386 :暇な人 ◆jypKxfEa7Y :2008/03/16(日) 00:20:00 ID:ctd7rKQp
・千雨
「全く。最近はネットの質も落ちたもんだなぁ」
ぱりん、とポテチを囓りながら千雨は一人ごちた。
暗い室内を、PCの液晶デュアルディスプレイの明かりがぼんやりと照らし出す。
「blogは何処もアフィだらけ。ニコニコはエコノミーばっかで消されまくり。
炎上祭りもいい加減飽きてきたし、サイトの運営も日々是定常運転。
全く、世の中いつのまにこんな退屈になったんだ?」
度の入っていない眼鏡越しに映る、慣れ親しんだ、故に退屈なwebサイトの数々。
右手のマウスホイールを巡らす度に画面内のウィンドが切り替わっていくが、どれもこれも
話にならない一山幾らの屑サイトばかり。
今口にしている、薄味低カロリーダイエットポテチの方が、まだしも塩味が利いている位。
なんとなく、ぐる~りと回転イスを回してみる。
ぐる~り
ぐる~り
視界が巡る。それだけだ。
「・・・・・・あー、暇だ」
・葉加瀬
「ジャスト ア モーメント プリーズ!!!」
バタァム!
突然、乱暴に部屋のドアが押し開かれた!
風のような闖入者の一挙動で部屋中の蛍光灯は全てON。
どこからか聞こえてくる壮麗なマーチはラデツキー行進曲か?
呆気にとられ、回転イスから眼鏡と一緒にずり落ちた千雨の目の前で、その三つ編みの少女は
おでこを光らせ、高らかに宣言した!
「やりましたよ!千雨さん。喜んで下さい!21世紀と現代科学と、最新のネット文化が融合した
画期的な次世代型ハイパーWareHouseの完成です!」
「うるせぇーーーーーー!!!」
ゴン
(しばらくお待ち下さい)
「・・・落ち着いたか?ハカセ」
「ほ、ホントに痛いですよ、千雨さん・・・」
ドアは閉められ、蛍光灯はほどほどに。ラデツキー行進曲は音を止められ、そして部屋には
主である千雨と、侵入者である葉加瀬聡美だけが残された。おでこのたんこぶがご愛敬だ。
「当たり前だ。手元に鈍器がなかった幸運に感謝しろ。
・・・で?なんだって?」
「は?千雨さん、鈍器が欲しいんですか?」
「なんでやねん!お前、今画期的がどーとか言ってただろ!そもそも何の用でここに来たんだ?」
「良いところに気がつきましたね、千雨さん!完成したんですよ!21世紀と現代科学と・・・」
ゴン
(しばらくお待ち下さい)
「・・・落ち着いたか?ハカセ」
今度は、ラデツキー行進曲の鳴り始め、頭二小節で片が付いた。
「・・・か、科学者の頭脳をポコポコ叩かないで下さいよぅ~・・・」
「科学者なら落ち着きを持て。で?最新技術の何が完成したんだ?」
「・・・ぅう~~・・・」
千雨の冷ややかな流し目に、葉加瀬は半泣きになる。
・・・もしかして見せる相手を間違ったんだろうか?
葉加瀬は考える。
しかし超の亡き今(注:死んでない)、この手のネタは千雨さん以外に3-Aで見せる相手が居ないし。
茶々丸に創造物の自慢をするのは、なんとなく深刻な再帰ループのスタックエラーが発生しそうだし・・・
そうだ!まだ肝心のものを見せてないからこういう事になるんだ。
この華麗なる現代最新テクノロジーの勝利の証を前にすれば、電脳魔術師たる千雨さんは、
いや、電脳魔術師であるからこそ、この技術の真価に心を奪われ、同じ感動を抱いてくれるに違いない!
そうそう、そうに決まり!
見ていて下さい、超!私頑張ってます!!
