30スレ361

楽日 第一話

 ×     ×

「おうっ、いたいたっ」
「あ、小太郎さん?」

丁度正門を出た佐倉愛衣が気付くのと、小太郎が手を上げて駆け寄って来たのはほぼ同じ頃合だった。

「何?学ラン?」
「知らないの、ほら」
「ちょっとワイルド系?結構イケメン?」
「うん、ちょいやんちゃっぽいのいいかも」

ひゅーひゅーと何か口笛っぽい声も聞こえる中、
愛衣の所に駆け寄った小太郎が、チラッと周囲に視線を走らせる。

「じゃあ愛衣、先行ってるね」
「うん」

近くにいた愛衣の友人達もニコニコと言うかニヤニヤして退散する。

「ちょうどええわ」

それをチラッと見送った小太郎が愛衣に向き直った時には、
愛衣の目からも微笑みが消えていた。

真面目な顔で一言二言告げて愛衣が至って真面目に頷き、小太郎はタタタッと走り去る。

「愛衣、愛衣」
「ひゃいっ!」

愛衣が若干飛び上がり気味にピシッと直立した時には、既に小太郎の姿は視界から消えていた。

「愛衣、何をぼーっとしているのですか」
「あ、ご、ごめんなさいお姉様」

振り返った愛衣が、腕組みをしている高音にぺこりと頭を下げる。


「あの格好で女子大の正門で、いつになったらデリカシーと言う言葉を覚えるのでしょうね」
「そうですね」
「だから顔、緩んでると言ってるの全く。さあ行くわよテレテレしないっ!」
「はいっ」

 ×     ×

降りしきる小雨の中、
愛衣の周囲から一瞬で大量に放たれた赤い火炎弾と青白い火球が空中で激突し、
森の木々の間で大量の花火と化す。

「うらあっ!!」

その間を縫う様に小太郎が突撃し、目指す相手の首根っこをとっ捕まえた。

「!?わ、悪い…」
「小太郎さん!?」

その相手、白い布の塊からぶわっと沸き起こった巨大な力が小太郎を弾き飛ばし、
とっさに背後に回った愛衣がそれを受け止めた。

「とーりゃーっていりゃーっうーりゃーっ!!」
「アスナさんっ!」

離れた場所で、頭巾姿の人獣らしい輩が振り回す槍が明日菜のハリセンとちゃんちゃんばらばら弾け合い、
受け持ちが片付いたネギが駆け付けていた。

「つつ…どわっ!!」

背中にぐにゅっと柔らかいものを感じながら身を起こそうとした所で、
小太郎は背後から襟首を掴まれる。
そのまま横に放り投げられた小太郎は、元いた方向を見てそのまま飛び退いた。
そこでは、尻餅を着いていた愛衣が左腕を突き出し、
左の袖から肩口近くまでの衣服が一瞬で粉砕された。

「おいっ!!」

小太郎の叫びと共に、両腕を突き出した愛衣の前で巨大な火球が爆発する。
次の瞬間から、愛衣と白い塊がタッタッタッタッとステップ合戦を繰り広げ、
その周辺で次々と火球が爆発している。
小太郎が別の方向を見ると、そちらから段々と銃声が近づいて来る。


「おお、たつみー姉ちゃん」
「すまん、遅くなった」

言うが早いか、真名はザッとしゃがみ込み、小太郎もニヤッと笑みを浮かべる。
次の瞬間、銃弾が四方八方に大量発砲され、
それと共に頭巾の人獣がバラバラと空中から落下し動かなくなる。
パンパンと満足げに掌同士を叩いていた小太郎の頬の横を、ひゅうと火炎弾が通り過ぎた。
小太郎がすーっと振り返ると、槍を振りかぶった人獣頭巾がばったり倒れた所だった。
前を向いた小太郎は、にこっと笑った愛衣にニッと笑みを返すとそのまま愛衣の視界から消える。

