―――10
スタースクリームが飛び立つ様子は、法王亡き後臨時に教会の全権を掌握した枢機卿会議
より、教会を占拠したメガトロン達の監視を命じられた教会騎士が目撃しており、直ちに
会議へ報告が送られた。
「判ったわ。それで、法王様は…?」
シャッハから報告を受けたカリムは、メガトロンを食い止める為に地下に留まった法王の
安否について尋ねる。
どう話すべきか思いあぐねたシャッハの様子に、カリムは何が起きたのか理解する。
「そう…」
カリムは寂しげな表情で一言呟いたきり、沈黙して目を閉ざした。
一方、管理局上層部はスタースクリームが何を目的にこちらへ向かっているのかを巡って
議論を繰り広げていた。
「まず最初に考えられるのは元老院だが…」
「…最高法院やここも目標に入っているかもしれん」
「戦略目標としてなら、市外北部のテダンガイル基地も含まれるな、至急基地に連絡して…」
「いや、だったら一番危ないのクラナガン沖に現在集結中の空母機動部隊だろ?」
スタースクリームの目的について意見を戦わせる幕僚たちを尻目に、ゲンヤは何気なく
呟く。
「奴が動き出したのは、ちびダヌキがGDどもへの攻撃を始めた直後だったな…」
ゲンヤの呟きを聞いたなのはは、敵が何を考えているのか突然悟った。
「はやてちゃんが…!」
なのはは目を見開いて呻くように言う。
その言葉を聞いたゲンヤと長官も、それが意味するものを瞬時に理解する。
「そうか、狙いは八神か!」
「高町一佐、急ぎ救援に向かえ!」
長官が鋭い声で命令を下すと、なのはは即座に敬礼して答える。
「了解しました、高町なのは一等空佐、直ちに出撃します!」
議論に熱中していた幕僚たちは、その横をすごい勢いで駆けて行ったなのはの後ろ姿を、
ポカンとした表情で見つめている。
「あ、あの…。長官、敵の意図が判ったので?」
恐る恐る尋ねてきた幕僚に、長官は冷静な口調で命令を下した。
「八神一佐に至急連絡を入れろ。眷属の狙いは一佐の命だ、すぐに後退して高町一佐と
合流するように…とな」
「は、はい! 直ちに」
命令を受けた幕僚は、なのはに続いてNMCCへと急ぎ駆けて行った。
ある程度ドローン部隊を叩き落として息が上がってきたはやては、自分のリンカーコアの
状態を改めてチェックする。
「よし、まだまだ行ける! リイン、次の目標は?」
“もうすぐ出ますです”
ユニゾン中のリインフォースが攻撃目標の規模と座標を伝えようとした時、はやての右隣り
に空間モニターが表示される。
「八神一佐、緊急事態発生です」
モニター内の士官が、緊張した面持ちではやてとリインフォースに状況の説明を始める。
「魔神の眷属が一体、聖王教会からクラナガンへ向けて飛び立ちました。狙いは一佐と推測
されます。
現在、高町一佐が救援に向かっていますが、相手の移動速度が早過ぎて間に合うか分かり
ません、至急退避を願います」
「あともう少しでGD達を全部落とせるんや、ちょっと待って貰えへんか?」
はやてからの異議に対して、士官は後退を促す。
「その余裕はありません、直ちに退却して下さい」
はやてと士官の問答が続く中、護衛部隊の指揮官を務める魔導師が傍らにいる部下達へ
目配せする。
その中から鱗肌に長い触角と、大きい目に長い複数の口吻を持った魔導師が出てきてはやて
に言葉をかけた。
「失礼致します」
「ちょっ…!」
抗議の声を上げる暇もなく、はやては護衛の魔導師にお姫様だっこで抱え上げられる。
はやての身柄を確保すると、魔導師部隊は最大限の速度で後方へ退却する。
