9:恐怖! 百合ショッカー四天王編
各々のバイクへ乗ったまま百合ショッカー本部内へ突入したディケイド達。そして内部の通路を通り奥へ奥へと爆走する。
「外から見るより随分と広いんだなここ。」
クウガはトライチェイサー2000を運転しながらも周囲を見渡しそう呟いていた。百合ショッカー本部の内部通路は
外から見える建物の大きさ以上に長かった。恐らく外から見える建物はただ魅せる為の演出で内部は地下に広大な基地が
建造されていると推測された。
そして長い通路を通り、通路の先にあった大きな部屋に出た。その向かい側には次へ進む通路の入り口らしき物が
見えたのだったが、それを遮る様に何者かが立ち塞がっていた。
「僕はシャドームーン様直々のご指名によりゴルゴム本隊からやって来たフェレット怪人だキュー。」
「フェレット怪人!?」
ゴルゴム怪人の名称は、一般的にベースとなった生物の名称の後に怪人と付く形を取る。(例:クモ怪人・ヒョウ怪人)
そして彼はフェレットをベースとしたフェレット怪人だったのである。その姿は元になったフェレット同様に
可愛らしい様にも思えたが、シャドームーン直々に指名されて来たと言うだけにかなりの戦闘力を持つ事が予想された。
「お前達の中にもフェレットがいるらしいじゃないかキュー! そいつを今すぐに出せキュー! 僕が相手になってやるキュー!」
フェレット怪人が言うフェレットとはすなわちユーノの事。それもディケイドの力によって巨大フェレットに
ファイナルフォームライドした状態を指しているのだろう。しかし、今のユーノはクロノと共に仮面ライダーWになっていたのだった。
「こっちも色々あって君の要求には応えられないけど…。」
「代わりに僕達が相手に立ってやろう。」
「ユーノ君! クロノ君!」
ここでユノクロWがハードボイルダーから降りて前に出た。これにはなのはも驚いていたのだが
それを追う様に同じく前に出ようとしていたなのはをユノクロWは止めていた。
「僕達が奴を食い止めている間に先に進むんだ。」
「で…でも…。」
「でもじゃない! こんな所でグズグズはしていられないのは分かってるでしょ!?」
「!」
ユノクロWを心配して躊躇するなのはに対し、ユノクロWの内のユーノの部分が思わず怒鳴っていた。
彼の言う通り今はフェレット怪人だけに構っている暇は無い。故にユノクロWは自分がフェレット怪人を
食い止めている間になのは達に百合ショッカーの本隊を倒して欲しかったのである。
「行くんだ! 僕達がコイツを食い止めている間に行くんだー!!」
「う…うん…。」
「行くぞなのは! 今度はこっちに乗れ!」
単身フェレット怪人に突撃し、正面から組み合っていたユノクロW。その隙になのははディケイドに手を引っ張られる形で
マシンディケイダーの後部座席に乗り込み、ディケイド達はさらに先へ進んで行った。
「お前なんかがこの僕に勝てるのかキュー!?」
「勝てると思うから挑むんじゃない! お前の相手には僕達じゃないとダメだからやるんだ! 行くぞぉ!」
ユノクロWとフェレット怪人の戦いが今始まった。
マシンディケイダーに乗ったディケイドとなのは、トライチェイサー2000に乗るクウガ、バトルホッパーに乗る
BLACKと朱里ちゃんはさらに通路を突き進んでいたが、ここで再び広い部屋に出た。そして、やはりそこにも何者かの姿があった。
「な…何だコイツ…。」
その部屋にいた何者か…それは巨大なウサギだった。しかし、ウサギを元にした怪人…と言うわけでも無く、
むしろウサギのぬいぐるみを巨大化させた様な代物だったのである。
「まさか…クリス!」
なのはは思わず叫んでいた。クリス…正式名称・セイクリッドハート。なのはが義娘であるヴィヴィオの為に用意した
ウサギのぬいぐるみ型デバイスである。しかし、本来のクリスは子供の掌の上に乗る程度の大きさしかない。
だが今目の前にいたクリスはのべ三メートルの巨体であったのだ。
「でもどうしてこんな大きさに…。」
「恐らく百合ショッカーによって強化改造でもされたんだろうな。」
まあ現状ではそう考える他は無いだろう。百合ショッカーの科学力ならばクリスを巨大化させつつ自らの尖兵として
扱う等造作な事では無い。
ここは通さんと言わんばかりに一歩一歩歩み寄って来る巨大クリス。その可愛らしい外見からは想像も出来ないシュールさと迫力。
だが、ここでクウガが前に出ていたのだった。
「ユウスケ?」
「ここは俺の出番だ。後は俺に任せて士達は先へ進め。」
クウガは単身巨大クリスに挑むつもりらしかった。流石のクウガも分が悪い戦いになると思われるが、だからと言って
巨大クリスだけに構っている事は出来なかった。
「分かった…後は頼んだぞ。」
