名取×柊
※凌辱というか強姦?
※まったく甘くないです
134 :『おもいびと』1/5:2010/04/03(土) 00:55:44 ID:uw1ZEvyA
『おもいびと』
客間の依頼人が帰った。
自室に戻った名取が眉を顰めた。
暗い目は曇天と、ぴたりと閉じられた障子のせいではない。かなり性質の悪い仕事が持ち込まれたからだ。
「夏目に頼む、か」
「良いんですか」
あれを巻き込むのを嫌うのに。問いには、ため息とともに右手が軽く振られた。
「今回ばかりは良いも悪いも無いようだね。さて、どうしたら夏目は組んでくれるかな」
「私は反対です。件の妖にあやつの甘さは危う過ぎる。主様に累が及びましょう」
夏目は、祓い人が及ばぬ力と妖がつけいる恰好の隙を合わせ持つ。
その隙こそが夏目と名取の決定的な違いだ。
情を移す者と──憎む者。
「口数が多いね、柊。随分と夏目を気に入っているようだ」
「あり得ません」
「お前達妖が、それほど惹かれる理由を知りたいね。強い妖力?それとも私と違って……妖びいきだからか」
眼鏡越しの冷たい視線、自嘲めいた口の端を上げるだけの薄い笑みは、無言の私に注がれた。
「…まあいいよ。仕事だ、魔除けを」
「はい。失礼します」
立ち上がった名取の着流しをはだけ、胸に黒々と魔除けを描いた。
帯へと筆を戻すその瞬間。
着物の合わせにかけた左手首と、腰に伸ばした右肘の内側が捉えられた。
ぼたりと筆が落ちる。
墨が漆喰の壁まで飛沫のような染みをつけた。
「あっ」
くっ、とかかった指で頤が反らされる。
薄暗い室内、名取の表情も不明瞭だ。その首筋を、墨と同じ色をした妖の痣だけが鮮やかに這った。
「やはり……気に入らないね、柊。お前は私の式だろう?」
毒の滲んだ甘い声で囁かれると、外れた面が畳の上でかたりと乾いた音を立てた。
「主様、意味が」
名取の目は眇められ、腕を掴む手には痛いほどに力がこもった。
だんっ!
細身とは思えぬ力で壁に押しつけられ、背に負った刀の鈴が鳴った。
「夏目に惹かれるな、と言う意味だよ」
「…戯れを。私は主様の式」
惹かれるなどと──そう続けようとした唇が塞がれた。間近の瞳の下に痣の妖が黒々と姿を現わす。
──名取が私に口づけを。
総身が炎に包まれたかに思えた。
荒々しく貪るように私の冷たい唇は吸われる。
あたたかい『人』の舌に口内は翻弄され、頬の内側を滑らかな感触が這う。
快感に瞼が閉じていく。
頭蓋にくちゅ、にちゃと濡れた音が響いた。
荒い息遣いは私か、それとも。
歯の表裏が一本ずつじりじりとなぞられ、私の舌に絡む。呼吸の為僅かに離れても執拗にそれは繰り返された。
(…んんっ)
甘い甘い唾液がたっぷりと注ぎ込まれて頭の芯が痺れた。
息が浅く弾んで、身の内の何処かが切ないほどに熱い。そこからじわり、と液体が染みだす感覚を知った。
私に合わせて鈴も身を震わす。
そうして、薄く開けた目に映ったのは───冷たく昏い瞳。妖を見る目。
屋根を叩く石礫の様な音に今ごろ気づく。
135 :『おもいびと』2/5:2010/04/03(土) 00:56:51 ID:uw1ZEvyA
微かな動揺は気取られて名取が離れた。
「脱ぎなさい」
「主様」
命には、抗えない。
凝っと注がれる視線に耐えて、帯を解き襟をはだける。
「従順だね」
名取の歪んだ唇から小さく笑いが漏れた。
「そこまででいい」
両手首をひねりあげられ、露になった胸を名取の舌先が伝って舐めていく。
(…あっ…)
すぐに探り当てられた先端は、初めての快感に既に固くとがってしまっていた。
「…へえ」
酷薄な笑みに羞恥で身が竦む。
ちろちろと舐めては甘噛みし、緩急を使い分ける男の舌で愛撫は続けられた。
それは余りに心地好く、身体中の力がそこから吸い取られ、嬲られているのに込み上げる嬌声を必死でこらえた。
急に乳房が激しく掴まれ、捻りあげるように揉まれた。ぐっと鋭いものが食い込む感触、薄い爪が肌に突き立てられる。
(…くっ!)
唇をきつく噛み締め痛みに耐える。
その反応を悦ぶようにくつくつと耳元で名取が笑った。
「…こらえたか」
再度乳房を強く捻った手は胸の形をなぞり、赤い蚓腫れがその跡を追って印された。
そのまま体は壁により強く押しつけられる。
鈴が澄んだ音を立て、名取が囁いた。
「主には……逆らわないね?」
名取の頬と胸と手のひらが私にぴったりと密着し、吐息と鼓動と肌のすべてから私は名取を感じる。
押し潰された強さのまま、乳房はゆっくりと円を描いて揉みしだかれた。
首筋を舌がなぞっていく。
漏らしかけた吐息の代わりに名を呼んだ。
「主…さま」
応えは無い。
着物の裾を割って腿の間に名取の膝が入り、ぐっと足を広げられる。
(…は、あっ!)
