ヒロイック.エイジ×リリカルなのはStrikerS
短編 その1
鉄の種族と呼ばれる人類と、銀の種族と呼ばれる人類に似た姿をした者達との戦争は、英雄の種族を宿した者たちと鉄の種族の王女によって、
黄金の種族が旅立った別次元宇宙への扉が開かれ、戦いは終結した。
その際に扉を開く鍵と成った、英雄の種族を右目に宿した鉄の種族の少年エイジは光と成って消えた。
それから4年。銀の種族から託された力と自らが持つ星再生のプラントで南半球が破壊されていた惑星オロンを修復した人類。
自然豊かと成った惑星オロンで、浜辺で砂ダコと呼ばれる種族を見つめる女性ディアネイラ・イ・ライシャ・アルトリア・オル・ユーノス 。
銀の種族の力を受け継ぎし鉄の種族を導く王女は、自分の進むべき道を歩んできた。
「エイジ…」
惑星オロンを再生させ、フートの家族から果物を貰い物思いに耽っていたディアネイラだったが、突然出現した別宇宙への扉から現れた思い人を目にする。
居ても立っても居られず、海の上に立っているエイジの元へ行く。
その時のディアネイラの顔は、満面の笑顔と喜びから出る涙で濡れていた。
黄金の後光を受け輝いているエイジが差し出した手に手を伸ばすディアネイラ。
銀の種族から受け継いだヘドロンの盾を使わず、己の足で海を掻き分ける。
そして、彼と彼女の手が重なった瞬間、世界が光に包まれた。
「―イラ。ねぇ、ディアネイラ。起きて」
懐かしくて、それで居て温かみのある声と、力強い手で肩を揺さぶられ目覚める。
「…エイジ?あっ、エイジ!」
今まで会いたかった人が、目の前でいる。
その影響なのか、彼に抱きつくディアネイラ。
「会いたかった。4年間ずっとあなたの事を思い続けていました」
「うん。僕も、君と出会えることを望んでたよ」
「エイジ…」
心がいっぱいになる言葉を貰い、涙を流すディアネイラ。
そんな彼らに話しかける一人の男性。
「お取り込み中すまないが、君たちの身元を知りたいのだけど」
彼らに話しかけてきたのは、左手に銀色の杖を持ち黒い服を着た男性だった。
第一幕~別世界~
「なるほど、君たちの話をまとめると、惑星オロンと言う星で君たちが出会ったあとに光に包まれ、私たちに保護された。で、良いかね?」
今居る場所は、ある部屋の一室だ。ディアネイラはベッドに腰を下ろし、エイジもその横で座り、目の前で話を進める男性と向き合う。
「うん。ディアネイラが目を覚まさないから心配だった。その時、この船が近づいて来た」
エイジの話によれば、光に包まれた後、どこか分からない空間に放り出されたらしい。
そこは、管理局の次元間航行艦船が使う次元航路であったため、宙に浮く銀色の六角形の障壁で守られたディアネイラと彼女に寄り添うエイジを、
航行中だったクラウディアが助け出したのだ。
「自己紹介をしておくよ。僕の名前は、クロノ.ハラオウン。この船クラウディアの艦長をしています」
「僕の名前は、エイジ」
「私(わたくし)の名前は、ディアネイラ・イ・ライシャ・アルトリア・オル・ユーノス 。と、申します」
自分の身分を言わなかったディアネイラ。
その理由は、普通なら大々的に兄たちが彼女の顔を使って自分たちを宣伝していたことで顔が知れ渡っているはずなのだ。
それが、この目の前に居る男性は彼女の顔を見ても取り分け凄い反応をする事も無いのだ。
これらの情報から、黄金の種族が旅立った別宇宙へ移動してしまった可能性などを考慮し無用な気遣いを欠けないようとした結果だ。
「あはは。エイジ君と、ディアネイラ・イ・ライッ…すまない。ディアネイラさんですね。これからのあなた達の処遇をご説明します」
異常に長い苗字に舌を噛んでしまったクロノは、顔を赤くしながら彼女たちの処遇について説明し始めた。
「君たちの居た次元世界への道は、現在別艦が探索中だ。帰る道が見つかるまで、時空管理局の方で君たちを保護する事になった」
