02スレ703

703 (;´・`) ◆O/UZZY.mgg sage 03/09/26 01:02 ID:rWAud2Jw

巻の二

まったりと歩を進めて、この間の沢に到着した2人。

「さて、ここで苦無の使い方の練習ついでに、岩魚を獲ってみるでござるか。」
「は、はい。」
「でもその前に……ネギ坊主の力ではどうやって獲るのか、興味深いでござる。一度、拙者の前でやってみてはくれぬか?」
「えー……こういうのをあんまり人前では見せたくは無いのですが…
 一回だけですよ?そうでないと僕の修行の意味がありませんから。」
「かたじけないでござる。」

ちゃぷん……

冷たく、澄んだ沢の水に両手を突っ込み、ネギは念じるような小さな声で魔法を起動させた。

「(岩魚さん、ごめんなさい……)えいっ!」

ぱ━━━━━━━━━━━━んっ

「!!」

猟銃のような炸裂音に楓が一瞬身構えた刹那、ネギの腕を中心とした波紋が水面に広がり、
沢のそこかしこを泳いでいた岩魚の集団が、大量に気絶して水面にぷかりと浮かび上がった。

「……どういう理屈かは推し量れないが、すごいでござるな……。」

表情こそ変えていないが、普通に驚く楓。

「水中に、ごく弱めの雷系の魔法をかけて、魚たちを殺さないように驚かせて失神させているのです。」

必要な何匹かを楓のびくに放り込みながら、判りやすく解説するネギ。


「いや、まぁ、それは判るのでござるが……拙者たちではここまでの量は捌けないでござるよ?」
「あ、それなら大丈夫です。ん……えいっ!」

ぱ━━━━━━━━━━━━んっ

ばしゃん、びちびちびち……

さっきとは逆に、電撃によって衝撃で我に返った魚達が一斉に水の中に消えていった……。

「おおおおおー、流石は小さくとも、本場仕込みの魔法使い。驚いたでござるよ……。」
「何の話でゴザルカナー、ニンニン♪」
「……流石にその返答はきついでござるよ、ネギ坊主……。」
「す、すいません……くすくす。」
「はははははは……。」

こうして、魔法の一部を披露したり、苦無などの暗器の使い方を教わったりしながら
2人のまったりとした食料探しは日の暮れる前まで続いたのであった……。
そんな中での帰途……


ウグウゥゥゥゥゥゥ…………

「あれ、あの熊……。」
「後ろの足を虎バサミに食いつかれているようでござるな…。よし、拙者が外してやるでござる。」

罠に足をやられ、それが取れずにもがき苦しみ、ぐったりとしている熊。
苦無等の道具を使いこなしてゆっくり、丁寧に罠をこじ開けようとする楓。しかし……!

こつん、ぱらぱらぱら……

ご ご ご ご ご ご ご ・ ・ ・ ・ ・ ・


文字通り地の底から搾り出されるような地響きと共に、崖の上方が、
嫌な音と共に裂け出し、巨大な落石を伴った土砂崩れとなってネギ達に襲い掛かってきた……!

「ネギ坊主、早く退くでござる!この規模だと拙者でも間に合わないかも……?ネギ坊主?死ぬ気でござるか!?」
「……長瀬さんも、この熊も、どっちも死なせません!
 ラス・テル マ・スキル マギステル 来たれ雷精  風の精!!
 雷を纏いて吹きすさべ南洋の嵐 ヨウィス・テンペスタス・フルグランス!!!」


          ド          ン          !


ズゴゴゴゴゴ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 

この世の物と思えない爆音と共に、ネギが今使える最高の魔法による衝撃波が、
全ての落石・落盤を吹き飛ばし、熊や楓だけでなく、周囲の森などもほぼ無傷のままに守り抜いていた……。

「…………。」

流石の楓も、言葉を失っていた。

「もうこれで大丈夫だよ。後はこの罠を外して血を止めるだけだから、もうちょっと大人しくしててね……。」

そういって熊を宥めながら、ネギは何の苦労もなく虎バサミをこじ開け、
傷痕にあまり得意ではない治癒魔法をかけて止血し、森に帰し、楓と共に再び岐路に着いた…。


そして、夕食時――――――

「流石に今回ばかりは拙者とて命が危なかったでござる…。恩に着るでござるよ、ネギ坊主。」
「そんなに畏まらなくてもいいですよ、長瀬さん……。
 僕にとっては、まだ生きていける命と、自分の生徒が、命を落としてしまうことのほうが辛いです。」
「ふふっ……本当に、優しいでござるなぁ、ネギ坊主。
 まだ拙者なら良いでござるが、その性格に付け込む輩がいたら尋常ではないことになりそうな位に。」
「ぎくっ」
「ん?何か今の台詞に心当たり有るのでござるか?
 ……冗談でござるよ。その優しさによって、拙者達が無事に進級出来たのでござるから。気を悪くしなくてもいいでござるよ。」
「あ、あはは…………ん?」
「どうしたでござるか……あ?」

がさっがさっがさっ…………

「おや、さっきの熊でござるな。」
「一体何をしにきたんでしょう…………あ、それは。」

ぼとっ

熊は、口にくわえていた蜂の巣をネギ達の前に差し出し、地面に置いた。
そして、嬉しそうに軽いうめき声を上げた後、走って山の奥深くに帰っていった……。

「なんで、あの熊、大事な自分の食料を僕達に差し出したんでしょう?傷が完治してないから自分で食べればいいのに…。」
「きっと、あの熊なりに、拙者等に恩義があるのでござろう。」
「恩義、ですか…。なんか、ちょっと悪い気がしますね……。」
「動物達にも、人間と同様、礼儀や社会があると聞いた事があるでござる。これは、向こうの礼儀と受け取って、頂いておくでござる…。」
「はい。……そろそろ、お風呂入って寝ましょうか?」

巻の二・完

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年02月12日 20:43
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。