397 名前:『みんな雷のせい ~続き~』1/9[sage] 投稿日:2010/10/09(土) 00:09:28 ID:ZCjVHGs+
[2/11]
揃えた紙束を棚の隙間に収めて、夏目はこっそりため息をついた。
(やっと終わった……)
三階、第二資料室。
放課後の資料整理は水曜から数えて今日で三日目だ。雑然としていた室内はようやく片付いたが、夏目はどうも腑に落ちない。
「なんで使われてんだ、おれ……」
「苦情なら直接聞くわよ夏目君」
入り口寄りの棚に最後の一冊を差し込んだ笹田が手を払った。薄暗がりに白い埃が散る。
「え、いや、終わったしそろそろ帰ってもいいかと……笹田?」
スカートの裾を翻した笹田は無言で右手の扉に向かった。後を追おうと踏み出した夏目の足は半歩で止まった。
かちり、と小さな金属音。
やけに響いたその音が、言い様のない不安をかき立てる。
「笹田、なんで鍵……」
「──なんで?」
振り向いた笹田の髪がふわりと揺れた。顔は陰になってよく見えない。
たん、と床が鳴った。一歩、また一歩、躊躇いのない足取りに気圧され後退る。壁ぎわに追い詰められた夏目はまさか、と目を凝らした。
頭を過るのは怖い想像───田沼やあの女の子のように、笹田にも何かが憑いたのではないか。手のひらにじわりと汗が滲んだ。
「……言ったでしょ?」
「──何を」
笹田が手をのばす。
身構えた夏目の、シャツの合わせをほっそりと滑らかな指先が辿る。いちばん上のボタンから一つずつ、ゆっくりと外されていくそれを呆然と見つめる。はだけた肌を髪がくすぐった。胸に触れた唇が吐息と一緒に甘い声を紡ぐ。
「また、って──言ったの」
398 名前:『みんな雷のせい ~続き~』2/9[sage] 投稿日:2010/10/09(土) 00:10:31 ID:ZCjVHGs+
[3/11]
下がり過ぎた踵が何かに引っ掛かった。バランスを崩した夏目は背中をしたたかに壁に打ちつけた。衝撃で息が詰まった。
「いたた……」
重なって倒れた笹田も顔をしかめて半身を起こす。痛みをこらえて見据えると笹田がたじろいだ。
「な、なに?」
「笹田……だよな」
「え?何のこと?」
特に変わった様子もない。妖にとり憑かれたと思ったなどと言えるはずもなく、夏目は慌てて取り繕う。
「ああ、なんでもない──……帰ろうか」
笹田が息をはいた。細い髪に隠れた、その頼りなげな横顔に少しどきりとする。
「笹田。どいてくれないと立てない」
「……嫌」
(え……ええ?!)
ぐいっとシャツの襟が引かれた。つられて下がった唇に唇が重なる。
微かな花のような香りと甘い舌が絡む。やわらかな感触が咥内をゆっくりと巡る。細い指が項を撫でた。
呼吸が唇を掠める。たおやかな体を夏目の胸に預けて、笹田が歌うように囁いた。
「言ったでしょ──誘ってるの」
399 名前:『みんな雷のせい ~続き~』3/9[sage] 投稿日:2010/10/09(土) 00:11:26 ID:ZCjVHGs+
[4/11]
とくとくと胸が鳴る。夏目の胸にキスを落としながら笹田は制服のスカーフを引き抜く。ずっとこらえていた感情が溢れて一気にセーラー服を脱いだ。
触れたかった。体に残る体温のかけらが消えてしまいそうで怖かった。
あの雷の日から、教室でも家でも昼も夜も。まるで虜になったのは笹田の方だったみたいで悔しくて、夏目に確かめたかった。
「ち……ちょっと待て!鳴ってないぞ雷!それに誰か来たら……」
「女の子みたいなリアクションしないでよ夏目君。誰も来ないから安心して」
笹田は真っ直ぐに夏目を見返した。半裸の体が視線を感じて火照る。
「先生は一週間かかると思ってるから」
「まさか……おれが手伝わされたのって」
「このためよ」
あっさりと言い放つ。夏目ががくんとうなだれた。
「……もっと別の方法はなかったのか……笹田……」
「だ……だって夕立は全然ないし家には家族がいるし夜中の雷雨じゃ押し入れから出られないし!仕方な」
はっと口を押さえる。失言だ。弱みを自分で披露してどうする。横目で窺った夏目の、ぽかんと開いた口元が緩んだ。
「はは、意外とかわいいな……あ、いえ──ごめんなさい」
何だか嬉しそうなのが悔しくて、笹田はとりあえず睨んでおく。
