『マクロスなのは』第24話 後半



(*)

10分後

「え~!? ダメだよシャーリー、人の過去勝手にばらしちゃあ!」

六課に帰還してすぐ伝えられた事実に思わずその言葉が口をついて出た。

なんでもティアナ達に教導の意味を教えるために自分の撃墜の話をしてしまったのだと言う。

「ダメだぜ、口の軽い女はよぅ」

バルキリーから降りて何事かと見に来ていたアルトが愚痴る。普段の彼のセリフとは思えなかったが、なぜだが違和感はなかった。

「あの・・・・・・その・・・・・・見てられなくて・・・」

シャーリーは頭を下げるが事態はそんな簡単ではない。自分の撃墜に関わる情報は管理局内では未だに『TOP SECERT(最高機密)』であり、違反すれば問答無用で軍法会議になりかねない。
それも機密に関わることなので完全非公開で行われ、どうなるか全くわからない。
だがなのはは、この中に告発するような者はいない事を知っていた。
なぜならこれが機密である事を知っているのはフェイトとヴィータ、そして自分だけだったからだ。
アルトやさくらも─────いや、教導の卒業者には〝教訓〟として話していたし、完全無欠に無関係な天城君は

「(ドラマの)続きはどうなった!」

と叫んで既に宿舎に飛び込んでいた。

(もう・・・・・・)

ため息をつくと、頭を下げて両手を合わす困りものの友人に再び目をやった。

(仕方ない。言うのが少し早くなっちゃっただけかな)

思いなおした彼女はシャーリーからティアナの居場所を聞き出すと、義務付けられている報告を済ましてそこに向かった。

(*)

機動六課敷地内 桟橋

ティアナはこの場所が好きだった。
夜風に吹かれながら明るい月と対称的な暗い海とを眺め、この真夏に涼しげな波音を聞けるこの場所が。
普段は訓練が終了して2,3分ほどゆっくりしていく場所だったが、ここへ来てもう20分。まるで不思議な魔法がかかったようにその場を動けずにいた。
早く強くなりたいと思っていた。だけど、間違ってるって叱られて、隣を走る相棒にも迷惑かけて悲しい思いをさせた。
これらの出来事は彼女を深く落ち込ませた。

(それに、私は結局・・・・・・)

(*)

「ティア・・・・・・」

彼女から『独りにして』と言われていたスバルだが、遠く離れた茂みに隠れてエリオ、キャロと共に彼女を見守っていた。
そこに数人の闖入者が現れた。

「アルト先輩?」

スバルの疑問形の呼び掛けに、彼は無声音とジェスチャーで

「よ!」

と挨拶する。その後ろでもさくら、そしてシャーリーが

「こんばんは」

と会釈した。
どうしたのか聞こうとしたスバルだが、ティアナの声が聞こえてきたため中断された。

『なのは・・・・・・さん?』

振り向いたティアナの視線の先を追うと、軽く手を後に組んだなのはの後ろ姿があった。

(*)

なのははそのまま自らの隣に座り込み、涼しむように、明るい月が暗い海に沈んでいく幻想的な風景を眺める。
そんな沈黙が10分ほど・・・いや20秒ぐらいの事だったかもしれない。ともかく、その沈黙に堪えられなくなって口を開く。

「・・・あの、シャーリーさんやシグナム副隊長にいろいろ聞きました。」

「〝なのはさん〟の失敗の記録?」

「え・・・・・・」

てっきり「なんの話?」と聞かれると思っていたティアナは少し狼狽する。

「あ、いえ、そうじゃなくて─────」

ティアナは自らの思考力が上手く回っていない事を改めて実感した。なのは達が帰投してからそれなりに時間が経過しているのだから、シャーリーでもシグナムでも聞く機会があったはずだ。
そんな簡単なことすら失念していたことにティアナはすこし可笑しくなった。

「無茶すると危ないんだよって話だよね」

なのはの確認に、ティアナの頭ではさっきの話がフラッシュバックする。
普通の、魔法すら知らなかった9歳の女の子が、魔法をその手にしてすぐに死闘を繰り返した。
少女はその後も自分の信念と守りたいもののために「早く強くなろう」として命懸けの無茶をし続け、遂には撃墜され、瀕死の重傷を負ったという話。
その少女が目の前にいるなのはであると聞かされたティアナの解答は、1つしかなかった。

「すみませんでした・・・・・・」

なのははそんなティアナに頷き1つを返した。

(*)