クロノの話から彼が所属している『時空管理局』とは、多数の次元世界を管理している人類が築いた組織だと把握するディアネイラ。
そして、自分たちの身柄は彼らの監視下に置くということを認識する。
「そう、硬くならないでくれ。取って食うつもりは無い。ただ、君たちの力が悪用されるのを防ぎたいだけなんだ」
「私たちは、他の方々を傷つける真似は致しません。この力も、人類が新たに得た守りの力なのです」
ディアネイラの差し出した手に出現するヘドロンの盾。
「強い意志を持った方に余計な事を言ってしまい失礼しました。ただ、私たちにも次元世界の安定を守る使命があります」
「はい。先程の話であなた方時空管理局の考えを知りました。あなたの申し出を受けましょう」
右手を差し出すディアネイラに、クロノも右手を差し出し握手を交わす。その2人の手に両手を被せるエイジ。
「僕も!」
彼のにこやかな笑顔に、満面な笑みで返すディアネイラと苦笑いで返すクロノであった。
ディアネイラたちを部屋へ残し、艦橋へ戻ったクロノは通信士に機動六課へ通信を繋げるように指示した。
『こんな時間に何の用や?クロノ提督』
現在の時刻は午後8時過ぎだ。そろそろ帰宅しようとしていた八神はやては、突然のクロノからの連絡を受ける。
「突然の連絡ですまない。そっちに、空きの部屋は在ったか知りたかったんだ」
『空き部屋?なんや、家に帰れなく成るようなことでもしよったんかい?クロノくん』
「断じて違う。それよりも」
『空き部屋かぁ~ちょっとまってな』
少し時間が経った後、通信に戻ってきたはやて。
『空き部屋なら、何個かあるよ。それにしても、何でそないな事を聞いてきたんや?』
「ある特殊な能力を持った次元遭難者を救助したんだ。そこで、その者たちを少しの間、そっちで預かってくれないか?」
『はぁ?何でや』
担当の部署ならたくさんあるのに、何故機動六課へ預けたいのかと問うはやて。
「その2人は、次元空間を生身で漂流していたんだ。この意味が分るか?」
驚愕な顔をするはやて。それもその筈、通常次元空間を通るにも次元航行艦船などが無ければ無理なのだ。
それを、生身で滞在していたなど通常ありえないのだ。
「それで、彼らの力が別の部署に知れ渡った場合を考えた結果…機動六課が適任だと判断したんだ。あの少女も預かっているんだろう」
『うん。今は、なのはちゃんとフェイトちゃんが親代わりしてる。受け入れはOKやけど、その2人って男?女?』
「野性味のある青年と、金髪のお嬢様」
『おお!何や、その取り合わせは!直ぐにコッチへ送ってや!!』
何故か興奮する彼女に、汗をたらすクロノ。
「分った分った。時間が決まったら直ぐに連絡を入れるよ」
『ほんなら、期待して待ってるよ。はぁ~揉み応えのある胸やったら良いなぁ~にひひ』
通信を切る際のはやての表情は、まるでセクハラするおっさんだった。
時空管理局本部へ帰還したグラウディアから降りたクロノは、エイジとディアネイラをトランスポーター.ハイに乗せミッドチルダ首都クラナガンへ転移させる。
転送ポートへ出た2人は、その光景を見て驚く。
「うわぁ~先の所と様子が違うよ。ディアネイラ」
「えぇ。部分的に私たちの世界の技術に近いものが取り入れられている見たいですね」
時空管理局本部は、自分たちの世界に在った衛星基地に似ていたが、この場所は一昔前の人類の施設に似ている。
「歴史で習いました物と、良く似ていますわ」
係員の方に呼ばれ、慌ててその後を追う2人。
付いて行った先には、ゴールドロングヘアーの女性とピンク色のポニーテールをした女性が2人待っていた。
「初めまして。あなた方がエイジさんとディアネイラさんですね?」
「エ・イ・ジ!」
彼の突然の反応に目を丸くするフェイト。
「何故、私たちの名前を知っておられるのですか?」
エイジを嗜めて自分たちの事を知る目の前の女性に問う。
「失礼しました。私は、機動六課ライトニング部隊隊長フェイト・T・ハラオウン。あなた方を救出したクロノ提督の義妹です」
