『仮面ライダー龍騎…城戸真司か』
「神崎士郎…お前、こんな戦いを何回繰り返すつもりだよ!」
 それを言い終える頃には、神崎は映っていなかった…。
それもそのはず、真司の後ろにいたのだから。
『ほう、タイムベントの記憶があるのか。そのまま同じように繰り返すといい』
「残念だったな、もう前と違う進み方してるんだよ!」
『どういう事だ?』
「前はディスパイダーとの戦いで蓮に会った。でも今回は蓮じゃなくて手塚に会ったんだ」
 言い終える前に、神崎は再び鏡に戻っていた。
「それだけじゃない。この時点では前は誰にもばれてなかったのに、今回は何人かの人にばれているんだ」
『すでに前と違う進み方をしているのか…それもいい』
「神崎士郎!俺は絶対に、ライダーの戦いを止める!誰一人死なせたりしない!」
『それがお前の願いか。いいだろう。そのために戦え…戦え!』
 言い終えると、神埼が消えた。
(そうだ、誰かに死なれてたまるかよ…!)

 翌日、OREジャーナル。
「火事に気付いた場合、最初にどんな行動をとるかで生存率が変わってくるという…と」
 現在夜勤で火事に関する記事を書いている真っ最中。
近くにあるコーヒーメーカーもコーヒー蒸発を通り越してメーカーそのものが溶け出している。
「正確に火を消せるかは疑問だ…よし、もう一頑張りだ」
 真司、気付け。コーヒーメーカーが火元になって火事になっているぞ。
「火事の恐ろしさには…お?」
 やっと気付いたが時既に遅し。
「うわ!火事だよ火事!どうすんだよ!」
 必死に消そうとするが、消えない。全く消えない。それどころか延焼している。
「何だよこれは!どうなってんだよ!消防車!消防車ぁ!う熱っち!熱っちい!!」

「火事だ…火事だ!」
 どうやら夢だったようだ。しかも今は昼前である。
「ちょっ、何やってるの城戸君!」
「火どこ!?火、火、火!」
 思い切り消火器をぶちまける。寝ぼけているようだ。
「うわ!お前何すんだ!」
「あ~!アマリリス…」
「あああああ!うああぁぁぁぁ!!」
 寝ぼけて未だに消火器をぶち撒ける真司。いい加減目を覚ましてもよさそうなものだが。
「いいかげん目を覚ませこのバカ!」
 大久保のヘッドロック+ブレーンバスターのコンボが決まった。城戸真司、K.O.

第六話『蛇と蟹』

 その頃学校では。
「そういえばはやてちゃん、一つ聞きたいことがあるんだけど」
 なのはがはやてに話を振る。
「ん?何や?」
「はやてちゃん、前から真司さんと知り合いだったみたいだけど…どんな人なの?」
「ちょっと待った。その真司って人、誰?」
 昨日のやりとりを知らないアリサが聞く。
「ああ、昨日からアースラに協力してくれてるライダーの人だよ。あの人も戦いを止めたいみたい」
 なぜなのはが知っているか。その答えは簡単、そのやりとりの時に艦橋にいたから。
まあ、筆者の技量不足でセリフもらえなかったが。
「ふぅん…あたしも興味あるな、その真司って人とはやての関係」
 いつの間にか話題がはやてと真司との関係にすり替わっている。
はやて以外の全員が気付いているが、あえて黙っていた。その方が面白そうだからである。
「ちょ…どうしても話さなあかん?」
「ごめん、はやてちゃん。私も興味ある」
 すずかまでもが「さあ話せ」といったオーラで迫る。
助けを求めるかのようにフェイトの方を向くが…
「はやて…諦めて話したほうがいいよ」
 孤立無援。味方はいない。
観念したかのように話し始めるはやて。
「別に大したことやあらへん。2年くらい前やったかな?真司君がうちの近所のアパートに越してきて、それ以来仲良うしてもらってるんよ。
私から見れば、真司君は年の離れたお兄ちゃんみたいなもんやな」
 気のせいか、真司のことを話すはやてが少し楽しそうに見える。
「…まあ、頼りにはならへんけどな」
 最後の一言でどっと笑いが巻き起こった。

