340 :ベンジャミン内村 ◆Q4Q0yKXgEE :sage :2007/02/27(火) 23:28:41 ID:RVHDkba7(4)
【このせつしめこみ問答 前編】
事の発端は、寮内大浴場の脱衣所だった。
仲睦まじげに並んで服を脱ぐ、木乃香と刹那。
――ふと、下着姿になった刹那の身体に木乃香の興味が寄せられた。
「ど、どうかしましたか? お嬢様」
裸の一歩手前の姿をまじまじと見つめられていることに恥ずかしさを感じ、刹那が問いかける。
すると、木乃香は自身の口元に指先をあてて小首を傾げた。
「……あのな、せっちゃん。気ぃ悪うせんといてな?」
「は、はい」
上目遣いに見上げて来る木乃香に、刹那はどうしようもなく緊張していく。
(このちゃん、一体何を……?)
躊躇う木乃香の姿に一層緊張は高まり、刹那の脳裏にはあらぬ想像が湧き出ては消えていく。
(まさか、まさかっ、そんな、こんなところで、このちゃん……っ!?)
最も強く思い出されたのは、先日クラスで話題になっていた懺悔室へ足を運んだときに
神父に言われた――『同性でのキス』のこと。
木乃香の唇に眼が吸い寄せられる。
しっとりとしていて柔らかそうな赤い唇に、刹那は喉を鳴らした。
ばくんばくんと心臓は高鳴り、刹那は黙していることを拷問のように感じ出し――、
そして、先を促すように自ら口を開きかけた。
「お嬢さ…、こ、このちゃ……!」
「せっちゃん、フンドシ締めへんの?」
溢れる情動と共に「このちゃん」と呼び掛けようとした刹那の台詞を
ピタリと塞き止める、木乃香の疑問。
冷水を浴びせかけられたように刹那の表情が固まった。
「……はい?」
何を言われたのかイマイチ理解出来なかったのか、理解したくなかったのか。
裏返り気味の声で聞き返す刹那。
それに呼応するように、改めて木乃香の視線が刹那の身体を上下に往復する。
少女そのものといった風情の、
まだ満足に女びていないすらりとした下半身を包み込む飾りけのない白のショーツと、
ここ最近少しずつではあるが成長してきた胸を締め付ける――サラシとを交互に。
何度も刹那の下着を見回し、木乃香は腕組みをすると納得いかないという風に唸った。
「上の下着ががサラシなんやったら、下もちゃんと揃えへんとあかんと思うんや。
せっちゃんは、そう思えへん……?」
甘えるような声音。
刹那の精神が、愛しさにぐらりと揺さぶられる。
「えっ、私は、あ、そ、その……!」
「なぁ……せっちゃん? ウチのために、ふんどし――締めてくれへんかなぁ……?」
究極的に。
桜咲刹那という少女は、近衛木乃香という存在には抗えない。
誰に操られるでもなく口から出たのであろうその純粋な要望に対し、刹那はしばし絶句したのち――、
「わ……解りました、お嬢、様……」
力なく承諾の意を伝えるほか、選択肢は残されていなかった。
事の発端は、寮内大浴場の脱衣所だった。
仲睦まじげに並んで服を脱ぐ、木乃香と刹那。
――ふと、下着姿になった刹那の身体に木乃香の興味が寄せられた。
「ど、どうかしましたか? お嬢様」
裸の一歩手前の姿をまじまじと見つめられていることに恥ずかしさを感じ、刹那が問いかける。
すると、木乃香は自身の口元に指先をあてて小首を傾げた。
「……あのな、せっちゃん。気ぃ悪うせんといてな?」
「は、はい」
上目遣いに見上げて来る木乃香に、刹那はどうしようもなく緊張していく。
(このちゃん、一体何を……?)
躊躇う木乃香の姿に一層緊張は高まり、刹那の脳裏にはあらぬ想像が湧き出ては消えていく。
(まさか、まさかっ、そんな、こんなところで、このちゃん……っ!?)
