04スレ237

237 座薬 ◆lQS9gmV2XM sage 03/11/09 03:59 ID:FJ78ajb8

 ―――女子寮の隣の隣の棟の屋上
 桜子は赤く、円は黄色く、美砂は青く、のどかは白く、タロットカードが発光する。
 ラクロス棒を武器に変え、桜子は「キャハハハハハハハ――」と笑い、それを振り回している。
「私たちはどーする? 何を武器にしよっか」
 困った顔でお互いの顔を見る円と美砂に、桜子がリボンとバトンを手渡した。
「まきちゃんから没収したブツだけどー、まー、とりあえずこれでいいんじゃない?」
 円がリボンを、美砂がバトンを手に取った。
 タロットが光る。
 魔法の光が新体操の道具を、凶悪な武器に変質させる。
 のどかは何も持っていない。
 ただ、カードを胸ポケットに入れて、そこに立つ。
 黒い魔女のローブを風に靡かせ、木乃香は微笑み、王のように四人を従える。
「まあハルナちゃんはともかく、みんなの一番の目的は、せっちゃ…桜咲刹那さんの捕獲やえ―――」
 人の気持ちを優しくさせる、穏やかな笑みで、
「どんな獲物がいても、桜咲さんを優先してな。好きに壊していいよ。もう、何もかもぐしゃぐしゃに、
めちゃくちゃに、死なない程度になら好きに壊してええ。ただし、吸血鬼にはしたらあかん―――」
 無邪気な、虫も殺さないような笑みで、
「その前提でみんなにお仕事や―――ウチを犯したまきちゃんと裕奈ちゃんが逃げてるらしい」
 優しい口調で穏やかに、ゆっくりと命令を下した。

「ウチの頼もしい護衛たちにお願いやえ――――――二人を、壊してでもウチの下へ連れて来い」

 四人の護衛が首肯し、他の吸血鬼と人形を引き連れて、
 疑問もなく、ただ命令のままに、獲物に向けて動き出す。


 ―――女子寮・廊下
 向かい合うのは、同じ存在を守ろうとする敵同士。
 一方は学園の制服を着て日本刀を構えた、髪を結うた少女、桜咲刹那。
 一方は集団で、魔女のコスプレをした釘宮円と柿崎美砂と、吸血鬼と生き人形。
 数時間前まで、同じ教室で授業を受けていた級友同士でもある。
 刹那が愛刀を抜いて床を蹴り、
 吸血鬼の兵隊一人が、迎え撃うように飛び出す。
 衝突までわずか一秒。刹那の刀の軌跡が、吸血鬼を宙に舞い上げた。
「―――お嬢様の場所を教えろ。そうすれば、今は気絶だけで済ませてやる」
 どさりと倒れた吸血鬼を無視して刹那は刀を構え直し、円と美砂を睨む。
「なかなかやるねー。でも、これからだよ」
 パチン、と美砂が指を鳴らすと、名も知らない吸血鬼と人形が、刹那の前に展開する。
「神鳴流をなめるな―――うぐっ!?」
 いきなり背中の肩甲骨辺りを蹴られた。不意打ちに意識が一瞬途切れ、何も聞こえなくなる。吸血鬼
は常人より怪力である。その攻撃の直撃を受け、刹那の軽い身体が勢いよく床に叩き付けられる。
(これしきのことで! しかし背後には誰もいなかったはずだが―――)
「うっ!」
 リボンの先端が、刹那の右足首に巻き付いた。
「そこらのザコ吸血鬼といっしょにしないでよねぇ―――」
 円の纏うローブから大量のリボンが溢れ出し、円を中心に増殖していく。
「私たちは木乃香の『従者』にして『護衛』。魔法のチカラを与えられ、特化した吸血鬼―――」
 床で、おぞましいリボンの海がラーメンの麺のように絡み合いながら、円を守るように蠢いている。
「お前たちが護衛? 洒落だとしても笑えんなっ!」
 右足のリボンを切断しようと刹那が刀を振り下ろすが、リボンは全く切れない。
「このタロットで触手化したモノは簡単に切れないよ。そしてこの触手は、吊るせる程度に力も強い」
 リボンが刹那の右足を持ち上げ上昇し、スカートが捲れて白い下着が見えた。
「変に強いヤツは、とりあえず足からぶっ壊すのが―――――――――定石かな?」
 刹那の顔に焦りが浮かぶ。リボンが切れない。天井が迫り、そして激突した。 