「ああっ!」

愛衣が上を見ると、白い大きな布を手にした小太郎がこれから着地する所だった。

「こんの、おっ!…」

駆け寄った明日菜が大剣を振りかぶり、ぴたりと足を留めた。

「女、の子?…あ、ごめん、私そーゆーのきかないから」

蹲った小さな体を見下ろし、キランと光った目に気付いた明日菜が言った。

「せっちゃんストップストーップ、あー、そちらさんも矛収めてやー」

残った頭巾と対峙していた刹那の近くを木乃香が走り抜け、明日菜に接近する。

「はい、お父さんからのお手紙。怖かったやろーごめんなー」

木乃香から手紙を渡され、しゃがみ込んでいた女の子が安堵した様に啜り泣き始めた。

 ×     ×

「えーと、つまり?」

再び白い塊と化してぺこりと頭を下げた少女を中心に行列はすーっと姿を消し、
雲の切れた夕日の森の中で明日菜が尋ねた。

「先の工事の際の手違いで、お稲荷様と氏神様を取り違えて移築してしまったらしいな。
大昔のこちら側とあちら側の和睦の目印になっていて、今までそれが尊重されて来た」
「で、狐の嫁入りが警戒ライン突破してあっちはあっちで訳が分からずに大暴れ、
まああちらさんも色々ややこしいからなぁ、人騒がせな話や」


真名の説明に、小太郎がやれやれと手を上げた。

「そうですね。お嬢様が早々に話を付けて下さったから良かったですが…」

刹那の視線がチラッと走る。

「あの姫君は九尾の狐直系の名族。
本人の技術はまだまだとは言え、あの妖力に真っ向から魔力で渡り合ったと言うのは」
「ああ、ちょっと見ない間に名コンビになったものだな」
「ああ。元々彼女は正統派の魔法使いでここの魔法使いの中でも若手ピカ一。
小太郎君は正に実力派の拳士。いい取り合わせだ」
「何より…」

刹那の言葉を受け、真名が視線を向けた先では、
小太郎と愛衣がガシッと腕と腕を合わせていた。

「何より息がぴったり、相当な修羅場をくぐったんだろう」
「ああ、形式上は高校生と大学生だが、
小太郎君は協会の契約ハンター、佐倉さんも正規の協会員で卒業後は協会のキャリア組。
それ以前から能力的にも実力的にも相性がいいからな。幾度も修羅場をくぐったパートナーだ」

刹那の生真面目な説明に、真名の唇の端に意味深な笑みが浮かんだ。

「イちゃん…」
「………」
「メイちゃん」
「は、はいっ」

愛衣がハッと振り返ると、神楽坂明日菜がにこにこと立っていた。

「ぼーって見とれちゃって、もう行っちゃったって」
「あ、いえ、その…」
「?」
「いえ、その、ちょっと考え事を」
「ふーん」
「アスナさーん」
「あーネギ今行く。ホント、愛衣ちゃんっていいパートナーになったよね」
「え?えーと…
あ、あの、アスナさんにはかないませんよネギ先生と」
「ま、なんだかんだ長い付き合いだからね。じゃっ」

チリンと鈴の音を残し、明日菜は駆け出していた。


「アスナさーん」
「だからバカネギー」
「あううー」

その声を微笑ましく耳にし、ふっと心地よい疲労を覚えた愛衣は、ふと周囲を見回した。
さーっと、木々の下草の間を風が通り過ぎる。

「よう」
「はいっ!」
「何ビビッてんね」

おもむろに歩き出した愛衣が、横合いの木陰から声を掛けられビクッと足を止めた。

「あ、ご、ごめんなさい」
「いや、謝る事でも無いけど」
「どうしたんですか小太郎さん?」
「いや、どうしたて事でも無いけど何となくな。あー、愛衣姉ちゃん」
「はい」
「なんぞ食べてくか?」
「はい♪」

メキッ

「おおっ、木の幹が抉れたアル」
「素晴らしい握力でござるな高音殿」

 ×     ×

「愛衣、愛衣?」
「あ、何?」

学食で聞き返した愛衣に、友達は意味ありげに笑みを返す。
そうだ、大学での平凡な講義、他愛のないお喋り、今日は出動は無い。
だけどこれから、ここを出たらそうは行かない。
これに比べたら、鬼神や大魔王とタイマンを張る度胸など物の数ではない。
だけど、やらねばならない、既に賽は投げられた。