「まあいいわ。すぐに笑ってる余裕なんてなくなるから。──前みたいに」
「え……」
にっこりと微笑みながら固まった夏目の手を取った。淡いブルーのレースのブラはフロントホックだ。その上に自分より大きな手を添わせる。胸を掠める指に体が震える。
「笹……っ」
「外し方、教えてあげる」重ねた指をゆっくりと上下にひねった。かち、と微かな音で胸が本来のやわらかさを取り戻す。「外し方も触り方も──テストには出ないけど」
400 名前:『みんな雷のせい ~続き~』4/9[sage] 投稿日:2010/10/09(土) 00:12:18 ID:ZCjVHGs+
[5/11]
前屈みの胸を夏目の手のひらが支えている。
「優しく、ね」
拙い愛撫が笹田の胸を這う。やわやわと揉みしだき、寄せ、潰す。つんと固い先端に指先がのびるとこらえきれずに声をあげた。
「あ、んっ」
びくっと離れた夏目の肩を抱き寄せる。
「……だめ。続けて」
もう一度手を添えて敏感な先端へ導く。すぐに摘まれ捏ねられて息が弾む。
待っていた体温。痛みにも似た甘い快感に笹田は喘ぐ。色気を含んだ自分の声の恥ずかしさに我を忘れそうになる。
「はぁ……んっ」
夏目の唇が触れた。ちゅ、と音を立てて吸われる。甘噛みされて脚の付け根が疼いた。触れて欲しくて切なくて腰が浮く。
床についていた手をずらしてスカートに隠れた夏目の股間に触れた。
401 名前:『みんな雷のせい ~続き~』5/9[sage] 投稿日:2010/10/09(土) 00:13:14 ID:ZCjVHGs+
[6/11]
上気した頬と、少し潤んだ瞳が夏目を見た。
「ここ……すごいよ」
「え」
離れた唇がつう、と夏目の体を降りていく。ベルトが手早く外された。
「うわっ!それは待てって笹田っ!」
「待たないわ」
くぷ、と卑猥な音と共に夏目のものを小さな唇が食んだ。ぬるぬるした舌が巻きついて、じっくりと根元まで飲み込まれる。
口をきつく窄め、今度は先端まで戻る。唾液を絡めた細い指に、強く、時にそっと上下に扱かれ夏目は微かに呻いた。
嬉しげな笑い声に、眉を顰めた片目を開けた。溝を舐めていた笹田が、唾液で光る唇を綻ばせている。
「……笹田だって笑ってるぞ」
「感じてる夏目君がかわいいからよ」
「──男にそれは褒め言葉じゃないからな」
「それでも事実よ。ん……っ」
反論の機会は与えられずまた口に含まれる。笹田が眼鏡の隙間から上目遣いで夏目を見つめる。
濡れた唇。淫らに蠢く指。落ちかかる髪のむこうで、白い膨らみと先端の桜色が揺れる。
目が合う。前よりは余裕のある、けれどやっぱり懸命な瞳。雷の日と同じで、それでいて一層いやらしくて。
かわいい。
夏目の上を流れた唾液が笹田の指に糸を引いた。それを几帳面に掬っては舐める。見慣れた生真面目な姿が時折覗いて、体への刺激と視覚の効果は絶大だった。
(うわ……ヤバっ)
声も出ないうちに放ったものを、一瞬身構えた笹田が喉の奥で受け止めていく。伝ったものも指に残ったものも丁寧に舐め取られた。
「ふふ──綺麗に出来たよ」
人差し指で唇をなぞり満足げに笑う姿は、目眩がするくらいかわいかったけれど、怒られそうで黙っておいた。
402 名前:『みんな雷のせい ~続き~』6/9[sage] 投稿日:2010/10/09(土) 00:14:16 ID:ZCjVHGs+
[7/11]
夏目が触れた部分が熱い。
笹田は腰を浮かせてスカートとショーツを脱いだ。学校内で全部脱ぐことに抵抗がなかったわけではない。それでも内側から火照る体が笹田を急かした。
こくん、と喉が鳴る。
夏目の胸に凭れ、大きく開いた膝を少しずつ曲げていく。くちゅくちゅと水音。少し、また少し。溶けた笹田で潤った固いものは襞の間を擦ってなかへ潜り込んだ。
「ん……っ」
「……濡れてる」
「気持ちいいでしょ……あっ」
根元まで腰を沈めると待ち焦がれていた快感が笹田を蕩かす。閉じそうになった瞼を薄く開けた。
「熱い、ね」
繋がったままほんのちょっと背伸びをしてキスをした。
「おれが……」
「だーめ」
にっこりと微笑んで腰に回っていた手を探った。指を絡めしっかりと握る。