「そして、私の名はシグナム。機動六課ライトニング部隊の副隊長だ」
「あなた方が、私たちを機動六課と言う場所へ連れて行ってくださる方々なのですね。よろしくお願いしたします」
頭を下げるディアネイラを見て、エイジも頭を下げる。
「よろしく!」
元気な挨拶も忘れない彼だった。
フェイトの黒いスポーツカータイプの自家用車に乗り、機動六課へと移動する4人。
運転席にはフェイト、助手席にはシグナム、後部座席にはエイジとディアネイラが座る。
「わ~すごいよ。ティターロスと似た物がいっぱい」
後部座席の窓から外を見続けるエイジ。彼の純粋な行動にニッコリと笑うディアネイラ。
「そうですね。文明レベルは、私たちの世界と似ている」
一般市民レベルだと、エイジたちの世界の方が発展している事が見て取れる。
「御二人の生まれ故郷は、どんな所だったんですか?」
運転をしながら、バックミラーで2人を見るフェイト。
「エイジは、自然がいっぱいで、フートたちが楽しく暮らしているオロンから来た」
両手を広げ、身体全体で大きさを表現するエイジ。
「私の生まれ故郷デューイは、星の大半が海で占められている。美しい星です」
「御二人の故郷って、とっても良い所なんですね。一度あの子達と一緒に行ってみたいな」
「レリック事件が終わった後でも休暇を取って、遊びに行けば良いと思うが?テスタロッサ」
「そんなシグナム。なのはだっていっぱい仕事しているのに、私だけ休む訳には」
「ふっ、それぐらいの余裕を持てと言っているだけだぞ」
意地悪です。と、顔を膨らませて言うフェイト。
そんなやり取りを微笑ましく見ていたディアネイラだったが、遠くから感じる黒い悪意と何かを狙う強い意志を感じ取る。
「遠く、いえ。この付近で黒い悪意を感じます」
突然警告を鳴らすディアネイラに、何が起こったのと顔に浮かべる二人。
その時、前のトラックの上空に出現した召喚魔法陣から現れた多数のガジェット。
アームケーブルを使いトラックの荷台に取り付いていく。
「ガジェット!」
「何故、出現を察知できた?」
ディアネイラへ問うシグナムの眼は鋭いものに成っていた。
フェイトは、車を横に着けて停車させる。懐から三角形の何かを取り出していた。
「私には、人の強い思いを感じ取る力があります。この付近から少し離れた所から今でも悪意を感じられます」
彼女が指差した先を見たエイジは、車のドアを開け外に出る。
「ディアネイラは、ここでまってて」
エイジは、そう言い残して凄まじい跳躍で反対車線の端に飛び移ると続けて先のビルへと飛び移っていく。
「エイジ!」
彼が再びどこかへ行ってしまうのかと思うディアネイラ。
一方、車から出たフェイトとシグナムは、その身体能力に目を疑う。
「あの子、魔力も無しであんな跳躍を」
「主の話通り、特殊な能力を持っていると言う事か。レヴァンティン!」
右手に持っていた剣の形をしたキーホルダーを構えると、
『Jawohl』
機械的な声が聞こえた後、シグナムを薄めの紫色の光に包まれ、その光が消えた後には鎧を着て剣を構えていた。
「その姿は」
「魔力で形成した鎧だ。フェイト、私は奴の後を追う。ここは任せた」
そう言うと、エイジが移動した方向へ飛び立っていく。
「ディアネイラさんは、ここで待っていてください。バルディッシュ」
『Set up』
金色の光に包まれ、その光が晴れた先には右手に黒いハルバートを持ち、白いコートを纏い黒い服を着たツインテール姿のフェイトが立っていた。
「ロングアーチへ、これよりガジェットの掃討とレリックの回収へ向かいます」
『了解しました。周辺の交通規制を近くの陸士部隊に通達します』
立体モニターを使用した通信をしたフェイトは、前方で暴走するトラックの元へ移動する。
「バルディッシュ」
『Sonic Move』
金色の光に包まれたかと思うと、瞬時にトラックの前方へと回りこむフェイト。
「はぁぁぁ!」
バルディッシュからハーケンスラッシュという光の鎌を発生させ、群がるガジェットへと向かっていく。
