?」
その時突如として何者かが乱入して来た。それは何とリインフォースⅡとアギトの二人だった。
「リインにアギト!」
「ここはリイン達が押さえます!」
「こんな所で道草喰ってないでお前等は今の内に先に進め!」
リインとアギトの二人は何とヴィータ・シグナム・スバル・ティアナの四人に対し戦いを挑み、
その隙になのは達を先に進ませる様子であった。
「おいお前等…一体何のつもりだ?」
「何のつもりも無いです! ヴィータちゃん達は間違ってます! リインはもうAV女優みたいな真似事したくないんです!」
「百合ショッカーに協力したってこの世界は守れねぇ! 骨の髄まで百合厨に搾取されて女としての尊厳を失うだけだぞ!」
例え一度は百合ショッカーに洗脳されディケイド等の敵に回っていた二人であったが、既にその呪縛から解かれていた二人は
ヴィータ達にも百合ショッカーから離れてもらいたかった。しかし…それも難しい事…
「リインにアギト…お前達が私達に敵うとでも思っているのか?」
「敵うと思うからやってるんじゃないです!」
「やらないとダメだからやってんだ! それはそうと…おいお前等何時までボサッとしてんだ! 早く行けぇ!」
「あ…ああ…。」
リインとアギトは決して勝算があるからこの様な行動に出ていたわけでは無い。二人の実力からして無謀な行為と言えるが
無理だと分かっていてもやらなければならない事がある事を二人は伝えたかった。そして、未だその場にいたディケイド達を
怒鳴り付け、先へ進ませるのだった。
「行かせるか!」
それぞれのバイクに乗り込み先へ進もうとするディケイド達へ向けて突撃しようとしていたスバルだったが、
そこをアギトの起こした炎の壁が遮り食い止めていた。
「行かせないのはこっちだ!」
「この先に行きたければリイン達を倒してからにしてください!」
こうして、アギト・リインとヴィータ・シグナム・スバル・ティアナの戦いが幕を開けるのだった。
リイン・アギトの協力によってヴィータ・シグナム・スバル・ティアナを回避したなのは達であったが、
間も無くしてさらなる敵の襲来を受けるのだった。
「士! また何か出て来るぞ!」
「どうせ何時もの百合戦闘員とかだろ? 構わず突っ切れ!」
正面から現れた敵集団に対し、ディケイドは無視して強引に突っ切る事を提案していたのだったが、
その敵集団は百合戦闘員では無かった。
「違う! あれは戦闘員じゃないし、怪人でも無いぞ!」
「うっ宇宙人だ!」
そう。彼等はヒッポリト&テンペラー星人を中心とした宇宙の各星の宇宙百合厨によって構成される
百合ショッカー宇宙人傭兵部隊であった。これはなのはやディケイドとしても初めて遭遇するタイプの敵であるが故に
何をして来るか分からず、警戒せずにはいられなかった。
「まさか宇宙人まで百合ショッカーに協力していたとはな…。」
「ネオショッカー首領やドグマの帝王テラーマクロ・ジンドグマ・クライシス・フォッグ・ワーム等…
お前達に関わりのある者達の中にも宇宙から来た者達は数多いと聞いているが?」
確かに各世界において仮面ライダーの敵となった者達もさりげなく厳密に言えば宇宙人である者も少なくないと言える。
ならば彼等宇宙人部隊が百合ショッカーにいても何らおかしい事では無いと言え、ディケイド等も納得せざる得なかった。
そして、ヒッポリト星人はなのはを指差し言った。
「あと…我々はそこの高町なのはと言う地球人の女を殺すなとシャドームーンから言われているのだが…
だからと言ってお持ち帰りにするなとは言われていない。」
「え!? あぁ!」
直後だった。突如としてなのはの真上からカプセル状の物体が降りて来て、なのはがその中に納まる形になっていたのだ。