 バキバキバキッ、と音を立てて天井が破れる。
「うあああああああっ――――――!」
 天井の材料が脚に食い込み、皮膚が裂け、右足首を連続して衝撃が襲う。右足を傷つけながら、それ
でもリボンは右足首を上へと持ち上げ、刹那を逆さに吊るし上げる。
 太ももと天井の境界から、じわじわと赤い血が滲み始める。
 刀を持った腕に、鈍い衝撃が走る。まるで見えない何者かに攻撃されたような衝撃だった。
 刀が刹那の手から滑り落ち、床に突き刺さる。呆然とする刹那に、バトンを持った美砂が迫る。
 そのバトンからは青い光が迸る。危険を感じた刹那が懐から呪符を取り出し、簡素な結界を作る。
 ほぼ同時に美砂が、刹那の胸にバトンを叩き込む。
 結界とバトンが拮抗し火花を散らす。
「あがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――っ!」
 バトンの魔力が勝り、結界が破られる。反動で呪符と制服の胸部が焼失する。露になった胸にバトン
が叩き込まれ、青光りする電流が刹那の全身に乳房から流れ込んだ。
「……ぐ……うぅ……」
 リボンが動き、刹那が天井から抜けて床に激突する。血で塗れた右足を庇いながら刹那は刀を取ろう
とするが、リボンに引きずり回され、側壁や手摺に叩き付けられる。
「あっ!」
 足首からリボンの先端が離れ、上昇して刹那の股間を切り裂いた。
 リボンの先端に染みた赤黒い血液を、円は恍惚の笑みで舐めた。
「うふふ、刹那ちゃんの血だ―――むぐむぐ。美味しいぃ……」
「うああああああああああぁ―――っ!」
 刹那が股間を手で押さえて床を転がる。白い下着がみるみる赤く染まり、スカートにも染みができて
いる。リボンに割れ目を斬られた。刹那は敏感な部分を襲った痛みに顔を歪める。
 美砂がいつの間にか横に立っていた。
「さっきより電気キツめだけど、死なないよね? 頑丈そうだし―――」
 バチン! と乾いた音を残して、バトンに撃たれた刹那は軽々と宙を舞った。


 床に何度も激突し、ごろごろと転がりながら、刹那は三十メートルぐらいでやっと止まった。
「う、ぐ……あ……………うあ……………あ、あ―――」
 ほこりっぽい床にキスをしながら、刹那は一瞬失った意識を取り戻す。
 感覚と痛みがゆっくりと甦る。
 敵が近づいてくる。残存呪符の枚数、敵の数、身体のダメージ。どれをとっても刹那に敗色は濃い。
 しかし、逃げるわけにはいかない。
 刹那はよろめきながら、向かってくる吸血鬼の前に立つ。ボロボロになった制服からは胸が露出し、
白い肌は戦闘で痣と傷だらけになり、スカートは半分ズレ落ちて上履は行方不明である。右足首はダメ
ージが酷く、股間から太ももにかけては血塗れになり、股間が痛い。
 傷ついて弱り、刀も失った少女剣士に、下っ端の吸血鬼と人形が一斉に襲いかかった。
「私は……はあ、はあ、こんなところで、ごほっ、ま、負けられない―――っ!」
 刹那は体術の心得もある。自身を奮い立たせ、拳を作って敵の集団に挑む。
(私は、お嬢様のためにずっと修行してきたんだ―――剣が無くても、こんな連中………うぐっ!)
 絶望的にスピードが出ない。攻撃が避けれない。
 吸血鬼に殴られよろめいた刹那を、別の吸血鬼が羽交い締めにする。鍛えられているとはいえ中学生
の少女、身体は細く華奢である。その胸や腹に吸血鬼たちは、好き勝手に突きや蹴りを叩き込む。
(こ、こんな連中に………負けない………わたしは、このか、お嬢様を………守る………)
 吸血鬼の一人が猫のように刹那の身体を引っ掻き、赤い飛沫と制服の残骸が舞い上がる。
 腹を蹴られて呼吸が止まり、内臓が軋む。
(私……は、このか、おじょ……うさま………まも、る……た、めに……)
「ひぎぃ! ああっ! ごほっ! あぐっ! ぐぁっ!」
 吸血鬼が刹那の傷ついた股間を何度も蹴り上げる。スカートが血塗れになり、つま先立ちで震える刹
那の身体が蹴り上げられる度にガクガクと揺れた。耐えきれず涙を流すと、面白がられて殴られる。
 拘束を解くと、刹那はそのままその場に崩れ落ちた。


