今日の訓練はいつもと違っていた。
シャーリーだけが居てなのはは居ない。
「みんな、今日はテレビ局が取材に来ているけどいつも通り訓練をしてね」
スバルがあちこちに視線をうろつかせる。
「なにやってんの」
「だって、テレビ局が・・・・」
「だったら、なおのとこ落ち着きなさい」
今度は、カチコチになるスバルを見てまたシャーリーが口を開いた。
「それでね、今日はなのはさんはおやすみ。だから、かわりの教官に来てもらいました。どうぞー」
スバル今までもうないと言うほど目を開いた。
ティアナはあごが外れそうなほど口を開けた。
エリオは手を開いてストラーダを落とした。
キャロは何でもなさそうだがフリードが羽を広げて回っている。
出てきた誰か・・・誰かと言っていいのだろうか・・・
それは胸囲・胴囲・腰回り・頭囲・肩幅がだいたい同じくらいだった。
皮膚は緑色で、お腹はツートンカラー。
さらに、腕にはなにか玉のようなものがついている。
「一日教官のガチャンピンです。皆さん。今日はよろしくお願いします」
ティアナがおそるおそる右手を挙げる。
「あの・・・なのはさん・・・ですよね?」
「ガチャピンです」
「だって、なのはさんいないし」
「ガチャピンです」
「レイジングハート持ってるし」
「ガチャピンです」
いつの間にか鼻先にレイジングハートの切っ先があった。
「はい。ガチャンピン教官」
こうして今日の訓練が始まった。
訓練はいつものようにハードだった。
いつもと同じ強烈な魔力がいつもと同じ正確さでたたき込まれる。
「すごいわね。なのはさん。あんなの着てても、いつもと同じなんて」
スバルとティアナは狭い路地に隠れていた。
「あ、ティア。なのはさんじゃなくて・・・」
砲撃がいつもの1割り増しで飛んでくる。
崩れるビルと、砕ける地面が煙になりあたりに立ちこめた。
「なのはさんじゃなくて・・・・ガチャピン教官」
巻き上げられた砂はまだ落ち着かず、視界を悪くしている。
「チャンス。行くわよ、スバル。あんなハンデがあるときくらいクリーンヒット決めるわよ」
「わかった」
結局クリーンヒットは出なかった。
いつものように早朝の訓練の終わりにはみんな地面に倒れてしまう。
「朝の訓練は終わり。朝食の後にまた集合してね」
「はい」
これもいつも通り。
なのはではなく、ガチャピンが言っている以外は。
警報が鳴り響いた。
緊急出動の警報だ。
朝食の暇はない。
ストームレイダーに駆け込み、現地に飛びながら説明を聞く。
ガチャピンも一緒に。
「・・・・というわけで、護衛する輸送機を中心に3方向に分かれてドローンを迎撃します。
前方にはガチャピンさん。右後方はスターズ03、04。左後方はライトニング03、04で対処してください。
前方のドローンの数は多いので後方は処理が終わっら前方に合流して対処してください」
指揮を執るシャマルの一通りの説明が終わった。
「あの、質問があります」
「あら、なにかしら。ティアナさん」
「なの・・・じゃなかった、ガチャピンさんのコールサインはないんでしょうか?」
「そうね・・・じゃあ、いつもの通りスターズ01でいいかしら」
「いいですよ。僕のコールサインはスターズ01ですね」
ティアナがスバルに頭を寄せ、声を潜める。
「今の聞いた?」
「うん、聞いた。いつもの通りって言ってた」
「やっぱり・・・なのはさんよね」
「でも、言わない方がいいと思う」
ストームレイダーのハッチが開いた。
「みんな、出発だよ」
ガチャピンが手を振っていた。
「スバル、落とすわ」
「まかせて!」
ティアナの射撃でバランスを崩したドローンが落下する。
それを下からアッパーでスバルが迎撃。爆発。
AMFを高速で通過して魔力減衰を抑えるフォーメーションだ。
「これでこっちは最後だね。早くガチャピンさんと合流しないと」
「数が居るみたいね。急ぐわよ」
シャマルから念話が届く。
「シャマルです。全ドローンの撃墜を確認しました。皆さんはそのまま空港まで警戒しながら向かってください」
「スターズ03了解。さすがね。なの・・・ガチャピンさん」
「スターズ04了解。そうだね。あんなの着ててもいつもと同じように動いてる」
空港に着いたスバル、ティアナ、エリオ、キャロをなのはが迎えた。
「おつかれさま。テレビ局の取材があったのに、緊急の出動があったから心配になってたんだけど。無事だったみたいね」
「ええ、だってなのはさんが・・・」
ティアナの服の裾が引っ張られた。
「ティアナさん。あれ、あれ」
キャロの指さす向こう。そこではガチャピンが赤いもふもふしたムックとなにか話している。
「えええええええええええええええええええええええ」
4人そろった声が響いた。
「あたし、あの中になのはさんがいると思ってたのよ」
「あたしだってそう思ってたよ」
「でも、なのはさんここにいますよ」
「ガチャピンさんはあそこにいます」
もう一回。
「えええええええええええええええええええええええ」
なのはがぽんと手を打ち合わせる。
「みんな、勘違いしてるみたい。いい?よく聞いてね」
「はい」
4人は注目する。
「いい?ガチャピンさんにはね。中の人なんていないの」
「いないの」
「ないの」
「いの」
「の・・・・・」
その日、6課は4人の負傷者を出したことになっている。
極度の精神的なショックを受けたことが原因らしい。
最終更新:2007年08月14日 20:44