「どこへ向かいます?」
一人が指揮官に尋ねると、指揮官は少し考えてから言う。
「まずは一刻も早く高町一佐と合流し、ここから一番近いテダンガイル基地へ向かおう」
「ウーオッ!」
魔導師達は、一刻も早くなのはと合流しようとより加速をかける。
一方、魔導師に抱え上げられたままのはやては、その腕から離れようとジタバタ暴れていた。
「ちょっと! ちゃんと自分で飛ぶさかい、ええ加減に離してや!」
そんなはやての抗議にお構いなく、魔導師部隊は自分たちの限界速度まで、いやそれ以上
を目指さんとばかりに更に加速する。
周囲の警戒に当たっていた魔導師の一人が、全員に警告する。
「八時の方向より未確認物体(アンノウン)が三つ接近!」
一瞬魔導師たちに緊張が走るが、モニターに味方である事を示す緑の表示とはやて直属の
守護騎士“ヴォルケンリッター”の面々の名前が出るのを見ると、ほっと安堵のため息を漏らす。
「主の護衛、感謝する」
シグナムが魔導師たちの労をねぎらう一方、紅いドレスとウサギのぬいぐるみの付いた帽子が
少女趣味なバリアジャケットに“グラーフアイゼン”と呼ばれるハンマー型デバイスを持った
ヴィータが、険しい表情ではやてを抱える魔導師を睨みながら言う。
「おい、はやてに気安く触るんじゃねぇよ!」
その様子に、青のシンプルなバリアジャケットを着込み、がっしりした体格と顔立ちと獣耳
の組み合わせがアンバランスな印象を与える“盾の守護獣ザフィーラ”が、執り成すように
魔導師へ言葉をかける。
「ここからは私が引き受けよう」
ヴィータの剣幕に少々怯みがちだった魔導師は、頭を下げてはやてをザフィーラに託す。
「お願いします!」
「ザ、ザフィーラ! だから私は大丈夫やって!」
今度はザフィーラにお姫様だっこされたはやては、顔を赤くしながら抗議するも、またしても
取り合ってもらえない。
突然、その場に居る全員の空間モニターに、けたたましいアラーム音と共に緊急警報の表示が
現れる。
「眷属が成層圏より急速接近中!」
警報を受けた魔導師たちは、どこから接近して来るのか、眼を皿のようにして周囲を見回す。
「見えるか?」
「いや、どこだ!?」
接近して来る機影に最初に気付いたのは、ヴォルケンリッターの三人だった。
「上だ!」
彼女達の叫びに魔導師たちが頭上を仰ぐと、X字に翼を広げた戦闘機がいつの間にかそこに
在った。
それは彼等の眼前でたちまち変形を始め、あっという間に人間の形をした金属の化け物へと
姿を変える。
「いよう、人間ども!」
金属の怪物は、魔導師達の鼓膜を破らんばかりの大音声で、高らかに宣言する。
「冥土の土産に教えてやるぜ! デストロン軍団のニューリーダー、航空参謀スタースクリーム
たぁこの俺様の事よぉ!」
「ミッド語…!」
自分達と同じ言葉を喋った事に、はやては驚愕の表情を浮かべる。
スタースクリームはまず、足を振り下ろして護衛の魔導師一人を叩き潰し、次いで二人目に
機銃弾を雨あられと浴びせて撃ち落とす。
「散開しろ! 一箇所に固まってたら全滅する!」
ヴィータの言葉を待つまでもなく、魔導師達は一斉に散らばり始める。
その間にもう一人を右腕で殴り倒したスタースクリームは、次の獲物をヴィータに定める。
背後に付いた魔導師がディバインシューターを撃ち込むも、これは苦もなく叩き落とされ、逆に
ミサイルを喰らって粉々に吹き飛ばされる。
「このっ…! アイゼン!」
ヴィータは毒づくと、自らのハンマー型デバイス“グラーフアイゼン”に呼び掛ける。
“了解!”
