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戦場のStrikerS~第二話~ 非効率的天才

なのはとフェイトに案内され、422部隊は廃棄都市群から機動六課隊舎へと向かっていた。その道中、クルトたちはなのはからこの世界のこと、
時空管理局という組織、また自分たち機動六課の役割を大まかに説明された。質量兵器が使えない代わりに魔法でこの世界の平和を維持しているという点は
クルトたちにとって驚きであった。そして、クルトも元の世界の状況、ガリア軍の性質、422部隊のことなどをなのはとフェイトに話した。

「つまり、あなたたちは全員何らかの罪や命令違反を犯した結果、配属されたということなんですね」
「ああ、俺の場合は反逆罪だが正直全く覚えがない。ある日突然辞令を言い渡され、この部隊に配属されることになった」

クルトのようにいわれのない罪状で422部隊に配属されたものもいる。ダイトに至ってはダルクス人というだけで422部隊に配属されたのだ。
ダルクス人というのは、ダイトやイムカのように濃紺の髪を持っているのが特徴で、大昔に起きたとされる『ダルクスの災厄』により現在でも疎まれ、
『ダルクスの災厄』を犯した罪で姓を奪われている。クルトがそう語ると、なのはとフェイトが悲しそうな表情を浮かべ、フェイトが思ったことを口にした。

「たとえその『ダルクスの災厄』が本当に起こったことであってもそれと今を生きているダルクス人は何の関係もない。なのになぜ…」

その言葉に答えるものがあった。ダイトである。

「教えてやろうか。世の中はな、俺たちみたいな犠牲者が必要なんだよ。迫害の対象、弾圧の対象、いつの時代だって時代には俺たちみたいな犠牲者が
 必要なんだ。『ダルクスの災厄』があろうがなかろうが関係なくな。あんたたちのこの世界でもそうなんじゃないのか?」
「そんなことありません!時代には常に犠牲が必要だなんて、そんなことあっていいはずがない!」

ダイトの言葉にフェイトが声を荒げる。しかしダイトはなおも続ける。

「…あんたがそう思うのは自由だ。だが、世の中はそうとは限らない。さっき魔法と言ったがこの世界の人間すべてが魔法を使えるわけじゃないんだろ。
 案外そいつらが犠牲者なのかもな…人は自分よりも劣った奴を本質的に貶める生き物だからな…」
「…ッ!知ったような口を…!」

フェイトが表情を険しくする。さすがにまずい雰囲気だと感じたなのはとクルトはそれぞれを諌める。

「すまない。NO.56も悪気はなかったのだが、彼の発言でハラオウン執務官の気を悪くさせてしまった。隊長として謝ろう」
「いいえ、大丈夫です。フェイトちゃんも落ち着いて」

このいやな空気を変えようと、唯一ダイトの名を知るNO. 15 エイミー・アップルが新しい話題を切り出す。エイミーは422部隊最年少の隊員で
年齢はなんと15歳。故郷で義勇軍に所属していたのだが、422部隊の性質を知らされないまま『正規軍の特殊部隊』と説明され、また給与が高かったこともあり
志願、というか騙されて422部隊に配属された偵察兵である。幼いながらもかなりしっかりしており、ダイトはエイミーに今は亡き妹の面影を重ねている。

「…と私はこういう経緯でこの部隊に配属されたんですけど、お二人はどういう経緯でその…時空管理局に入ったんですか?」
「え、うん、それはね…」

そしてクルトたちはなのはから二人が時空管理局に入った経緯、そしてなのはとフェイトが十年来の大親友であることを知る。

「そんなに小さい時からそんなに大変なことを?すごいです!尊敬しちゃいます!」アニカが目を輝かせる。アニカは街中で絡んできたゴロツキを叩きのめしたことが過剰防衛と判断され、
なにか書類にサインした結果422部隊に転属となった。

