リボンなナイト09 第六話
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「じゃあねー」
「おうっ」
女子寮の廊下で、ひらひらと手を振って立ち去る円に小太郎も元気よく応じる。
そして、円の姿が見えなくなった辺りで、段々と顔から血の気が引いていった。
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「あ、せっちゃん、狼」
「風流ですねぇ」
遠吠えをBGMに女子寮内でのんびり語り合う二人に、
最早突っ込む気力も失せた長谷川千雨の今日この頃であった。
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女子寮の屋上で、小太郎は両手で掴んだ頭をブンブンと振っていた。
「えーと、触手縛り燃える天空BBQで丸焼きにされるか、
本人フツー人でも3Aから仕○人呼ばれたらこれも洒落ならんやろなー…
いやいやいやそうやなくて、くぎみー姉ちゃんも軽い女ちゃうやろし…」
何か強烈な突っ込みを聞いた気がしたハッと振り返った小太郎が胸を撫で下ろす。
「気のせいか…やっぱ、マジやろな当然釘姉ちゃんも。
こんなんで女泣かせたらフツーに最低やし…」
疲れたし今夜は寝る。明日の事は明日の事。
イザとなったら、男らしくきっぱりと、土下座でもなんでもする。
こう結論付けた小太郎が665号室のドアを開き、
思わぬ火薬の音にのけ反った。
「Merry X’mas!」
「ですわ♪」
「な、なんや、夏美姉ちゃんにあやか姉ちゃん」
「お帰りー♪ライブどうだったー?」
「あ、ああ、まあまあやなうん」
「ふーん、私達も丁度今帰ったの。さ、クリスマスだよクリスマスー♪」
あやかと共に、ミニスカサンタ姿でクラッカーを鳴らした夏美が明るく言った。
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「おお」
リビングに入った小太郎が、テーブルの上のご馳走に唸り声を上げる。
それは、ちょっと手の込んだ家庭の食卓。
「ちづ姉、保育園で遅くなるから先始めててって」
「じゃあこれ」
「うん、私といいんちょで」
「ほー」
「さあさ、ターキーを温めますわよ」
三人で最後の仕上げにパタパタと歩き回り、テーブルにつく。
「Merry X’mas!」
あやかが、磨かれた背の高いグラスにスパークリングジュースを注ぎ、乾杯をした。
「うん、旨いなこのトリ」
「七面鳥ですわ」
「ケーキもあるからねー」
遠い昔、自分とは無縁に思えた風景。
温かな一時に、小太郎は人知れず涙を呑み込んでいた。
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「たたっ、大変ですっ!」
「どうしたネ?」
そこは超包子、クリスマスイブと言う修羅場の厨房。
本人的には最近開発されたと言う金属の絨毯に電気スタンドを付けた様な機械で遊びに来ていた超鈴音が、
駆け込んで来た五月の珍しい、それでも可愛らしい叫び声に聞き返す。
「ほう、注文されていたケーキを別の客と取り違えたカ?」
「はい。用途が用途なもので、見た目普通のケーキだったのが…」
「で、どのケーキだったのカ?」
「それが…特別注文の…」
五月の告げた番号に、超の目つきが鋭さを増す。
「ほう…あの粗悪品を私が直々に徹底研究改良した
ナチュラルセーフティードー○ン○コ○ソ○に
イモリとヤモリとオオサンシサョウウオ(犯罪)の黒焼き鹿の角人参イカリソウ等々108種類と
一緒に漬け込んだ三十年マムシリキュールをベースにこってり漬け込み練り込みの
胡桃山芋無臭ニンニク…たっぷり使い倒した
