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ここは山深き忍びの里。
知る者の少ない隠れ里。
甲賀卍谷。
そこを、1人の白い光が走っていた。
光は高町なのは。
なのはは犯罪者を追いっていた。
そして、犯罪者が逃げ込んだというこの里に来たとき、なのはは何者かの襲撃を受けたのだ。

走る、いや超低空を飛ぶなのはに鞠のような男が並んで走っていた。
体型からは考えられない、いや魔法を使わない人間としても考えられない速度だ。
「これは、これはめんこい娘よの。どうだ?この鵜殿丈助につかまらんか?悪いようにはせんぞ」
丈助はなのはに手を伸ばす。
「いやらしい手つきはやめて下さい」
「それでは仕方ないな。ちと、乱暴なことになるぞ」
とたん、丈助は鞠のように遙か上空に飛ぶ・・・いや、弾む。
落下位置をなのはに定め、急降下。
なのははバリアで防ぐ。
「重いの」
バリアジャケットごと人をつぶせる鞠遊びは何度もつづく。

「戯れるな。丈助」
低空とはいえ空を飛ぶなのはを追い越す者があった。
手も足もない人間だ。
手も足もないにも変わりに腹で走っている。
なのはの目の前に来ると、口をぱくりと開け槍を吐きだした。
シールド、バリアも間に合わない。
首を思い切りそらしす。
槍はなのはの頬に傷を作った。
上空を見上げる。
「今は逃げないと」
「奴め!空に飛ぶつもりだぞ。将監!」
追っ手の蜘蛛のような男が口を開け、舌を出す。
「応よ」
はき出された固まりは中で広がり、蜘蛛の巣を作り上げる。
蜘蛛の巣は壁に屋根絡まり、天と道を封じる。
「えーい」
なのはは、バリアを展開してそのまま飛ぶ。
こんなものは突き破ればいい。
だが、蜘蛛の巣はなのはの突進を受け止め、はねとばす。

まだ倒れない。
すかさず、バランスを整え再び低空飛行。
壁と道は全て封じられている。
いや、一つ封じきれてない。
あそこから飛び立てば。
なのははそこに向け飛翔する。

突如、壁が手をはやした。
「女!捕まえたぞ。」
壁から生えたのは手だけではない。
顔、足が生え、大男が生えてくる。
大男はなのはの足を掴み、そのまま投げ飛ばした。

なのはは、その里で一番作りのいい館に雨戸を突き破ってたたき込まれた。
足とレイジングハートだけが外に出ており、ぴくりとも動かない。
手足のない男が草を分けながらなのはに近づく。
「刑部の馬鹿が。弦之介様のお屋敷にたたき込みおって」
「すまぬ、十兵衛。だが、これで奴も終わりよ」
将監が塀を乗り越えてくる。
「そうよな。捕まえて吐かせたいこともあるが、あれほどの者。ここで殺しておくがよかろう」
最後に来たのは丈助だ。
「むう、もったいないのぉ」
刀を持つ手に迷いはない。

レイジングハートがわずかに動く。
少しずつためられた魔力がそこで爆発した。
「スターライトブレイカー、シューーーーート」
無数の光が闇を切り裂いた。

ゆっくりと立ち上がるなのは。
息が荒い。
落ち着かない。
「ほう、これは面妖なくノ一だな」
家の奥から声がする。
「どこの手の者だ。伊賀鍔隠れではあるまい。根来か?風魔か?あるいは九鬼か?」
闇の中、金色の双眸だけがやけにはっきり見えた。
なのはは魔法弾を作る。
金色の双眸に向け飛ばす。

何かおかしい。
何かがおかしかった。
このままではいけないような気がした。

魔法弾を四散させた。
四散したのはなのはの目の前。
双眸に当たる直前まで飛んでいた魔法弾はいつの間にかなのはの眼前にあった。
「何か感じるものがあったようだな。どれ、先ほどの問いに答える気にはなったか?」
なのはは少しずつ落ち着いてきた。
この人は話を聞いてくれる。
「時空管理局からです」
「時空管理局・・・・?聞かぬ名だな。その時空管理局が何故この卍谷で騒ぎを起こす」
双眸の主が近づいてくる。
秀麗な青年であった。
「騒ぎを起こす気はありませんでした。私は、ここに逃げてきた犯罪者・・・罪人を追ってきて、襲われたのです」
「その罪人とはこの者のことか?」
青年とは別のほうから声が、手足を縛られた人間が転がされた。
なのはが追いかけていた犯罪者だ。
体中を魔法弾で撃たれていた。
魔法技術のないこの世界で。
「豹馬か」
「はい。この者、先にとらえておきました」
なのはは犯罪者の首に手を当てる。
「大丈夫。まだ生きている。この人を連れて帰らせてください」
「だめだな」
青年は、強く、はっきりという。
「なぜです?」
「おぬしは、この里の場所を知った。生きて返すことはできぬ」
「誰にも言いません。絶対に」
「そうかもしれぬな。だがな、人の意志は容易にくだけるもの。伊達や島津に捕らわれて拷問を受け、なお言わずにおれるか?」
なのはは魔法弾を作り出す。
なのはの周囲に浮かぶ魔法弾は前ではなく後ろに飛び、館の雨戸を吹き飛ばした。
館の庭があらわになる。
そこには、なのはを追っていたもの達がことごとく倒れ、昏倒していた。
「決して捕まりません」
青年の目が笑ったような気がした。
「よかろう。そのものを連れて行くがいい。そして、二度とここには来るな」
「ありがとうございます」
なのはは犯罪者を連れて空に飛び上がった。

青年・・・甲賀弦之介が外に出たときにはすでになのははどこにもいなかった。
「弦之介様。あのものは一体?」
「さあな。案外、月から来た天女かも知れぬぞ」
「まさか」
「俺もそう思う。だがな、あの女、まるで夢や幻の住人のようであったではないか。夢幻に関われば、夢幻に取り込まれることになるぞ」
空には、真円の月が雲に隠れようとしていた。

おわり

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最終更新:2007年08月14日 21:03