219 :『夜に交わすは』前編1/6:2010/05/14(金) 12:48:30 ID:nmIE4Z1W
「……名取さん」
「ん?どうかしたかい?」
「おかしくないですか……」
「何がだい?」
首を傾げる名取に夏目が真剣に詰め寄った。
「部屋割り、です。普通──名取さんとおれじゃないですか」淡い間接照明の中でも夏目の頬は赤い。周囲を憚ってか小声の抗議は迫力がない。「なんでおれとタキなんですかっ!」
「私はダブルベッドに夏目と寝るなんてお断りだよ。ああ──多軌さんとなら大歓迎だけれど、いいのかい?」
「だ、ダメですっ!」
「じゃあ決まりだね、はい鍵。夕食は私の部屋で一時間後。その前に温泉に入ってくるといい」
名取はビールにつられたニャンコ先生を肩に乗せて廊下の角を曲がっていった。
しっかり遊ばれた挙げ句何も変わらず、夏目ががっくりと肩を落とした。(何だか覚えがあるわ、この感じ──初めて一緒に泊まった時だ)あの時はタキが押し切ったのだ。
付き合うようになっても変わらない生真面目さがらしくて、タキは嬉しかった。
「ええと──ごめん」
「ううん、嬉しい」
「え」
「私、とっても大事にされてるんだもの。さ、入ろう?」
220 :『夜に交わすは』前編2/6:2010/05/14(金) 12:49:25 ID:nmIE4Z1W
部屋は和室の二間続きで、畳の上にベッドが置かれていた。その横に荷物を下ろして二人で伸びをする。
「ちょっと不思議ね」
「ああ。流行りとかなのかな。……おれ、ベッド初めてだ」
「そうなの?じゃあ、せーの、ってしようよ」
「せーの?」
「こうするの」タキは夏目に靴下を脱ぐよう指示して、手を繋いでベッドの足元に後ろ向きで立った。両手をあげて準備完了とばかりに掛け声をかける。「せーのっ!」
ぼすん、と勢いよく倒れこむと、仰向けの体が跳ねてタキはきゃあ、と笑った。
「はは、楽しいな、これ」
「でしょう?」
くすくす声をあげながら横になったまま向かい合うと、図らずも夏目と抱き合う格好になった。はしゃいでいたのが急に恥ずかしくなって、タキは下を向く。
「あの、良かったね、カイに逢えて」
「──ああ、ほんとうに」「また来ようね」
「──タキ」
有り難う、それと同時にタキは抱きしめられた。夏目から甘い花の香りがする。腕の強さに、良かったなと改めて思った。
(良かった。夏目くんがカイに逢えて。辛い思い出が増えなくて。良かった、良かったね。夏目くんが幸せで私はこんなに嬉しいよ)
「良かったね、夏目くん。良かった」
「ああ」
タキは夏目の背中に腕を回した。涙をこらえて目を閉じたまま、首筋から顎をなぞって唇で唇を探り当ててキスをした。
「んっ」
舌先で割り入ろうとしたのを夏目の舌に先に絡め取られて、どくんと心臓が跳ねた。
絡んだ舌でお互いの咥内を舐め合う。歯の裏表をひとつずつなぞり、柔らかな頬の内側を辿り、また舌へ戻る。息が弾んで苦しくて、は、と短い呼吸を挿んでは戻る。
───甘いような気がするのは、染み付いた花の香のせいなのかしら。
キスの激しさはゆっくりと落ち着いて、二人は啄むみたいに互いの唇を食んだ。タキは夏目の口の端まで濡らした唾液をそっと舐め取った。
「──夏目、くん」
「──何?」
こつん、と夏目の額にタキは自分のそれをあてた。胸が鳴って声がよく聞こえない。
「触って、欲しいの」
221 :『夜に交わすは』前編3/6:2010/05/14(金) 12:50:17 ID:nmIE4Z1W
タキの伏せた目を縁取る睫毛が、瞬きの度にしっとりと水分を含んだ音をたてる。流れた髪を避け撫でた頬が上気して、熱い。
