アットウィキロゴ

2-267

267 :『みんな雷のせい』1/6:2010/06/14(月) 01:00:03 ID:t9Q8GbvN


夏目は一人残った教室で真剣に考え込んでいた。
帰るタイミングは完全に逃した。あとは何とか乗り切るしかない。手のひらにはじっとりと汗が滲んでいる。
がたんっ、と背後の音に思わず首を竦めた。そっと振り返ると教室の入り口に目を見開いた笹田が立っていた。
「夏目君……帰ってなかったの」
「──笹田こそ」
「私は委員長のお仕事です。何してたの?」
「いや、べつに……」
思い切り歯切れが悪い答えになった。言えない。笹田には絶対に言えない。夏目はそ知らぬ顔で手を握り締めた。
運悪く、ではなくさっきから遠雷は聞こえていたのだから当然、稲妻が窓の外を横切った。轟音が響いてたった今の覚悟はどこへやら、夏目は叫ぶ。
「うわあっ!」
「きゃあっ!」
え、と顔を上げたのは二人同時だった。予期せぬ同じ反応に夏目は呆気に取られる。
「……怖いの?雷」
先に口を開いたのは笹田だ。
「……悪かったな」
「何だか……とても意外だわ。クールな夏目君」
笹田だって充分意外だと思う。真面目できびきびしていて強気な笹田が、雷で悲鳴をあげるなどにわかには信じられない。
「人は見かけによらないって言うしな……」
「何か言った?」
夏目の隣に立った笹田が咎めるように覗き込んでくる。
「いえ、何も言ってません」
その瞬間また閃いた稲光で教室が白く弾けた。ほぼ同時に雷鳴が窓を揺らす。
「きゃああっ!」
「わあっ」
叫んだ夏目の胸に悲鳴を上げながら笹田が縋りついた。思わずしっかりと抱きしめて雷をやり過ごす。
「ごっ、ごめんなさいっ」
「あ、いや、おれこそ」
怖さで微かに震え、羞恥に頬を染めつつ離れない笹田が視線を逸らしたままで謝ってくる。そういえば怖がりだったな、と旧校舎の夜が夏目の頭に浮かんだ。ついでにひっぺがしたことも思い出してくす、と笑う。
「どうしたの……?」
潤んだ瞳に見つめられて、夏目の心臓が跳ねた。
「いや、何でもない。その──離れた方がいいかと」
「あ、そ、そうよね」
ごめんなさい、とまた小さく呟いて笹田が体を離そうと夏目の胸に軽く手を置くと、また雷。光も音もほとんど同時だ。
「……近いね」
辛うじて縋りつくのを抑えたか、手を震わせて笹田が上目遣いで夏目を見た。
「……ああ」
もう一度抱きしめたい衝動が、恐怖からか危機感からかそれとも違うものからなのか夏目は戸惑う。
「怖がりが二人で……どうやってこの窮地を乗り切ればいいのかしら……」
そんな夏目の感情を知らずに、笹田がいつもの生真面目な表情で考え込んでいた。


268 :『みんな雷のせい』2/6:2010/06/14(月) 01:01:00 ID:t9Q8GbvN
笹田の心臓は早鐘のようだ。
怖さは勿論、夏目に抱きついてしまったことそれよりも──抱きしめられたこと。顔が熱い。目が合わせられない。考え込む振りをして俯いたけれど、まだ夏目の胸に置いたままの指で、膝の上に乗ったような格好の脚で夏目の体温を感じている。
抱きつきたい。そう思った時にまた稲妻が目の前を白く染めた。続く雷鳴を聞きたくなくて笹田はとっさに伸ばした手で夏目の耳を塞いで──キスをした。
どん、と震えたのは校舎か笹田か夏目か分からなかった。
「っ!」
がたん、と椅子が音をたててずれた。逃れようともがく夏目を笹田は自分の体で窓の桟に押しつける。
驚きで僅かに開いた隙間から柔らかな舌を忍び込ませ、ひとつずつ確かめるように這わせた。滑らかな歯の裏、頬の内側。体温よりちょっと熱い舌と舌を絡めると湿った音が頭の中に谺した。
「……はっ」
唇を離して息をつく。閉じていた瞳をそっと開くと夏目の顔が目の前にある。
頬を染め唖然とした表情。
「……なっ」
「こうしたら聞こえないわ──雷」
何を言っているんだろう、と笹田は自分に驚く。どんな顔をしているのかもわからないけれど、体中が火照って熱い。それに引き摺られるみたいに勝手に言葉が紡がれていく。
「つき合ってくれる……?雨が止むまで──きっと怖くないわ」
「──笹田」
呟いた夏目に抱きすくめられて、笹田ははあ、と甘い息をはいた。


