番外編「ロストロギアなんてレベルじゃねーぞ!!」


ある日の昼、なのはは何気ない質問をミライにした。

「そういえば、ミライさんの左腕にあるデバイスって、なんて名前なんですか?」
「ああ、メビウスブレスの事だね。
デバイスとはちょっと違うけど……僕にとってはとても大切なものなんだ。」
「確かに、攻撃や防御に普通に使えてるし……」
「何より、メビウスに変身するのに使うからね。」

ミライは左腕のメビウスブレスを、皆に見せた。
ロストロギアと認定されてもおかしくない、超高性能な道具。
ウルトラの父がくれた力。

「最初に調べた時は、驚いちゃったよ。
物凄いエネルギーの塊だったしね。」
「でも、メビウスブレスよりも更に凄い道具って、いっぱいありますよ」
「え、そうなんですか?」
「うん、例えばナイトブレス。
僕も一時期使ってたんだけど、使える技とかはメビウスブレスとあまり変わらないんだ。
でも、単純なパワーならナイトブレスの方が上だったね。
それにナイトブレスの最大の特徴は、メビウスブレスと合体させられる所かな。
二つを合わせてナイトメビウスブレスにすれば、強力なメビュームナイトブレードが使える様になるんだ。
これの御蔭で、色んな強敵を相手に勝つことが出来たし……」
「へぇ~……」
「剣で言うなら、セブン兄さんのアイスラッガーも凄かったなぁ……
物凄く斬れるんだけど、手に持って短剣のように使ったり、ブーメランのようにしたり……本当、便利な武器だよ。」
「結構、色んな種類の道具があるんですね」
「うん……でも、まだこの程度は序の口だよ。
タロウ教官やジャック兄さんのブレスレットに、レオ兄さんのウルトラマントなんか、とんでもない能力があるし……」
「とんでもない能力……?」
「早い話が、兎に角万能武器なんだ。
まずタロウ教官なんだけど、教官は二つのブレスレットを持ってるんだ。
自前のタロウブレスレットと、ウルトラの母から授けられたキングブレスレットと。
タロウブレスレットの方は、あまり使う機会がなかったらしくて、槍に変化するぐらいしか僕は知らないけど……」
「ブレスレットが槍に……?」

ブレスレットとは、つまり腕輪の事。
自分達のデバイスのように、起動させると大幅に姿を変形させるという事だろうか。
そう考えれば、簡単に納得できる。

「キングブレスレットは、まあ本当に凄い道具だね。
火炎放射とか、高圧電流とか。
そうそう、バリアを発生させたりもしたなぁ……」

多様な攻撃手段に、そしてバリア。
これは、殆どのデバイスの標準装備といえる。
それにメビウスブレスでも、この程度の事は出来ていた。

「大きさを変化させて、相手の嘴を封じたり……」
「大きさが変わる……?」
「嘴を封じる……」

サイズの変化が可能。
この程度なら、十分OKである。
事実、自分達のデバイスだって今は小さい状態だ。
流石に、敵の嘴を封じるという発想はなかったが……

「解毒や治癒にも使えて……」

ダメージを回復させる。
これも、勿論ありの能力だ。
攻撃機能も併せ持ったデバイスというのは流石に珍しいが、無いわけではない。

「相手から奪った鞭を光の槍に変えたり、ロープを鎖に変えたり……」
「……え?」

ちょっとずつ、話が妙な方向に向かってきた。
鞭を槍に、ロープを鎖に変化させる。
自分達のデバイスが変化するのではなく、他者の所有物を変化させるときた。
幻術でそう見せかけたりするのじゃなくて、本当に物質を全く別のものに変える。
こんなのは、流石に見たことが無い。
しかし……これはまだ序の口。

「東京タワーに飾りをつけて、クリスマスツリーにしたり……」
「えぇっ!?」

明らかに何かがおかしい。
戦闘用だった筈の道具なのに、ここで急に用途が変化した。
東京タワーに飾りつけなんて、そんな魔法もデバイスも、当然あるわけがない。
そもそも、何でそんな使い方をしたのかが物凄い気になる。

「後はそうだなぁ……あ、あれがあった。
バケツに変化させて、酔っ払ってる怪獣に水をぶっ掛けて酔いを醒ませたやつ。」
「ば、バケツ!?」

ブレスレットからバケツに変化する。
勿論、自分達が見てきたデバイスにそんな類のものは無かった。
というか、そんなのあって欲しくない。
例えば、起動させたレイジングハートやバルディッシュの形態がバケツだったら……
はっきり言って、ビジュアル的には最悪である。
バケツで戦う魔法少女なんて、見たくない。
それ以前に、戦ってる姿を想像できないが。

「……か、変わってる道具だね……」
「僕もそう思います。
でも、レオ兄さんやジャック兄さんのも同じぐらいかなぁ……?」
「えっと、どんな道具なんですか?」
「レオ兄さんは、タロウ兄さんと同じように二つ持ってるんだ。
レオブレスレットと、ウルトラマント。
ブレスレットの方はまあ、タロウ兄さんのタロウブレスレットと似てるかな……?」

どんな風に似ているのか、物凄い気になる一同。

「ブレスレットから、レオスパークっていう光線を発射できるんだ。
これの御蔭で勝てた戦いも何度かあったし……」

まずは光線ときた。
これはあってもおかしくない機能だから、十分分かる。
しかし……他に何か、とんでもない機能があるんじゃないだろうか。
そう、誰もが考えていたが……それは見事に的中した。

「注射器に変えて使ったこともあるって言ってたっけ?」
「注射ァッ!?」

たまらず、皆が声を上げてしまった。
ある意味では、ここまでで最強の危険物が来てしまった。
戦闘で注射器を使うというと、真っ先に思い浮かぶのは一つ。

(毒物注入……!?)

