27スレ217

217 :dem :sage :2007/07/28(土) 22:23:18 ID:Avf2AKmG(9)

「…ん……?」

朝。眩しさで目が覚める。
ぼうっとしながらもゆっくりと身を起こすと、体に掛けられていた布団がずり落ちて素肌があらわになった。

「あ…そっか、昨日の夜…」

一瞬思考して、すぐに顔が熱くなるのがわかった。
そう、僕は昨夜刹那さんを…

「……綺麗だったな、刹那さん…ううん、やっぱり可愛かったかも…」

思い出して、ほうとため息が漏れ出る。
僕が激しく突き上げるたびに、刹那さんは敏感に反応してくれた。
その顔をもっと見たくて、僕は初めての行為に馬鹿みたいに夢中になってしまったのだ。
その反動だろう、随分ぐっすり眠ってしまっていた。
今が何時か確かめるため、布団からはいずり出ようとしたところで異変に気付く。

「あれ……?刹那さんと長は…?」

布団で寝ていたのは僕一人。
昨夜情事を共にした刹那さんや、その指導をしてくれた長さんの姿はない。
もう起きてどこかに行ってしまったんだろうか?
それならいい。でも…あれ?ちょっと、やっぱり困る。

「ど、どうやって元の部屋に…」

道が全くわからない。
この屋敷は、初めて訪れた人間に極端に不親切であった。
誰かを呼ぶにしても、昨日の長さんの口ぶりではここはあまり人が来なさそうだ。
助けを呼ぶことはできそうにない。
…ん?呼ぶ?

「あっ、そうだ!」

僕はパクティオーカードの機能を思い出した。
確か額にカードを当てればパートナーと話せるはず。
そこでまた迷う。
この屋敷のことを聞くならやっぱり木乃香さんがいいだろうか。
でももしかしたらまだ朝早くて寝てるかも。
じゃあ、やっぱり確実に起きていてここの仕組みに詳しそうなもう一人…

「せ、刹那さんかぁ…」

正直遠慮したい人だった。
ああいう行為は本当に初めてだったし、自分でも無茶をしたと思っている。
しかも相手は生徒。これから毎日顔だって合わせることになりそうなのに、あんな行為に及んでしまった。
勢いとはいえ、とても気まずいことには違いない。
それに…昨日の夜の刹那さんが忘れられないのだ。
顔を見たら、またやましい気持ちになってしまいそうで申し訳なかった。


「…うう、駄目だ!くよくよするな僕!勇気!勇気を出すんだー!」

自分に喝を入れ、その勢いのまま額にカードを当て呪文を唱える。

「せ、刹那さんっ」

しかし、返事は返ってこない。
もしかしてカードを持っていないのかも。
でも、刹那さんがカードを手放すようにも思えなかった。
あ、じゃあもしかして、使い方がわからないとか。
うん、きっとそうだ。急に僕のが聞こえてきて困っているに違いない。
ならいっそここに来てもらって、説明がてら下の部屋まで案内してもらおう。

「えっと、説明したいことがあるので喚びます!」

一応断ってから、召喚するための呪文を唱えた。
瞬間、畳の上に魔法陣が現れて刹那さんが姿を現した。

「…って、え……」
「あ、えと……わ!ネ、ネギ先生…っ服!服着てください!」
「あ!すみませんすぐにっ!?」

一瞬呆けてしまったけど、慌てて近くにおいてあったシャツを着た。
心なしかほんのり刹那さんの匂いがする。
きっと刹那さんが置いて行ってくれたんだと思うと嬉しくなった。


でも、気になることがある。
それは今の刹那さんの出で立ち。
きちんと制服を着ているのは問題ないけれど、靴を履いて荷物を持っている。
確か、あれは新幹線で持っていた鞄。

「何処かに行くんですか?」
「えっ…!?」

着替え終わって尋ねると、刹那さんはかなり大げさな反応を示した。
その過剰な反応に思わず目を見開く。
何か、胸騒ぎがする。

「…教えてください。何処に、行くつもりだったんですか?」
「あ……そ、の…」
「刹那さん」
「っ!」

視線を彷徨わせるその様子に、やっぱり何か隠していると感じた。
真っ直ぐ刹那さんを見ると苦しそうに顔をそらされる。
しばらく黙って見つめていると観念したのか、はあ、と深いため息が聞こえてきた。

「私はネギ先生達の…お嬢様の元を、去ります」
「え…っ!?な、んで」
「一族の掟です…あの姿を見られた以上、仕方が…」
「嫌です!僕の傍に居てください!」
「…えっ?」
「…あれ…?」