 人形が刹那の脚を開けると、赤く汚れた下着が見えた。人形の指が下着の上から割れ目を撫ぜる。
「痛っ……汚らわしい、触るな……」
 右手を動かすと、甲を踏み付けられる。左手を動かすと、左の肘の辺りを踏み付けられる。
「うぐぅあぁ、あぐっ、ぐぅ………っ!」
 痣だらけの乳房を汚物のように踏み躙られる。腹にも吸血鬼の脚が沈み込む。
「うぅ、うぐぅぅ……」
 顔を踏まれる。頬や唇、鼻を汚れた靴で踏み躙られる。
 両手・両足・胸・腹・頭を踏まれ動けない刹那の下着とスカートを、人形がビリビリと引き裂いた。
「や、やめろ………貴様等! 本気で斬られたいのかっ! や、やめっ……」
 周囲に薄く毛が生えた刹那の性器を人形の指が広げると、血のソースがかかった肉が顔を見せ、吸血
鬼の何人かがごくりと唾を飲み込んだ。人形が馬鹿みたいに太いペニスを聳えさせ、刹那の股間にゆっ
くりと合わせていく。そして鉄のように硬い巨根が、そのまま刹那の中に埋め込まれた。
「くはっ……ああ、あ、はぐぅあぁぁ……ぬ、抜け! 早く抜けぇぇ―――っ!」
 傷ついた性器を限界まで押し広げ、結合部から新しい血が流れ落ちる。最初は順調に刹那に挿入され
ていたが、ペニスにかなりの余裕を残して途中で入らなくなってしまう。
「ふぅぅ、ふぅぅ、ふぅぅ、う、動かす、な……うあっ、あ、ああ……い、痛い……」
「ケケケケケ―――本番ハコレカラダゾ」
 人形はペニスを刹那の中に、力を込めて押し込んでいく。刹那の身体が小刻みに震え、目から涙が零
れ落ちているが、それでも歯を食いしばって耐えている。
「ケケケケケケ―――、オイ、サッキマデノイセイハドーシタ? ウン?」
「うぐっ、あっ、あ、あ、あっ、あっ、あっ、ああんっ、あっ、ああっ、あっ」
 子宮口まで無理矢理に肉棒をねじ込み、人形は腰を激しく刹那に打ちつけ始めた。肉棒が出入りする
度に刹那の身体が揺れるが、踏み付けられているのでそれ以上は動けない。膣の中で肉棒が暴れ、子宮
にゴツゴツと先が当たり、刹那が堪らず声を漏らした。


「ひぃぃ、ひぃぃ、ひあっ、あっあっあっあっあっ、あぁ……」
 愛液が分泌され運動がスムーズになった。肉棒の動きが速くなり、刹那を休む暇なく突き上げる。し
かし消耗の激しい刹那に対して、人形には射精する気配はない。
「オイオイ、シッカリシロヨ。俺様ダケジャナインダゼ?」
「はあぁ、はあぁ、正々堂々、勝負しろ………へし折って、握り潰してやる………あぐぅっ!」
「ヤッテミロヨ、バカヤロウ!」
「あぐっ、あ、あ、あ、ひ、卑怯者が、ぐ、ぅあ、あ、あ、あ、ああっ、ああっ―――」
 人形の運動が不規則になった。浅く突いたり、深く突いたりを繰り返す。射精がようやく近づいてき
て、人形は急に運動を激しくした。その巨大な棒で存分に膣を掻き回し、息も絶え絶えの刹那を嬲る。
「あぐっ、ああ、あ………あ…………………あ………あかん、ぼうが……………」
 半分失神していた刹那は、弱々しく呻き声を上げる。