みんなが飛び出して行ってしまった後、ディアネイラは意を決してフェイトが向かった所へ向かう。
あるビルの屋上で、召喚魔法を発動している紫色の長髪をした少女とメガネをかけ青色と灰色などの配色のウエットスーツを着た女性が話をしていた。
「うふふ。ルーテシアお嬢様、じゃんじゃん転送していって下さいね。あなたの捜し求めていた物が、あそこにあるんですから」
「うん。必ず手に入れる」
更に力を増す召喚士ことルーテシア.アルビーノ。
ルーテシアは、召喚した召喚虫をガジェットへ取り付かせガジェットの動きを良くしている。
その強化型ガジェットを目標へ送り続ける彼女の息は少々上がってきている。
ルーテシアの立つビルの上でガジェットの動きや、周囲の状況などのチェックを行っているメガネをかけた女性クアットロ。
スカリエッティが作り上げた戦闘機人の4番目のナンバーを持ち、後方指揮官としての能力を持つ。
「あら、人造魔導師がガジェットを襲ってますわ。思っていたよりも対応が早い。それに何か近づいている?ディエチちゃん、何か見える?」
彼女たちの後方で狙撃砲を構えた女性ディエチは、眼に仕込まれた観測装置で遠くから近づいてくる者を発見する。
「ん、少年が1人近づいて来てる。魔力反応無し、機械的な改造は外見からは特に無し。それでいて、私たち並の跳躍力」
「要するに、普通じゃないってことね…良いわ。ディエチちゃん、狙撃しちゃって。近づかれて妨害されても困るわ」
「了解…」
余り乗り気じゃないディエチだったが、クアットロの命令を無視する訳にもいかずイノーメスカノンを少年へ向ける。
「IS発動…ヘヴィバレル」
ディエチの先天固有技能が発動し、接近する少年へ向けSクラスのエネルギー弾を向ける。
徐々に近づいてくる少年へ向け、トリガーを引く。
狙撃砲から放たれたエネルギー弾が、一直線に接近してくる少年へ向かい直撃する。
「直撃…なっ!?」
直撃し爆発も起きたのに、少年は無傷で接近している。
「ディエチちゃん。手加減でもしたの?」
「いいや、ちゃんと撃った。直撃も確認した筈なのに」
そう、少年は確実にエネルギー弾の直撃を受けたのだ。
だが、その身体には傷一つ無いのだ。
もう一度チャージしエネルギー弾を撃つディエチだったが、爆発によって発生した煙の中から現れる少年の姿を見て驚愕する。
「化け物か!?」
ビルとビルの間を跳躍し、等々クアットロたちの目の前に到着する。
「みーつけた!」
彼女たちを指差し喜ぶエイジ。
「何故、こちらの位置が分かったのかしら?センサーは狂わせているのに」
「そんな事どうでも良い。今分かるのは、彼が私たちを止めに来た事だけ」
「澄ましてますわね。ディエチちゃん」
軽くため息をつくクワットロは、周囲に待機させていたガジェット2型10機を呼び寄せる。
「どなたかは存じませんが、消えていただきますわ」
右手を前に振り突撃の号令をするクワットロ。
その命令に従いエイジへ向けビームを放つガジェットたち。
エイジは持ち前の運動能力で、それらの攻撃を回避していく。
頭に当たりそうになったビームをブリッジで避け、すぐに態勢を戻し勢いをつけずに上空にいるガジェットへ飛び移ると右拳を叩き付ける。
宇宙船の外装を引っぺがした程の腕力を持つエイジにとって、ガジェットの装甲など紙切れに等しい。
簡単にボディを貫通されたガジェット2型は、エイジが飛び去った後爆発する。
「わ~い!」
次々にガジェットの上に降り立ち拳を振るうエイジ。
その行為に唖然とする戦闘機人2人の目の前に着地するエイジ。
「人を傷つけちゃだめだよ」
そう言って微笑むエイジを見て逆に冷や汗をかく2人。
「くっ」
狙撃砲を至近距離から相手に向け、ISを発動しエネルギーをチャージする。
上空へ避難するクワットロと、召喚魔法一旦停止し横につけていたガリュウに連れられ隣のビルの屋上へ避難させられるルーテシア。
「悪いけど、ここで捕まる訳には行かない!」