「あはは…ありがとうございます。えっと…NO.24さん」
「あ、私はアニカ・オルコットって言います!以後よろしくお願いします!」

アニカから名を告げられた途端、なのはの顔が晴れやかなものになった。422部隊と出会ってまだ一時間も経たないうちに一人目の名前をゲットしたのだから。
更にアニカに続くようにこの話題を振ったエイミーが名乗る。

「あの、私もいいですか。エイミー・アップルと言います。これからよろしくお願いします」
「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いしますね、アニカさん、エイミーさん。えっと、ほかの隊員さんたちは…」
「確かにそんな小さいころからそんな活躍してることは素直にすごいと思うが、認めるかどうかの判断はあんたたちの人となりを見てからでも遅くないだろ」

フェリクスの言葉に頷く隊員たち。それでもなのはは今度は悲しい表情を浮かべることなく、ニコリと笑って隊員たちに口を開く。

「構いません。残りの隊員さんたちにも必ず私たちのことを認めさせて見せますから」
「ふふふ、そう構えなくても大丈夫ですよ高町さん。私たちは皆相手の実力を素直に認めますから。高町さんたちがみんなに認められるのも時間の問題ですよ」

リエラがなのはに微笑みながら語る。リエラは過去所属していた5つの部隊が5つとも全滅し、リエラだけが生き残ったことから『死神』と呼ばれ、
隊員たちから避けられていた。しかし、クルトが配属されその話を隊員たちから聞くと、「くだらないオカルトはこの俺が消してやる」とリエラとともに出撃、
見事勝利をおさめ生還した。それがきっかけで他の隊員たちとも打ち解けることができ、今に至る。

「ありがとうございます、NO.13さん。それにしてもみなさん様々な経歴をもって422部隊に配属されてるんですね。あと、NO.7さん」
「なんだろうか?」
「あなたが隊長ということは士官…になるんですか?その、もしよければ士官学校時代の話でも聞かせてもらえればと」
「ああ、別にかまわない」

そして語られるクルトの士官学校時代。クルトは入学当初はどちらかというと成績は悪く、時には補修を受けることもあった。
しかし、半年後には教官も舌を巻くほどの成績を修めるのである。そしてさらにすごいのが、試験で98点を取った時それで満足するのではなくむしろ
なぜ後の2点を取れなかったかを至極真剣に考え、さらに猛勉強して満点を取るまで再試験に臨むのである。教官たちはそんなクルトの姿を見て彼のことを
こう評した。『非効率的天才』と。結局、それからクルトは常にトップを走り続け、歴代最高成績でランシール士官学校を卒業後、第2次ヨーロッパ大戦が開戦。
ガリアに侵攻してきた帝国軍を迎え撃つため、一個小隊の指揮を任されることになるが、ここでもクルトはその能力を存分に発揮し初陣で見事勝利をおさめ、
しかもそれがこの戦争におけるガリア軍の初勝利であった。しかし、この勝利はのちにクルトが422部隊に転属となったため、記録に残ることはなかった。

「あの時の努力があったから今の俺があるわけだが、あなたたちのその力は言ってみれば『才能』だろう。魔法の力で自由に大空を翔ることができる。
 正直、俺はあなたたちが羨ましい。俺たちの世界では空を飛ぶ術がないがあなたたちは自らの力で空を飛ぶことができるのだから」