 どぴゅるるる、どぷ、びゅる、びゅる―――

 膣の中で肉棒が震え、大量の精液を吐き出した。生殖器に十分過ぎるほど精液が注がれていく。
(わたしは、なにをしている…………たたかえ………たたかわないと………このちゃ………)
 戦いに敗れ、殴られ、蹴られ、踏まれ、陵辱され、泣いて、汚され、そして、それでも、
(………これが……………私の……限界………………なわけが、ない!)
 刹那の顔は、剣士のまま、変わらない。

 ……………………………………………………


 ―――別室

「みんな、これまでありがとう。ちうはもう、ここには来れないかも」

 モニターに映し出されたホームページ。
 そのページの主はそれだけ書いて、椅子に深く座っていた。
 救助要請をネットから送ったが、現時点で反応はない。
 刹那が助けてくれた。
 その刹那が嬲られボロボロになっていく様子を、千雨はドアの隙間からずっと見ていた。
 向こうに吹っ飛ばされた後でも、音だけは聞こえてくる。
 次は自分だろう、と千雨は考えていた。
 窓は六階の高さ、廊下は吸血鬼だらけ。しかも千雨は吸血鬼に既に発見されている。
「………………………………」
 終った。
 頬を涙が伝う。
 千雨は静かに、孤独に、自分の人生を考えていた。
 変人ばかりのクラスメイト、だが、友達を少しぐらい作っておいても良かったかもしれない。

 そんなに千雨の背後に、天井から一つの影が降りた。


 ―――廊下
 刹那が陵辱されている時、円たちは残された刹那の刀を抜いて眺めていた。
「うーむ、なかなかのワザモノだよこれはっ! 300万円ぐらいかな」
「嘘つけよコラ」
「くすくすくす―――次は私に貸してください―――」
 刹那が犯されているのを身ながら、吸血鬼たちは談笑する。
 そこに見えるのは二人、しかし声は三人だった。
「むっ!?」
 ――――――バシッ!
 円のリボンが反応してムチのように動き、飛来した手裏剣を撃墜した。


「―――!?」
「近衛木乃香の『従者』とか意味が分からぬが、お主ら、不快を通り越して目障りでござるな」
 そこに立っているのは長身の、黒装束を纏った少女だった。
「楓ちゃん!? どうしてあんたがここにいるのよぉぉぉ―――っ!」
 リボンが蠢き、円を中心に渦を巻いて、出現した敵を威嚇する。
「変な邪魔が入ったね。遊び足らないけれど桜咲さんはとっとと木乃香のところに運んじゃおー。
飛び道具は相性が悪いし、円、楓ちゃんは任せたよ」
 美砂が後退し、犯されている刹那の方に歩いていく。
 リボンがまるで生きているように、円の周囲で吹き荒れる。
「ハルナちゃんの幻覚の『世界』は負けたのか。でも、私はそうはいかない」
 床を裂き、側壁を削り、鉄製の手摺を切断しながら、じりじりと楓に接近する。
 しかし暴れているのはリボンの真ん中の部分で、先端は別行動をしている。
 吹き抜けの方に垂れ落ち、そしてそのまま、横から楓に近づいていく。
 狙いは、楓の足。
「な、何っ!」
 吹き抜けから足を襲ってきたリボンを、知っていたように楓は軽やかに避けた。
 楓が何かを円に投げる。円に届く前にリボンがそれを真っ二つにする。
 台所にあるコショウだった。
「ぶひぇふげほえほ―――!?」
 コショウに包まれた円に向けて楓が跳ぶ。サーカスの綱渡りのように暴れるリボンの上に飛び乗り、
そのままリボンの上部を駆ける。円に近づくにつれリボンの密度が増す。身体の所々が斬られる。忍装
束が裂かれ血も飛ぶ。しかし止まらない。リボンの中心に向けて、ただ走る。
「セコい真似してくねるねぇぇぇ―――っ!」
 コショウを振り払った円が刹那の刀を握り締めて楓を探す。しかし、いない。
「どこに行ったあああぐぎゃっ―――」
 真上から落下した楓が、苦無の一撃を円に叩き込む。円の手から刀が離れ、楓が掴む。
「ま、円!? うぶぁっ!?」
 刀を手に持ち、刹那を囲む吸血鬼たちに煙幕弾を使い、刹那のみを攫い、楓は走る。
 そして吸血鬼の集団の中を駆け抜け、血を落としながらようやく楓は止まり、

