地球儀が、二つ。ちづ姉の大事な地球儀だ。
おっきくて丸い。まるでちづ姉の胸みたいな。
そう思って自分の胸をなでてみた。
悲しくなった。
「…………ごく」
息を呑む。今なら部屋には誰も居ない、今なら私は何でもできる。
私だってたまには胸が大きくなって足元が見えないなんて幸せな悩みを抱いてみたいんだ。
地球儀を服の中に入れてみた。
空しくなった。
「あらあら、私の地球儀に何をしているの?夏美」
背中から重圧を感じる。聞こえた台詞の端々に怒りが滲み出ている。
私は何事も無いのを装うべく、急いで地球儀を取り出す。
失敗した。足の上に音を立てて落ちてくる。痛い。それ以前に逃れられない。
「ひょっとして、地球儀を胸に入れてパットのつもりだったの?」
怖い。振り向きたくない。冷や汗をかく私の背後に足音がにじり寄る。
「何とか言いなさい、夏美」
ちづ姉の両手が私のほっぺに伸びてくる。抓られた。痛いいひゃい、ごめんなひゃいごめんなひゃい
「も、もうしません、もうしませんからー」
必死に謝った。ちづ姉は私のほっぺを伸ばしたり捻ったりして苛めた後、おもむろに手を離した。
「良いのよ、でも、私の大事な地球儀を玩具にした責任は取ってもらうわね」
そう、私はこれからもっと酷いおしおきにあってしまうのだ
最終更新:2012年01月28日 13:46