そう語ったクルトから羨望のまなざしを向けられ、赤面するなのはとフェイト。時空管理局の誇るエースオブエースとして尊敬と憧れの対象であるなのは。
執務官として数々の事件を解決へと導き、やはり多くの後進から尊敬と憧れの対象であるフェイト。だが、彼女たちを羨望、つまり羨ましいと思う人間は
少なくとも彼女たちの周囲にはいなかった。そんな中にあってクルトは初めてなのはたちに羨望を向けた人間であり、それがなのはたちを赤面させた理由でもあった。
そんなクルトに耳打ちをする人物がいた。ダイトである。クルトの耳元で何かを囁き、クルトが首を縦に振る。そしてダイトは移動拠点の隊長室へと入ってゆく。
どうやらダイトはクルトに何かを頼み、それをクルトは許可したようだった。先ほどのダイトとのやり取りから訝しげな表所を浮かべてダイトが入っていった
部屋を見上げるフェイト。そんなフェイトにキセルを吹かしながら話しかける者があった。NO.3 グロリア・ダレルである。
彼女は422部隊ではイムカに次ぐ古参兵で、年齢は部隊最年長になる62歳。トレードマークである、
肩から掛けた機関銃用弾薬のベルトリングが示すようにグロリアは機関銃兵を担当。拠点に接近する敵兵をサブマシンガンの2倍の装填数を誇る機関銃で
迎撃し、撃破する役目を担う。実は彼女の本職は娼館の女将であり、裏社会を渡り歩いてきた猛者である。武器の横流し、贈賄、禁制品の密輸、
脅迫、傷害などセドリック顔負けの犯罪歴を持つ。

「お嬢ちゃん、アタシもこれまでいろんな人間を見てきてね、その経験から言わせてもらうが、アンタ、NO.56のような男に会ったことないだろう。
 優しさの中で育てば人は自然とそうなるものだが、NO.56のような男と関わるのもアンタのこれからの人生でもいい経験になると思うがね」
「…アドバイスありがとうございます。えっと…」
「NO. 3だよ。見ての通りのババアだが、まあこれからよろしく頼むよ」
「こちらこそ。あの…その経験を見込んでこれからいろいろご相談に乗っていただきたいのですが」
「アタシでよければいくらでも相談に乗ってやるさ。この部隊でもそんな役回りだからね」

その後も、なのはとフェイトは隊員たちと談笑し、結果、セルジュ・リーベルト、リエラ・マルセリスの2人の名前を新たに教えてもらうことができた。
それから一時間ほど経過した頃、クルトに無線が入る。無線越しに二言三言話したのち、クルトがフェイトに話しかけた。

「フェイトさん、あなたに隊長室に行ってもらいたい。NO.56が話したいことがあるそうだ」
「私に…ですか。わかりました。あの部屋でいいんですよね?」

そしてフェイトは422部隊の移動拠点の隊長室へと入っていく。中に入ると、4人掛けのテーブルの一角にダイトが俯きながら座っていた。
フェイトが入ってくると、顔をあげて立ち上がり、彼女の方へと歩み寄った。

「それで…NO.56さん、話というのは?」
「アンタにこれを受け取ってほしくてね…」

と言ってダイトは手に握っていたものをフェイトに見せる。それは針金で作られた青い薔薇の花だった。そのクオリティにフェイトは思わず息を飲む。

「これはセルヴェリアっていう花でね…俺も実際に見たことはないんだが昔読んだ本に載っててね…その記憶を頼りに針金細工を作ってみたのさ…」
「これを、私のために?どうして…」
「俺もさっきは言い過ぎたよ…アンタみたいな奴が俺たちの世界にもっといればダルクス人に対する風当たりも少しは良くなったのかもな…」

どうやらこれは先刻のやり取りに対するダイトなりのお詫びであるようだった。そんなダイトにフェイトは微笑みながら彼の掌に手を伸ばした。

「ありがたく頂戴します。私もさっきは言い過ぎました。ですが、私も過去の色々な経験からあなたたちダルクス人を放っておけなかったんです」
「そうなのか…もしよかったら…その経験ってヤツを聞かせてくれないか…」
「構いません」