狙撃砲のエネルギーをエイジへと発射する。
凄まじいエネルギーが彼を丸ごと巻き込んでいく。
エネルギー弾の発射跡には刳り貫かれた地面が残る。
「これで……馬鹿な」
崩れた外壁からニョキっと飛び出してくるエイジの姿を見て驚愕するディエチ。
笑顔のまま彼女に近づいたエイジは、狙撃砲の砲身を掴むと握力で握りつぶしてしまう。
「これでお終い!」
砲身を握りつぶした狙撃砲を床に落とすと、次に上空で何かを操作しているメガネをかけた女性の方を向くエイジ。
「もう、戦うのは止めよう。みんな悲しむよ」
「そんな胡散臭い台詞をよく言えますわね。私は、ドクターの夢を叶えさせるだけです。ルーテシアお嬢様!時間稼ぎをお願いします。姉を呼びますので」
「分かった。ガリュー、お願いできる?」
ルーテシアの願いに首を縦に振る人型の姿をした召喚虫ガリュー。
両腕の爪を伸ばし、背中に紫色に発光する羽を出現させエイジへ突進する。
エイジは避けずに、相手の鋭い爪による攻撃を両手で受け止める。
「君は、何で戦うの?あの子と契約したからなのかな」
エイジの質問に答えず、右足で彼を蹴り飛ばす。
ガリューの蹴りで吹き飛ばされたエイジだったが、空中で回転し勢いを殺し着地する。
話を聞いてもらえそうに無いことを悟ると、床を蹴り一気にガリューの懐へ入ると右アッパーを繰り出す。
その攻撃を避けきれずアゴに入ったアッパーによって、宙を舞うガリューは、そのまま床に落下する。
並外れた身体能力から繰り出された攻撃は、如何に召喚虫であろうと相当なダメージだ。
「ガリュー……私の友達を傷つけないで!」
大切な友人であるガリューが傷つけられ激動に駆られたルーテシアは、召喚魔法で地雷王を召喚する。
「地雷王…あの子を倒して、お願い!」
巨大な甲虫である地雷王は、全身を震わせビルを揺らしながら額の二又の角から雷を発生させ撃ち出す。
「うわぁ」
雷撃がエイジの側を通り床に着弾する。その攻撃が着弾した箇所は、砕け黒焦げている。
「人に当たったら危ないよ」
エイジは地雷王へ話しかけるも、意思が無いのか攻撃を続ける。
「答えてくれないのなら、少し大人しくしてて」
そう言うと、素早く地雷王の真横に着くと巨体を持ち上げ投げ飛ばす。
凄い墜落音と共に、床に叩きつけられた地雷王は身動きが取れなくなる。
相手が動けなくなったのを見たエイジは、少女の方を向く。
「僕は、エイジ。君の名前は?」
「え…」
彼の突然の質問に唖然としたルーテシアだったが、エイジの朗らかな笑顔に何故か答えてしまう。
「ルーテシア」
「ルーテシア。何でこんな事するの?みんなに迷惑が掛かるよ」
その質問に顔を伏せるルーテシア。
「…お母さんを蘇らせたら、私に心が生まれる。そう聞かされたから」
「お母さん?お父さんみたいなもの?」
「お父さんは知らないから答えられないけど、多分そう…大切な人」
「エイジにもあるよ、大切な人。ディアネイラでしょう。イオラオスや、アネーシャや、テイルとメイル!それにメヒタカたちも!」
元気良く答えるエイジを見ていたルーテシアは、彼はゼストやアギトと似た良い人だと思ってくる。
「それで、刻印ナンバーXIのレリックを探し出してお母さんを蘇らせたいの。だから、邪魔をしないで」
真剣な顔でエイジを見つめるルーテシアに対して、エイジは真剣に答えた。
「それは駄目。人を傷つけて得られる幸せは、長続きしない。お父さんたちが言ってた。手を取り合えば、互いに理解できるって」
手をルーテシアへ差し伸べるエイジ。
その純粋な目で見つめられたルーテシアは、その手を掴みたい衝動に駆られる。
「ルールーから離れろぉぉぉ!」
2人の間に割って入る小さな妖精に似た少女アギト。
「ルールーに手をだそぉたって、この烈火の剣精のアギト様が許さねぇぞ!」
「アギト、ゼストと一緒だったんじゃ?」
「旦那が、ルールーの側に居てやれって強引に言うから来てみたんだ。案の定、来て正解だったよ!」