咄嗟に叫んだ言葉に、自分で驚いた。
先生として、ここは木乃香さんや明日菜さんがが寂しがるとか、そういうことを言う場面なのに。
自分でも不思議に思いながら刹那さんの顔を見ると、何故か顔が熱くなった。
刹那さんの顔も真っ赤になった。

「あ、そのえっと、とにかく!近衛家へのご恩も返せましたし、私は去りますっ!お嬢様のこと…お願いしますっ」
「へ!?…あっ…だ、だから駄目ですってばー!」
「あっちょっ…は、離してくださいー!」
「なら傍に居てくださいよーっ」
「そんな無茶なっあなたそれでも先生ですかっ」
「刹那さんに言われたくないですーっ」

慌てて立ち上がろうとする刹那さんの腰にしがみついて止める。
暴れられても我慢強く張り付いていたら、諦めたのかだんだんと抵抗が減ってきた気がする。

「だ、って…ネギ先生も嫌でしょう?こんな……汚い女が傍にいたら…」
「え?どういう…」

刹那さんは急に悲しそうな表情になった。
汚い女。刹那さんは自分をそう思っているのだろうか。

「さっ…昨夜のことです!見たでしょう?アレが私の本性なんです…淫乱で…しかも化け物の…」
「昨夜…って、あの気持ちのいい事ですか?」
「う、気持ちいいって……ま、まあそうですが」
「何処が汚いんですか?すごく綺麗で可愛かったと思うんですけど」
「な…っ!?」


僕の言葉に、刹那さんはぼんと音を立てて赤くなった。
ほら、こういうところが可愛いって言うんです。
よっぽど動揺したのかわたわたと忙しなくする刹那さんを捕らえるために、僕はその身体を優しく抱き締めた。

「刹那さんは全然汚くなんかないです。誰よりも、僕が見た誰よりも綺麗です」
「そ、んな…ネギ先生、そんなこと」
「刹那さんがそう思ってなくても、刹那さんは綺麗なんです。…あ、やっぱり可愛いかも」
「……でも、私…麻帆良にいる間も…昨夜みたいなことばかりして…知らない人に抱かれたり、龍宮に慰めてもらったり…」
「じゃあこれからそういうことは僕に言ってください。それでいいです」
「…え…でも、ネギ先生は先生で私は生…」
「誰にも言わなければ大丈夫です。だから、傍に居てください…刹那さん」
「………先生…」

もし拒絶されても離すもんか。
そう思って腕に力を込めたら、刹那さんが「あ」と声を洩らした。
ちょっと痛かったのかもしれないと思って力を緩めようとしたら、刹那さんの手がそっと背中に添えられた。
そのまま僕の胸に身体を預けてくる。

「木乃香さんも、明日菜さんも…刹那さんのこと受け入れてくれました。クラスのみなさんだっていつかは」
「………」
「昨夜のことは…ひ、秘密にしますから。あ、こ、これからもですね。絶対しゃべりません」
「…ふふ」

何だか黙っているのが気まずくて色々しゃべっていたら、刹那さんが胸の中で小さく笑ってくれた。
空気が緩やかなものに変わっていくのを感じて、刹那さんがここにいてくれると確信した。


「…これから、よろしくお願いしますね」
「はい。えっと、お手柔らかに」
「こちらこそ、ネギ先生。昨日はとっても激しくて私…起きたとき腰が立たなかったんですから」
「あう!?す、すみません夢中になっちゃって…」

やっぱり昨日はやりすぎたみたいで、ちょっと反省する。
不意に、刹那さんが顔を上げてじっと僕を見つめてきた。
その目はどこか期待を含んでいて、何だかゆらゆら妖しい光が瞬いているように見えた。

「先生…」
「は、はい」
「……キス、してくれませんか」
「へ!?」
「昨夜のお詫びです。謝られるくらいならキスしてください」
「な、何かいきなり大胆になってません?」
「先生のせいです」
「あぅ……」

話しながらも熱い視線を送り続ける刹那さん。
本当に、実はえっちな人だったのかも。
すごく魅力的だけど…あんまり誘惑されたら、またあの行為に及んでしまいそうで怖い。

「先生、平気です。もし気が変わられて…その、したくなっても…構いませんから」
「せ、刹那さん…」
「……キス、してくれますか?」
「…はい」

どこか吹っ切れた僕は、刹那さんの仄かに色づいた唇にキスを落とした。
まだまだこれから色々なことがあるだろうけど、刹那さんが傍にいてくれたら何だってできる気がした。


END

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最終更新:2012年01月31日 12:05
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