「ああ! 俺も一刻も早くアイツを倒して後を追う。」
巨大クリスに挑むクウガを残し、ディケイド達はさらに進んだ。しかし、巨大クリスの存在がなのはに新たな心配事を作っていた。
「まさかクリスまで…と言う事はヴィヴィオも何処かに…。」
クリスが百合ショッカーによって改造され敵に回った。それはクリスの持ち主であるヴィヴィオも何処かに囚われている事を連想させた。
ヴィヴィオの事を思うとなのはは気が気では無かった。
ディケイド達が先へ進んだ後、クウガは巨大クリスに対し構えていた。
「さあ行くぞ!!」
クウガは巨大クリスへ挑みかかり、ここでも戦闘が始まった。
マシンディケイダーに乗ったディケイドとなのは、バトルホッパーに乗ったBLACKと朱里ちゃんはさらに通路を進む。
そして例によってまた広い部屋に出たのだった。
「また誰かいるよ。」
「今度は誰だ?」
「あれは…。」
「はわわわわ…。」
部屋の中にはまたも行く手を遮る刺客と思しき者の姿があった。しかし、それはいわゆる『怪人』の類では無かった。
闇の様に漆黒のドレスを見に纏い、左側の背中に悪魔のごとき翼を生やした黒髪の美女。その瞳は刃の様に鋭く、
そのまま突き刺してしまわんばかりの勢いでディケイドを睨んでいた。
「久しぶりだな…破壊者…。」
「お前は…ダークプリキュアか…。」
ダークプリキュア。かつてディケイドが旅したプリキュア世界の一つ、『ハートキャッチの世界』において、
世界を砂漠化させようとしていた砂漠の使徒によって作られた人造プリキュアとでも言うべき存在。
先にいたスナッキーもそうだが、何故彼女が百合ショッカーに所属していると言うのか…
「まさかお前まで百合ショッカーにいたとはな。」
「こっちもまたお前と出会う事になるとは思わなかった。」
「知り合いなの?」
ディケイドとダークプリキュアの会話から察するに、双方は既に互いを知り合っている様だった。
「ああ…。俺がハートキャッチの世界に行った時、成り行き上とは言えそこでプリキュアと砂漠の使徒の戦いに介入しちまったからな。」
「そうだ! 貴様の邪魔が無ければ私はキュアムーンライトを倒す事が出来たと言うのに…。そして砂漠の使徒も崩壊し…
私は死にそびれた敗残兵として虚空を彷徨っていた所をシャドームーンに拾われ、後はこの百合ショッカーなる得体の知れない連中の
一員として戦わざる得なくなった。この屈辱……貴様に分かるかぁ!?」
「色々説明ありがとうな。」
「くっ…貴様…。」
詳しい事は不明だが、彼女の言葉からするととにかくディケイドとダークプリキュアの間にはただならぬ因縁があった様だ。
「もうこうなってしまった以上私は今更キュアムーンライトに再び挑もうとは思わない。だが…貴様は許さん!! はぁ!!」
ダークプリキュアは猛烈な勢いでディケイド目掛け跳びかかって来た。が、そのディケイドを狙っていた拳を掌で
受け止めていたのは何とBLACKだった。
「光太郎!?」
「ここは俺に任せて先に進むんだ!」
BLACKはダークプリキュアの相手を引き受け、その内にディケイドとなのはを先に進ませるつもりだった。
「邪魔をするなぁ! 貴様には用は無い! 私の狙いはあの破壊者だけだぁ!」
「そうはいかん!」
最初からディケイドしか眼中に無いと言わんばかりのダークプリキュアはBLACKを突破してディケイドへ
向かおうとしていたが、BLACKは身体を張って遮っていた。
「何をしている!? 今の内に進むんだ!」
「ああ!」
「光太郎さん頑張ってください。」
ディケイドとなのはは再びマシンディケイダーに乗り込み、先へ進んだ。BLACKはそれを見送った後、
さらにバトルホッパーに目を向けていた。
「バトルホッパー、その子を守ってやるんだ。」
「はわわわわわ…。」
バトルホッパーには未だ朱里ちゃんが乗っている。ディエンドの三国ライドによって呼び出された存在とは言え
少女が戦いに巻き込まれて大怪我をしてしまう様を見るのは辛い。それ故にBLACKは自分がダークプリキュアの相手を
している間、バトルホッパーに朱里ちゃんの護衛を任せるのだった。
「こうなったら仕方が無い…。まず貴様を倒してから破壊者の後を追わせてもらう!!」
「来い!!」
こうしてBLACKとダークプリキュアの戦いが始まった。
沢山いた仲間もついにディケイドとなのはの二人きりになってしまった。こうなってしまうと流石に心細い物があった。
「これ以上何か出て来たらたまらんな。」
「あ、次が見えて来たよ。」
なのはの言う通りだった。長い通路も終え、再び広い部屋に出た。
「ここが終点の様だな。」
ディケイドの言う通りだった。その部屋で行き止まり。それを証明する様に、部屋の奥には首領の椅子に座る
