- 283 名前:せっかくバレンタインだし[sage] 投稿日:2009/02/14(土) 00:18:15 ID:qL8C92MM
- 「夏目くん!!」
学校の帰り道、夏目は家の近くまで来たところで多軌に呼びかけられた。
走って追いかけてきたらしく息を切らしている
「タキ…どうしたんだ?そんなに慌てて」
「はい夏目くん、これ」
不審に思う夏目に構わず多軌は鞄から包みを取り出した。
「今日バレンタインでしょ。学校で渡してもよかったんだけど…ちょっと恥ずかしくて」
目を逸らしながらほんのりと顔を赤く染めながら話す多軌を見て、夏目も少し恥ずかしさを感じた。
バレンタインなどまるで縁のない暮らし。もちろん初めての経験だ。
「あの…これ、私が作ったから…期待するほど美味しくないかもしれないけど…」
「大丈夫だよ、ありがとうタキ。貰えるだけで嬉しいよ」
夏目が笑みを浮かべながら包みを受け取ると多軌も笑い返した。
「ただいまー」
「おかえり貴志くん。あら?どうしたのそれ?」
多軌と別れ家に帰った夏目が持っている包みを見ての一言。
「い、いやこれは…」
焦る夏目を見て塔子は目を輝かせながら喜んでいた。
「よかったわ、貴志くんもちゃんと青春してるのね。そんな貴志くんに渡すのもあれだけど…」
一旦奥へと戻った塔子は多軌と同様に包みを持って現れた。
「はい、バレンタイン。こんなおばさんから貰っても嬉しくないだろうけど、よかったら食べてね」
「そんなことないですよ。本当にいいんですか?ありがとうございます」
思わぬ事態に夏目は驚いたが素直に喜んだ。
「おや?帰ったね夏目」
自室に戻ると迎えたのはニャンコ先生ではなくヒノエだった。
「ん?お前はなかなかの色男みたいだねぇ」
夏目が持つ二つの包みを見ながらヒノエはキセルをふかした。
「私も持ってきたんだけど…いらないかい?」
ヒノエは箱についた紐を指にかけクルクル回している。
「貰ってもいいのか?」
「本当はレイコに渡したいんだけどねぇ。その代わりだよ。お返しは高くつくからね」
ヒノエはふっと笑ったかと思うと部屋を出て行った。
一人になった夏目は三つの包みを机に並べる。身なりはどれも違うけれど温かいものを感じた。
「ありがとう」
誰に言うわけでもなく小さく呟いた。
「そういえば、先生の分は誰も用意してなかったな…」
最終更新:2009年07月05日 04:16