「何だこれは!」
「一体何が狙いなんだ!?」
攻撃してくるのならまだしも、なのはをカプセルの中に入れ込む行動に思わずディケイド達も戸惑ってしまうが、
ヒッポリト星人はこう続けていた。
「高町なのはをヒッポリトタールでブロンズ像にして宇宙に持ち帰り、宇宙博物館に展示するのだ。」
「何だって!?」
何と言う事だろう。ヒッポリト星人はヒッポリトタールなる技で対象をブロンズ像に変えてしまう力を持っており、
それによってなのはをブロンズ像に変えて宇宙に持ち帰ろうとしていたのである。
「ブロンズ像になれば彼女は歳を取る事も無くその美は永遠の物となる。彼女は宇宙の宝として我々が大切にしてやる。」
「そんな事させるか!」
「なのは! 今そのカプセルを叩き割って出してやるからね!」
ユノクロWは大急ぎでなのはの閉じ込められているカプセルへ拳を打ち込むが、これが中々硬く割れない。
「うあ! 何だこれ! 全然割れない!」
「何て硬いんだ!」
「ハッハッハッハッ! 無駄無駄!」
ディケイド・クウガ・BLACKも一緒になってカプセルに拳を打ち込んでいたが、全然割れない。
何と言う強固なカプセルであろうか。しかもこうしている内にカプセルの内部には怪しげなガスが噴出され、
なのはが苦しみ始めていた。これこそカプセルに入れられた者をブロンズ化させるガスであった。
「けほっ! けほっ!」
「なのは! なのはー!」
「くそっ! このままじゃあの子がブロンズ像に変えられてしまう!」
「割れろ! 割れろー!」
このまま全然カプセルを割れる事無くなのはがブロンズ像に変えられてしまう…と思われたその時…それは起こった。
「デァー!!」
「!?」
謎の声が響き渡ると同時に何かが物凄い速度でブロンズ像を掠めた。するとディケイド達があんなに殴っても
割れなかったカプセルが粉々に砕け、なのはが解放された。
「なのは!」
「でも一体誰が!?」
突如としてカプセルを割った何かを目で追うと、それは空中を旋回するブーメラン状の物体であり
それがその先に存在した空中に静止する何者かの頭に装着されていた。
「ウルトラセブン!」
そう、なのはの窮地を救ったのは百合ショッカーに宇宙人が参加している事を理由に介入を決めたウルトラセブンだった。
そしてヒッポリト・テンペラー等の宇宙百合厨連合の進撃を遮る様にディケイド等の前に降り立っていた。
「ここは私が何とかしよう。君達は先を急ぐんだ。」
「敵になる宇宙人あれば…味方になる宇宙人もいる…と言う事か…。」
「とにかくここは彼に任せて先に進もう。」
光の国の戦士は人間を攻撃する事は出来ない。それ故に百合ショッカーそのものの打倒は同じ人間であるなのは達に任せ、
百合ショッカーに手を貸す宇宙人の相手をする事を決めていた。
「やはり来たなウルトラセブン。」
「しかし我々にたった一人でどうやって立ち向かうのかな?」
宇宙百合厨の脅威からなのは達を逃がしたセブンであったが、そのセブン本人はヒッポリト・テンペラー星人を
中心とする様々な宇宙百合厨の大軍に取り囲まれると言う絶体絶命とも言える状況に立たされていた。
しかし、セブンは怖気付く事無くファイティングポーズを取っていた。
「デァー!」
セブンと宇宙百合厨軍団の戦いが始まった。
その後もディケイド達は各々のバイクを爆走させ、ひたすらにかつての時空管理局ミッド地上本部であった
百合ショッカーアジトへ向け突き進んでいた。今も各世界で多くの勇士達が戦っているが、大元である百合ショッカーの
本部を落とさない限りは勝利にはならない。そして時間をかければかける程百合ショッカーは多くの百合厨を吸収して