 同時に煙幕の向こうで、円が崩れ落ちた。


「動けるでござるか?」
「…………ああ、感謝する」
 刀を手に取り、刹那は楓に呟く。
「あの、リボン、よく破れたな―――足を狙ってきただろう?」
「千雨に聞いたでござるよ。彼女はお主がやられているところを、ずっと見ていた」
「そうか」
 刹那の疑問に、楓が答える。まるで情報を交換する兵士のような、そっけないやりとりだった。
 よろめきながら刹那が立ち上がる。
 煙幕の向こうから、怒り狂った美砂と吸血鬼、生き人形が走ってくる。
「その身体で動けるでござるか?」
「動かなくても向こうから来る。リボンが無いなら敵も接近戦しかない」
「怪我が酷いが」
「少し待て。客が来た。おい、お前、ボカボカ蹴ってくれたお礼だ」
 刹那が誰もいない空間を、刀で切る。
「あ……な、なんで……………わかった、です、か――― ―― ― 」
 誰もいない空間から、真っ二つになった隠者のタロットカードが舞い落ちる。
 透明になり、戦場に隠れて刹那を妨害していた存在
 魔女姿のローブを纏った宮崎のどかが空間から現れ、そのまま崩れ落ちる。
「気付かなかったでござるな。いや、驚いた」
「存在を意識して気配を読めば、貴女もきっと気付くよ」
 ぽたぽたと血と精液を落としながら、刹那は呟く。
「すまないが、私一人にやらせてくれ。これは護衛同士、大切な存在の争奪戦でもある」
「さっきボコられてたではござらんか」
 血を流しながら楓が笑う。
「気にするな。刀があれば、刀を持てる限り戦えるさ」
「…………………………はぁ、屍は拾ってやるでござるよ。―――神鳴流の剣士」
「感謝する。―――甲賀の忍」
 飛びかかってきた吸血鬼を、殴るように刀で叩き落す。
 次の吸血鬼を横に切り払い、人形を斬って急所を踏み潰す。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああ―――――っ!」
 血をぼたぼた落としながら、敵を倒して刹那が進む。
 その先に、木乃香がいる事を感じながら。


「うげ……刀があるとこんなに強いのかよ……」
 青白く発光するバトンを構え、美砂が吐き捨てる。
「お前たちに、例え壊れても、このちゃんを守る覚悟があるか―――」
 壊れる―――自分を物のように、刹那は言う。
 ボロボロの身体で、美砂に迫る。
「護衛だと? 笑わせるな貴様らぁぁぁぁぁぁ―――っ!」
 鬼のような刹那の形相に、美砂が怯み、
 バトンの上半分が、切り飛ばされ、
 刀に打たれ、美砂の身体が宙を舞った。


 戦況を見守っていた千雨が恐る恐る出ていくと、血塗れの楓と刹那が床にへたり込んでいる。
 円も、美砂も、のどかも、他の吸血鬼も倒れて動かない。
 刹那の戦う様子を楓に教えてよかった。千雨は助かった。感謝の言葉を二人に言いたい。
「では、これから拙者は他の棟を偵察してくるでござるか―――バカリーダーの動きも気になる」
「私は呪符を揃えて、木乃香お嬢様を探す。一応、連絡方法を決めておこう」
「…………」
 やっぱりこいつらは普通じゃない。敵も普通じゃない。何て言うか、もう……
「お前ら何考えてやがるんだぁぁぁぁっ! 違うだろ! 最初に考える事はそうじゃないだろぉぉっ!
まったくよぉ! いつからここは戦場になったんだよっ! 訳分からねえ戦いばっかしてんじゃねーよ! 
どっから涌いてきやがった吸血鬼どもっ! 普通に手裏剣投げるなっ! 普通に日本刀で戦うなっ! 
コスプレするなっ! 人形動くなっ! リボンの使い方はそうじゃねぇっ! バトンに電気を流すなっ! 
透明になってんじゃねーよゴラァァァァァァ―――!」
 ストレスが爆発したように、千雨は泣きながらキレた。
「まずは怪我の治療だろぉぉぉっ! それぐらい私にさせろぉぉぉぉぉぉ―――っ!」
「は、はい」
「わ、分かったでござる」
 吸血鬼たちを制圧した二人が、その迫力に思わず返事した。