「──触るよ」
夏目の声にびく、と抱いた体が震えた。カットソーの裾をたくし上げ、手を滑り込ませる。背中のホックを外して暖かい膨らみに触れた。
柔らかな中にぽつんと固い感触を、夏目は手のひらの窪みで味わう。はあ、とタキが切なげなため息を漏らした。ずらした指先でそこを摘んで軽く弾いた。
「あ……っ」
「もっと、触るよ」
体を起こして仰向かせると、タキが恥ずかしそうに手のひらを表にして顔を覆った。夏目はその首まで服を引き上げ、胸を露にする。
透き通るように色白の肌が室内の弱い光に艶めかしく煌めいた。
つん、と尖った淡紅色の先端を口に含むと、初めはそっと、徐々に強く吸う。タキの甘い匂いに、汗の匂いと白い花の香りが混じって夏目の鼻腔を擽った。
「あ、ん……っ」
「んっ……は、あんっ」
「んんっ……あ……あ、んっ」
唇で軽く挟んでつつくように転がした。こりこりとした感触と息遣いに合わせてタキの体が跳ねる。
夏目の舌の上でそれは捏ね回されて、タキの声も甘ったるく鼻にかかった喘ぎに変わる。ちゅ、と強く吸って離した。
「はんっ!」
「──やっぱり、弱いな。ここ」
「……だって」
指の間から漏れる消え入りそうな声に、背筋がぞくりとする。
「だって?」
「気持ち……いい、の……。あっ!」
どんな表情で口にしているのか見たくて、タキの手を剥がした。ぱっ、と顔が背けられる。
(うわ……かわいい……)
少し乱れて広がった栗色の髪。長い睫毛の奥の潤んだ瞳。さっきより色濃く染まった頬。
軽く開いた桜色の唇。こくん、と鳴った白い喉。
夏目の唾液で濡れた胸。微かに上下する滑らかで平らなお腹。
すごく色っぽくて、すごくかわいい。
「かわいいな、タキ。すごく──かわいい」
「……や」
耳に口を寄せて夏目が囁くとタキがいやいやをした。
222 :『夜に交わすは』前編4/6:2010/05/14(金) 12:53:14 ID:nmIE4Z1W
「時間、ないかな」
「……やだ。聞かないで──そんなこと」
そうか、と笑って夏目はタキのジーンズに手をかける。山に登るためだろう。今まではスカートかショートパンツ(というのか分からないが)姿しか見たことがなかった夏目には新鮮だ。
ふくらはぎの真ん中よりちょっと上で手を止めた。そのまま少し汗ばんだ内股をゆっくりと撫でる。
夏目の指が辿り着いたそこは白い下着の色を変えて濡れている。谷間に沿って指を這わすと、布の下でぬる、と滑って「あっ」タキが小さく悲鳴をあげた。
くちゅくちゅと愛撫の音をたてながら、タキの唇を奪った。舌が絡む音も重なって部屋に響く。
「ふっ……んんっ……ん」
夏目は一気に下着を下ろす。つぅっ、と透明な糸を引いて、タキの茂みの奥は溢れた蜜で濡れている。
「──すごいよ」
「や、だ……もうっ……ひ、あんっ!」
「──エッチだね」
それを舐め取るように夏目が舌を這わせる。小さな突起を探り当てて、舌先で擽るとタキが震える声で喘いだ。ちゅ、と吸い上げ、離すのを繰り返す。
タキの吐息は切なく、まるで幼い少女が泣いているみたいにかぶりを振る。
「ん、は、あ……んっ」
「は、んんっ……あ、あん」
タキ、とまた囁いて抱き起こした。華奢な肩が上下している。ベッドの奥の壁に寄りかからせて、乱れて張りついた前髪を指で撫で、顔が見えるようにかきわけた。とろん、と蕩けた瞳が夏目を見て、なつめくん、と小さく呟いた。
「──好きだよ」
「私も──夏目くんが、好き」
「このまま、するよ」
「……うん、いい、よ」