強大になっていくだろう。故に、短期間で戦線を広げたが故に本部の守りが手薄になっている今の内に素早く
本部を急襲して百合ショッカー本隊を落とす事。それが急務であった。
「ユリー! ユリー!」
「邪魔だ! 退けぇぇぇ!!」
「ユリィィィィィ!」
行く手に立ち塞がる百合戦闘員・百合怪人をバイクで轢き飛ばし蹴散らしながらディケイド達は進んだ。
もはやザコの相手をしていられる場合では無いのだ。
「見えて来た! あそこだ!」
元々ミッド地上本部であった場所が百合ショッカーの本部になってしまっている事は既に何度も説明した通り。
しかし、百合ショッカーはそのミッド地上本部を占拠して使うのみならず、建物自体を丸ごと百合ショッカー本部として
相応しい『悪の組織の基地』的な建造物へと建て替えてしまっていた。
「酷い…見る影も無いじゃない…。」
「あれが時空管理局ミッド地上本部…? 何かの冗談じゃないのか…?」
「これ…レジアス中将が見たら泣いてただろうな…。」
ミッドチルダ地上の平和を守る砦であったが時空管理局ミッド地上本部が、今やあらゆる世界の支配を狙い
軍勢を送り込む悪の組織・百合ショッカーのアジトと化していた事実…その見て分かる程にまで変わり果てた
その建物に、なのは・ユノクロWは愕然としてしまっていた。
「感傷に浸っている暇は無い! 一気に突入するぞ!」
「うっうん!」
変わり果ててしまった地上本部の姿に悲しんでいる暇は無い。そんな暇があるならば一刻も早く百合ショッカーを
倒して元に戻すべきなのだから。そしてマシンディケイダーに乗るディケイドを先頭としに、その後を
トライチェイサー2000に乗るクウガが、バトルホッパーに乗るBLACKと朱里ちゃんが、
そして最後をやや遅れる事ハードボイルダーに乗ったユノクロWとなのはがそれぞれ百合ショッカー本部へ突入しようとした。
「ん!?」
だが、百合ショッカー本部前の広場に入った所でまた何かが集団で飛び出して来た。また何時もの百合戦闘員・百合怪人かと
一瞬誰もが思っていたのだが…少し様子が違っていた。
「キー!」
「キー!」
「え!?」
ディケイド達の前に飛び出して来た集団。それは百合戦闘員や百合怪人の類では無かった。薄い灰色の全身タイツを
着込んでいる様にも見える身体、濃い灰色の手袋とブーツ、丸みを帯びた全身、腰に巻いたベルト等、
戦闘員に若干似ている様で全然違うと言う代物であった。
「何時もの戦闘員と違う…あれは何?」
見た感じ余り強そうには見えない物の初めて見る異様になのはは緊張しており、ここでクウガがディケイドに顔を向けていた。
「おい士…あれって…。」
「ああ…あれはスナッキーだ。」
「スナッキー?」
「初めて聞く名だ。何処の組織の戦闘員だ?」
これにはBLACKも首を傾げていたのだが、ディケイドは続けた。
「そもそもあれはライダーのいる世界の存在じゃない。」
「この間行ったハートキャッチプリキュアの世界にいた奴なんだよな。」
ディケイドに続きクウガもその様に説明する。既にディケイドは何度かプリキュアライドしている事から分かる様に
ディケイドはプリキュアの世界も幾つか回っていた。その中の一つ『ハートキャッチの世界』において、世界を砂漠化しようと
暗躍していた組織・砂漠の使徒の雑兵として色んな雑用をしていたのが今目の前にいるスナッキー達であった。
「だが、俺達も少しは手伝ったとは言え砂漠の使徒はあの世界のプリキュアの活躍で壊滅したはずだ。
なのに何故スナッキーが百合ショッカーにいるんだ?」
「消滅も出来ずに路頭に迷った敗残兵を百合ショッカーが拾って使ってるのかな?」
何故スナッキーが百合ショッカーにいるのかは分からない。だが、いずれにしても百合ショッカー本部へ
