魔法少女リリカルなのは―Alt Schmied Jaeger―
おまけ編 それは有り得たかもしれない風景
シーン1「あれは何だ!?鳥か?飛行機か?……いや、ハンスたんだ!!」
「これまでです。都市区画における魔法の無断使用及び公務執行妨害で逮捕します」
ベルカ教会の修道服を着た女は、その手に持つトンファーを己に向ける。
動けば即座に打ち抜く。
修道女は言外にそう警告している。
――――ここまで……ですわね。
心残りが無い訳じゃない。
会いたい姉がいる。やり残したことがある。
しかし状況は手詰まり。打開策などは無い。
――――筈だった。
轟音。
その刹那の後に、文字通り天井をぶち抜いて『ナニカ』が現れ、
その勢いを衰えさせることなく下層へと落下して行った。
メガネ「……………」
トンファー「…………」
『(´;ω;`)出シテー、ココカラ出シテー』
シーン2「やっぱり生きてた!スバルルート!!」
『…………何故ダ?何故俺ヲ助ケル』
奇妙な状況であった。
彼は今、かつて相対した女魔導士と背中合わせで戦っていた。
自分には成すべきことがある。しかし、少女にとってこの戦いは何ら関係無い筈であった。
「私の質問に答えて。そうしたら答えてあげる」
銃弾を掻い潜り、兵士たちをシューティング・アーツで悉く地面に叩きのめしていく。
『…………何ダ』
少女を狙う幾つもの銃口。されど銃弾が少女に届くことはありえない。
火葬兵の操る炎が射線を遮り、それでも尚、向かってくる銃弾は彼の体で弾かれる。
「あなたは何故戦うの?」
それは、きっと以前の彼なら答えられなかった問い。
だが今なら答えられる。
誇りを持って、答えを言える。
『仲間ノタメ。モウ二度ト失ワナイタメ』
その答えをスバルは微笑みを持って受け止める。
一つ、少女は学んだことがある。
それは、力では絶望に陥った人間を救えないということ。
どうしようもない闇に陥った人間を救うのは何時だって、傍に居てくれる人、そして、その人自
身の意志なのだから。
かつて、自分では救えることができなかった青年。
彼は今――――自分自身の意志で前に進んでいる。
なら自分は彼に何ができる?
――――――――決まっている。
そのために鍛えた。力を求めた。いつか見た理想を追い求めた。
答えるべき言葉は決まっている。
「――――貴方を助けに来たの」
私では、貴方を救うことはできない。
けれども――――前を進む貴方を支えることはできる。
前へ。前へ。
炎の神が往く。
幾百もの銃弾をものともせずに。
かつての誓いを守るために、青年は前進する。
――――その背中を、小さな少女が支えていた。
最終更新:2007年11月01日 20:09