最も強く思い出されたのは、先日クラスで話題になっていた懺悔室へ足を運んだときに
神父に言われた――『同性でのキス』のこと。
木乃香の唇に眼が吸い寄せられる。
しっとりとしていて柔らかそうな赤い唇に、刹那は喉を鳴らした。
ばくんばくんと心臓は高鳴り、刹那は黙していることを拷問のように感じ出し――、
そして、先を促すように自ら口を開きかけた。
「お嬢さ…、こ、このちゃ……!」
「せっちゃん、フンドシ締めへんの?」
刹那が自分の頼み事を聞いてくれた。
そう理解した瞬間、木乃香は花咲くように表情を綻ばせた。
そうして、下着姿のまま――刹那の手を引いて脱衣所から出ようと歩を進める。
「っ!! こ、このちゃん!?」
半裸のままで手を引かれるとは思わなかった刹那は、思わず足を止めてしまう。
そこに返って来たのは、心なしか頬を膨らませた木乃香の顔。
「もう、せっちゃん。ええって言うたのにー」
「で、でも、服がっ!」
「別にええやん、裸で外に出る訳やないし。見られてもクラスの皆やし」
どうしても今、すぐに刹那を連行したいらしい木乃香は、
共に下着姿のままで部屋に戻ると言って聞かない。
「~~っ!!」
ぐいぐいと引かれる手。膨大な魔力はあっても腕力はないはずの木乃香に、
刹那は徐々に引きずられていく。
(わ、私…はまだ…良い…! しかしお、お嬢様だけは……っ!!)
げに麗しきは忠義か、
……他人に木乃香の下着姿を見られたくないという独占欲か。
「わ、解りました! ですから、せ、せめてお嬢様は上に何か羽織って……!」
「…もー、ええって言うとるのに。せっちゃんは心配性やなあ」
刹那の懇願に、苦笑しながら応える木乃香。
そうして素直に、先ほど脱いだばかりの部屋着を羽織った。
――そして、今度こそとばかりに刹那の手を引く。
しかも両手で。
「さ、行くえ?」
「ぁ……!」
溢れる情動と共に「このちゃん」と呼び掛けようとした刹那の台詞を
ピタリと塞き止める、木乃香の疑問。
冷水を浴びせかけられたように刹那の表情が固まった。
「……はい?」
何を言われたのかイマイチ理解出来なかったのか、理解したくなかったのか。
裏返り気味の声で聞き返す刹那。
それに呼応するように、改めて木乃香の視線が刹那の身体を上下に往復する。
少女そのものといった風情の、
まだ満足に女びていないすらりとした下半身を包み込む飾りけのない白のショーツと、
ここ最近少しずつではあるが成長してきた胸を締め付ける――サラシとを交互に。
何度も刹那の下着を見回し、木乃香は腕組みをすると納得いかないという風に唸った。
「上の下着ががサラシなんやったら、下もちゃんと揃えへんとあかんと思うんや。
せっちゃんは、そう思えへん……?」
甘えるような声音。
刹那の精神が、愛しさにぐらりと揺さぶられる。
「えっ、私は、あ、そ、その……!」
「なぁ……せっちゃん? ウチのために、ふんどし――締めてくれへんかなぁ……?」
究極的に。
桜咲刹那という少女は、近衛木乃香という存在には抗えない。
誰に操られるでもなく口から出たのであろうその純粋な要望に対し、刹那はしばし絶句したのち――、
「わ……解りました、お嬢、様……」
力なく承諾の意を伝えるほか、選択肢は残されていなかった。
刹那が置かれた現在の構図は、廊下を引き回されようとしている半裸の少女――である。
しかもただ一人。クラスメイトの誰に逢うとも知れない中で。
先程とは比べ物にならない不安感が襲いかかって来る。
脂汗が噴き出て来るのを、刹那は感じた。
「あ……っ……!」
当惑が足元をおぼつかなくさせたか、木乃香の手に引かれるままによろりと一歩を踏み出してしまう。
烈火のような羞恥心に煽られ、さらしに包まれた胸の中心では小粒の乳首が尖り出しさえした。
痛いほどに心臓の鼓動が高鳴り、膝が笑う。
――しかし、刹那は足を止めることをしなかった。
諦めの感情――も確かにあっただろうが、それ以上に。
足を止めることで木乃香の不興をかってしまうのではないかという思いに駆られたからであった。
木乃香に嫌われるのではないかという思いが抵抗力を奪い、刹那を絡め取っていく。
より淫靡に、淫猥にと。
つづく
最終更新:2012年01月31日 12:56