「じゃあわかってくれたところで聞くけど、ティアナは自分の射撃魔法をどうして信じないの?」

「それは・・・・・・兄を最後の最後で守りきれなかった魔法だから・・・・・・」

ティアナと彼女の兄ディーダ・ランスターの射撃魔法は少し特殊で、通常の半分以下の大きさの魔力球(魔力弾)を使用する。これは誰も使えないから特殊というわけではなく、練る魔力量が少ないため6~8歳の子供が普通の魔力球の練習のために使う。
つまり、リンカーコアがあるものなら誰でもできるという事だ。
しかしほとんどの場合で真っ直ぐにしか飛ばず、誘導性能や機動力など汎用性に優れた通常の魔力球には到底及ばないため使われないのだ。
しかしディーダはこれを究めることによってそれを練習用から実戦レベルにまで引き上げた。
練る魔力量が少ないということはそれだけ早く生成でき、小さいということは空気による減殺が少なくなり、より遠距離に届く。
また、真っ直ぐにしか飛ばないというのは最高クラスの信頼性の象徴であり、なのはの砲撃ですら反動で多少のブレが出る。つまり戦場の原則である『敵より早く、敵より遠くから、敵より正確に狙い撃つことができる』そんな技だった。
事実彼の技術は陸士部隊の目に止まり、装備改編前に負担の大きい魔力砲撃に代わる主力攻撃方法となっていた。

閑話休題

「そっか・・・・・・でも模擬戦でさ、自分で受けてみて気づかなかった?」

なのはの問いかけの意味が分からず首を捻る。

「ティアナの射撃魔法って、ちゃんと使えばあんなに早く撃てて、当たると危な
いんだよ」

「あ・・・・・・」

「私は今まで一度もティアナとは撃ち合ったことはないでしょ?だって正面から早打ち勝負したら絶対ティアナの方が早くて正確に当たるから。だから、そんな一番いいところをないがしろにしてほしくなかったんだ。・・・・・・まぁ、でもティアナの考えたこと、間違ってはいないんだよね」

なのはは言うと、隣に置かれていたティアナのデバイス『クロスミラージュ』を手に取る。

「システムリミッター、テストモードリリース。高町なのは一等空尉。承認コード、NCC-1701A」

『OK,release time 60 seconds.(承認。解除時間60秒。)』

解除を見届けたなのははデバイスを起動状態にし、ティアナに渡す。

「命令してみて。〝モード2〟って」

ティアナはそれを受け取ると、おそるおそる指示を出す。

「モード・・・・・・2」

直後銃全体がオレンジ色に瞬いたと思うと

『Set up.dagger mode.』

という復唱と共に変形していく。
フロント・サイト(照星)の付いたマガジンを兼ねるグリップと、ピストルグリップ辺りで折れ・・・いや、折れていた物を引き起こしたというほうが正しい。
ともかく、引き起こされて真っ直ぐになった銃身は、ピストルグリップの下から魔力刃で覆うようにして銃口までつながる。
そして最後に銃口から、自らが作戦時無理やり作った魔力刃より大きなそれが、まるで短剣のように伸びた。

「これ・・・・・・」

自らの相棒の変貌に目を白黒させるティアナになのはは説明する。

「ティアナは執務官志望だもんね。ここを出て、執務官を目指すようになったらどうしても個人戦が多くなるだろうし、将来を考えて用意はしてたんだ」

ティアナは規定の60秒が経ったのか元に戻ったクロスミラージュを握りながら涙する。そんな彼女になのはは続けた。

「クロス(近距離)はもう少ししたら教えようと思ってた。でも出撃は今すぐにでもあるかも知れないでしょう?だからもう使いこなせてる武器と魔法をもっと確実なものにしてあげたかった。だから1つの技術を身につける事が目的のさくらちゃんとは違ってゆっくりやってたんだけど・・・・・・ゆっくりって地味だから、あんまり成果が出てないように感じて、苦しかったんだよね。・・・ごめんね。」

「ごめん・・・・・・なさい・・・・・・こんなに私のために準備してくれてたのに・・・・・・私、なのはさんの期待に応えられなかったみたいで・・・・・・」

「・・・・・・え?どうしてその結論!?」

「だって2発目の砲撃、なのはさん、結構本気で私を落としにかかったじゃないですか!」

「ああ、それは・・・・・・」

なのはにとって触れたくなかった、できれば触れずに行きたかったこの事柄。しかし残念なことにティアナはその事実に気付いていたのだ。
もし彼女が事前に彼と接触せずにこの場面に遭遇してしまっていたら、バレまいと思って彼にしたときとまったく同じ嘘をついて煙に巻こうとしただろう。