269 :『みんな雷のせい』3/6:2010/06/14(月) 01:01:58 ID:t9Q8GbvN
抱きしめた笹田の体が熱い。は、と浅い呼吸を繰り返すそこから鼓動が伝わってくる。夏目から唇を重ねようとしたら、軽く胸を押し返した笹田が脚の間に体を落とした。
またあの潤んだ瞳で夏目を見上げてくる。切れ長の目を縁取る睫毛に、薄らと涙の滴が光っている。
可愛い、と目を奪われたら学生服の股間に手が伸びた。
「待っ……」
「ダメよ、怖いわよ」
「……笹田が?」
「失礼ね、雷でしょ。男の子なら据え膳は潔くいただくものよ」
きっぱりとした口調に怯んでは遮れず、少しひんやりとした手のひらでそこを刺激され、夏目は身震いする。
笹田のたおやかな指が血管の浮かぶ夏目の表面を撫でるように滑った。親指に力を込めて扱くみたいに上下しつつ、先端の溝をそっとなぞる。
真っ直ぐな瞳に浮かぶ気の強さとその行為が不釣り合いでひどく煽情的で、夏目はどんどん昂ぶっていく。
「……嬉しい」
「え」
「感じてくれて……んっ」
微かに喉を鳴らした笹田がちゅぷ、と桜色の唇で躊躇いなく夏目自身を包んだ。
「……っ!笹田っ」
予想外の事態だ。まさか口で、と固まる夏目に構わず笹田は柔らかな唇で滾るものを擦り上げる。
「は……んむっ」
含んだ唾液を絡ませ根元からゆっくりと舐め上げる。縁をぐるりとなぞって先端を這う。息継ぎをして溝を小さな舌が行き来する。窄められた唇はその周りに吸いつく。
「んっ…」
ちゅぽ、じゅぷ、と淫らな音が響く。笹田が夏目を繰り返し喉の奥深くまで咥え込む。
落ちかかる髪を指で掬い、艶めかしい鎖骨のラインが露になった。白いセーラー服の胸元が見え隠れする。匂うかのような色気に夏目は陶然とする。
細い指と白い顎まで唾液で濡らして、それを拭おうともせずに愛撫を続けるその姿は懸命でそれでいてとても淫らだ。
また上目遣いで色っぽく見つめられ、快感は腰の辺りから夏目の中をぞくぞくと駆け上った。
「笹田っ!やばっ…は」
まずい、と思った時には離せ、が間に合わず勢いよく放ってしまった。それは濡れた唇から溢れだす。
口元を拭った笹田に悪いと言いかけた唇は奪われた。
重ねただけで離れ、笹田が小首を傾げて困ったように微笑んだ。
「飲み込めなかった、ごめんね」
可愛い。
その仕草に言葉に狼狽えるほど夏目の鼓動が早まる。
隣に立つ笹田が唾液で濡れた指先で窓をすうと撫でた。
「止まないわね、雨」
校舎の屋根を叩く雨音が激しく変わっていたのに夏目は漸く気づく。笹田の甘く、でもはっきりとした声が通った。
「まだ──帰らなくていいね」