フェイト=T=ハラオウンと、その側近として君臨していたシャドームーンの姿があったからだ。
「フェイトちゃん!」
「ついにここまで来たな…。」
思わずフェイトの所へ駆け寄ろうとしたなのはだったが、シャドームーンに立ち塞がれ思わず止まっていた。
そしてなのはを下げつつディケイドが前に出る。
「月影ぇ~! お前も百合厨だったとは堕ちる所まで堕ちたな~!」
「如何にも。創世王として世界を…全てを支配する為ならば私は百合厨にでも何にでもなってやる……と言いたい所だがな…。」
「?」
「正直の所、私は百合厨どもの言うなのフェイに関してはどうでも良いのだ。しかし、なのフェイの百合に多くの人々が
支持している事実は見逃す事は出来ん。考えても見ろ。愚民どもが好むと言う民主主義とやらで考えても、数多くの賛成者、
支持者のいる百合こそが正義となり、逆にそれに反対しようとする者は悪とされる。現に筆者の奴はその為に一方的に悪とされ
正義の徒を気取った百合厨どもの総攻撃を受けてまさに満身創痍の状態にあるでは無いか。これが意味する事…
それは我々百合ショッカーこそが世界を支配するに相応しい正義であり、それを破壊しようとするディケイド…貴様が悪なのだ。
故にそこにいる高町なのはと私の後にいるフェイト=T=ハラオウンには精々私の世界支配の為の人形として利用させてもらおうか。」
シャドームーンは百合ショッカーに与してはいても、百合そのものを好んでいるわけでは無かった。
あくまでも己が世界を、全てを支配する為に利用価値があるからそれを利用していると言う、手段でしか無かったのである。
力と恐怖で支配するのでは無く、人々から支持を得ている物を利用する事で人々からの支持と賞賛を得て
逆に反対意見を一方的に悪にして反対し難くする。なんと言う恐ろしい計画であろうか。
そして、シャドームーンは己の世界支配の為に高町なのはへと手を伸ばそうとしていた。
「そうはさせん! コイツはレズビアンの真似事なんて嫌だってよ。」
「そうか…ならば世の中には嫌でもしなくてはならない事があると言う事を教えねばならんな。」
シャドームーンは己の持つ世紀王専用剣・サタンサーベルを抜いた。
「ついに最後の戦い…と言う所だな。気を抜くなよ!」
「うん!」
ディケイドはライドブッカー・ソードモードを、なのははレイジングハートを握り構えた。
「行くぞ!」
「来い!」
こうしてディケイド&なのはVSシャドームーンの戦いが幕を開けた。
時同じく、仮面ライダー1号・2号・V3は激闘の末に百合ショッカーライダー部隊を全滅させていた。
「ハァ…ハァ…後はお前だ…地獄大使…。」
「いや…今はガチ百合大使と名乗っているんだったかな…?」
地獄大使改めガチ百合大使の変身体・ユリユリンダに向けて構えるが、ユリユリンダは余裕の笑みを浮かべていた。
「ハッハッハッ! 良くぞやったと褒めてやろう。だが、随分と息が上がっているな。」
その通りだった。確かに百合ショッカーライダー部隊を全滅させた三人だったが、それ相応に疲弊し
体力も大きく消耗していたのだった。
「今の疲れきった貴様達等、倒すのは容易いわ!」
「そうは行くか!」
「この程度でヘバる程甘い鍛え方はしていない!」
疲れきった身体にムチを打ち、三人はユリユリンダに跳びかかる。しかし…
「本当にムチ打ってやるわぁ!」
「ぬあ!」
ユリユリンダはムチ状の腕を振り回し、トリプルライダーをまとめて弾き飛ばしてしまった。
三人も疲弊・消耗があるとは言え、物凄いパワーとスピードである。
「くそ…こうなったらこっちにも考えがある。」
「どうせ三人まとめてライダーキックと言うのだろう? そんな物弾き飛ばしてやる。」
ユリユリンダは正面から迎え撃ってやらんばかりに大きく胸を張る…が、次の瞬間1号・2号・V3は三方向に散開した。
「何!?」
「ライダァァァァ! トリプル!! キィィィィィック!!」
「ぬあ!?」
トリプルライダーの正面・左・右からの三方向同時ライダーキック。これではユリユリンダも
どう迎撃して良いか分からず、真っ向からそのライダートリプルキックを受けてしまうのだった。
「うああぁぁぁぁ!!」
手足をバタ付かせながら大きく吹っ飛んで行くユリユリンダ。そして大地を砕かんばかりの勢いで地面に叩き付けられるのだった。
「偉大なる百合ショッカーに…百合バンザァァァァァァイ!!」
ユリユリンダは最後の力を振り絞った百合万歳と共に…大爆発を起こした。
「やったな。」
「おお。」
「後はディケイド達の頑張りを祈るのみだ。」
仮面ライダー1号・2号・V3は百合ショッカーアジトのある方向をじっと見つめていた。
最終更新:2011年04月02日 09:38