(なんてバカだったんだろ・・・・・・私・・・・・・)

この分では自分の教える優秀な生徒達の前では、彼にしたような嘘を見破るなど児戯にも等しきものだったようだ。
だからなのははそれを教えてくれ、さらには受け止めてくれた彼に改めて感謝した。

「ごめん!実は・・・・・・あれは私のせいなの!」

なのははすべてを話した。
彼女自身から湧きあがった黒い考え、そしてそれに至った理由を。
ティアナはこの告知を少し驚いた様子だったが静かに聞き入り、最後にはどこか嬉しそうな表情へと変わっていた。
こうなると納得出来ないのはなのはの方だ。自分は最悪の場合ティアナ自身の魔導士生命に終止符すら打ちかねない行為を教官の身の上で行ったのだ。批難される事こそあっても、その様な表情を浮かべられる場面では無いはずだっだ。

「落ち着いてるんだね」

「はい。だって、私の前にそれを怒ってくれた人がいるみたいでしたから」

「それってーーーーー!?」

「私、宿舎の屋上から見たんです。なのはさんとアルト先輩が言い争ってるのを。・・・・・・先輩すごいですよね、あんなに離れてたのにちょくちょく何を言ってるのか聞こえるって」

「・・・・・・」

「その時は断片的過ぎて先輩がどうしてあんなに怒ってたのかよくわからなかったんですけど、やっとわかりました。たぶんですけど、アルト先輩に嘘をついたんですよね?」

ティアナにどこまで聞かれていたかわからない以上、嘘を重ねても仕方ない。なのはは正直に頷く。

「でも、今話してくれた話は本当の方だった。だからちょっとびっくりしましたけど、なのはさんがちゃんと私と向き合ってくれてるってわかったらうれしくって」

その顔にウソはない。その事実になのはは安堵したが、彼女のセリフはまだ終わっていなかった。

「・・・・・・でも、やっぱりちょっと強引だと思います。不発だったからよかったですが、もし撃ってたら私、ここにいられませんでした」

こちらの心情は察してくれたが、さすがにティアナもあの砲撃を無条件に看過することはできなかったようだ。
そこでなのははひそかに温めていたできれば切りたくなかった打開策のカードを使うことにした。

「ごめんね・・・・・・・それで考えたんだけど、ティアナ言ってたよね?さくらちゃんみたいな教導をしてほしいって。もしティアナが望むなら明日からでもできるけど、どうする?でも私は・・・・・・あー、もちろんティアナ達全員をどこに出しても恥ずかしくないエース級のAランク魔導士にしてみせるよ!だけど私ね、あなた達には―――――!」

「いいですよ、このままの教導で」

ティアナは言うと、座り込んでいたポートから立ちあがって清々しそうな表情で大きく伸びをする。

「本当言うと私、なのはさんに煙たがられてる、手を抜かれてるって思ってたんです。でも、全然そんなことなくて・・・・・・。だからもう、そのことはいいんです。それに今の様子だと、この教導には普通とは違う秘密があるみたいですし」

「にははは・・・・・・」

危うく言いそうになったが、立場上はにかみ笑いで応える。しかし内心切り札のカードの無力化に焦っていた。

「(これ以上私がティアナにしてあげられることなんて・・・・・・)」

「そこで私から一つだけお願い、聞いてもらっていいですか?」

「なに・・・・・・かな?」

脳裏を最悪の可能性が過る。
小さきは自らの職権の乱用、果ては犯罪まで。ティアナがそんなこと願うわけないと思ってはいても、彼女の魔導士生命を奪うかもしれなかった対価としてはそれも止むをえぬとも思えてしまっていた。
だからティアナの次の言葉を聞いた時、なのはは心底安心したという。

「もう一度、模擬戦を受けさせてください!」

なのはは自らの生徒の純真さと安心感に万感の思いをもって頷き、それに応えた。地平線の先に見えていた月は軌道の影響で沈まず、新たに登ったもう1つの月とともにクラナガン湾を照らしていた。

(*)

スバルには2人の会話は聞こえなかったが、どうやら和解できたようなのでそっと胸を撫で下ろした。
そんな彼女の肩が〝とん〟と叩かれる。振り返るとさくらが〝昨日と同じジェスチャー〟をしていた。
その意味を即座に理解したスバルは頷くと、ここにいたギャラリーと共にその場から撤退した。

(*)