270 :『みんな雷のせい』4/6:2010/06/14(月) 01:03:00 ID:t9Q8GbvN
耳元でそう囁くと、膝まで下げたショーツから片足だけ抜き夏目の脚に跨がった。
「払い除けないでね。今されたら泣くわ」
「あれは……何ていうか反射で」
「ふふ、冗談よ」
ふわりと広がったスカートの下で屹立したものを脚の間に挟み、笹田は夏目の肩に腕を回した。
どきどきと胸が鳴る。
ゆっくりと腰を前後にずらした。熱いもので擦れた笹田の谷間はすぐに溢れて、恥ずかしいくらいくちゅくちゅと鳴る。
ぬるぬると滑る感覚と痺れる快感で床についた爪先が反った。
「んっ……」
「笹田っ…」
上擦った声で呼ぶ夏目に上気した顔を向け笹田は笑みを浮かべた。焦らすように腰を揺らせば夏目が呻く。
「……濡れてるでしょ」
軽く耳朶を噛んで囁いて、そっと手を添え体を沈めた。
「は、ん……っ」
硬いものが体の真ん中を貫いて笹田は大きく喘いだ。同じタイミングで夏目が息を吐く。
「熱…い」
「夏目君も、熱いよ」
稲妻が光ってお互いの顔を照らし、二人は一瞬目を閉じた。夏目の額に笹田は伸び上がって優しくキスをする。雨がまた強くなった。
「すぐ聞こえなくなるわ。──ここ支えててね、お願い」
夏目の両手を腰のくびれに添わせてまた肩に手を乗せる。引き上げては落とし、徐々に体を夏目に馴染ませていく。
「あ、んっ……んっ」
縁に内壁を引っ掛けるように擦り上げ深く飲み込むように沈める。卑猥な音と弾む息は漏れるそばから雨音にかき消される。雷鳴が響いて白い光は淫らに繋がる二人を学びやの壁に黒く焼きつけた。
「ん……はんっ」
絡め取るかに笹田の内側は大きく蠢く。体を上下させる度に襞はひくついて夏目を欲しがった。気持ちよくて微かに耳鳴りがする。
笹田の正面、窓ガラスの向こうを雨が滝のように流れて今は何も見えない。室内より僅かに暗い外が鏡となって、乱れる二人をぼんやりと映した。


271 :『みんな雷のせい』5/6:2010/06/14(月) 01:03:52 ID:t9Q8GbvN
深く繋がった部分からぐちゅぐちゅと響く水音を、夏目は体中で聞いている。膝の上で切れ切れに喘ぐ笹田の柔らかな髪が乱れ、額から頬にかけて張りついている。
「ん…あ、ん……っ」
笹田が頤を反らして悩ましげな声をあげた。仄かな汗の匂いと混じった甘い香りはシャンプーだろうか、それは笹田の動きに合わせて鼻腔を擽り夏目の欲望を刺激した。
「あ……んっ、は、ん……っ」
たっぷりと蕩けた笹田の中は不規則に蠕動し夏目を包む。そこは熱くて柔らかくてきつくて深い。
腰を支えた手に力を込めて突き上げたい衝動に駆られた。けれど、恍惚とした表情を浮かべた、こんな時でもやっぱり懸命な笹田がいとおしくて抱きしめるだけにした。
驚いた笹田が動きを止めて夏目の頬に触れる。「……どうしたの?」
夏目は小さくかぶりを振った。「いや──こうしたかっただけだ」
そう、と微笑んで笹田はまた体を揺らす。今度は首に腕を回して抱きついたまま。
「気持ちよくなったら、いってね」そう甘く淫靡な言葉は耳の中に注がれた。
重なった胸の柔らかさと早い鼓動に、吐息混じりの乱れる声に、濃くなった女の香りと体温に、すべてに夏目は激しく笹田を感じる。
夏目君、と喘ぎとともに呼ばれて笹田、と囁き返すとくすくすと照れたように笑った。
たまらない。
「あ、んんっ」
笹田が短く呼吸した。じゅぷじゅぷと滴った蜜を鳴らし中が締まっていく。
夏目は腕を解き両手の指を一本ずつ絡めた。その絡んだ指も火照って震えている。微かに眉を寄せて、しっとりと濡れた唇を開いて、笹田は恥ずかしそうに身を捩る。夏目には雨の音も雷ももう聞こえない。
「このまま……いいの、よっ」
押しつけるように笹田が背を反らして絡んだ指が強く握られた。早まった動きと収縮に引き込まれて、夏目は笹田の中で達した。


272 :『みんな雷のせい』6/6:2010/06/14(月) 01:06:10 ID:t9Q8GbvN
「……もう、怖くないね」
ああ、と答えた夏目の胸にもたれたまま笹田は目を閉じる。
「有り難う。つき合ってくれて──気持ちよかったよ」
恥ずかしいけれどそう口にした笹田の中で、少しだけ悪戯心が首をもたげる。
「ふふ、私、夏目君の弱みを握ったわ。どう使おうかしら」
「なっ」
「押しに弱くて雷が怖い夏目君は、もう私の虜ね」
「……脅すな」
夏目が優しい声で苦笑した。
「また、雷が鳴ったら──」
どちらともつかない囁きに重なって、水浸しの校庭に遠雷だけが響いた。
最終更新:2010年12月08日 01:11
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。