注入する毒物次第じゃ、かなりの成果を上げられるのは間違いないだろう。
だが……言ったら悪いが正義の味方のやることではない。
想像したら、何か嫌な気分になってしまった。
すると、そんな彼等の様子を察したミライが、とっさに言葉を繋げた。

「ああ、毒を注射したりとかそんなんじゃないですよ。
トドメをさす前に、相手の血液を吸い取っただけだって言ってましたから。」
「え……!?」

血液を吸い取る―――吸血。
ある意味、毒物より性質が悪いんじゃないか。
余計に皆の表情は、暗くなってしまっていた。
一応、ウルトラマンレオの名誉の為に補足しておくが、彼は断じて残酷な攻撃手段をとった訳ではない。
敵怪獣の血液から血清を作り出し、人々を治療する必要があるから血を吸い取ったのだ。
最も、ミライはこの一番肝心な部分を言い忘れてしまっているのだが……

「ウルトラマントの方は、兎に角凄い防御力があるんだ。
相手の火炎放射や念力を防いだり、相手の攻撃次第じゃ傘に変形させて使ったり……」
「防御、か……」

先ほどの注射器に比べれば、遥かにマシな能力に聞こえる。
傘に変形させるという発想については、少しばかり驚かされるが、これはありかもしれない。
ディバインシュートやスナイプスティンガーなどといった攻撃が上空から迫ってきた際には、いい防具となる。
どうやらウルトラマントは、この様子じゃ防御専門の道具らしい。
先ほどの注射器の様な、ショックを受けるような使い方はない……

「後は、相手にかぶせて身動きを封じたり出来るって言ってたっけ。」
「え゛……?」

前言撤回。
それはどう考えても、悪役の使い方です。
対戦相手にマントをかぶせ、視界を封じている間に滅多打ち。
よく、悪役レスラーが使っている手段である。
ここでウルトラマンレオの名誉の為に補足しておくが、彼は断じてそんな風に使ってはいない。
彼は相手の怪獣にマントを被せ、そうしてパワーを奪い動きを封じたのだ。
はっきり言って、ミライの言い方が悪い。

「けど、やっぱり一番なのはジャック兄さんのウルトラブレスレットだよ。
タロウ教官やレオ兄さん達には悪いけど、あれ程凄いのは見たことないし……」
「……今のより、上?」

これの更に上をいく性能。
もう、全くもって予想がつかない。
対戦相手を手打ちラーメンにして食べてしまうとか、そんなレベルだったりするのだろうか。
皆は息を呑み、ミライの説明を待った。

「ウルトラブレスレットは、色んな形態に姿を変えれるからね。
槍やブーメラン、ナイフに変えて攻撃したり……盾に変えて、防御したりもしたっけ。」

これまでと同じように、最初のうちはまだ許容範囲内だった。
種類こそ多いものの、武器への変化なら全然OKである。
盾への変化も、何らおかしくはない。
そう……この辺なら、まだ許容の範囲内なのだが……

「ブレスレットを敵に飲み込ませて、体内で爆発させて怪獣を倒したり……」
「体内から爆破!?」

いきなり、物凄い攻撃手段がきた。
しかもこれは、先程のレオの様な誤解は一切無い。
本当にウルトラマンジャックこと帰ってきたウルトラマンは、これをやっている。
敵を倒す為とはいえ、今思えば正義の味方がやる攻撃手段とははっきりいって思えない。
下手をすれば、スプラッタムービーの出来上がりである。

「決壊したダムに投げつけたら、ダムの水が止まったり……」
「だ、ダムをせき止めたんですか……」

先程の爆弾ブレスレットと違って、平和的な利用方法。
ダムの決壊という大きな事故を防げた事を考えれば、中々のものである。
しかし、これはこれでどんな道具なんだとツッコミを入れたかった。

「沼の水を蒸発させて、干上がらせたり……
あ、蒸発させた水はちゃんと後で雨にして降らせたから、大丈夫だよ。」
「……沼を丸侭一つって……」

また凄いのがきた。
後で元通りになったからとはいえ、近隣の人達には結構迷惑だったんじゃなかろうか。
特に農家の人とかには、凄い申し訳ない気がする。

「僕が聞いてて一番驚かされた能力は、やっぱりバラバラにされた時のかな……」
「ば、バラバラって……まさか……?」
「ジャック兄さんは一度、敵に氷漬けにされて、それで全身をバラバラにされちゃった事があるんだ。
でも、ウルトラブレスレットの力で……」
「や、やめてぇっ!!
怖いから、これ以上はお願い!!」

想像したら怖くなってしまったのか、何人かが声を荒げた。
バラバラになった体がくっ付いて、元通りに再生。
もう、治癒魔法とかそんな次元のものじゃない。
ホラーの領域に達している……生で見たら、トラウマになるんじゃなかろうか。
流石にこれはミライもまずいと思ったのか、ここで話を切り上げる事にした。
最期に、ウルトラブレスレットの機能を一つだけ話すことにする。

「こ、これで最後になるんだけどね。
ウルトラブレスレットは、巨大な光弾になって惑星を一つ破壊した事が……」
「はぁっ!?」

究極きました。
惑星破壊……スターライトブレイカーどころか、アルカンシェルより破壊力がありかねない。
ここまで話を聞いてきて、皆の顔は真っ青になっていた。
無茶苦茶とか、もうそんな次元を遥かに越えている。
ウルトラマンの恐ろしさを、皆はこの日、改めて思い知らされることになったのだった。


(今捜索している闇の書よりも、こっちの方を何とかした方がいいんじゃ……)
(悪用されたら、世界が軽く一つや二つ滅びるような……)

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最終更新:2007年10月25日 18:36