甘く、危険なかおり

「狂おしい夏だった……青空も声も……"死"のように……(坂本龍一『美貌の青空』)」

 デスティニー・マサノリは今最も注目される新鋭の作家だ。混迷の時代を生きる若者たちの絶大な
支持を受け、もはや漫画家という枠を超えた「アーティスト」だと言えよう。そんな彼が満を持して
公開した衝撃作「甘く、危険なかおり」――往年の山下達郎の名曲からタイトルを得た今作は、ファンの
あいだで「マサノリ節」と言われるダイナミズムをもってきっちりと「エンターテイメント」しつつも、
更に一歩進んだ、我々の心をえぐりこんでくるような「深さ」がある。

 マサノリは常に弱きものの味方である。しかし同時に、時として残酷だ。それは彼の中の
野獣と言っていい。この作品で、彼は自分の中の「野獣」を認めつつも、それに抗いながら、
もがくように何かを獲得しようとしている。その必死さは時として嘲けりの対象かも知れない。
そこまでして彼が得ようとしているものは何か?「愛」――だ。

 「漫画」というメディアの中で、愛に飢え、愛を求め、そして愛を得た男の物語。
 2006年度新都社アカデミー特別賞、新都ピュリッツァー最優秀賞、平成18年度講男社まんが大賞、その他6個の賞を受賞



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最終更新:2010年11月30日 10:36