「もー、愛衣」

パンと掌で頬を挟んだ愛衣に、友人が呆れた様に言った。

 ×     ×

「ちづるせんせーさよーならー」
「はい、さようなら」

保育園の前で、最後の一人をにこにこと見送った千鶴はつとそれより遠くに視線を走らせ、
ふっと笑みを浮かべた。
電柱の陰から歩み出た愛衣が、ぺこりと頭を下げる。

 ×     ×

「ごめんなさい、待ち合わせに行けなくて」
「いえ、お忙しい所をすいません」

喫茶店のテーブル席で、向かい合った千鶴に愛衣がぺこりと頭を下げる。
千鶴は話が上手だ。お茶をしながら保育園の話と言うのは楽しかった。
その話がふっと途切れた時、愛衣は深呼吸をする。
あるいはここまで、千鶴は緊張をほぐしてくれたのかも知れない。
だとすると、やはり容易ならざる相手。愛衣はその思いを強くする。

「あの、那波さん」
「はい」
「あの、あにょっ、あのですね…あのー、えーと…はい、那波千鶴さん」
「何ですか、佐倉愛衣さん?」

にっこりと、太陽の様な魅力的な圧倒的な微笑みに、愛衣は気圧される自分の心を叱咤した。

「那波千鶴さん。あのっ、小太郎さんを、私に下さいっ!」

深々と頭を下げる愛衣の前で、千鶴はきょとんとしていた。して見せた、のかも知れない。

「うーん、下さいってお願いされて差し上げます、って言うのも変な話よね小太郎君」
「そ、それはそうですね、はい。あの、私何言ってるんだろアハハ…
ええ、そうです。それは分かっています。
でも、何と言いますか、まずはその那波さんにその…」
「それはつまり…」

言い募る愛衣の前で、千鶴はレイコーのストローから離した口を開く。

「女性として、宣戦布告と受け取っても構わないのかしら?」

静かな、真摯な眼差しを浴びながら、愛衣も又、静かに呼吸を整える。


「…平和的に解決出来るものなら、それに超した事はありません。
でも…私は、小太郎君の事が好き、
誰にも、那波さんにも誰にも渡したくない。これが私の気持ちです」
「そう」
「那波さん…」
「…千鶴、でお願い出来るかしら?…」
「はい。千鶴さんは綺麗でそのグラマーで外見も内面もとっても魅力的な女性です。
正直言って、私なんか全然かなわない、そう思えてしまうぐらい」
「佐倉さん、とても綺麗、あなたは魅力的な女性よ。
ええ、客観的にもね。嫉妬されるぐらい綺麗な佐倉さんが、謙遜も過ぎると人を傷付ける」

千鶴の言葉に、愛衣がぺこりと頭を下げる。

「でも、本当に全然かなわない、そう思えてしまう事。
千鶴さんは、小太郎君にとって特別な女性」
「特別な女性」

カランとストローをかき回した千鶴を、愛衣はじっと見ていた。

「そう、特別な女性。
何よりも漢を誇りとする小太郎君が傷付けてしまった女性。
孤独な彼をもしかしたら初めて、家族として受け容れてくれた女性。
あるいは初めて憧憬を抱く事が出来た女性。
あるいは初めて、保護者として庇護してくれた女性。
特別な、触れる事の許されない聖なる存在」

その千鶴の語り口は自慢話ではない。愛衣は息を呑んで聞いていた。

「意地っ張りで手の掛かる事も多かった、やんちゃだったけど根は素直で真っ直ぐで優しい。
力強くて美学に頑固だけどそのための努力も辞さない。お勉強、見てくれたのよね」
「え、あ、はい」
「そう。学園長からは今までの功労とかで色々お話があったみたいだけど、
それでもらうものはちゃんと貰って来たって言って、
小太郎君はあくまで正規の奨学金にこだわった。不合格なら中退すると。
そして、私達に頼る事もしなかった。本当にありがとう」
「い、いえ、とんでもないです。
小太郎さんからは本当に、教わる事の方がずっと多くて、あのぐらいの事は…」