「それと、まさかこいつら、死んだのか?」
 倒れている吸血鬼たちを見て、冷静になった千雨が言う。
「いや、気絶させただけだ。神鳴流は人を倒す剣ではなく、魔から人を救うためにある」
 刹那は少し黙って、呟いた。
「木乃香お嬢様……私は、必ず貴女を魔からお救いいたします―――」

 楓と、千雨に担がれた刹那が、千雨の部屋に入っていく。

 美砂と円の身体からカードが舞い上がる。
 そして、戦いの結果を主人に伝えるべく、ひらひらと飛んでいった。


 ―――女子寮の隣の棟・入り口周辺
 チャチャゼロと夕映は、妙に気があった。
 夕映がまき絵と裕奈の代わりにリーダーになれたのも、チャチャゼロの力が大きい。
「モウ少ダ……シッカリシロヨ……近衛木乃香ハ多分、コノ棟ニイル」
「あ……あう……」
 真っ黒に焦げたチャチャゼロが、ふらふらしながらお姫様抱っこで夕映を運んでいる。
 楓の痺れ薬を飲んだ夕映は、ほとんど自力では動けない。
「す、すいません……ご主人様のお気に入りである貴方に、こんなことをさせて……」
「何言ッテンダヨ。気にスンナ! 友達ダロ!」
「は、はい」
 かつて図書館島で、楓にも同じように、助けてもらったことがあった。
 その時に感じた感情はエヴァの魔力で封印されている。
 しかし夕映は何か、忘れている感情をチャチャゼロに、少し感じていた。
「アノ忍者女ニ、リベンジシテヤロウゼッ!」
「そうですね……次こそ、勝つです」
「ソノ意気ダッ! 御主人ノ次ニ、夕映ヲ守ッテヤルヨ!」

「……………………………………………ありがとう」

 一人と一体はふらふらと、棟の中に入っていく。


 ―――女子寮の隣の棟の一室
 その部屋は天井が高く、2階分の広さがある。
「あー、夕映ちゃんとゼロだよっ! 木乃香ちゃん!」
 桜子と他の吸血鬼が夕映とチャチャゼロを出迎える。
 机のピラミッドの頂点に座り、木乃香は水晶玉を見て微笑みながら、夕映を見下ろす。

 関西呪術協会のメンバーは、天井裏に潜んでいた。
「見つけたぞ。木乃香お嬢様だ」
 黒ずくめの男が静かに言う。彼は呪符使いである。
「んー、なんや、変なのが増えたで」
 横の金髪の男が嗤う。彼も呪符使いである。
「問題無いだろう。所詮は素人の集団だよ」
 横の赤髪の少女がバカにしたように言う。彼女は神鳴流の護衛である。
「でぇ、どうしましょう? 殺っちゃいます?」
 ショートカットの黒い髪の少女が、笑いながら言う。彼女も神鳴流の護衛である。
「今なら、何が起こってもエヴァンジェリンの仕業にできるな―――」
「何や、ええ感じのシチュやなー」
「しばらく何も斬ってないから、腕が鈍って困っていたことろだ」
「え? え? 殺傷オーケイなんですかぁ?」
 にやける短髪の少女に、金髪が嗤いながら言う。
「吸血鬼の巣窟からお嬢様をお救いするためや。不可抗力やで」
「それに、学園生徒に死者が多数でれば、学園のダメージもでかいね」
「関東の連中にとってもアイタタタか。そりゃ面白い」
「呪符と薬の実験体に子供が欲しかった。ここで調達するか」
「きゃー。きゃー。人が斬り放題なんて夢見たいですねぇ」
 学園の監視。戦いの現場から遠い位置に、強制的に置かれた、四人。
「関西に帰ったら、ヒーローやで、わてら」
「中学生って、斬ったらどんな感じなんでしょうねぇぇ。初めてです。うふふふふふ」
 危険な四人が息を潜め、嗤いながら木乃香を見下ろす。

「嫌やわぁ……ゴキブリが四匹も」
 水晶玉が、天井裏の四人を上から映し出し、木乃香がそれを、見下ろしていた―――

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最終更新:2012年02月12日 21:08
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