97管理外世界のアメリカ・コロラド州の厚さ1000メートルにおよぶ
岩塩層から塩漬けにされた原始人が発見された。
塩漬け=「ピクル」と名付けられた彼だが、一つ異常な点があった。
それはどう見てもティラノサウルスと格闘中に岩塩の中に閉じ込められたとしか
思え無い状態で発見された点にある。
皆も知っての通り、ティラノサウルスが生きていた時代に人類は誕生していない。
当時は哺乳類そのものがまだ小型で下等な生物でしか無かったのである。
では彼は一体何者で、かつ何故ティラノサウルスと格闘していたのか…余りにも謎だった。
その後、ピクルはニ億年の時を超えて覚醒。
銃弾を跳ね返す強靭な肉体に加え、戦車も素手で破壊する超規格外パワーを見せ付けた。
流石は徒手空拳だけでティラノサウルスに立ち向かっていただけの事はある。
まさに史上最強! 97管理外世界最強と名高い通称「地上最強の生物」範馬勇次郎さえ
上回る怪物では無いのか? と人々を危惧させていたが…
彼は突如皆の前から姿を消した。原因不明の時空事故により開いた空間の穴に
ピクルは吸い込まれてしまったのである。そして彼はミッドチルダへ流れて付いていた…。
「キャァァァァァァァァァ!!」
ミッドチルダは大混乱に陥った。無理も無い。いきなり全裸の男が現れるのだから…。
女性は悲鳴を上げ、注意する警官は吹っ飛ばされた。
この異常事態に時空管理局はピクル捕獲に乗り出した。しかしピクルはやはり史上最強だった。
武装局員の攻撃魔法を強靭な肉体で弾き返し、バインドでの捕獲を試みようとも
力で強引に引き千切られ意味を成さない。
そこでジェイル=スカリエッティがピクルの強靭な肉体に興味を持った。
ピクルの肉体を解析し、魔法に頼らずとも戦える超人軍団を作ろうと考えたのである。
故にガジェットやナンバーズを出動させてピクル捕獲を試みるが…結果は散々だった。
ガジェットは全て破壊され、ナンバーズも何とか生きて帰る事が出来ただけ奇跡と
思えてしまう程にまでやられてしまった。余りの惨状にスカリエッティは声が出なかったと言う。
ちなみにルーテシアの召喚獣は喰われた。
ついに最後の頼みの綱。機動六課が出動した。
「うわっ! 全裸やん!」
「嫌ぁぁぁ痴漢!!」
「ヘンターイ!」
「しかもアレデッカ!」
しかし前述の通りピクルは全裸である。それに女性の多い機動六課のメンバー達が
ショックを受けないはずは無かった。特にピクルが股間にぶら下げるアレを見た時、
思わず機動六課の女性陣は顔を真っ赤にさせながら次々に卒倒してしまった。
辛うじて残った男性隊員達も、ピクルのアレと自身のアレを比較し、自分のアレの
あまりの小ささに絶望して男としての自信と戦意を喪失してしまうと言う散々な結果に終わった。
ちなみにフリードとザフィーラは喰われた。
機動六課でさえピクルには歯が立たなかった。この事実に時空管理局の誰もが絶望した。
しかし…この騒動を意外な人物が収束させる事を誰も想像は出来なかった。
「まったく…騒々しい事だな。」
一人の男がピクルの前に降り立つ。彼こそレジアス=ケイズ中将だった。
「中将危ないですよ! 相手は人の姿をしていても凶暴な怪物です!」
一人の武装局員がピクルに近付こうとするレジアス中将を呼び止めるが、
中将は止まらなかった。
「何が凶暴なものか。彼はただ自分の身を守る為に戦っているに過ぎない。」
「しかし…。」
「見たまえ! 今こうして誰も彼に攻撃を仕掛けていない状況では彼も何もしていないでは無いか!」
確かにレジアス中将の言う通りだった。広場に一人座り込んでいるピクルの周囲には
既に倒された武装局員や破壊されたガジェットの残骸、ピクルがぶら下げるアレに
ショックを受けて卒倒した機動六課の女性隊員達や自分のアレと比較して男としての
自信を喪失して倒れた機動六課の男性隊員達が倒れているのだが…ピクルは彼等にこれ以上
手を出す事はせずにただただその場に座っているだけだった。
「まず彼の警戒を解く所から始めよう。ここは私に任せて起きたまえ。」
「レジアス中将…。」
レジアス中将はゆっくりとピクルへ一人歩み寄った。そして彼は歩きながら
制服の上着を脱ぎ捨てた。続けて身に付けている物を次々に脱ぎ捨て、
下着さえも下ろし、全裸となってピクルへと近付いて行ったのである。
「中将?」
それを遠くから見守る武装局員達は一体何をするつもりなのかは理解出来なかった。
と言うか、中年男の全裸なんて誰も見たくねーよと思っていたのだが…
これにはレジアス中将なりの考えがあった。
相手は服を着ると言う概念さえ知らぬ原始人だ。だからこそ服を着た人間を別の
生物だと認識し敵意を見せていたのだろう。ならば自分も裸になれば良い。
そうすれば彼は自分と同じ人間と認識して警戒を解くはずである。
レジアスのその思惑は当たり、ピクルはレジアスを襲う事は無かった。
「…………。」
「…………。」
二人はじっと見つめあった。ピクルが目覚めて以来、おそらくは初めて目にする
敵意を含まぬ澄んだ瞳…それをレジアスに向けて見せていたのである。
「私に任せて欲しい。君が安心して暮らせる世界を探してあげよう…。」
「……………。」
レジアスとピクルは握手をした。レジアスの言葉がピクルに通じているとは思えないが…
ただこれだけは言える。心は通じ合っていたと………
おわり
最終更新:2007年09月16日 12:50