ザ・スーパーアダルティスイーツナイト聖夜さんスペシャルハイパーMAXを出してしまたと…」
こくんと頷く五月の前で、超は静かに息を呑む。
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夏美と小太郎の二人がかりであやかの身をソファーに横たえ、毛布を掛ける。
「クリスマスパーティーとか色々忙しかったからねー」
「いいんちょ言うのも大変やなー」
「んー、ネギ先生ーですわー♪」
むにゃむにゃと幸せそうなあやかをソファーに残し、小太郎はテーブルに戻る。
そこで、まだ食えそうなものは、と見回していると、すっと瓶が差し出された。
「お、おう」
夏美にスパークリングを注がれ、小太郎がグラスを傾ける。
「ん、じゃあ夏美姉ちゃんも」
「ありがと」
小太郎に返杯され、夏美もぐーっとグラスを空ける。
「あー、コタロー君」
「何や?」
「飲め」
「あ、ああ…」
再びグラスに注がれながら、小太郎は目の前に座る夏美の目が据わっている事に気付く。
「で、コタロー君」
テーブルの対面に座り、喉を潤す小太郎に夏美が声を掛ける。
「コタロー君の本命、結局誰なの?」
「は?」
唐突な質問に、小太郎はあっけに取られた。
その間にも、夏美はふらふらと立ち上がりテーブルを回って小太郎に近づいていた。
「お、おい、大丈夫か?なんかあぶな…」
「やっぱ、愛衣ちゃんとか?かわいーもんねー」
夏美が一人でくすくす笑っている間に、小太郎の目は一泳ぎ終えていた。
「んー、後はくぎみーに夕映ちゃん、いいんちょに…ちづ姉かぁ、すっごいねーコタロー君」
「おいおい…」
そう言えばほんの何時間か前にも脳味噌オーバーヒートな女を相手にしていた小太郎が異変に気付き、
取りあえず夏美をその場に座らせる。
「あっつー」
「確かに、暑そうやな」
小太郎が無感動に言っている前で、夏美はサンタ服を脱ぎ捨てる。
「んっ!」
その次の瞬間には、小太郎の頬は両手で挟まれ、ぢゅーっと唇を吸われていた。
「えへへー、久しぶりだねぇ」
「13年振りいやいやなんでもないそやなー、夏だっけか」
「そ、夏休み、村上夏美のファーストキスでしたー」
ケラケラ笑いながらほっぺすりすりする夏美の前で、
小太郎はちょっと考える。
“…やっぱキス…だけでも大変なんやなぁ特に初めて…”
「ん?」
本能の赴くままに小太郎に甘えていた夏美が顔を上げ、小太郎の顔があらぬ方向に向いているのに気が付く。
「ん?あれ?もしかして気になってるー?」
「あ、いや、まー、なんつーか…」
夏美が、厚手のサンタ服に合わせて着ていた肩ひもタンクトップの前を摘み上げ、
その夏美の前で小太郎がダラダラと汗を流して口ごもる。
「んー、もちょっとあったらねー、
ちづ姉やー、いいんちょとまではいかなくてもー、
年下なのに愛衣ちゃんなんかもけっこースタイル良かったりするでしょー。私なんてこれだもんねー」
くいくいとタンクトップの布地を引っ張ってへらへら笑っていた夏美が、
小太郎に両肩をガシッと掴まれて目をぱちくりさせた。
「あー、うまく言えんけどな、その、あれや夏に言うた事、あれ、全然嘘やないからな」
「嬉しい」
夏美がくすっと笑い、どちらともなく唇を重ねる。そんな夏美の目尻から僅かに溢れる。
「ちょい、コタロー君、くるし…」
「あ、ああ、悪い、夏美姉ちゃんなんつーか抱き心地ええモンで」
「何それー、じゃー又ぎゅってしてぎゅうーって」
「おいおいどっちやねん」
「…嬉しい…小太郎君逞しいねー、私も小太郎君抱っこするのいい感じー」
小太郎にぎゅっと抱き締められた夏美がちょっと苦しそうに言うが、
すぐに、二人は共に、再びぎゅっと力強く抱き合う。
「…ん?どったの、コタロー君?」
「いや、なんでも、あらへん」