・ろだ
「ふむ、まあ前置きはこの際置いときましょう。このURLにアクセスしてみて下さい。
http://toku.xdisc.net/cgi/up2/frew.html、です」
「http://toku.xdisc.net/cgi/up2/frew.html、と。なんだこりゃ?ロダじゃねーか」
「そーですよ?ここにファイル上げてるんですけど、直リンできないのが欠点なんですよねー」
「・・・いーけどね」
「そこに[xs5399.zip]ってファイルがあると思うんで、それを落として下さい。
あ、ウィルスとかじゃないんで安心して良いですよ?」
「はいはい。・・・落としたけど、このzip、解凍パス生意気に要求してくるぞ?」
「ああ、一応念のためと言うことで。パスは[eroparo]です」
「e、r、o、p、a、r、o、ね」
この辺で、千雨はものすごい勢いで突っ込みたくなるところを、歯を食いしばり、辛うじて耐えていた。
なんでエロパロなんだよ!とか
つーかロダに上げてるとか、超普通じゃねーか!とか
そもそもお前、部屋のドアの鍵どうやって開けたんだよ!とか
まあ色々。
それでも、まあファイルの中身を確認してからでも遅くはあるまいと、千雨はその前置きの割には
小容量のzipファイルを解凍する。ややあって、中から大量のhtmlファイルが吐き出された。
「?」
千雨は胡乱気な目つきで、肩越しにPCをのぞき込む葉加瀬を見つめる。
葉加瀬はニッコリ笑い、力強く頷く。
大丈夫です、真理は目前ですよ、と。
index.htmlをクリックすると、ブラウザが立ち上がった。
シンプルな構成の中、燦然と輝く「ネギま!エロパロ保管庫2」の文字。
メニューからリンクされた、学友達の名前がずらりと並ぶ無数の項目。
超絶嫌な予感がする。
それでも手は勝手に動き、マウスがそのうちの一つをクリックした。
途端、画面に小説らしき文章が大量に表示されるが、目が文字を追うだけで、脳の中に入ってこない。
目が点になり、脳がウニになる。
辛うじて「いっちゃううぅうーーーー!!」とか「ひぎぃぃぃーーー!」とか「らめぇぇぇッッ!!」
という文字列が、視神経からノイズとなって漏れ出し、脳に到達した。と言うか、してしまった。
えー、あー、うー。
ワタシ ハ イッタイ ナニ ヲ ミテイル ノ ダロウ
・・・どこか遠くの方から、とくとくと語る葉加瀬の名調子が聞こえてきた。
・保管庫2
「苦労したんですよー?
我が3-Aの歴々の乱れた性の武勇伝をかき集め、集積し、あちこちにスパイロボットを飛ばしまくって
盗撮を行うこと丸二年!なんとなれば超から借りたカシオペアによって、別次元の位相においても
盗聴をし続ける!もうこの辺で、特許が10ダース、ノーベル賞が三つは貰える技術が投入されてます!
その上で現代ネットワーク、特にネット掲示板のインターフェース特性に応じて情報をテキストエンコードし、
最小のファイルサイズで記録する!ここだけで未発表の最新の工学情報処理技術が山ほど導入されてます。
これらの技術により、データの配信効率は通常の動画と音声に比べ、その差は実に358倍以上!
このような小容量アップローダーから、果てはフリーメールにまで情報の添付が可能なんです。
ほらほら、千雨さんのこれ見て下さい、すっごい、わー、やらしいー、でもちょっと行き過ぎじゃないんですか?
幾ら中学生離れした3-Aの面々といえども、学生の身であるからには、もうちょっと節度というものを
持っていただかないことには。でもそのお陰で、このデータはネットじゃ超人気ですよ!
大学の工学棟の男子が揃って白濁液吹き出して昇天したのも、確かここの千雨さんの文章部分で・・・」
一息にここまで語ったところで、葉加瀬は千雨がフリーズしていることに気がついた。
眼鏡がすっかりずり落ち、膝の上に落ちてしまっている。
「あれ?次元を跨いだ最新情報工学技術の超勝利の証ですが、気に入りませんでしたか?」
葉加瀬が千雨のマウスを横から操り、かちりとクリックを押す。
エロイ。
クリック。エロイ。
クリクリクリクリ、エロエロエロエロ。
「うーん。素晴らしい。・・・もしもし?千雨さん?」
「・・・・qあwせdrftgyふじこlp!」
キーボードもないのに、千雨は口で「ふじこ文」を正確に発音した。
頭頂と耳孔からぽぴーと蒸気が噴き出し、目の前の二四インチワイド液晶を引っこ抜く。
ぶつり、とケーブルが抜ける音と共に、別次元の位相より届けられた千雨の痴態が消え去った。
「わっわっわ、落ち着いて下さいよ、千雨さん!」
不穏な気配を察知し、脱兎のごとく逃げ出す葉加瀬を、千雨が液晶モニターを抱えながら追いかける。
床に落ちた眼鏡を自らの足で踏み割っても、千雨は振り返りもしなかった。
追いかける。追いかける。追いかける・・・・
葉加瀬は一つ賢くなった。
この文章は3-Aの面々に見せるのはよくない結果を招くらしい。
ただ、科学に失敗はつきもの。大丈夫、技術自体に何の失敗もない。
むしろ千雨さんのあの反応は、情報のテキストエンコード技術が如何に優れていたかについての、
逆説的な証明でもある。大丈夫、次はもっと上手くやれる!
見ていて、超!
・・・あ、でもエロパロスレのみんなは、保管庫2html、楽しんでいって下さいね♪
それじゃあ、さらばです!
ゴン
(と液晶モニターの当たる音
・・・いや、待たなくていいですよ?)
終了.
最終更新:2012年01月31日 11:38