 で、放課後の帰り道。先日の4人にはやてを加えた5人での帰宅途中。
「あれ?真司君。何かあったん?」
 はやてが向こうから歩いてくる真司に気付き、声をかける。
「あ、はやてちゃん。いやー、アパート追い出されちゃってさ」
 そう言われて改めて真司を見ると、なるほど。かなりの大荷物だ。
多分アパートからありったけの荷物を運び出したのだろう。
「それで、新しく住む所決まるまで会社に泊まらせてもらおうと思って…」
 それを聞き、少し考えるはやて。何を考えているかは大体想像がつくが…
考え事が終わると、想像通りの事を言い出した。
「それやったら真司君、うちに住むってのはどうやろ?」
「え?いいの?」
「うん。真司君やったらいつでも大歓迎や」
「…それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうとするよ」
 住む所が決まったことか、それとも会社に泊まらずに済んだことか。
どちらかは分からないが、真司が嬉しそうに申し出を受け入れた。
「…はやてが『頼りにならない』って言ってた理由が分かった気がする」
 思い切りため息をつくフェイト。それと同時に「自分の義兄がこうだったらちょっとな…」とも思っていた。

 所変わってここは拘置所。浅倉威はここで拘留されていた。
「浅倉威、弁護士と接見だ!」
 看守が浅倉を呼び、面会室へと来るよう指示する。
「イライラするんだよ…こんな所にいるとな」
 口に出すあたり、相当イラついているようだ。
というのもこの男、幼少から暴力に包まれて育ってきたために、今では暴力無しではすぐイライラする性格になってしまっているのだ。
そして弁護士の北岡秀一との接見、裁判の結果によりさらにイライラする事になった。
「懲役10年、まあ納得できる判決だと思うよ。
俺としてもギャラの範囲で全力は尽くしたし」
「…無罪に出来る弁護士じゃなかったのか」
「程度ってもんがあるだろ?ここまで減刑させるのもかなり強引な手を使わなきゃいけなかったし。
だいたい動機が『イライラしたから』?通用しないよそんなの」
 そう言うと北岡は荷物を片付け、席を立つ。
「…浅倉さん、弁護するにも相性があるんだよね。悪いけどあんたとは合わないみたいだ。
控訴するんなら、他の弁護士雇ってよ。じゃあね」

 浅倉の収監されている部屋にて。
「クソッ…イライラしやがる…」
 先ほどの北岡とのやりとりもあいまって、非常にイラついているようだ。
その時、何かの違和感を感じ取る浅倉。窓から外を見るが、何も無い。
そして戻ろうとしたその時、神崎が『いた』。

 ジリリリリリリリリ!!
警報のベルが鳴り響く。脱獄を伝える警報だ。
急ぎ看守や警官がその現場…浅倉のいる部屋へと向かった。
だが、そこに浅倉は見当たらない。代わりにいたのは紫の鎧と銀の仮面を着けた仮面ライダー『王蛇』だ。
「このイライラ…お前らで晴れるか…?」
『SWORDVENT』『ADVENT』

 数時間後、海鳴署にて。
「何ですって?浅倉が!?」
 浅倉脱獄の報を警察が聞いたのは、脱獄から数時間後だった。
というのも、その拘置所で浅倉のところへと向かった人間は皆、何者かに殺害されていたのである。
須藤雅史刑事は、脱獄と殺害両方に対しての怒りを覚えていた。殺された警官の中に彼の友人がいたとなれば尚更だ。
その憤怒の表情を見られるのが嫌だったのか、須藤は休憩室へと去っていった。
「浅倉め…!」
 怒りのあまり、それを言葉に出来ていない。
その状態でようやく絞り出した言葉がそれであった。
しかし、殺しはともかく、どうやって脱獄したのかが気になっている。
神崎が彼の前に現れたのは、その時だった。
「誰ですか?いやそもそもどうやってここへ?」
『そんな事はどうでもいい。浅倉威の事で話がある』
「…何か知っているんですね?」
 そして神崎は全てを話した。
ライダーの戦いのこと、自分が浅倉にカードデッキを渡したこと、その力で看守・警官皆殺しにして脱獄をしたことを。
「…じゃあ、あなたのせいで浅倉は…!!」
『今更何かを言おうとは思わん。今俺に出来るのは、お前に浅倉を倒せる力を与えることだけだ。』
 そう言うと、カードデッキを取り出す。
須藤はすぐに、これが例のカードデッキだと理解した。
「何のつもりか知りませんが、これは頂いておきます。
この力で浅倉を、そしてその浅倉に力を与えたあなたを殺す。
今から覚悟しておくことですね」
『覚えておこう』
 そう言うと、神崎は去っていった。

   次回予告
『昨日未明、脱獄事件が発生しました』
「おい、待てよ蓮!」
「ここがミラーワールドか」
「何だ、あいつ…見たことも無いライダーだ…」
仮面ライダーリリカル龍騎 第七話『夜の騎士』

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最終更新:2007年08月14日 10:51