突入しようとするディケイド達の邪魔をしようとしているのは事実だった。
「キー!」
「キキキー!」
「しょうがない。蹴散らして進むか。お前等ちょっと待ってな。」
「はわわわわわ…。」
とりあえず目前に立ち塞がるスナッキー達を何とかしないと先には進めない故、ディケイドはマシンディケイダーから
降りつつ一枚のカードをディケイドライバーに差し込んでいた。彼が一人で何とかするつもりらしい。
『カメンライド! 龍騎!』
先頭に立つディケイド目掛け殺到するスナッキー軍団に対し、ディケイドは仮面ライダー龍騎にカメンライドする。
構わず跳びかかるスナッキー達であったが、直後にディケイド龍騎は駐車場に駐車されていた車の窓ガラスに飛び込み
その中へと消えた。
「え!?」
「士さんが窓ガラスの中に吸い込まれた!?」
「はわわわわ!」
窓ガラスの中に吸い込まれる様に消えたディケイド龍騎になのは、ユノクロW、朱里ちゃんは慌てふためいていたが、
これは『龍騎の世界』のライダーが持つ能力である、鏡の中にあるとされる別次元の世界ミラーワールドへ突入能力を
使っただけに過ぎなかった。とは言え、何も知らない者からすれば窓ガラスの中に飛び込み消えた様にしか見えず
スナッキー達も右往左往するばかりだった。
「こっちだ!」
『アタックライド! ストライクベント!』
何とここで百合ショッカーアジト外壁に付いている窓ガラスからディケイド龍騎が飛び出し、
さらにアタックライドで右腕に龍の頭部を模した爪であるドラグクローを装着、そこから放たれる高熱火炎で
一気に焼き払いつつ、さらに別のカードをディケイドライバーに差し込んでいた。
『アタックライド! ドラグセイバー!』
ディケイド龍騎の左手に龍騎専用剣であるドラグセイバーが出現していた。剣ならライドブッカー・ソードモードで
間に合っていると言えるが、せっかく龍騎になったんだから剣もドラグセイバーを使おうと言う心配りであった。
「そらそらそら!」
「キー!」
「キキー!」
ディケイド龍騎はドラグセイバーを振り回し、次々とスナッキーを斬り飛ばしていくが…袋状の皮膚が破れて
中から砂が漏れ出て来るだけで、スナッキーはダメージらしいダメージを受けていない様だった。
「え?」
「あれの中身って砂なの?」
スナッキーの名が指す通り中身は砂だから斬っても砂が零れ落ちるだけであり、さらに救護班っぽい格好の
スナッキーが現れて、斬られた部分にテープを貼り塞ぎつつ砂を補給するだけで皆全快してしまった。
「キー! キー!」
「ちょっと士さん! 何が『ちょっと待ってな』ですか! 全然倒せてないじゃないですかー!」
「まずったな~、ちょっと気分で龍騎選んだのがダメだったか?」
なのはが思わず野次を飛ばすのも仕方の無い事だったが、これは決してディケイド龍騎の力が足りないわけでは無い。
スナッキーは別にそんなに強いわけでは無いが、中身が砂なだけあって斬れば殺せると言うわけでも無いし、
炎で焼け死ぬと言う事も無い。実際『ハートキャッチの世界』においてもプリキュアにポンポンと吹っ飛ばされこそすれど、
殆ど死者は出なかった…と思う多分。それだけ倒すのはある意味困難な相手と言えるのであった。
「も~、しょうがないな~。」
ここは自分が何とかしてあげようとなのはがレイジングハートを構えると共にスナッキーへ向け
ディバインバスターを放とうとした…その時だった。
「ここは俺達に任せろー!!」
「え!? また誰か来たよ!」
「今度は誰だ!?」
ここでまた何者かが現れた。台詞から察するに味方であると推測されるが、そこに現れたのは仮面ライダー1号…に
