10:アギト、アギトへの覚醒編

 リインフォースⅡ・アギトはたった二人でヴィータ・シグナム・スバル・ティアナの四人を食い止めるべく奮戦していたが、
それでも力及ばず、劣勢に立たされていた。

「ほら言わんこっちゃ無いじゃないか! お前達二人があたし達に敵うか!」
「最初から敵うなんて思ってないです!」
「あいつ等が百合ショッカーぶっ潰すまでお前等引き付けとく時間さえ稼げればそれで良いんだ!」

 リインとアギトはヴィータの振り回すグラーフアイゼンを何とかかわしながら、各々の得意とする氷・炎の壁で
四人の進撃を食い止めようとする。しかし、氷の壁は砕かれ、炎の壁は振り払われてしまう。
そしてレヴァンティンを抜いたシグナムがアギトへ接近する。

「アギト…私は失望したぞ…。」
「失望したのはこっちだよ! 百合ショッカーなんかに頼ってリリカルなのはシリーズ人気守ろうとするなんてよ…。
そんなに自分自身の力が信じられないのかよ! だから今ここであんたを焼き殺してやる!!」

 アギトは渾身の力を込めた炎をシグナムへ浴びせ、シグナムの全身が炎に包まれた。

「ハハ…やったか。」

 アギトは勝利を確信したが…炎が晴れた時、そこにあったのは焼け焦げたコタツだった。

「な! まさかこれが噂に聞く空蝉の術!?」
「アギト後ですぅぅぅぅ!!」
「!?」

 リインの叫びも空しく、次の瞬間背後に回り込んでいたシグナムの一撃がアギトに決まり、アギトは思い切り壁に打ち付けられていた。

「うっ!!」
「アギト!」

 壁に打ち付けられた後で倒れるアギトに駆け寄ろうとするリインだったが、それもティアナの射撃によって妨害されてしまった。

「アギト…残念だ…。」

 シグナムはレヴァンティン片手にアギトへ歩み寄る。そのままトドメを刺すつもりらしかった。
アギトは必死に起き上がろうとするが、ダメージの為に全身が痛くて息をする事さえ上手く出来なかった。

「(畜生……あたしは…また守れねぇのかよ…ゼストの旦那だけじゃねぇ…リインも…あいつ等も…何も守れねぇのかよ…。)」
『力が欲しいか?』
「(?)」

 突然何者かに話しかけられた様な感覚をアギトは感じていた。そして彼女はある事実に気付く。
それは何時の間にかにアギトの正面に白い服を着た光り輝く青年の姿があった事である。

『力が欲しいと言うのならば、一時的に私の力を与えても良いと思っている。』
「(欲しい! 力が…力が…。例え今この瞬間だけだったとしても…力が欲しいんだ!)」

 アギトは心の中で必死に叫んだ。そんな事をしても無駄かもしれない。そもそも今アギトの目の前にいる
白い服の青年自体が死に掛けのアギトが垣間見た幻かもしれない。頭ではそう分かっていても、叫ばずにはいられなかった。

『そうか…ならば与えよう…アギトの力を…。』
「(え? アギト…?)」
『目覚めよその魂…。』

 白い服の青年はアギトに対し不思議な光を浴びせると共にその場からフッと消え去った。
そして彼の言い残した『アギトの力』と言う言葉の意味が理解出来ずにいたアギトだったが、
彼の発した光を浴びると共に不思議な力が沸き起こって来ていた事を感じていた。

 シグナムは未だ倒れたままであったアギトへレヴァンティンを向け、今まさに突き刺さんとしていたが、
その直後だった。突如としてアギトの全身が光り輝き、その眩い光のあまりシグナムは思わずたじろいでいた。

「何だこの光は!」

 余りの強烈な光に皆は目を開く事すら出来ない。しかし、その光を発しながらアギトは立ち上がり、
さらに彼女の腰にはベルト状の物体…オルタリングが巻かれていた。そしてアギトは右手を正面に突き出すポーズを取り…

