星河の覇皇

注)このレビューは第四部第五章 英雄と梟雄その八と設定資料集まで読んだ時点で書かれています。


【文章】
SAKATAの文章は実に独特な文章である。
地の文を書くと調和が乱れ、会話文のみで構成されると非常に読みやすいのだ。

SAKATAの会話文には、なんとなく、ああそんなもんなのかと、つい何処かで納得してしまう何かがあるのだ。
例え、後で矛盾点を見つけたとしても黙ってスルーできそうな何かがある。
背景にある膨大な世界設定が会話文という漏斗を伝って一滴づつ落ちてきているような感覚。
ただ彼には表現できないだけで、SAKATAの頭の中ではこの物語の世界観が、
細部まで完全に構成されていることを意味しているのかも知れない。

第一部一章序盤から地の文が極端に少なくなるこの作品ではあるが、
おそらく彼は気づいたのだ。地の文を書いたところで、自ら描いた世界を到底表現できるものではないと。

結果、内容はどうあれ文章を読み進めるという点において、
SAKATA作品『星河の覇皇』は誰にも追いつくことができない文量とスピード、そして継続力を手に入れた。
細かい背景や設定については第四部終了時に今までの鬱憤を晴らすかのような8ページにも及ぶ設定資料集にて説明されている。

通常ではありえない書き方であるが、ここまで継続性があるとそれはもはや個性である。
私は敬意を持って評価したいと思う。


【設定】
この作品の設定が未来という点で、まず読者は誤解を強いられる。
まず前提として、この作品の地球、およびたその地球が歩んできた歴史は平行世界のものであると考えると非常にスムーズに事が進む。
そう、既存の国家間の軋轢や歴史など吹き飛ばしてしまえばいいのだ。
ここはSAKATA宇宙で、SAKATA世界、SAKATAアメリカがありSAKATAEUとSAKATA中国、そしてSAKATA日本があるのだから。

次に技術という面でも割り切ろう。
これは簡単である。既にこの世界では星間移動の問題も重力編流もテラフォーミング技術もその他全ての技術。
つまりは、宇宙をまたにかけ、ドンパチできる環境まで人類は色々進化した、と考えて欲しい。

【キャラクター】
ある意味描写を捨てたこの作品にとって主なキャラクター以外の容姿は、ほぼ読者に任せられているといってもいい。
下手すると主要人物も描写されていないこともあるのだが、気にしても仕様がない。
この作品はSAKATAから世界を伝えられるのではなく、SAKATAの世界へと飛び込んでいくことが醍醐味なのだから。

とは言っても、二部に差し掛かると私も読み進めるのに苦痛を覚えてきたので、ある手法をとることにした。
コミック版の銀河英雄伝説を読前に服用するのである。そうするとあら不思議、
主要人物ややられ役のモブの描写はいらなくなり、なんと戦闘シーンまで想像しやすくなるという画期的な手法である。
このお陰で、夕方からこれを書いている夜21:00まで、なんとか読み進めることができた。


【構成・内容】
プロローグはあまり気にしなくてもいい。第一部では別世界になっているからだ。

EU 連合 中国 アメリカ アラブ ここら辺の勢力がよーいドンで宇宙の覇権を争っていくところからはじまる。
ということを既に三十五部、4,331,870文字というボリュームで描き続けている。
はっきりと言おう。内容・構成は悪くないと。彼に欠けているのは、それを表現する文章力なのだ。
原作者としては非常に適正があるのでは? と感じる。


【総括】
SAKATAは、2度と地の文を書かなかった……。
肥大したキャラクターを動かし続けるために機械とと生物の中間の生命体となり
永遠に会話文を書き続けるのだ。そして書けないと思っても書けてしまうので
――そのうちSAKATAは考えるのをやめた。

しかし、それは新たな価値観を生み出すプロローグに過ぎなかったのだ。
彼が思い描く自ら世界に飛び込み、根性で割り込んだ時、
そこにはそこそこのキャラクターと、そこそこ物語がある。
ふと振り返ると、SAKATAの世界を理解した、わずかばかり達成感と、
さらに深く掘り込まれ、肥大し続ける世界(訳:まだ9分の1しか読んでないのかよ)への絶望感を手に入れることができた。


つまるところ、ここまで書いておいて申し訳ないが、この世界は私にはまだ早すぎたのだ。
私のSAKATA専用スコップは、まだ折れはしないがこの場に埋めておこうと固く決意し、それをここに記す。





今日もごはんとから揚げがうまい。
疲れました。
最終更新:2011年10月02日 13:41