深々と頭を下げる千鶴に、愛衣がわたわたと手を振って言う。

「私は14歳だった。14歳の時に小太郎君に出会った。
それからずっと、彼が寮を出た後も行き来はあったけど。
…少し、疲れたかな?…」
「え?」

聞き返した愛衣に、千鶴は曖昧な笑みで小さく首を横に振る。

「あなたは触れる事、共に歩く事が出来る。佐倉愛衣さん」
「はい」

愛衣は、しっかりと前を見据えて返答した。千鶴が、そうしたから。

「小太郎君の事、お願い。
私にとって大事な存在、特別な存在だから。
だから、その事を信じてくれたあなたに、あなたを信じてお願いします佐倉愛衣さん」
「はい」

深々と頭を下げる千鶴を前に、泣き出したくなるのをぐっと呑み込んだ愛衣は、
音量ではなく底に精一杯の力を込めて返答し、頭を下げた。

 ×     ×

「…らさん…佐倉さん」
「はい」

きょろきょろとしていた愛衣がハッと前を向いて返答すると、
目の前では千鶴が両頬杖を突いて愛衣を見ていた。

「どうしたのかしら?どこかに修羅場の監視役でも?」
「い、いえ、ごめんなさい」

生真面目な口調で頭を下げる愛衣に、千鶴はくすっと笑って首を横に振った。

「…あの…すいませんが…」

腕時計を見た愛衣が口を開き、千鶴が頷く。
愛衣が伝票を持って立ち上がり、ぺこりと頭を下げてトテテとカウンターに向かう。
千鶴はふっと外を見て、ストローでレイコーの氷を揺らした。

 ×     ×

「よう」
「え?」


駅に向かっていた愛衣が、思わずギョッとしてそちらを見る。

「こんにちわ、愛衣ちゃん」
「あ、どうも」

愛衣がぺこりと頭を下げた前では、いつもの学ラン姿でスーパーの買い物袋を抱えた小太郎の横で、
ラフなジーンズ姿の夏美が、やはり買い物袋を手ににこにこ立っていた。

「珍しいなこっちで愛衣姉ちゃんに会うて」
「え?ああ、そうですね。小太郎さんはお買い物ですか?」
「って言うか私ね。色々バーゲンしてたから手伝ってもらっちゃった」
「そうでしたか」

愛衣がつとそちらを見ると、夏美がちょっと困った様な笑みを浮かべていた。
そのまま、小太郎を間に挟む形で電車に乗り、駅で降車する。

「じゃあ」
「はい」

小太郎と愛衣が短く言葉を交わし、愛衣は並んで歩く二人の背中を見送った。

 ×     ×

「Fight!!」

開始と同時に、目の前から小太郎の姿が消えた。
既視感を覚えるのは一瞬。場所も季節も同じでも、あの時とは違う。愛衣はその月日にかけてぐっと頷く。

「ぬおっ!?」

振り上げられた箒が空を切り、小太郎はヒラリと背面跳びしながら距離を取った。
その小太郎に追いすがる様に幾つもの火炎弾が無詠唱で飛来し、
小太郎は体の前で×字に腕を組み、気を集中させて防御した。
着地した小太郎を更に大量の火炎弾が襲ったが、予定地点での着弾はしなかった。
とっさに体を開いて飛び退いた愛衣は、そうしながらブンと箒を振るい虚空に斬り付ける。
着地した愛衣に上空から四人の小太郎が飛びかかり、
四人の小太郎は愛衣を取り巻いた炎に飲まれて消滅する。

「よっと!」

ステージ上の全く別の場所で、愛衣が振るった箒を小太郎がひらりと交わしている所だった。
鋭い動きの箒が小太郎の鋭い動きに交わされ、あるいは気をまとった腕に弾かれる。


「くっ、とっ」

だが、愛衣の魔力も相当なもの。何度も受けられるものではない。
痺れる腕を振りながら身を交わし、小太郎は不敵な笑みを浮かべる。
楽しい、と思った。根っからのファイターである小太郎が真剣に楽しむに値する相手だった。
それを見た愛衣もふっと笑みを浮かべる。
真剣に取り組んで来た事を思い切りぶつける事の出来る、楽しい時間だった。

「何これ?一方的になっちゃった」

観客席の明日菜が言った先では、ステージ上の一角で足を止めた愛衣の周囲で、
数人の小太郎がびゅうびゅう取り囲みながら次々と拳を繰り出す。
愛衣は箒で懸命に対処していたが、
ホワイトな闘うウェイトレスと言った格好の愛衣のブラウスがあちこち裂けて素肌が露出し、
裂け目から太股とハーフパンツも覗き始めていた。

