571 :いいんちょのアデアット ◆3DAY.zI4Tk :04/03/04 09:23 ID:MtPwlHK6
修学旅行明けの休日。あやかは自分の部屋で、
「ふうむ……このカードが、本になりますのね……」
と、ちんちくりんな自分のイラストが描かれた、某姉妹のようにゴージャスを通り越して下品な感じの
「ぱあとなあかるた」を眺めている。修学旅行で開催されたラブラブキッス大作戦の残念賞だ。
その絵柄や、へたれたかびーおじょうさま、という記述など、普通なら色々不満が出ていそうな代物だが、
ネギにもらったものである、という点だけであやかにはスペシャルな宝物である。
「でも、一体どういう原理で……?」
もう眼を閉じればまぶたに絵が焼きついているくらい、何度も何度も何度も眺めたカードだったが、
今一度裏表を検分する。しかし、手品の種になるような仕掛けは見つからない。
あの噂は一体なんなのだろうか? 宮崎のどかが、賞品のカードを手にして「アデアット」と唱えると、
カードが本に変化した、という。手品にしてもトリックがわからず、魔法じゃないのかという者もいる。
「このカードを持って、アデアット、と唱えうっ!?」
口に出しつつ、のどかの行動をトレースしてみた途端、カードが閃光を発した。
「なっ…………こ、これは!?」
光が収まり、あやかの手に何かが現れた。それは本ではなく、でかい植木鉢。高さは50cmほど、直径も肩幅ぐらいはある大物だ。中には土が入って、いくつか双葉を広げた芽が出ていた。
「お、重っ!」
次の瞬間、植木鉢が重力に引っ張られて床に落ちていく。反射的に武道で鍛えた力で引っ張り上げようと
するが、力及ばず。どすっと床に落ちた。幸い、割れはしなかった。
「…………一体……」
あやかは、両手で植木鉢のふちを握ったまま、腰から体を前に折ってお尻を突き出したような姿勢になって
いるのもかまわず、しばし呆然としていた。
このアーティファクトは、背後に置いて何か決め台詞を言ってホホホと高笑いすれば、たちどころに芽が
成長し、その状況にぴったりの花を咲かせるという便利アイテムだ。
ただ難点としては、土がめちゃくちゃ重いことだろうか。
「ん、あら? 手が、手が離れませんわ」
しかもどういうわけか、握った手が両手とも、貼り付いたようにふちから離れない。手を開こうとしている
はずなのに、指が脳を無視するかのように言うことをきかない。
「ちょっとちょっと、どうなってるんですの!?」
焦って腕や体をゆすったり、持ち上げようと力をこめてみるが、せいぜいわずかに横滑りするだけ。手は
植木鉢を離れず、植木鉢は床から離れない。あやかはこれで、床に拘束されてしまったようなものだ。
「まさか、呪われて……? いや、そんなゲームみたいな」
そのまさかで、スカを呼び出したりするから呪われているのだ。
アーティファクトを戻せばいいのだが、あいにく「アベアット」というワードは噂には含まれていない。
「あやかー? なにか変な音がしましたよー?」
と、ノックの音とともに那波の声がする。
「な、なんでもありませんわ! 転んだだけです!」
なお必死に手を剥がそうとするが、やはり剥がれず、とりあえずごまかしの返事をする。こんなところを
見られたら、状況を説明したところで信用してもらえるとは思えない。
「あらあら大変。怪我してません? ちょっと入りますね」
しかし、あやかの思惑に反して、那波は心配してドアノブに手をかける。
「え、ちょっと、千鶴さんお待ちなさい! 今はダメです!」
ドアに鍵を掛けておかなかったことを後悔するが、
「はい?」
すでに那波はドアを開いていた。
入ってきた那波はついついと近寄って、変な格好で固まっているあやかをしげしげと眺める。
「新種の体操ですか?」
「違いますわよっ!」
「あらあら。じゃあ何をしてるんですか?」
何を、といわれても返事に困る。こんなかっこをしている理由となると、捏造のしようがない。
「……その、手が離れなくなりましたのよ。しかもこれが重たくて、身動きが……」
なぜそうなったかはともかくとして、現象だけは正直に報告することにした。
聞いた那波は、いつものように手を口元に当てたまま、首をかしげる。そしてあやかの前にひざまずき、
ふちを硬く握り締めた指に手を掛けて、剥がそうとする。やはり、ぴったりくっついて離れない。
「もう、あやかったら、変な冗談ですね」