グラーフアイゼンはヴィータの呼び掛けに応えてカートリッジを一個装填すると、“ラケーテン
フォルム”と呼ばれる、片側にスパイク、もう片方に噴射口付きのハンマーの形に変形する。
ヴィータが振りかぶると足元にベルカ式魔方陣が展開され、噴射口から魔力の炎が吹き出す。
「打ち砕け!!」
ヴィータは超高速で“ラテーケンハンマー”を振り抜く。
だが、スタースクリームはそれを難無くかわすと、逆に右腕からモーニングスターを展開して
ヴィータを殴り倒す。
巨大な質量と桁違いの固さを誇る金属の拳をまともに受けたヴィータは、たまらず錐揉み状態で
墜落する。
「ヴィータ!」
はやては声を上げるが、ザフィーラがスタースクリームの攻撃を回避しようとジグザグ飛行を
行っているので、しがみつくだけで精一杯の状況だった。
「ここは私が何とかする、主の事は頼むぞ!」
「心得た!」
シグナムの言葉を受け、ザフィーラは全速力で現場を離れる。
「シグナムあかん! あの眷属は―――」
静止しようとするはやての言葉は途中で遮られた。
スタースクリームが立て続けに機銃弾を撃ち込んでくると、シグナムはシールドを斜めに展開して
それを弾き逸らす。
スタースクリームはそのまま機銃を撃ち込み続けながら、戦闘機に変形して突っ込んで来る。
シグナムはギリギリまでタイミングを待ち、衝突する直前に横に跳んで回避する。
跳びながらシグナムはレヴァンティンを“シュランゲフォルム”という蛇腹剣様に変形させ、
スタースクリームへとその剣先を伸ばしていく。
スタースクリームは人間では到底不可能な急制動で旋回してその切っ先を避けるが、シグナムも
レヴァンティンを巧みに動かして懸命に追いかける。
「ちいっ! しつこい剣だな!!」
スタースクリームは毒づくと、人型に変形して追って来るレヴァンティンを右手で掴む。
「!?」
予想だにしなかった行動にシグナムが驚きの表情を浮かべると、スタースクリームは厭味な笑い
で返す。
そしてレヴァンティンを掴んだまま自分の身体をグルグル急激に回転させ、シグナムを強烈な遠心力
で振り回す。
“おい…シグナム! …大丈夫か!?”
身体にかかるGに必死に耐えながら呼び掛けるアギトに、シグナムも耐えながら答える。
「…私の方は大丈夫だ…それよりアギト…奴に体当たりをかけるぞ…!」
指示を受けたアギトは、ニヤリと笑って言う。
“OK! 炎熱加速!”
その掛け声と同時にシグナムの背に炎の翼が現れる。
「レヴァンティン、モードリリース!」
“了解!”
シグナムの命を受けたレヴァンティンは、蛇腹を収納して急速に剣の形の戻っていく。
スタースクリームとの距離を一気に詰めたシグナムは、そのままスタースクリームへ体当たりをかける。
「うおっ…!」
アギトの炎熱加速による身体強化と攻撃魔法の援護を受けたシグナムの体当たり攻撃は予想外に強力で、
弾き飛ばされたスタースクリームも思わず驚きの声を上げた。
その隙にシグナムは体勢を立て直し、全速力で後方へ飛ぶ。
それに負けじとスタースクリームも戦闘機に変形して後を追い掛けて来る。
背後からスタースクリームが急速に追い付いて来るのを確認すると、シグナムはアギトに声をかける。
“奴が追って来る。アギト、精密誘導の方を頼むぞ”
“OK!”
