イケメン

イケメンとブサメンでは住んでいる世界が違うのである

たとえば探している本を年頃の女性店員に尋ねたとしよう
イケメンに話しかけられた女性店員はそれだけで顔を赤らめ目を伏せて恥ずかしそうにする。体をくねらせながら本のある場所まで案内してくれる。このとき、既にあそこはぐじゅぐじゅである。そして上目遣いで精一杯に目を開いて小首をかしげながらかわいらしい声で「こちらになります」と言う。イケメンの「あ、ありがとう」の声についに潮を吹いてしまう。突然のエクスタシーに気が遠くなりよろめきながらもなんとかその場を立ち去るがその後も棚の整理をするフリをしてチラチラと様子を伺い、周りに客がいないのを確認してはあそこをいじっている。

これがブサメンならどうか
まるで溶解しかかった腐った死体が今にも肩に手を伸ばしてくるのではないかという錯覚を覚えて女性店員は反射的に防御の姿勢をとってしまう。手に持っていた陳列前の商品を取り落とし、胸のあたりを隠すように両肘を合わせ唇をわなわなとふるわせている。ようやくそれが妖怪ではなく単なるブサメンだったと分かると自分に恐怖を与えたこの家畜以下の存在に罰を与えてやろうという怒りでいきり立ち、残酷な復讐を始める。目をそむけ、鼻をつまみながら「はあ?なんとおっしゃいましたか?」「滑舌悪くて聞き取れません」「あ、それうちには置いてませんね」 
いつものように傷ついたブサメンは抗議する気力もなくすごすごと引き下がる。彼が歩いた後には清掃員が飛んできて掃き清められ、二度と来ないよう塩が撒かれる。

このように街に出て買い物一つするにも勝手が違うのである。些細なことではあるが一事が万事こうであるから時間がたつほどにイケメンはますます自信に満ちた好青年へと成長し、ブサメンは卑屈な家畜になっていく。

新都社イケメン作家代表例:inaca 生薬

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最終更新:2010年12月02日 11:28