「変身!」

 そう叫びつつオルタリング側面にそれぞれ左右の手を当てた。その直後だった。
オルタリングの内に秘められた賢者の石からオルタフォースが放射され、アギトの姿が変わって行き、
その姿を黒・金・銀の三色を基調とした戦士へと変えていた。

「アギト…?」
「なっ…そんな……アギトだと!? アギトがアギトになりやがった!」

 アギトの変貌ぶりにヴィータは思わず驚愕の声を上げていた。しかし、そんな彼女に対しスバルは首をかしげる。

「あの…一体どういう事ですか? あの子最初からアギトって名前でしょ?」
「馬鹿! そういう意味じゃないの! だから百合ショッカーから渡された資料ちゃんと読んどきなさいってもう!」

 スバルの間抜けな発言にまたもティアナが怒鳴ると言う一幕が見られたが、ヴィータとシグナムは真剣な表情でアギトを見つめていた。

「百合ショッカーから渡された資料の内容が本当なら…あれはアギトだ…。」
「『アギトの世界』において万物を作りたもうた神に反逆した上級天使の一人が人間に対し与えた力…アギト…。
まさかアギトがそのアギトの力を得てしまうとは…これも百合ショッカーによる多世界同時侵攻の影響か?」
「アギトがアギトになっちまうなんて…まるでダジャレと言うか…変な冗談みたいだ。」

 アギトは俗に言う所の『仮面ライダーアギト・グランドフォーム』と呼ばれる姿へと変貌していた。
それこそ『アギトの世界』における人類にとって神にも等しい超越的存在によって与えられ、人類よりも一歩先へ進化した存在。
そして、アギトにその力を与えた白い服の青年こそ『仮面ライダーアギト・津上翔一』にアギトの力を与えた『光の青年』であった。
勿論アギトは厳密には人間では無く人型のデバイスなのだが、それも超越的存在である『光の青年』にとっては関係の無い事なのだろう。

「そんなビビる事ありませんって! ただ姿が変わっただけでしょ!? 今度こそ引導渡してやりますって!」
「馬鹿! 不用意に飛び込むな!」

 スバルはヴィータの制止も聞かず、アギト・アギトへ向けて突っ込み、得意の拳を打ち込もうとした。しかし…

「はっ!」

 アギト・アギトはスバルの拳に合わせる様に拳で返した。確かに今までのアギトならばそんな事をしても
シューティングアーツの名手であるスバルに拳ごと砕かれ弾き飛ばされるだけだっただろう。
しかし、アギトの力を与えられたアギト・アギトは逆にスバルを弾き飛ばしていたのだった。

「うあぁ! 何この力!」
「馬鹿! アギトは基本のグランドフォームの時点で平成ライダーの中でも高い部類の能力持ってるのよ!」

 ティアナの指摘した通りだった。神に限りなく近い超越的存在から与えられた超越肉体を持つアギトは
単純な基本スペック面だけで考えるならば平成仮面ライダーの中でも高めの部類である。なにしろ俗に言う最強形態を含めてすら
基本形態アギトにも敵わないライダーもいたりする位である。これはスバルが弾き飛ばされるのも仕方の無い事だった。

「くそ…グランドフォームの時点でアレだぞ…。もしこのままバーニングフォームやシャイニングフォームに
なられたら本当に手が付けられなくなる…。」

 アギト・アギトの力にヴィータは戦慄していたのだが、それとは違う反応を見せていたのがリインだった。

「あー! 良いな良いなー! リインもあんなのになってみたいですー!」
「そうかい? なら僕が力を貸してあげよう。」
「え!?」

 そこで突然リインの隣に行方不明になっていた仮面ライダーディエンドが何時の間にかに姿を現していた。

「貴方は誰ですか?」
「誰でも良い。僕は君に味方する者さ。」

 ディエンドは何かのカードをディエンドライバーに差し込み、それを放射した。

『カメンライド! G3…のガワだけ!』

 ディエンドはカメンライドでG3のガワだけを呼び出していた。普通ならカメンライドでライダー自身を
直接呼び出して戦わせる所なのだが、何故G3のガワだけを呼び出していたのか…

