いつもはあまりしゃべらないソルだが、今回は状況が状況ということで最初に声を出した。
「さて、まずはこれを聞きたい。此処は何処だ?」
「ここはミッドチルダ。貴方たちは何処から?」
“高町なのはだったか、最初にあった奴だったな。”
「俺がいたのは地球という惑星だ。」
「地球って、私たちの出身と同じ星の名前だね。」
「そうか。地図はあるか?」
“ちょっと待って”といって何かを操作し始めた、あれも魔法の産物か?
そうすると突如目の前に地図が出てきた。
かなり高度な文明のようだ。
「これは・・・私たちの世界地図と同じですね。」
カイがそう答えたが、どこかに違和感を感じる・・・
「ジャパンが表記されている、違和感はこれか。」
「ジャパンって日本のこと?」
「そうだ俺たちの世界にジャパンはもう存在しない。」
「どういうこと?」
「破壊されたからだ。それによって戦争が開戦した。」
何人かが言葉をなくした。
ふと見ると世界地図の隅のほうに年代が書いてあった・・・
「これは・・・」
「俺たちの世界と百年以上違うだと。まさか・・・」
「どういうことだ?」
それに疑問を持ったヴィータが聞く。
「俺たちがいたのは2172年だ、そしてジャパンが破壊されたのは百年前あたり、この地図は俺たちのいた世界の遥か昔姿にあまりにも酷似している。」
というより実質、寸分違わない。
「未来の世界から来たとでもいうの?遥か時空を超えて?」
「可能性としてはそれもある。それか平行世界からだな。」
「でもなんでまたそんなことに?」
「しらん、神様にでも嫌われたか?」
そう言うとカイは機嫌が悪そうだった。
「とりあえず、なんとなく話はわかった。せやけど自分たちこれからどうするん?」
「そうですね、ココが異世界だとすると私たちは自分を証明できるものは何もありません。
それに、いやな気配も感じますし・・・」
「いやな気配?それは何のことや?」
「アイツがココに来ている、ということです。」
「あいつ?それは貴方たちの知り合い?」
フェイトはこの人たちと同じように迷い込んだ者が居るのかと心配して聞いた。
「知り合いというより「敵」です。」
「どういうことでしょうか?いまいち話が理解できないのですが・・・」
カイは「聖戦」について話し始めた。
あの後坊やが話した、長ったらしい坊やの視点からの聖戦の話。
ココの隊長さんが言ったこの世界のありかた。
坊やと向うの何人かは、互いの話にかなりショックを受けたようだ・・・
向うもアレに備えてそれなりの対策を立てるようだ。
「しかし、その歳で組織のTOPを勤めるとは・・・いわゆる天才という奴か。」
シグナムが感心したように、カイを賞賛する。
「いえ、あなた方のほうがすばらしい。このような誇り高い仕事をしているのだから。」
騎士は騎士同士、何か感じるものがあるのかもしれない、話に花が咲く。
一人で状況について考え込んでいると、なのはが話しかけてきた。
“人間離れした法力を持っていやがるな。ジャパニーズか?”
“此のヒト、ちょっと魔力量がおかしい。”
「ソルさんも、カイさんと同じ組織ですよね。同じ部隊なんですか?」
「違う。」
「違うんですか?」
「ああ。」
「何処の担当ですか?」
「遊撃。」
「遊撃手なんですか?」
「ああ。」
「それはどうして?」
“ああっ、次から次へと・・・・・・・ヘヴィだぜ”
この世界で自己を証明できるものが無い俺たちは、しばらく管理局の世話になるらしい。
心底めんどくさいが下手をして捕まるわけにもいかん、今回ばかりは従うことにした。
それでも身体検査は受けなかったがな。
夜空を見ながら一服はいつも以上に不味かった。
「貴方は、またそんなものを・・・」
「けっ・・・それよりもお前、封雷剣はどうした?」
「怪しまれるとまずいので郊外の方で結界にしまっておきました。貴方は?」
「捨てた・・・今回は坊やにしては頭使ったほうだな・・・」
クッと笑いをかみ殺す。
「うるさいです、ところでなぜ貴方は此の世界に?」
「坊やが知る必要は無い。」
クックックと笑うと、
「馬鹿にするな、お前はそうやっていつも私を・・・」
「説教ならごめんだ・・・坊やはもう寝る時間だろ。」
少々怒りながら部屋に戻るカイの背中を見送る。
いつも見る夜空とは違う空。
まだアイツは動き出していないようだ。
おそらく此の世界でも同じことをやるだろう・・・・しかし場所はどうでもいい。
「どんなことがあってもアイツと奴だけはこの手で・・・・」
全ての始り【生態系強化計画:『GEAR計画』】・・・もう二度と同じ過ちは繰り返させない。
星空を見上げながら拳を握る・・・タバコは燃え尽きて塵となり風に消えた。
おまけ
「・・・・アイツの気配がまったく感じられんな・・・死んだとでもいうのか・・・?」
「彼はそれほどやわではない。それは貴殿が良く知っているだろう?」
「これはこれは異種殿。もう見抜いておられたか。それより出迎えも出せずに申し訳ない。」
「何、気にすることは無い。突然の訪問だ。申し訳ないのはこちらの方だ。」
「すまない。」
「彼は久々に見つけた原石だ、此処で潰れはせんよ。」
“実に磨きがいがある。年寄りの楽しみがまた増えたよ”と、子供のように笑う老人。
「一つ、お手柔らかにお頼みします。」
「何、彼は直に「 」を超える。それは貴殿の望みであろう。」
「そう。この先に待ち受ける闘いにはアイツの力が必要となる。」
「ふむ、そう一人で気負うものではない。これは彼が選んだ道でもあるのだ。」
「・・・・すまない。」
「さて、来て早々だが妻が待っているのでな、これにて失礼するよ。」
「ヒトはヒトを、ギアはギアを超えなければならない、アイツもまた然り。」
「これもまた試練か・・・・・・死ぬなよ、フレデリック。」
最終更新:2007年08月14日 17:46