微妙に似てる気がしない事も無い何者かと、ライダーマンっぽい様に見えない事も無いけど身体も小さく弱々しい何者かの二名だった。
「仮面ノリダー! 参上!」
「未改造人間ライダーマン!」
「え~?」
仮面ライダーの様でいて微妙に違うかもしれない二人の登場にその場が思わず呆れ顔になった。
ってか仮面ノリダーの方は思い切り顔面が露出して『仮面』ですらないし。
「あれはとんねるずの世界の仮面ノリダーと、めちゃイケの世界のライダーマンだな。」
「え? ライダーマンってV3の世界にいるんじゃありませんでしたか?」
とりあえずカメンライド龍騎を解除したディケイドは簡単に説明してくれていたが、ライダーマンと言えばV3の世界で仮面ライダーV3と
協力してデストロンと戦った事で知られている。しかし、今現れたライダーマンはめちゃイケなる世界のライダーマンと言った。
「同じ人間でも世界が変われば違う人間になる。そういう事だ。」
「八代の姐さんもクウガの世界のアギトの世界にそれぞれいたけど、全然違ってたしね。」
世界が変われば人も変わる。例えばクウガの世界において仮面ライダークウガこと小野寺ユウスケが姐さんと呼び
慕っていた八代と言う女性刑事がいたのだが、そんな彼女はアギトの世界にも存在した。しかし、クウガの世界における
八代とはまた異なる人間…異なる人生を歩んでいた。そしてライダーマンも、V3の世界ではデストロンのヨロイ元帥なる
幹部によって右腕を失っていたのだが、ディケイドこと士が直接面識のあるライダーマンは、大ショッカー大首領だった頃の
士の手によって右腕を失う形となっていた。故に今目の前に現れたライダーマンも異なる世界の事なる歩みを辿ったライダーマンと言う事である。
「ここは俺達に任せて先へ進むんだー!」
「あ…ああ…。」
仮面ノリダーはスナッキー軍団に戦いを挑み、ディケイド達を先に進ませるつもりであった。
彼は『とんねるずの世界』において、ショッカーに似てる様な気がしない事もない悪の秘密結社ジョッカーによって
木梨猛が改造された姿である。その姿は仮面ライダー1号に似ている様な気もしない事も無いのだが
仮面ですらない露出した顔面と大きな耳が特徴であった。
「来るなら来い! 全部ぶっ飛ばすぞー!」
「キー! キー!」
「あ! 結構頑張ってるよあの人…。」
イマイチ強そうに見えない外見に反し、仮面ノリダーはそこそこスナッキー相手に立ち回る強さを見せていた。
これにはなのはも感心していたのだったが……
「でもこっちのライダーマンは弱いよ! 袋叩きにされてるよ!」
仮面ノリダーはともかくとして、めちゃイケの世界のライダーマンは弱かった。ただでさえそんなに強くない
スナッキー相手に何も出来ずにただ袋叩きにされているだけ。一体何の為に出て来たのか。
確かにライダーマンは仮面ライダーの中でも強くない方だが、それでも戦闘員位なら普通に倒せていた。
しかし、めちゃイケの世界のライダーマンは背も低いし、何より戦闘員にすら敵わない程弱かった。
何しろキックの破壊力は小学五年生程度だと言うのだからどれだけ驚異的な弱さを誇っているか分かると思う。
「確かにあのライダーマンは弱いが、しかしスナッキーに袋叩きにされている今がチャンスだ。突っ切るぞ!」
「う…うん……。」
「はわわわわ…。」
めちゃイケライダーマンがスナッキー達に袋叩きにされればされる程、ディケイド達への注意が手薄になる。
その隙に一気に百合ショッカー本部に突っ込むべきであった。これにはなのはもライダーマンに申し訳無い気持ちだったが、
かと言ってせっかく助っ人に来てくれた彼等の想いも察してここはあえて見捨てて百合ショッカー本部へ突入した。
最終更新:2011年04月02日 09:37