見れば、通りに止まったトラックの荷台から、白のバリアジャケットに身を包んだ男が六人ほど降りてくる。
対するフェイトはあからさまに眉をひそめ、
「……何なんですか?」
「時空管理局のものだ。フェイト・T・ハラオウンだな?」
「すいません人違いです。私は謎のインチキ独逸人の―――」
「これより貴様を広域次元犯罪の容疑で連行する」
「人の言葉をしれっと……」
「黙れ、重ねて言うぞ。貴様を連行する」
「済まないが、連行を少々待ってもらいたい。彼女に話がある。それも早急に、だ」
「貴方は……そのバリアジャケットは……」
「時空管理局次元間航行部隊所属、クロノ・ハラオウン提督……二年ぶりだね、兄さん」

「君達三人が管理局に反するように、僕達は管理局システム保全の為に動いている。
 ……君が先々週、南部で逐電の為にダムを破壊したことも既に知れ渡っている」
「壊したんじゃなくて壊れたの。ちゃんと反省文も送ったよ? 陸のトップ宛てに」
「残念だがレジアス中将はその反省文を読み、君の名前を指名手配帳簿の頂点に入れた」
「相変わらず頭が固いみたいだね……で、聞きたい事は?」
「君の下に一つの依頼が来た筈だ……君の今の本業、逃がし屋としての依頼が」
「……狙いはエリオ・モンディアル?」
「そうだ……来ていないのか?」
「……窓、開けて良い?」
「動かないでくれ。世界で二番と自負する逃げ足の速さが気になる」

「僕は逃げたくありません! それだけが今の答えです!」
「それだけじゃ子供の台詞だよエリオ。言ってて恥ずかしくならない?
 だけどエリオ、エリオ・モンディアル。その思いを忘れないで!」

「力を全て正しく使えるように―――!」
『Drive Ignition』

二人は戦場の端と端に立ち、己の武器でお互いの背後に一線を刻んだ。
シグナムが言う。
「この中だけが、八年前だ」
その一線を越える闘いは行わない。
「やりましょう」
フェイトが頷いた直後。
申し合わせたように、両者は一歩目から疾駆した。

「フェイト、ザンバーフォームを使わないのか!」
「シグナムこそ、カートリッジさえ使ってないじゃありませんか!」

「何故、逃げぬと言い、運命を庇う」
「これが僕のやり方だからです」
「力足りなくても、か? 他人を護れれば自分は死んでもいいのか?」
「死ぬつもりなんてありません。ただ、自分以外は、失ったらそれまでですから……
 失いたくないなら、逃げず、死なず、こうするのが僕のやり方です……!」

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最終更新:2007年08月14日 21:51