くちゅり。
伸ばされた名取の指がついと私の陰裂をなぞると、そこは既に溢れた粘液でぬめっていた。
自身の淫らな音に思わず顔を背ける。
上下する指先は秘所をいたぶるように擦り、そこはますます濡れていく。
痺れる快感が身を襲い、ぐっと目を閉じ、さらに強く唇を噛み喘ぎを押し殺した。
血の味が滲む。
背で鈴が鳴る。
外はたぶん雨が降りだした。
136 :『おもいびと』3/5:2010/04/03(土) 00:58:02 ID:uw1ZEvyA
「妖といえども…女だね。こんなに濡れているとは思わなかった」
名取の言葉は嘲るような調子を増し、指は開いた襞の奥に激しく侵入する。
(あっ…)
刺激に目だけを見開いた。
私の中の小さな突起を探りあてた名取は優しげに微笑んだ。それはさながら、張りついたような微笑み。
ちゅくちゅぷとわざと音高く指の腹で突き、指先で摘む。
何度も重ねるごとに強まり、快感が痛みに変わっても遮ることも声をあげることも出来ない。
逆らってはならないのだ。
「滴るようだ……いやらしいね」
耳たぶを軽く咬まれ、ぞくりと新たな快感が生まれた。
名取の指で身体は震え、とろりとした粘液は一層溢れだす。
背中でまた儚げに鈴が鳴った。
(は…んっ)
僅かに冷たいものが一気に差し込まれた。
つぷ、と名取の指が襞の内部を探り、くちゅくちゅと暗い部屋には卑猥な音が満ちる。
「…男を知らないか」
ふうん、とまた名取が微笑む。
「その癖これほど濡らしてね。気に入らないな。お前はいつ、妖から女になったんだい」
「主様…」
名取の真意を知ろうと、鈍い痛みに耐えつつ冷たい光を宿した瞳に目を凝らす。
たった一枚、隔てるものは薄いガラスだけなのに──何も見えなかった。
137 :『おもいびと』4/5:2010/04/03(土) 00:58:58 ID:uw1ZEvyA
「わからせてあげよう」
とっさに悲鳴は咽喉の奥で凍らせた。
体の奥で灼けるほどの痛みが弾けた。
固く熱いものに侵された皮膚が、代わりに悲鳴をあげた。
それは衝撃でしかなく、何一つ喜びも嬉しさも快感も伴わない、ただそれだけだった。
体ではないどこかが痛む。
脚の内側を一筋何かが流れていく。一緒に痛むそれも流れてしまえばいいのにと思った。
蹂躙は続く。
名取の荒い呼吸と、私の忍ぶ喘ぎと、ぐちゅぐちゅと絶え間ない水音に時折雨音が混じった。
(く…うぅっ)
ぐちゅ、と挿入れば粘膜は引きつれる。
(ん、くっ)
ぬちゃ、と引かれれば引き摺られ痛む。
初めて貫かれた襞のなかには、それしか存在出来なかった。
「…耐えるか。まあ……式だし、ね」
名取の声は、私を苛むそのためだけに発されている気がした。
腰を掴まれ壁に押さえ込まれた状態では、身動ぎもままならない。
(く…んっ)
ずちゅずちゅと突き上げられる名取のものを、最奥で受け止めるだけの器官になった気がした。
虚ろな目で名取を見上げても、視線が絡むことは無かった。
(ひっ…)
また強く胸が掴まれる。傷の上に重ねて爪が立てられた。
「啼かないね、柊」
何故、これほどまでに。
額に触れた頬も胸に合わさった胸も、痛みと淫らな行為にだけ塗れた部分すらもあたたかいのに。
凍えるほどに寒かった。
(ひ…あっ)
動きが早まる。ぐちゃぐちゃと高まる音と血の匂いがまとわりついて、微かに覚え始めた快感は消された。
ぐっと熱いものが体の中に吐き出され、名取が身を引いて。
「…戯れだよ」
私の間近で名取を飾る優しげな笑み、それは作られたものでしかないと悟った。
138 :『おもいびと』5/5:2010/04/03(土) 00:59:56 ID:uw1ZEvyA
窓際に立ちこちらに背を向け、引かれた襟に胸の魔除けは隠される。
その右手首を伝い、黒い痣は袖下へ姿を消した。
「私は依頼の場所へ向かう。柊は夏目に伝言を」
「お供します」
私は身を整え面をつけ、また座して答えた。
たった今の痛みなど、おくびにも出さずにいられるのは妖だからだろうか。
「不要だ。笹後と瓜姫を先に行かせてある」
確かに私以外の式の気配はない。
「依頼人はおそらく七瀬さんの差し金だろう。紙をつけ、そろそろ居場所がわかる頃だ」
見えない者で助かった、と口の端をあげる。
「私にも手を出してくるとは……誰を狙ったのかな」
面の下で、瞬きせずに受けた視線に含まれた感情を、私は知りたくなかった。
淡々と言葉を発する。
「的場の指示でしょうか」
「さてね。調べてみないことには目的も対処法も判らない」
手段を選ばぬ奴ら相手では、名取の身にも危険が及ぶ。守らなくては。
「尚更私が。夏目へは紙を飛ばしてください」
「行きなさい、柊」
「ですが」
「…式は主に従うもの、だ」
「…はい」
食い下がっても、有無を言わせぬ「主」の言葉に頷くしか無い。不甲斐ない。
傍で守ることすら拒否されるのか。
消える間際、名取が発した言葉は聞き取れなかった。
どんなに体が痛んでも、心が凍えても、私の頬は濡れなかった。
想うことすら、かなわないのだ。
妖の身は。
最終更新:2010年05月03日 22:52