なのは達が戻ってきたのは10分後だ。2人はロビーに入るなり驚く。

「よぅ、遅かったじゃねぇか」

婉曲語法で2人を迎えたヴィータの手には数枚のトランプが握られている。
また彼女だけでなく、シグナムやシャーリー、アルト、さくらにフォワードの3人と総勢8人が1つの机を囲んで同じようにトランプを握っていた。

「・・・みんなどうしたの?」

しかしなのはの問いはアルトの宣言でかき消された。

「いざ、革命!」

放られる1枚のジョーカーに3枚のファイブ。しかし上には上・・・・・・いや、下には下がいた。勝ち誇った顔をするアルトの前に4枚のスリーが放られたのだ。
驚愕するアルトに放った主が厳かに告げる。

「勝ちを急ぎすぎたな大富豪よ」

シグナムは微笑を浮かべると8切りして4を投げると1抜けした。
盛者必衰。アルトは一気に都を追われることになった。
悔しげに項垂れるアルトと大富豪に興じる人々。なのはとティアナは石像を続けていると、背後の入り口の扉が開いた。

「お、やっとるやっとる~」

現れたのは何か箱を持ったはやてとフェイトだった。箱には〝ビンゴ抽選機〟とある。

「いったい何事なの?」

なのはのその問いに、はやては笑顔で答える。

「さくらちゃん発案のビンゴ大会や。・・・・・・おーい!みんなこっから1枚とってな」

はやての呼び掛けに大富豪に興じていた人々がわらわら集まって来て、ビンゴカードの束から1枚ずつ引き抜いていく。

「さぁ、ティアナさんもなのはさんもどうぞ」

空気から取り残されていた2人もさくらに招き入れられ、和やかな、そして楽しげな人々の輪の中に入っていった。

(*)

そのビンゴ大会はひどく白熱した。賞品として先着3名にゲームに参加した者なら一度だけ言うことを聞かせられる〝王様カード〟なるはやて特製の手作りテレカが手に入るためであろう。
途中ロビーに来た天城が司会進行を申し出たり、ヴィータがビンゴ抽選機(取っ手を回して番号のついたボールを出す機械)を盛大回して誤ってぶちまけるハプニングがあったりと波乱を巻き起こした。
しかし誰の顔からも笑顔は片時も消えず、階級などない学校のレクレーションのように和気あいあいと進行した。
そしていろいろあって何度か振り出しに戻り、3枚目になってしまったビンゴカード。おかげでまだ勝利条件であるトリプルビンゴに到達した者はいなかった。

「─────54番!さぁ、誰かいませんかぁ!」

天城がハイテンションで転がり出た球の番号を読み上げる。それに1人の少女がニヤリと微笑んだ。

「ふ、みんな済まねぇな。トリプルビンゴだぜぇ!」

ヴィータが雄叫びと共にカードを持った右手を突き上げた。
そして天城から王様カードを受け取ると、〝ビシッ〟とアルトを指差した。
アルトは自らの一列も埋まっていないカードを見て覚悟を決める。
そしてヴィータは王様カードをどこぞの長者番組の紋所のように彼にかざすと、高らかに宣言した。

「早乙女アルト!私と明日勝負しろ!」

極めてヴィータらしい命令にアルトはため息をつく。今や彼の方が上官なので拒否権がないことはなかったが、余程と言える断る理由が思いつかなかったようだ。

「仰せのままに・・・・・・」

体の演技こそ王妃に従えるナイトのようであったが、不服そうに答えたという。

(*)

その後また振り出しに戻るなど激闘が20分ほど続いてようやく残りの2枚の行き先が決定した。
それはどういう因果かティアナとアルトであったが、2人ともすぐには権利を行使せず、夜も遅かったのでそのまま解散する事になった。

(*)

次の日

スターズ分隊の再模擬戦は、引き分けに終わったライトニング分隊の後に行われた。
2人の機動は訓練通りだが、クロスシフトAからBや、BからAの変更の流れは滑らかで、なのはをずいぶん手こずらせたという。

そして─────

(*)

スバルの連続攻撃とティアナの間断ない誘導弾の攻撃を受け、白いワルキューレは遂に地上に引きずり下ろされた。
しかし地に足を着いた彼女の砲撃力はそれでも強力であり、高度の優位に立ったスバルでも近づけなかった。
だがそんな彼女の前に虚空からティアナが現れた。
この間合い、シールド展開は間に合わない。まさに一騎打ちの早撃ちの距離だ。
どうやら早撃ちなら勝てるという助言に忠実に従ったらしい。

だが─────

(甘い!)