右手に火の玉を生成し、エイジを威嚇する。
しかし、アギトの威嚇もエイジには無駄だった。
「えっと、アキト?」
「アギトだぁ!」
「わかった!アギト。僕はルーテシアと友達に成りたいだけだよ?」
「友達だぁ?……友達って、本気で言ってるのか?」
「うん!」
笑顔で答えるエイジに、戦う気が失せてしまったアギトは火の玉を消しルーテシアの横に寄り添う。
「変な奴だな、こいつ」
「変わってるけど、良い人」
そんな彼女たちの会話を他所に、エイジは右手を差し伸べていた。
エイジがルーテシアたちと話をしている時、ディアネイラが指差した方角へ移動していたシグナムだったが未確認の戦闘機人と会い戦闘を開始していた。
相手の胸のプレートに刻まれた数字はIII。
戦闘機人のトーレは、ISライドインパルスで高速機動を実現しシグナムをその場に押さえつけていた。
シグナムも、反撃に出るが魔力を抑えられているため思うように相手を退かせずに居る。
レヴァンティンの刃と、インパルスブレードのエネルギー刃がぶつかり合い火花が周囲に散る。
中々決着がつけられずにいた2人だったが、トーレに連絡が入ったことで終幕を迎えた。
「決着は何れ」
そう言い残したトーレは、シグナムが向かっていた方角へ凄まじい速度で飛んでいく。
「くっ、逃がすか!」
シグナムも追うが、どんどん距離が開いていく。
「トーレお姉さま~遅いですわ~」
「ベルカの騎士と戦っていた。それよりも、その強い相手とは」
周囲を見渡し、クアットロの報告にあった相手を探す。
すると、ビルの上でルーテシアと握手をしている青年を見つける。
「あの青年か」
「そうですわ。見た目と違ってディエチちゃんの砲撃を受けても傷一つ付かない、化け物ですわ」
クアットロの嫌味を聞き流し、撤退を考えるトーレ。
「退却するぞ。ディエチの砲撃が効かないと成ると、今の戦力では倒す事は出来ない」
「まぁ、そうですわね。それじゃあ、お先に失礼しますわ。ディエチちゃんの回収は、トーレお姉さまお願いします~」
そう言い残すと、シルバーカーテンで姿を消すクアットロに不満顔に成るトーレだったが腰を抜かした妹の回収へ向かう。
「これで友達だね」
「…うん。よろしくね、エイジ」
「なんだか訳わかんなぇけど、ルールーが良いなら、あたいは口出ししないよ」
そんな3人の下にディエチを抱えたトーレが舞い降りる。
「お嬢様。撤退命令が出ました。レリックは残念ですが、あとでいくらでも取り戻す手段はあります。お急ぎ、帰還を」
その言葉に、少し悲しい顔になるルーテシア。
「もう、帰っちゃうの?」
突然現れた人の話で、ルーテシアが帰ってしまうことを知るエイジ。
「うん。エイジとのお話、もっとしたかった」
「また会ったら、色々話をしよう」
「うん」
「そんじゃ、またなッ。エイジ!」
「またね。エイジ」
「うん。またね。ルーテシア、アギト」
別れの挨拶を交わした後、傷ついて腰を下ろしているガリューと地雷王を帰還させたルーテシアは、転送魔法を使用しトーレ達と自分達を転移させた。
転移が済んだ後に遅れてやってくるシグナム。
「敵は?」
「みんな帰っちゃった」
「そうか…」
レヴァンティンを鞘へ戻し回りを見渡したシグナムは、至るところにあるガジェットの残骸を見てエイジに問いかける。
「あの残骸の山は、お前がやったのか?エイジ」
「うん」
その一言で、シグナムは目の前に居る青年の評価を改めさせられた。
「これで!」
バルディッシュの刃でガジェットを切り裂いたフェイト。
中々素早い敵だったが、ブリッツアクションを使い戦闘スピードを上げたフェイトのスピードには適わなかった。
「よし、レリックを回収して―」
『後方に敵機』
バルディッシュの報告に咄嗟に、その場から離れるフェイト。
ガジェット3型のビームが先程まで居た場所を通過した。
「あぶなかった。ありがとうバルディッシュ」
デバイスにお礼を言い、敵へと向かうフェイトだったが突如逃走する大型ガジェット。