シグナムはまっすぐに飛びながらスタースクリームの方を振り向くと、レヴァンティンの鍔に鞘を合わせる。
すると、剣と鞘の両方からカートリッジが排挾されて“ボーゲンフォルム”と呼ばれる弓の形へ変形する。
次いで弦を引き絞る形に構えるとレヴァンティンの刀身の一部が矢の形になり、魔力光が矢を包み込んだ。
「駆けよ、隼!」
掛け声に気合いを込めて、シグナムは切り札“シュツルムファルケン”を放つ。
それを見たスタースクリームが機首を上に向けて急上昇すると、シュツルムファルケンもその後を追って上昇する。
スタースクリームは急上昇を続けながら、突然農薬を空中散布するかの様に大量のミサイルを全方向へ発射した。
ばらまかれたミサイルは魔力の矢に反応し、たちまち明かりに群がる虫のように殺到して一斉に炸裂する。
至近距離での爆発にシュツムファルケンも反応して、スタースクリームの遥か手前で自爆してしまう。
「なにっ!?」
切り札がミサイルによる弾幕で防がれた事にシグナムは驚きの声を上げる、それが彼女にとって
致命的な隙を作る事となった。
爆炎の中から飛び出して来たスタースクリームは、右腕を伸ばしてシグナムをガッチリと掴むと、
そのまま回転しながらクラナガン市街へ急降下する。
シグナムは抜け出そうと身体を動かしてみるが、金属の手はしっかりと閉じられており、身動きもままならない。
134 名前:魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS[sage] 投稿日:2011/05/10(火) 19:45:42.23
ID:/EKkpuIZ [8/12]
EW-TTの陰に隠れて小銃型デバイスのカートリッジ交換をしていた、上半身は白い牙が幾つも
生えた口に白い豚、下半身は電動車椅子という姿をした魔導師が何気なく空を見上げると、金属の
化け物が独楽のように回転しながら頭上目掛けて落ちて来るのを見た。
仰天した魔導師は、横で短機関銃型デバイスを構えて攻撃魔法をドローンへ撃ち込んでいる、身長
2メートル弱の浅黒い肌をした狼の姿の同僚の肩を叩いて叫ぶ。
「おい! 何か上から落ちて来るぞ!」
それを聞いた部隊の数人かが空を仰ぐ。
魔導師を片手に頭上目掛けて急降下するスタースクリームの姿に、陸士部隊はパニックに陥る。
「退避! 退避だ!」
部隊長の指示を待つまでもなく、魔導師たちはクモの子を散らすように逃げ出した。
スタースクリームはEW-TTの頭上スレスレで水平飛行へ移り、進路前方に立っていたドロップキックを左腕で殴り倒す。
「どけどけぇ! ニューリーダー様のお通りだぞ!」
周囲に破壊を混乱を撒き散らしながら、スタースクリームは大通りを超低空で疾走する。
音速以上の速度で飛んでいる為、進路上にある総ての建物の窓ガラスがソニックブームで粉々に砕け散り、
それを目の当たりにした人々が逃げ惑い、走行中の車輌がパニックで次々と衝突を引き起こす。
このままでは二人とも共倒れになる、そう判断したシグナムは、アギトとのユニゾンを強制解除する。
「シグナム!」
射出されたアギトの姿は、たちまちのうちに見えなくなる。
スタースクリームはその事に気付かぬまま―――気付いたとしても意にも介さなかったろうが―――
鼻歌混じりにシグナムへ声をかける。
「おい、人間! 俺様はこの街に来たばかりで全然地理に疎いんだ。
一つ道案内でも―――うおっ!」
前方への注意が疎かになっていたスタースクリームは、“危険物輸送中。可燃、注意”と言う警告文が
書かれた巨大なタンクを取り付けたコンボイトラックに頭から激突した。
スタースクリームの身体は大きく跳ね上がり、トラックの後ろにあったワゴン車や普通乗用車の上へ
仰向けに倒れ込んでぺしゃんこにする。
一方、弾みで放り出されたシグナムはフロントグラスを突き破り、トラックの運転席に叩き付けられる。
次の瞬間、破壊されたトラックから漏れる燃料と火花を散らす電気系統が接触してトラックが一瞬にして炎に包まれる。
更にそれは破損したタンクから流出した可燃物にも引火し、車全体が轟音と共に盛大に炎と破片を吹き上げる。