「さあこれを急いで着込むんだ!」
「ええー!?」

 ディエンドがG3のガワだけをライドした理由。要はリインにG3を着込んで戦ってもらう事にあった。
そもそもG3はアギトの世界の警察が対未確認生命体用に開発した特殊パワードスーツである。
つまりただの人間でも超人的な力が発揮出来る様な仕様になっていると言う事である。
これを着込めばリインもそれなりに戦える様になる言う事にもなるのだが…リインは思わず躊躇してしまっていた。

「で…でも…。」
「君だって公僕の端くれだろう!? 良いから着るんだ! 僕も手伝ってやるから!」
「はっハイ!」

 結局ディエンドに押されるままリインはG3を着込んで戦うハメになってしまった。

「じゃあ後は頑張って。」
『アタックライド! インビジブル!』
「ええー? 貴方は戦ってくれないんですかー!?」

 リインにG3を貸すだけ貸してディエンドはそそくさと帰ってしまったが、もうここまで来たら引き返せない。
リインも腹をくくってG3で戦うしか無かった。

「おい…リインの奴がG3システムを装着しやがったぞ…。」
「アギトの世界の警察が未確認生命体4号…つまりクウガを研究して作り上げたパワードスーツか…。
古代ベルカ式ユニゾンデバイスとは言え、現代技術によって作られたリインにはお似合いと言えばお似合いか…。」

 シグナムはご丁寧に解説してくれていたが、しかしここでまたスバルが突撃を始めていた。

「不思議な事が起こって不思議な力に目覚めたみたいなアギトならともかく、あっちはただの人間が作った鎧なんですよね!?
ならここで一気に壊してみせますよ!」
「あっこら! 不用意に近付いたらダメだって!」

 ティアナが止めようとするのも聞かずにスバルはG3システムを装着したリインへ向けて突撃する。
それに対してリイン・G3は自身の纏うG3システムをまだ上手く動かす事が出来ないのか
真っ向からその拳の一撃を受けてしまった。

「きゃぁぁぁぁぁ!! って…あれ…全然平気です…。」
「え!?」

 スバルの拳をもろに受けているにも関わらず、リイン・G3は結構平気で衝撃で仰け反る事すらしなかった。
これには両者ともに間の抜けた顔になってしまった。

「何だか良く分かりませんけど…こうです!」
「あ!!」

 今度はリイン・G3がスバルの腕を掴むと共にあっさりと投げ飛ばしてしまった。
これは普段のリインの力からすれば考えられない事であった。

「何で!? あれただの鎧じゃないんですか!?」
「全然違うぞ! G3システムはライダーとしては控えめな性能だが、それでも元々対未確認生命体用として作られてるから
常人の十倍位のパワーを出せるし、特に防御力に関してはライダー全体から見てもかなりの物を持ってる。
幾ら中身がリインだと言っても侮れないぞ!」
「そのさらに倍の性能としてバージョンアップされたG3-Xでは無かった事をむしろ幸運に思うんだな。」

 G3システムは一見すると単なる全身を包み込むだけの鎧にしか見えないが、対未確認生命体との格闘戦も
視野に入れて作られており、装着者に常人の十倍近い力を与える機能も持つ。つまりただの人間であっても
怪人とそれなりに戦う力を与え得る物なのである。そしてその防御力は猛烈な速度で飛んで来た鉄球を真っ向から
受けても微動だにしない強固さと、装着者に衝撃を伝えない程の衝撃吸収力を兼ね備えている。
これがリインフォースⅡをしてスバルを力で圧倒出来た所以であった。

 即席かつ一時的な物とは言え、仮面ライダーとしての力を手に入れたリインとアギト。
これならばヴィータ達とも互角に戦う事が出来る。

 リイン・G3&アギト・アギト VS ヴィータ&シグナム&スバル&ティアナの第二ラウンドが今始まった。

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最終更新:2011年04月02日 09:40