肩を叩きつつ苦笑い。わざと握り締めて離さないのだと思っている。
「冗談じゃありませんってば!」
「またまた。そういうおふざけしてると、こっちもいたずらしちゃいますよ」
そういって、あやかの頬を人差し指でつつく。そうする那波の笑顔が、あやかには妙に妖しく見えた。
那波が立ち上がって、その顔は視界の上へと消えていく。続いて、足も横へ消えた。
「さてさて、今日のあやかの下着はどんなのかなー?」
その声は、背中の後ろ、不自由な姿勢で首を捻って、ギリギリ見えるかどうかのところから聞こえる。
「なっ」
そういえば、那波が百合方面の趣味がある、という話は何度か聞いたことがあった。その時は、まさか
同性愛なんてと聞き流していたが、ここにきて急激に真実味を帯びる。
スカートがつまみあげられて、空気がふわりと吸い上げられた感触があった。そして裏返されたらしく、
背中に布が落ちるかすかな感触があった。
「あらあら、いつもこんな豪華なのをつけてるんですか? うらやましい」
今日つけているのは、純白のサテンでふちにレースをあしらったものだ。
そのレースにそって指が一本、軽くなで上げる。
「ちょ、ちょっと、ほんと、おやめなさい」
「あやかがそれから手を離せば、すぐにやめます」
「本当に離せないんですって! それに私はそちらの趣味はありませんわ……あっ」
と、つい那波をレズだと決め付ける台詞が出てしまって、すぐ口をつぐむ。
「そういいながらまだ離さないんだから、ほんとは期待してるんじゃありません?」
「ひゃ」
レースを指先の点でなぞっていたのが、手のひら全体の面に変わった。
レズ呼ばわりされて怒るどころか、むしろ勢いづいたようだ。
「あやかがこっちに理解ある人でよかったわ。桜咲さんのことも応援してましたし」
「え゛、いえ、あれは……」
確かにあのときは応援すると言った。しかしそれはあくまで他人同士のことだったし、それに男装が
似合う少年っぽさもある刹那なら、傍目にはあまり違和感がなかったのだ。
しかし那波もあやか自身も、クラスの中でもっとも女性らしいグループに入る。この取り合わせでは、
もうバックに百合が咲きっぱなしではないか。
「と、とにかく私は、私自身はノーマルですわ!」
「うふふ。でも、私はノンケだってかまわずいただいちゃう女なんですよ」
那波のその手は、下着がお尻の割れ目の上で浮いているのを、押し込んで密着させていく。
最後に上端をきゅっと引っ張られ、それで下着がぴったりとお尻に貼り付いたことが感触でわかる。
「ほんと、あやかは脚も白くて長いし、お尻も引き締まっててうらやましい」
その声といっしょに、手とは別の、妙に柔らかい肌が触れる。那波がほお擦りをしたのだが、あやかには
わからなかった。
「それにこんな贅沢な下着は、汚しちゃいたくなりますねー」
「よ、汚す? ひぁっ」
問い返しには応えられずに、指が前の方にまで延びてくる。
「ちょっと千鶴さん、いい加減になさい! そこはいけませんわ!」
「そこっていうのは? ここですか? それともここ?」
何箇所かに、いちいち確認しながら指を立てていく。しばらく探って、あやかがびくりと体をふるわせた
ところ、裂け目の奥に続く入り口の上で、指を止めた。
「ここかしら」
「ぁ、うっ……」
少し力をこめて、ぐりぐりとやわらかなその部分をこねくる。あやかが膝を閉じたり身を捩ったりして
逃れようとしても、那波の手は平気で食らいついてきて、せいぜい指の力の向きをずらしてしまうぐらいの
効果しかない。
「うん、ここですね。わかりました」
と、何かを探っているように布が擦る音がごそごそと鳴る。
下着の前がつまみあげられ、空気が入ってきたと思うと、そこに硬いものが触れる。おそらく指で輪を
作ったぐらいの球形で……。
指が離れて下着が肌に戻ると、それは抑えられて固定された。
「はい、スイッチONっと」
チッとスイッチの鳴る音と同時に、それが震え出す。
「くふっ、ううっ!」
脊椎反射で、膝を閉じて胸を反らしてしまう。しかしそうしたからといって振動が逃せるわけではない。
ローターの振動は一点を刺激するにとどまらず、神経を波のように伝わって奥へ、回りへ広がっていく。
「くぅっ……」
声が出ないように歯を食いしばってこらえる。
足音がまた前に回ってきて、那波がまたあやかの眼前に現れる。
「どうですか? あやか。きもちいいでしょ?」