起き上がって周囲に誰も居ないか確認するかのようにキョロキョロ見回した後、スタースクリームは場を
取り繕うかのように派手に炎上するトラックを睨みながら、わざとらしい大きな声で笑いながら言った。
「へ…へへっ。流石のエース級魔導師もこれで永遠にGOOD NIGHT! HAHAHA!」
「シグナム!」
シグナムとの意識の接続が途切れた瞬間、はやては大声で叫んだ。
はやての様子から、囮となって敵の注意を引き付けていたシグナムが倒された事を悟った指揮官は、
傍らを飛ぶはやてを抱き上げていた魔導師に尋ねる。
「高町一佐はまだか?」
指揮官の質問に答えようとした魔導師が、突然爆炎に呑み込まれて墜落する。
全員が振り返ると、スタースクリームが厭味たっぷりな笑い浮かべながら、急速に距離を詰めて来る。
「全員八神一佐の前に回れ! 可能な限り眷属の進行を食い止めるんだ!」
「ウーオッ!」
そう言ってはやての前―――すなわちスタースクリームの射線上―――に立った指揮官の後に、護衛の
魔導師たちも続く。
「駄目や! 逃げ…」
はやてが呼び掛けようとした時、スタースクリームはミサイルと機銃とモーニングスターでもってして、
魔導師達を蠅の如く次々と叩き落としていく。
はやては怒りに燃える眼でスタースクリームを睨み付けた後、自分を抱えながらジグザグ飛行を続けるザフィーラに言う。
「真っすぐに飛んでもらえる?」
「主!?」
突然のはやてによる指示に、ザフィーラは戸惑ったように目を向ける。
「敵の攻撃目標は私なんやろ? なら、望み通りにしてやろうやないか。ただし、こちらの砲撃魔法を
零距離で叩き込んで、最悪相討ちに持ち込んでやるつもりやけどな」
剣歯虎のような笑みを浮かべるはやてに、ザフィーラは戦慄を感じた。
ジグザグ回避をやめて一直線に増速を始めたはやてとザフィーラを見て、スタースクリームは嘲りの声を彼らに掛ける。
「速さでこの俺様に敵うわけねぇって既に分かってるだろが!」
その言葉通り、スタースクリームは戦闘機に変形すると、二人との距離を急速に詰めて来る。
「そうや、こっちへ来ぃ…。ええ子やからこっちへ来ぃ…!」
はやては、真っすぐ突っ込んで来るスタースクリームを凝視しながら小さく呟くと、シュベルトクロイツの
柄をスタースクリームに向け、小さな声で永唱を始める。
「彼方より来たれ、宿り木の枝。
銀月の槍となりて、撃ち抜け…!」
更に距離が詰まってきた時、はやては溜めた魔力を一気に解放する。
「ミストルティン!」
その掛け声と共に五本の魔力の矢が、はやてのデバイスから放たれる。
それと同時にスタースクリームも急停止して同数のミサイルを放つ。
ミサイルはミストルティンに命中すると石化して墜落して行く。
「え…?」
ミストルティンが防がれた事より、まるでこちらの攻撃を予測したかのような相手の素早い対応に、
はやては呆気に取られたような声を上げる。
「へっ、馬鹿どもが! 先程の魔導師との戦闘でそちらの攻撃パターンはほぼお見通しなんだよ!」
スタースクリームは嘲笑うように言う。
「させん!」
ザフィーラは気合の声と共に自分たちの手前に厚い氷の壁を現出させる。
だが、スタースクリームにとってはベニヤの壁に等しく、体当たりであっさりと破られてしまう。
「その首もらったぁ!!」
雄叫びと共に、スタースクリームははやてとザフィーラに銃口を向ける。
“殺られる!”
迫り来る死を目前にしたはやては、本能的に目を閉じて身を固くする。
その次の瞬間、真上からミッド式防御魔方陣を展開させた人影が、二人とスタースクリームの間に
割って入って来た。
スタースクリームの撃ち出す機銃弾は、ことごとくその魔方陣に弾かれる。
「なにっ!?」
スタースクリームは驚きの声を上げる。
目の前の人影―――小学校時代の制服を基にした白いロングドレスのバリアジャケットにポニーテール
の髪型をした高町なのは―――は、本局ビルへ簡潔に報告する。
「こちら“イーグルマザー”只今到着致しました」
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