「待ちなさい!」
転がりながら高速で移動するガジェット。
そんなガジェットを追っていたフェイトだったが交通規制が敷かれている場所まで追い続けてしまった。
「まずい」
ソニックムーブを発動し、一気にガジェットの進路方向へ回り込んだフェイトはカートリッジを3発消費しバルディッシュをザンバーへ変形させる。
「はぁぁぁっ!」
振り上げられた光の斬艦刀が縦一閃。ガジェット3型を一刀両断にする。
しかし、凄まじい速度で転がっていた事で一刀両断された分かれた二つの残骸が交通規制で止められ、来た道を戻ろうとしていた乗用車の近くで爆発してしまう。
その衝撃で、乗用車が地上15メートルの高さに作られていた道路から飛び出してしまう。
「あっ!」
突然の事で、フェイトの魔法が間に合わず墜落していく乗用車。
「わ、わたしの責任だ…私の所為で」
「(大丈夫です)」
突然心に響く声を聞き、周りを見渡すフェイト。
すると、乗用車が落ちたところから銀色の輝きを放つ六角形の障壁を4枚周囲に浮かばせているディアネイラと銀色に輝くアンカーで吊るされている車が上がってくる。
彼女が使用している力の名は【ヘドロンの盾】。黄金の種族と呼ばれる最初期に宇宙へ上がった種族から銀の種族へ提供された力の1つだ。
ディアネイラはそっと、車を着地させる。すると、中から小さな男の子を抱えた女性が出てくる。
「あ、ありがとうございます。あなたは命の恩人です」
「いいえ、人として当然の事をしただけです。さぁ、額の傷に触ります。病院へ」
急いでやってきた救急隊に連れられ病院へ向かう男の子を抱いた女性は、ディアネイラの姿が見えなくなるまでお礼を言い続けていた。
「ありがとうございます。私のミスで危うく人を死なせる事に…本当にありがとうございます」
「いいえ。頭の中に浮かび上がったイメージで、車が落ちるのが見えたので動いただけです」
「未来が見えるんですか?」
ディアネイラの話から、彼女が未来予知に似た力を持っていると感じ取るフェイト。
「こんなに、明確に浮かび上がったのは今回が初めてなんです」
“私は、徐々に黄金の種族の力を受け継いできているのかしら”
そう考えていると、遠くからシグナムに抱えられ飛んでくるエイジの姿が見えた。
「ディアネイラ~フェイト~ただいまー」
元気良く手を振るエイジを見て、顔を見合い笑うディアネイラとフェイトであった。
地元の陸士部隊に引継ぎを行ったフェイトたちは、午後の6時ごろに成ってやっと機動六課へと到着した。
車から降り、目の前にある大きな建物を見上げる2人。
「私たちがお世話になる施設なのですね」
「うわ~どんな人達が居るんだろうね。ディアネイラ」
ニッコリと笑みを浮かべるエイジに、微笑むディアネイラ。
そんな2人の姿は、まさにベストカップルと言っても過言ではないと思うフェイトとシグナムであった。
次章~出会い~
番外編
『俺を誰だと思っている!』
「おお!おれをだれだとおもっているぅ!」
TV画面に噛り付くヴィヴィオ。
それを横で見守るザフィーラ。
「(主よ。本当にこの映像をヴィヴィオに見せても良かったのでしょうか?)」
「(いいんや、いいんや。この天元突破グレンラガンは、私とシャーリーとエリオとアームドデバイスたちが選別したアニメや!最高の出来やでぇ!)」
「(ただ、中の人が出ているという共通点と言う訳では)」
「(中の人などおらん!あとは頼んだで、ザフィーラ)」
念話を切られ、ヴィヴィオから背を向けるザフィーラ。
『ギガァァァドリルゥゥゥブレイクァァァッ!!』
「ぎがぁどりるぅ~ぶれいくぅ!」
ザフィーラはその時、何かが近づく音がし首を曲げるとそこには玩具のドリルを持ったヴィヴィオが迫っていた。
「ちょ、まっ……アッー!」
そうしてザフィーラは、シャマルのいる医務室へと向かったのであった。
「ううう、盾の守護獣がこんなザマでは…うっ。尻が…」
おしまい
最終更新:2007年10月07日 08:49