「なんでもないって事ないでしょー、真っ赤な顔ではーはーしてぇ」
「いや、それはそのあれや、あー、だからほら夏美姉ちゃんがやな、
なんつーか俺の体にむにゅってしてんのがやなー」
馬鹿正直な小太郎の返答に、夏美はちょっとの間きょとんとしてからくすっと笑った。
「おかしいんかい?」
「ううん、だって、男の子だもん。
私だってさっきから、コタロー君に抱っこされて、ね、熱くて熱くてたまらないんだからぁー」
既に、その言葉の意味を考える思考能力も失われつつあった。
呆れて前を見た小太郎の心は、そんな夏美の潤んだ瞳に一瞬で吸い込まれ呑み込まれた。
次の瞬間、二人は、貪る様に唇を重ね舌を絡める。
夏美の体が床に横たえられ、一瞬の目と目の交錯、夏美が小さく頷き、小太郎がタンクトップをまくり上げる。
細紐のスポーツブラをまくり上げられ、その頂きでピンと尖った乳首をちゅううと吸われると、
夏美は眉根を寄せ、切なげに喘いだ。
蕾も丘もベトベトになるまで小太郎に吸われている間、夏美は頭を振って喘ぎ続けた。
「?」
不意の小休止に、夏美が開けていられなかった目を開く。
ぐいっと夏美の頭が持ち上げられ、その下にクッションが差し込まれた。
「あ…ああっ!」
何か言おうとしたその前に、ミニスカートの中に手を入れられた夏美が悲鳴をあげた。
今、触れられたそこは、布地越しにも分かるぐらいぷっくりと膨らんでいた。
「ああっ!こ、コタロー君ああっ!!私、私ぃ、怖い、怖いよおっ!!」
「怖い?ほな…」
自分でも多少の、秘かに想ってそこに指を忍ばせる経験があるからこそ、
この異様な鋭敏さで突き抜ける快感には恐怖を覚えてしまう。
それでも、小太郎が何を言わんとしたかを察した夏美は、涙をこぼしてぶんぶんと首を横に振る。
「お願い、小太郎君お願い、小太郎君、私、私小太郎君大好きだからっ!」
「あ、ああっ!!」
そんな夏美にぎゅっと抱き締められ、小太郎は退く事を忘れた。
スカートの中から、ショーツが乱暴なぐらいに引きずり下ろされた。
「い、ひいいっ!」
「んー、ぴちゃぴちゃ言うとるわっ」
夏美の甲高い悲鳴に、剥き出しにされたつるつるのオマメを撫でた小太郎が対抗する様に言い返す。
それでも、もう少し優しく撫でてやろうと考えたりもするのが小太郎の素直なところ。
その結果、夏美は元々癖っ毛の赤毛をクッションの上でぐしゃぐしゃに乱しながら、
何度も背筋を床に浮かせのたうっていた。
「あ、あっ、あーっ…」
「夏美姉ちゃんっ!?」
尾を引く声と共にストンと脱力した夏美の姿に小太郎が泡を食うが、次の反応には戸惑った。
「どうしたん?」
「だだ、だって…」
両手で真っ赤な顔を覆った夏美は、涙声だった。
「だって、あんな、恥ずかしい…」
「んー、まあ、なんつーか、可愛かったで」
小太郎の言葉に夏美の顔を覆った両手が開き、そこから見える涙目が小太郎のハートをズキューンする。
「ホントに?」
「ん」
こっくり頷く小太郎に、夏美がきゅっと抱き付いた。
「…何よもーっ!…」
「わ、悪い、怒ったんか?」
小太郎が、自分の胸に顔を埋める夏美の髪の毛を思い付いた様にくしゃくしゃかき回し、
潤んだ瞳のまま顔を上げてぷーっと膨れる夏美に小太郎がもごもごと言う。
「んー、いいかも」
にこっと笑う夏美に、小太郎も苦笑を返す。
そして、もう一度静かに唇を交わし、離れると、
夏美は意を決した様に半ば引っ掛かっていた残りの衣服をするすると脱いでいった。
「綺麗やで、夏美姉ちゃん」
「ありがと」
小太郎の短い言葉に、夏美も謙遜せず、素直なはにかみで応じた。
ほーっと眺めてしまった小太郎の眼差しに、夏美が赤くなって胸に腕を回し大事なところに手を置く。
そうやって小太郎が見入ってしまった夏美の裸体は、