そして語られるフェイトの過去。フェイトはアリシア・テスタロッサという少女のコピーとして生まれ、その母親であるプレシア・テスタロッサに言われるがまま
ジュエルシードと呼ばれる特殊な力を持った宝石を蒐集することになる。その過程でなのはと出会い、幾度か戦いを交える。
そして、のちにプレシア・テスタロッサ(通称P・T)事件と呼ばれるこの一連の騒動も終わりに近づいたある時、ついにフェイトはプレシアから自分の出生に
関する真実を聞かされる。絶望と耐えがたい心の痛みと涙を背負いながらフェイトはなのはという心の支えを得てそれを乗り越える。
そんな過去からフェイトは世界の誰にも不幸になって欲しくないという思いを抱き、そのために時空管理局に入り執務官になったのだ。
そんなフェイトの過去を知ったダイトは、絶句した表情を浮かべていたが、その表情は次第に怒りへと変わっていった。

「ゆるせねぇ…世の中には生きたくても生きられねえヤツがたくさんいるってのに…命を弄んだ挙句不要となればポイ捨てか…死んで当然だな、そんなヤツ…」

そのダイトの言葉にフェイトは複雑な表情を浮かべる。フェイトは今でも亡き母プレシアを大切に思っていて、それを『死んで当然』と言われれば当然
いい気はしないが、ダイトも戦場で生きる兵士として様々な人間の死を目の当たりにしてきたことをフェイトは理解していた。
そんなダイトにフェイトは自らの感情を押し殺し、優しくダイトに語りかけた。

「すべては過去の話です。大切なのは今の私たちがどう生きているか。そうじゃないですか?」
「ああ…そうだな…さて…アンタの辛い過去を俺が聞いて終わりってのもフェアじゃないだろ…俺も俺の経歴を話してやるよ…」

そしてダイトも自らの経歴をフェイトに語る。ダイトは自らの住まうこの国ガリアを、また唯一の家族である妹のダイナを守りたいという思いから
義勇軍に入隊。が、その後ダルクス人であるということだけを理由に422部隊へと転属させられる。このような経緯もあって正規軍はもちろん
422部隊の隊員たちほとんどに心を開いていない。また、長身が目を引くことから昔からダルクス人迫害の対象となりがちで、そのせいですっかり皮肉屋で
厭世的な性格になってしまった。そしてある日、命がけで戦っても何も評価されない日々に疑問を感じたダイトは脱走を企てる。
が、それは失敗に終わりクルトの判断によって脱走は不問とされたが、それと同時にクルトからダイトの唯一の心の希望であった妹、ダイナの死を告げられる。
それに絶望したダイトは、ただ一人でも多くの帝国兵を道連れに心中するような戦い方を続ける。そんなダイトを励ましたのが最年少隊員である
エイミー・アップルだった。エイミーに亡き妹ダイナの姿を重ねたダイトはエイミーに少しずつ心を開いていき、

『あなたが死んだら私が泣く!』

というエイミーの言葉にダイトは自らの名前をエイミーに告げ

『名前も知らないヤツのために泣くなんて、できないだろ』

と語った。そしてダイトは自分にできることを探すために生き、戦い続けることを決意するのだった。

「こうしてこの世界に飛ばされたのも何かの運命なのかもな…だから俺はガリアに帰れるまで…いや帰れなくてもこの世界で俺にできることを見つけてやるよ…」
「NO.56さん、その実現のために私たちも全力でサポートします」
「NO. 56か…ダイト」
「え?」
「俺の名前だよ…ダルクス人には苗字がないからダイトって名前だけだが…」
「名前を教えてくれたということは、私のことを認めてくれたということですか?」
「ああ…そんな小さな時にそんな辛い経験をしても挫けずに今を生きて頑張ってるその姿は十分認めるに値する…」
「はい、ありがとうございます。そしてこれからよろしくお願いしますね、ダイトさん」 
「ああ、こちらこそよろしくな…フェイト」

そして2人は握手を交わすと、移動拠点が止まるのを感じた。ダイトが窓から外を見ると、何やら立派な建物が目に入った。

「ああ、どうやら着いたようですね。あれが私たち機動六課の隊舎です」

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最終更新:2011年05月30日 20:01