夏目の手だ。荒い息の奥で鼓動がまた早まって、触れられるのが嬉しいんだと笹田は気づいた。
握った手に力を込める。そこを支点に腰を上げる。粘膜は夏目以外何も感じない。たっぷり濡れたなかに刻みつけるように腰を落とす。体が震える。
ぐちゅぐちゅと響く結合の音が渇いた室内を濡らす。
何度も繰り返して、夏目だけを全身で感じて声をあげた。
403 名前:『みんな雷のせい ~続き~』7/9[sage] 投稿日:2010/10/09(土) 00:15:21 ID:ZCjVHGs+
[8/11]
やわらかさが夏目の感覚を奪う。髪も頬も胸も腕も膝の上に抱えた両脚も腰も奥まで繋がった部分も、それは全部笹田の感触だ。
笹田が腰を揺らす。とろとろと溢れる蜜がきついなかへの侵入を許す。
「あ……っ……んんっ」
絡んだ指がそのたびに震える。固く尖った胸の先端が夏目の肌を擦ると笹田は切なげに身を捩った。
潤んだ目が夏目を見上げている。
「どうした?」
「かわいくて──ちょっと、悔しい……」
「だから、褒めてないぞ」夏目の肩に顎を乗せ笹田はくすくすと笑った。
体を起こす。指を解いて笹田の腕を肩に乗せた。
手を伸ばした笹田の全身が目に入る。
額に浮いた汗がほつれた髪を濡らしている。眼鏡の向こうの瞳は熱っぽく夏目を見つめている。なだらかな肩と丸く張り詰めた胸が大きく上下して揺れる。
平らな腹の下、淡い色の繁みの奥は深く夏目と繋がったままだ。
「じろじろ見て──夏目君のエッチ」
「あ、いや」
「嘘。いっぱい見ていいわ。忘れられなくなるから」
余裕たっぷりに桜色の唇を綻ばせた。
404 名前:『みんな雷のせい ~続き~』8/9[sage] 投稿日:2010/10/09(土) 00:18:15 ID:ZCjVHGs+
[9/11]
今度は深い。笹田は体を大きく上下させる。いつの間にか留めたピンが外れ、長めの前髪が額から目に落ちている。
見慣れない、大人びた雰囲気の笹田が斜に首を傾げた。頬にひとすじ、口の端にかかった髪を紅い舌が舐める。
それを指で外してやると、恥ずかしそうに笑った。
同じ口で激しく呼吸しながら夏目に口づける。ついばむように何度も何度も。吐息がキスで濡れた唇を冷やし、また重なった唇があたためていく。
それでも夏目を見つめて逸らさない瞳に魅入られて、睫毛が触れ合うほど近くで互いを見つめる。
細い背中に腕を回した。滑らかなそこを、宥めるみたいに撫でてみる。
「笹田」
呼びたくて呼んだけれど、何を続ければいいのか分からなかった。
「夏目君──…」
笹田の答えは喘ぎに紛れて聞き取れなかった。
視線が逸れた。白い喉を曝して、笹田が声にならない声を細く長く漏らす。なかは絞り上げるように収縮していく。
「夏目君……いいよ……っ」
もう一度呼ばれて、腕に崩折れた笹田のいちばん深いところで夏目は果てた。
405 名前:『みんな雷のせい ~続き~』9/9[sage] 投稿日:2010/10/09(土) 00:19:50 ID:ZCjVHGs+
[10/11]
「あのさ、笹田」
「なに?」
夏目に背中を向けてスカーフを結んでいた笹田は振り返った。前髪を留めたピンにもきちんと整えた制服にも、さっきまでの熱の名残はない。
「何て言ったんだ?その──おれのこと呼んだあと」
困ったような顔の夏目が、床に座ったまま笹田を見上げている。
制服の埃を払うと、笹田は足元の木製のタイルを眺めて腰に手をあてた。
「掃き掃除もしなくちゃね。またよろしく、夏目君」
「え、教えてくれないのか?」
「気になるなら聞き出してみたらどうかしら。積極性も時には必要よね」
「……押し入れのこととかで?」
そっちで来たか。夏目らしいのかも、と笹田は苦笑したいのをこらえて微笑む。整然と並んだ背表紙をなぞって夏目の隣に並んだ。
「残念ね、それは弱みじゃないの。だから脅しにも使えないわ」
「え」
「夏目君だって隠れるでしょ?布団の中とか、押し入れは定番よね。だから──頑張ってね」
膝を曲げるとスカートがふわりと広がって、また埃が舞った。後ろに回していた指をそっと夏目の指に絡める。
「掃除、来週で終わるかしらね」
その頃には、もう雷は必要ないかもしれない。
もしかしたらか、きっとか。
まだわからないけれど。