G・Pen上の鉄槌 前編
「あー、いたいた亜子ちゃん、これ持ってってー」
「はーい」
「…分かりました…」
「決まりだな」
ちょっとしたタイミングのズレ、運命の悪戯と言うものは世の中ままあるものでございます。
「買ってきました」
とある休憩室、ネギの腹に、飲物を受け取ったトサカの蹴りが突き刺さる。
「あーっ、トマトミルクじゃねーかっ!!
ミルクトマトっつっただろナメてんのか、あーっ!?
何だその目は自分の立場まだ分かってねーみてーだなあおいーっ!!」
トサカが歪んだ笑みを浮かべ、ネギが電撃と共に床をのたうち回る。
「か、はあっ…」
「分かってんのかぁー、俺が一言通報したらどうなるかってよぉ、
ほら、どうなんだ、あ?」
「す、すいませんでした、トサカ様…」
ぐっと歯を食いしばり、床に平伏するネギを見下ろしていたトサカが、
片膝を着いてネギの髪の毛を掴み挙げる。
「しかし、マジでこんなガキだったなんてなぁ。に、しても…」
顔を上げたネギは、にいっと笑みを浮かべたトサカの顔に、何かぞわっとしたものを覚えた。
「こうやって見ると、男にしとくのもったいねーツラしてんなぁ…」
「?」
大浴場を訪れたアキラは、奇妙な水音に気付き、そちらに足を向けた。
時間的にも、視覚的にも無人の筈なのだが、そうではない音がする。
「ネギ、君?」
辛うじてネギらしいと分かるその人影は、腰掛けに座り、上からシャワーを浴びたまま黙ってうなだれていた。
「ネギ君?確かそろそろ…」
トンとアキラが触れた肩から、ビクッと震えが伝わる。
ハッとアキラを見たネギの顔は震え、シャワー越しにも分かる程に涙に濡れて瞳の焦点は合っていなかった。
「ネギ君!?どうしたんだネギ君何があったのっ!?」
慌てて両肩を掴み、余りにも普段とはかけ離れた姿に普段の冷静さが吹っ飛んだアキラの問いにも、
ネギは嫌々するばかりだ。
「首、輪?…」
「あー、いつまで風呂入ってんだー?いい加減…ほぉ…」
休憩室の床に、現時点では絶対君主であるトサカの命に為す術無く、着替えたネギとアキラが正座をしていた。
「どう言う事、なんですか?」
俯いているネギに代わり、アキラがぐっと前を見て尋ねた。
「ああー、このガキ、お前らの先生なんだって?それでお尋ね者…知ってたんだよなぁ…」
アキラが、ぶるりと震えて下を向いた。
「いやー、死刑になりたくないからなんでもしますトサカ様って英雄の息子から土下座で頼まれたからなー、
そこまで言われたら俺としても多少は同僚のよしみって奴があるから、
こうやって奴隷扱いで勘弁してやってるって訳だ」
アキラが、ちらっと横を見る。ネギは、悔しそうに下を向く事しか出来ない。
「ネギ先生に何をしたんですか?」
「何をしたかって?ナニをしたんだよ。知りたいかアキラちゃん?
生徒が知りたいって言ってるんだけどどーすんだ先生?」
トサカの言葉に、ネギは、蒼白な顔で尋常ではない震えを見せ始めた。
「ネギ、先生?」
「ファイナルアンサーがねーなぁ。それじゃあきちんと教えてやんねーとなぁ、先生なんだからよ」
トサカがスイッチを入れ、目の前の大型テレビが作動する。
「ネギ、先生?」
その映像を目にしたアキラは、最初はよく分からなかったが、異様な光景である事は理解できた。
それが理解される内に、アキラはわなわな震えて目を丸くしてそれを見ていた。
画面にネギの端正な顔が映し出され、その口から何か肌色の物体が出入りしている。
少しカメラが引かれると、解かれた髪の毛を揺らしながら、ほぼ丸裸のネギが、
ズボンと下着を下ろしてベッドに座る大人の男性の前に跪きその股間に顔を埋めている。
アキラは吐き気を覚え、懸命に堪えた。それは、奴隷の粗相だと言う以上にネギの心を壊してしまう。
アキラの本能がその事を察知していた。
「どうだー、このガキいい顔してしゃぶってんだろー、
この睫なんてその辺の女も目じゃねーぜ」
「どうだーネギ子?」
画面の中で男が尋ねる。その正体は予想ど真ん中でトサカだった。
「お、おいふいです、トサカ様の逞しいチ○ポ、とてもおいふいです…」
「おっ」
画面の中のトサカのうめき声、画面の中でネギが目を白黒させ、唇の端から白っぽい液体が溢れる。
画面の中では、ネギが白く逞しい裸の胸板を晒しながら、
顎を反らして閉じた瞼から涙を溢れさせながら苦い薬の様に何かを飲み下している。
その行き着く事実を知るくらいの知識は真面目なアキラも持ち合わせてはいたが、
その答えは、出したくなかった。
「どうだーネギ子?」
「トサカ様の美味しいミルクを一杯飲ませていただき、ありがとうございました…」
画面の中で三つ指を突くネギ。
それを見ているアキラの傍らで、ネギは下を向き、膝の上で拳を握る事しか出来ない。
「いああああっ!」
画面が切り替わり、スピーカーからネギの悲鳴が聞こえた。
「な、何?」
画面の中では、ほぼ丸裸で四つん這いにされたネギの後ろで、下半身脱いだトサカがネギの腰を抱えていた。
「あ、あっ、いっ…」
「あ、あっ、あ…」
画面の中と外で、共にネギが呻き始めた。
「女もいーけど、たまんねー締まりだなー。ほらー、泣いてんのかほらー」
画面の中で、トサカがネギの顔を掴み上げ、その顔をカメラに晒す。
「あっ、ああっ、あっ…」
「どうだー、アキラちゃん」
呆然と画面を見るアキラにトサカが声を掛ける。
「段々、いい声で泣いて来ただろてめーの先生ってばよー。
痛いのは最初だけ、実はこーゆーの大好きなんだぜこいつー」
アキラは、思わず隣のネギを見る。ネギはただ俯くだけだ。
「どうだ、どうだおらっどうだ変態ショタ奴隷先生ネギ子ちゃんよー」
「あっ、はあっ、いいっ、いいですっ、トサカ様の逞しいオチ○チ○が僕のお腹の中でっ、
もっとズンズンああっ…」
「ほらー、色っぽい顔ではぁはぁしてんだろー、
ほら、さっきまで引っ込んでたのがビンビンなってんだぜ、このガキそのまま…」
「わあああああっ!!」
絶叫と共に走り出したネギが、電撃と共にぶっ倒れた。
「ネギ先生っ!」
「動くな、っつってんだろーっ!!」
「ぎゃあああっ!!」
「やめろっ!やめて下さいトサカさんっあああっ!」
「動くなっつーの、アキラちゃんも焼き魚いっちまうぞコラッ!!」
焦点の合わない視線を倒れたアキラに向け、ネギは力なく嫌々する。
「ネギ先生、大丈夫?…」
「あああああっ!見るなあっ!!見るな見るな見るな…」
バタバタと手を振るネギを、アキラはぎゅっと抱き締めていた。
「ああああ見るな見るな…見ないで…お願い見ないで…えぐっ、ぐすっ…」
「大丈夫、大丈夫だからネギ先生…」
アキラは、涙を流しながら、そうするしかなかった。
最終更新:2012年01月28日 13:43