なのはは魔法の起動の邪魔になるレイジングハートを右手に持ちかえると、利き手である左手の人差し指をティアナに向ける。

「クロスファイヤー、シュート!」

放たれる小型魔力弾。確かにティアナの射撃魔法は優秀だが、その魔法を模倣できないわけではない。
なのはとの勝負においては単純な魔法の起動時間の勝負ではないのだ。

(惜しかったけど残念だったね)

なのはは勝利を確信した。しかしここは地上。つまりティアナのフィールドだった。
魔力弾はティアナを貫通して、そのまま彼女ごと消えた。

「フェイク(幻影)!?」

続いてレイジングハートが右から飛翔してきた魔力弾によって弾かれ、地面に転がった。

「え!?」

そちらを見ると、砲撃用魔法陣を展開したティアナがいた。


そう、何もかも罠だったのだ。


わざと目の前に出現して助言に従った一騎打ちが狙いであるようにアピールして見せたのも、なのはが砲撃を行わずいつもの癖でレイジングハートを持ちかえる(デバイスにプログラムされていない魔法を本体経由で使おうとすると、無駄に処理しようとして発動が少し遅れるため)のも、全てティアナの狙い通りだったのだ。
あたかも助言に従った演技をすることによって、本来レイジングハートによって飛行魔法などの面において優越するがゆえに、選択肢が多いはずのなのはの選択肢を完全に奪い取る老獪な罠。
なのはは急いでレイジングハートに駆け寄るが間に合わない!
結果として右手のビルの2階から放たれたオレンジ色した魔力砲撃が、無防備の彼女を直撃した。

(*)

「やったぁ!」

ティアナがビルから出てくると、彼女を迎えたスバルにハイタッチした。
なのはは晴れていく煙の中から姿を現すと、そんな2人に笑いかけた。

「うん。文句のつけようがないくらいいい戦いぶりだったよ。それに一撃どころか撃墜されちゃうとはね」

教官の面目丸つぶれだよ~と彼女は嬉しそうに苦笑すると、遠くで観戦するライトニングの2人に集合の合図を放った。

(*)

「みんなお疲れ様。今日は午前までで訓練は終わりだけど、定期模擬戦のレポートを書いて今日の18時までに提出してね」

「「はい!」」

4人は今回引き分けか勝ちだったので気分は良さそうだ。いつもの訓練終了時と違って覇気があった。

「あと、解散前に私から渡すものがあります」

『何だろう?』という顔をする4人の前に、昨日渡すはずだった4冊の冊子を取り出した。

「今日は訓練開始から6カ月の節目の月だからね。これまでやってきた訓練の要点とかアドバイスとかをまとめてあります。暇な時でいいから目を通してね」

「「はーい!」」

4人はそれを受け取ると、互いに目配せしながら指示もないのに整列した。

「え?・・・・・・みんなどうしたの?」

ティアナが代表するように応える。

「実は私達、昨日話し合って、なのはさんに伝えたいと思ってた事があるんです」

なのはからすると全く意表をついたものであり、何を言われるか少し心配したが、先を促す。

すると4人は声を揃えて合唱した。

「「半年間ありがとうございました。これからもよろしくお願いします!」」

それはまるで小学生のようなお礼の言葉だったが、心がこもっているためノー・プロブレム。

なのはは最上級の笑顔で

「こちらこそ」

と応えた。

この時、なのはは照れ笑いする自らの教え子達を見て誓ったという。

『この子たちは絶対私の手でどんな状況でもあきらめずに打破できるような一流のストライカーにして見せる。他の生徒のように短期ではできなかったけど、この子たちなら絶対大丈夫。だから何があっても、誰が来ても、この子達は落とさせない。私の目が届く間はもちろん、いつか一人で、それぞれの空を飛ぶようになっても』と。

(*)

さて、昼頃から始まったアルトvsヴィータの模擬戦だが、一進一退の攻防をみせた。 そのため我慢出来なくなったさくらとフェイトが、続いて天城とシグナムが参戦する大演習となった。
勝敗についてはまた機会があれば記述したいと思う。
その2週間後、サジタリウス小隊の出張任務は解かれ、別れを惜しみつつフロンティア航空基地に帰投した。

――――――――――

次回予告

アルト達が第一管理世界に来てからここまでで半年が経っていた
こんなにも長い間、第25未確認世界は指をくわえて一体なにをやっていたのか!?
次回マクロスなのは第25話「先遣隊」
想い人を奪われた少女の思いが炸裂する―――――!

――――――――――



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年11月12日 16:45