演劇部で青春の汗を流しているだけあって、全体に無駄なく均整が取れている。
本人が無駄無しを通り越していると思っている辺りも、比較対象を間違えているだけで、
年齢を考えれば至って平凡、だが、小太郎にとってはそれも又、
だからこそ穏やかな平凡の延長が味わい深いものだった。
「あんっ♪」
「ほれ、ぷにぷにしてかわいー声で、なんつーかたまらんわ」
「もーオヤジ…はううううんっ」
頭をクッションに上に素直に横たえられ、腕を掴まれた夏美は、拒まなかった。
膨らみを掌でぷにぷにとされながら、
夏美はくすぐったそうな声を上げ、小太郎とぽんぽんと言葉を交わす。
その内、乳首をちゅううと吸われ、又、既に溢れかえっている所に指を這わされて、
夏美は背筋を反らしながらたまらない声を響かせる。
そんな夏美を見ながら、小太郎の窮屈さも限界に達する。
小太郎がサッと全てを脱ぎ捨てると、その前で夏美が顔を手で覆って指の隙間から目を見張っていた。
「こーゆー風なんだ…」
「あ、ああ、俺、もうビンビンで辛抱たまらんやけど、夏美姉ちゃんは…」
「わ、私も、もう…バカあっ何言わせちゃってんのよおっ!!」
「わ、分かった分かった」
今にもクッションが飛んで来そうな勢いに、小太郎はたまらず腰を浮かせる。
「ん、っ…」
「んんんっ…」
その瞬間、夏美の目尻からコメカミにつーっと涙が伝う。
小太郎が何かを言う前に、夏美が小太郎をぎゅと抱き締める。
小太郎もそんな夏美を愛おしく抱き締めながら、まだまだ、そうやってぎゅっと密着されながらの
僅かな腰の前後だけでも小太郎には十分過ぎるものだった。
僅かにうめき声を漏らしていた夏美が一瞬、なんとも艶っぽい女の声を上げる。
小太郎もうめき声と共に大きく息を吐いた。
「へへっ…小太郎君、あったかい」
「夏美姉ちゃんもあったかくて柔らこうて、すっごい可愛かったで」
「もーっ。でも、コタロー君も可愛かった」
「な、なんやねんそれっ?」
「だって、あれもう辛抱たまらんって顔だったよー、怒った?お互い様だよー」
一瞬膨れた小太郎だったが、にこにこ微笑む夏美の顔を見てふっと力を抜く。
そして、顔を見合わせてくすくす笑い合う。
「…んー?これってまたー…」
「だ、だからー、夏美姉ちゃん可愛くてあったかくて柔らこうてたまらんさかい」
「ん、私もそうなんだうん」
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今度は、小太郎がクッションを使っていた。
クッションの上に座る小太郎の目の前で、夏美の裸体が、赤毛が跳ねている。
「はんっ、あっ、あんっ、ああんっ」
ガキの自分にガキっぽく絡む夏美も、こうして見るとお姉さんの顔だと、
実際は女の顔、牝の顔で喘ぐ夏美を眺め、小太郎は感じる。
「はうううんっ!」
目の前でぷるぷると震えるふっくら柔らかな膨らみに、たまらず小太郎が吸い付くと
夏美は顎を反らして悲鳴で応じる。
そして、夏美が腰を下ろしたまま、雄と雌の繋がった部分がぐにぐにとこねられ、
小太郎の呻きも又、切羽詰まって来る。
「な、夏美姉ちゃん、又、俺またっ…」
「ん、私もっ、コタロー君私もっ」
「くっ、くうううっ」
「あっ、コタロー君っ、あ、あー…」
うめき声を上げた小太郎の胸板に、とんと柔らかな感触が覆い被さる。
少しの間、荒い呼吸の交換が続き、そして、きゅっと抱き合い互いの体温を押し付け合う。
「へへっ…」
「あー…めりー・くりすます」
目尻から一筋の涙を伝わせながら、夏美が照れ笑いを浮かべる。
次に続いた小太郎の言葉に、夏美は吹き出しそうになった。
「Merry X’mas」
夏美の言葉と共に、二人はきゅっと抱き合いながら唇を重ねた。
最終更新:2012年01月28日 14:34