その日、スバルとティアナは真っ当な休日の過ごし方として街に来ていた。
歳相応の女の子らしくウインドウショッピングを楽しむ二人。
何時もの如く、スバルがアイスを買おうとして立ち寄った店には、何故だか人だかりが出来ていて。
「原因はこれじゃないの?」
ティアナが指差す先には
『特大アイス五つ 30分以内に完食したら無料 20分以内で賞金進呈』
の文字。察するに、この人だかりは挑戦者を見に来た観客の皆さんだろう。
さてどんな人間が居るのやらと、首を伸ばして覗き込んで見れば、今まさに食い終わらんとするサングラスをかけた男の姿が見える。
「じゅ……18分34秒!?」
店主の読み上げる記録に周囲から歓声が沸き起こる。それをよそに、あくまでも淡々と賞金を受け取る挑戦者。
立ち上がったことで確認できる体つきは、多少筋肉質ではあるが意外にも普通だ。
尤も、スバル自身が痩せの大食いの体現者である以上、体型と胃の容量が無関係である事は証明済みだが。
と、そこでティアナが
「スバル。あの程度の量ならあンたも賞金狙えるんじゃないの?」
などとのたまった。その声がどうやら男の耳に届いたらしい。
「大食いをなめるんじゃねぇ────────ッ!!」
いきなり怒鳴られた。そりゃあ自分が必死になって成し得た記録を、あの程度呼ばわりされて頭にくるのは理解できるが、
いきなり怒鳴るのも大人気ないんじゃあないだろうか、などと思っていたら、何やらスバルに妙なスイッチが入ったらしい。
「ティア……私、挑戦するよ」
半分冗談で言ったつもりなのだが、スバルは完全にやる気になっている。
こうなってしまえば止められない事を、長年の付き合いで学習しているティアナとしては見送る他なく。
そうして挑戦者の席に向かうスバル。途中、男と視線を交錯させて、
「名前を……聞いてもいいですか」
「……獅子戸錠二。ハンター錠二とも呼ばれている」
「じゃあ錠二さん……見てて下さい。これが私の……全力全開です!!」
これが、後に管理局員とフードファイター、二つの分野でストライカーと呼ばれるスバル・ナカジマの始まりの一歩となる。
最終更新:2007年08月14日 22:14