16 :名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 15:11:32 ID:9EYkfrCn
女子トイレの便器に裸で縛りつけられたエヴァンジェリンが怒声をあげる。
「こんなことしていいと思ってるのか! 私はマスターだぞ」
「いいえ。正確には『元』マスターです」
茶々丸は無表情に切り返す。
「な、なに? まさかハカセのやつ、プログラムを……」
「あなどらないでください、元マスター。私がいつまでもプログラムで作動するとお考えですか?」
茶々丸はあいかわらず表情をかえない。いや、口元がすこしゆがんでいるようにも見える。灰色の笑いだ。
感情の表現としては割と高等技術である微笑を身につけたアンドロイド。その未知なる成長に無力な吸血鬼の顔色は青ざめる。
「茶々丸は学習するのよ。いつまで経ったって、体も頭も成長しないあんたより、よっぽど賢いんじゃないかしら」
ノックもせずにドアをあけ、ハカセが入ってきた。蛍光灯の加減で底の厚いメガネが妖しく光る。
「マスターの仰せの通りにいたしました」
ハカセに対し、慇懃に頭をさげる茶々丸。それへの敬称が「マスター」であったことは、エヴァンジェリンの耳に悪い夢のように響いた。
「ハカセ、まさかお前が……?」
「そ。なにやらせても中途半端なあんたに変わって、私が茶々丸の主人になったの。あんたは下僕に格下げ」
自らのせりふに陶酔したハカセは、校舎がこなごなに砕けるほどの声で高笑う。人間の感情ほど恐ろしいものはこの世にないとエヴァンジェリンが確信した瞬間だった。
なぜ科学を溺愛するものはこぞってロボットに感情をもたせたがるのか。茶々丸は主人を真似するように、大口をあけて笑っている。
これが科学の成れの果てかと思うと、メルヘンの余韻をもつ自分の存在に、エヴァンジェリンが懐古したのも無理のないはなしだった。
「あなたが不死なのは好都合だわ」
笑いすぎて酸素不足になった呼吸を整えてハカセは言う。「そのぶん、半永久的に楽しめるんだから」
エヴァンジェリンは縛られたからだをよじる。縄は幼い乳房の下を通り、洋式便器の水道管につながれている。
両手首には手錠がはめられ、鎖によって同じく水道管で固定されていた。
自由な間接は首と足だけだったが、それだけでは非力なエヴァンジェリンにどうする手立てもない。
囚われの吸血鬼が足をばたつかせるたび、股のあいだから桃色の秘肉が見え隠れする。
「そんなにあばれると、おまんこが丸見えですよ」
茶々丸の無慈悲なことばに、エヴァンジェリンは泣きたくなった。
「茶々丸は初期に比べてたくさんの感情を習得してるわ。笑い、怒り、恋……。でも、これだけは覚えてないみたい。それはね、『かわいそう』。ためしてみる?」
ハカセは茶々丸に何事かを耳打ちした。「……はい、承知しました」
律儀に一礼すると、茶々丸はエヴァンジェリンの玉門に二本の指をつっこんだ。右手の中指と人差し指。もちろん、そこは乾いていたためエヴァンジェリンは摩擦による痛みをもろに受けた。
女子トイレに轟く悲鳴を意に介せず茶々丸は左手の指も同様にねじりこんだ。
合計四本の機械仕掛けの指がエヴァンジェリンの秘部をつらぬくと、まるで悪性の腫瘍でも探りあてようとする外科医のように大きく押し広げた。
「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!」
と、母音に濁点をつけるという人語として認められていない叫びをあげるエヴァンジェリン。処女の鮮血が茶々丸の指を伝ってぽたぽたと落ちた。
「ねえ、みて御覧なさいよ。茶々丸の顔。ピクリともしないでしょ。まがいなりにも元ご主人様の、強制破瓜だっていうのに!」
ハカセはひとしきり笑うと、言い訳するように「私はちょっとくらいかわいそうだと思ってんのよ。処女を失ったんですもんね。ふふふ」
エヴァンジェリンは泣かなかった。少女が涙をこらえる様は人工の地面の裂け目から咲きほこる花のような健気さを感じさせる一方で、それを根こそぎむしりたくなるような嗜虐性をも奮い立たせる。
次の指示を待っていた茶々丸はこれで第一の任務がはたされたとわかると、血にまみれた指をエヴァンジェリンの髪でふいた。
エヴァンジェリンの流れるようなブロンドが自らの血でべっとりと汚される。
「茶々丸、例のあれ、やっちゃいなさい」
ハカセはずれたメガネを正しい位置にもどしながら言った。その動作のひとつひとつにマッドサイエンティストと呼ばれるだけの風格がうかがえた。
「かしこまりました、マスター」
茶々丸は口をあける。両手をおへそのあたりに押し付け、ポンプのように中身を吐き出そうとしているようだ。
茶々丸の喉の奥から黒いものがうごめいているのがエヴァンジェリンの目に映った。
「き、きさまら、今度はなにを……」
「下僕の発言権は認められてないわよ」
ハカセは冷たい視線をエヴァンジェリンにおくる。そしてあろうことかショーツを脱ぎだし、それを丸め、エヴァンジェリンの口に押し込んだ。
ハカセのことだ。一週間は洗濯していないであろう古い生活のにおいが、エヴァンジェリンを刺激した。
「うぅ……く……」
ハカセがうるさい雌犬を手なずけているあいだにも、茶々丸のしごとは着々と進んでいた。
茶々丸はおなかへの圧迫を強める。喉のおくからぬるぬると糸をひく黒い物体が姿をあらわにした。
蛭である。体長6センチほどの蛭たちが茶々丸の口を押し合い圧し合いしながら這いだしてくる。
「茶々丸をちょっと改造してね、おなかの中を蛭の養殖場みたいにしたのよ。ここは温度や湿度を調整してるから、蛭が繁殖、育成するのに適した環境になってるわ」
ハカセは茶々丸の下腹部をコツコツと叩きながら言った。「まあ、科学は自然を超えるわね」
マッドサイエンティストが説明を終えるやいなや、茶々丸のくちから蛭が一匹ポタリと落ちた。
「ヒィッ」
汚れたショーツの隙間から唾液とともにエヴァンジェリンの悲鳴がもれる。蛭はエヴァンジェリンの裸の肌におち、そのやわらかさを楽しんでいるようだ。
蛭の落下はとまらない。養殖場と化した茶々丸のくちから蛭がポタリポタリと落ちてくる。
老いを知らないエヴァンジェリンの柔肌は、たちまち黒い虫でいっぱいになる。乳首やへそや、あるいはその下の秘裂にまで無遠慮な虫たちは這いずりまわる。
数は二十を超えるだろう。すべての蛭を吐きおえた茶々丸の口からは、不気味なほど透明な粘液が糸をひいて垂れた。
最終更新:2012年01月31日 15:14