「らああっ!!」

拳を突き出した小太郎が前のめりになった。
その小太郎の背中に、愛衣が掌を突き出す。その顔には確信の笑みが浮かんでいた。

「…エーミッタム…!?」

虚空を取り囲む紫炎の檻を目の前にして、愛衣の目は一転驚愕に見開かれた。

「よっ」

振り返った愛衣は、不敵な笑みを見た次の瞬間、水面を切って六月の池にダイブしていた。

「あー、大丈夫っぽいな。せーの、と」

過去の経緯から設置されていたロープ付きのポリタンを小太郎が池に放り、
タンクに縋り付いた愛衣を小太郎が引っ張り戻す。

「ん」

差し出された手を、こくんと頷いた愛衣が握る。

「むむー…」

千鶴がふふっと微笑みその隣で夏美が凝視する前で、愛衣はステージに戻り体勢を立て直す。
ニッと笑った小太郎が愛衣の腕をポンと叩いて、愛衣もはにかみと共にぺこりと頭を下げた。



「場外!勝者犬神小太郎!!」

 ×     ×

「惜しかったねー、愛衣ちゃん」
「いえー、まだまだです」

試合後、着替えた愛衣と明日菜が控え室で話していた。

「本当に、強かったです愛衣さん」
「ありがとうございますネギ先生。明日菜さんは今回はエントリー」
「いやー、流石に今さらネギと対戦なんてねー。みんな強いし」
「アスナさんだって強いじゃないですか、ネギ先生のパートナーですよ」
「ま、そうだけどね」
「よっ」

そうこうしていると、外していた小太郎も戻って来た。

「いやー、愛衣姉ちゃん強なったなぁ、ヤバかったわホンマ」
「いえ、まだまだ小太郎さんには胸を貸していただきました」
「何言うてんね。まー何やな、西洋魔術師としてあんだけ使えて、
それで近接もあそこまでこなせるてなったら、
もう俺が教える事も無いんと違うかもう」
「と、とんでもないです小太郎さん。まだまだ色々教えていただく事が…」
「んー、そうか?
愛衣姉ちゃんはあくまで西洋魔術師、それも凄腕や。遠距離戦だけになったらもう俺でもかなんわ。
その穴を埋めるのに俺も修行の身ぃながら色々教えて来たけどなぁ、
これ以上はホンマに両立難しいで、西洋魔術師として優秀やから言うてるん。
…けど、なんか愛衣姉ちゃんならやれそうやな」
「そうよ、私達が出会ってから愛衣ちゃんすっごく頑張って、
デタラメ軍団って言われた私達だってしっかり追い付かれたんだから」
「ええ、元々優秀な魔法使いの上に非常に努力家ですから」

小太郎が最後にふっと笑うと、明日菜とネギがその後に続いた。

「今の愛衣姉ちゃんと張れる言うたら、
俺かネギぐらいしかおらんと違うか?
愛衣姉ちゃんもまあ西洋魔術師として最強レベルやけど、
ネギの場合魔法も最強レベルで拳法も達人級てデタラメ振りやからきついわな。
俺やったら力ずくでもブチ破ったるけどな、愛衣姉ちゃんもネギも」

小太郎の不敵な笑みに愛衣がにこっと微笑みを返し、
次に、小太郎とネギが不敵な笑みを交わす。

「…男の子よね…」
「え?あ、はい」

明日菜の声に、愛衣がハッとした。

「妬けるかな?」
「え?あ、いえ、それは…」

小声で弁明しようとした愛衣と明日菜が目を見合わせてくすっと笑った。

 ×     ×

廊下で千鶴と夏美とすれ違い、楓は控え室に入った。
そこで、小太郎は静かに椅子に掛けている。

「楓姉ちゃんか」
「邪魔でござったかな?」
「いや、いい。ボチボチ腰上げる所やった」
「うむ。復活・真・まほら武道会。
抽選に細工をして、この学園に多い関係者以外はパブリック・ビュー観戦で録画映像効果と説明。
単純だが効果的でござったな。そして、お主はそこで堂々拙者を打ち負かした」
「生き方、進む道、…以外に教わった事は山ほどある。生涯、俺の師匠や」

小太郎が、ぐっと拳を握って言った。

「自慢の弟子でござるよ。そろそろ行くでござるか?」
「ああ。キッチリ決着付けて、それで、言わなあかん事があるさかいな」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年01月28日 14:42
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。