タキの両脚を揃えて夏目は自分の肩に持ち上げた。背中を左腕で支えて、とうに屹ちあがっていたものを手探りで襞の間にあてがう。は、とタキの唇から声が漏れた。
「いくよ」
「う、ん」
抵抗は一瞬で、ぬるり、とタキの中に挿入りこんだ。
223 :『夜に交わすは』前編5/6:2010/05/14(金) 12:54:03 ID:nmIE4Z1W
「あ、んっ!」
「あったかい、な」
透のなか、と囁いたら恥ずかしそうに俯いたのがかわいかった。
両手を壁について、腕の間のタキの体を押しつけるみたいに夏目は前後に動く。ベッドが夏目の膝の下で軋んだ。タキが眉を寄せて、唇を噛んだ。
「辛く、ないか?」
タキはお腹から二つ折りにされたような体勢だ。肩の上の脚も、脱がせかけたジーンズと下着で繋がれている。
「だい、じょうぶ……あっ!」
ぎし、ぎし。夏目が突き上げる度に体が揺れる。んっ、とタキが息継ぎみたいに唇を開いて身を捩り、こらえきれない喘ぎを零す。
たっぷりと濡れたなかで不規則に締めつけられる快感に、夏目の体は震える。息が弾む。粘膜が絡みついて、タキの体の奥は夏目の形になる。
「んっ……んんっ……んっ」
「ふ、あっ……んっ!」
口の中だけで喘ぐタキの唇を抉じ開け、夏目は舌を割り込ませた。細かく息を吸いながら忙しなく舌を絡め、それでも丁寧に歯列をなぞる。
渇いた喉をキスで潤して、訊ねた。
「我慢、してるのか?」
「だ、って……隣にっ、聞こえちゃ……うよっ、んっ!」
「いいよ、聞こえても」
「や、あんっ!はずかし……い、ああっ」
「おれにだけ聞かせて、透──貴志って呼んでくれ」
224 :『夜に交わすは』前編6/6:2010/05/14(金) 12:55:06 ID:nmIE4Z1W
「貴志、くんっ」
肩を掴んでいた手を滑らせて、タキが夏目の首に縋りついた。夏目はその柔らかな体をぎゅっ、と強く抱きしめた。───離したくない。
何度も打ちつける勢いで突き上げていく。
「あ、んっ!はんっ!あ、あ、んっ!」
「あんっ!貴志くんっ!たかしくんっ……!」
タキの肩が壁にあたってと、とん、と鈍い音がした。
それが痛そうで、夏目は動きを止めずに抱きしめてそっと寝かせた。汗で濡れたタキの胸が吸いつくように夏目の胸と重なった。その柔らかな感触に、体温に安堵する。
息も絶え絶えなタキが笑った。
「優しい、ね」
「──大切だから」
ジーンズと下着を抜き取ってタキの開いた脚を下ろす。擦れて少し赤くなっていた場所にキスをして、軽く口づけて、深く突いた。
夏目は何度も繰り返し繰り返しタキの体を確かめる。
「は、あんっ!んっ!」
「や、んっ!もっとっ……!」
「まだ、止めないでっ!……貴志くんっ!」
止めないよ、そう答えて一層強く追い上げるように動く。ベッドが激しく軋む。繋がった部分から響くぐちゅぐちゅと激しい水音が部屋中を満たしている。
ほんのり上気したタキの肌は匂いたつかのように綺麗だ。胸がやわやわと揺れている。喘いでは妖艶に身をくねらせる。
膝裏を支えた夏目の手が汗で滑る。タキから溢れる蜜が脚の間からシーツに滴り落ちる。
「あ、んっ!ああ、んっ!は、ああんっ!」
「たかし、くんっ……!あっ……たか、しくんっ!」
「わた、しっ……!あっ、んっもうっ……!」
タキのなかがきゅう、ときつく収縮していく。指は引き裂きそうなほどにシーツを掴む。夏目ももう限界だった。
一際高い声をあげて、タキが体を震わせた。
少し遅れて、ひくひくと痙攣するなかで夏目も果てた。
息も整えないままで唇を重ねて───夏目はタキに好きだよと囁いた。
最終更新:2010年07月25日 22:28