「……っ」
とっさに返事を考えることもできず、また口を開くと別の声が漏れそうで、黙ってにらみ返した。
「まあまあ、そんな怖い眼で。でも、気丈そうで素敵ねー」
那波はいつもの片手を口元に添えた温和な表情を崩さない。
「夏美ちゃんは……かわいいんですけど、あやかみたいに勝ち気じゃないですし。たまには、気の強い子が
気持ちよくされるとどんな顔になるのかなぁ、って、見てみたかったんですよ」
と、あやかの顔の真正面にしゃがみこんで、じっと見つめてくる。
その好奇心と期待に満ちた眼で見られて、恥ずかしさが噴出してくる。頬は赤くなっていると思うし、
唇を硬く結んで妙な表情かもしれない。
そんなことを考えて気が紛れたのも数秒で、相変わらず下着の中で刺激を与えつづける機械を思い出すと、
快感が広く、深く侵食してきているのを、否応無く感じさせられてしまう。
あやかはせめて顔を背ける。が、首を動かせる範囲ぐらいでは視線は逃れられない。
体の奥が温かくなって、痺れていくような感覚。背骨の下のほうと足の付け根のあたりは、筋力が奪われた
ように頼りない。脚で体重を支えて植木鉢を持ち上げるどころか、今体を支えているのは両腕のほうだ。
そこに知覚を振り向けてはいけない、と、前のテストの問題など思い浮かべようとする。
「あやかったら、わりと感じやすい方じゃないかしら。そろそろでしょ?」
那波がそんな一言で、あやかの思考をかき乱す。
「う、くぁっ……?」
とうとう唇の戒めがゆるんで、声が出た。
自分の意志で操れるはずの筋肉――小用を我慢するときに引き締めるところが、ひとりでにぴくり、ぴくり
と断続的に収縮しはじめる。声は、それに合わせて漏れていた。
「うぁ…………くっ……んうっ……は、うっ、あうっ」
「あら。もうイっちゃいますか? 私が見てるんですよ?」
その言葉はまだかろうじて耳に入ったが、だからといって体は抗えず、どんどん収縮の感覚を早めていく。
「う、あぁぁぁぁぁっ!!」
大きい声とともに断続が連続に変わり、下腹部の腹筋までが釣られて硬く絞りあげられる。
「まあまあ……」
紅潮して眼を硬く閉じ、辛そうに眉根を寄せた表情をしっかり見つつ、那波は握っていたリモコンのパワー
スイッチを押し上げる。下着の中で篭った低い音を立てていたそれは、にわかに高く唸る。
「ひぁっ! ダメ、やめっ!」
ローターの振動がさらに早く強くなって、一度オーバーフローした神経をさらに押し上げる。頂点を越えて
落ち着こうとした感覚は、有無を言わさず再び掻き乱される。
意思の支配を外れてしまった膝がかくんと折れ、あやかの下肢は床の上にだらしなく崩れた。脳から遠い
ところから自律が切れ、手が弛緩して植木鉢から離れた。最後に残った腕を動かして、植木鉢の土に顔を
埋めてしまうことは逃れたが、上半身も肩から絨毯に転げる。
呪いとはすなわち、脳を誤作動させて「これを離さない」という意思を手に送りつづけるものだったから、
こうなってしまえば自然と手は離せた。いわば結果オーライな出来事だが……。
「ち、ち千鶴さん、おね、おねがい、もう」
体を痙攣させて哀願するあやかはそんなこと気にしている場合ではなかったし、
「あらあら。しかたないですねえ」
とスイッチを切る那波は、やっぱり手を離せるじゃないかと思うだけだった。
「ほら、こんなにびちゃびちゃですよ」
と、あやかから脱がせた下着とローターを手に、那波がそれはそれは楽しそうに言う。
「うう……無茶苦茶しますわね、あなた……」
普段ならもっと猛烈に抗議するところだが、神経が磨り減っていて怒る元気が足りない。那波から下着を
奪い返したが、それだけで一苦労だった。ぐったりとベッドに体を投げ出す。
「うふふ。あやか、かわいかったですよ。今晩は、思い出してひとりえっちしちゃいそう……♥」
「とんでもないことをさらっというんじゃありませんわ……」
那波が何を言っても無駄な世界の住人に思えて、あやかは抗議すら馬鹿馬鹿しくなって枕に顔を埋める。
そのまま一眠りして目を覚ましたあやかは、
「ああああああ! いくら千鶴さんといえどもあれは無法ですわ! こーなったら目には目を、同じ目に
あわせてさしあげないと収まりませんわ!」
夢に見てしまったらしく、(おそらく実行すれば那波は喜ぶであろう)そんな報復を決意するのだった。
(続くかもしれない)
最終更新:2012年02月12日 21:53