303 :第33話「絵師と司書の狂騒祭(後編)」 ◆LsUrNEsQeQ :04/04/24 23:22 ID:flyijABr
「さーて、みんな、楽しいパーティの始まりだけど、喧嘩しないで仲良く順番を守ってねっ」
ハルナの一言で鬼蜘蛛たちは動き出した。既に姿を現していた蜘蛛に加え、周囲を覆う蜘蛛の
巣の影から一匹、また一匹と顔を見せて溢れ返り、縛られて動けない亜子を包囲してその半径を
縮めていく。
「うひゃひゃ、ここまでくると壮観、壮観」
「壮観だけど……で、でも……ちょっと、多すぎない―――?」
百匹以上の巨大な蜘蛛が蠢く、悪夢のような光景が街を浸食していく。その中でも、まるで戦車
のように巨大な鬼蜘蛛に乗ったハルナとのどかは悠々として、蜘蛛の海に呑まれようとしている亜
子を眺めていた。
「ひぃ……こ……こんなにおるん!?」
想像ではなく、実際に蜘蛛の大群に囲まれた亜子の赤い瞳が驚愕に見開かれた。耳で聞いた
百匹と、目で見る百匹は全く違っており、その大群の欲望が全て自分の肉体に注がれると思うと
目の前が暗くなってくる。
「あ、ああ……っ」
逃げようとしても逃げられない、まさに脱出不可能の地獄だった。
亜子のしなやかな体躯には戦闘と拷問による傷が痛々しく刻まれており、喧嘩のけの字も知ら
なかった肉体に与えられた暴力の凄まじさを物語っている。柔らかな肌は泥で汚れ、糸に絞り出さ
れた乳房は腫れて表面から出血していたが、それでもピンク色の突起が健気に、女性のシンボル
としての美しさを辛うじて保っていた。電撃の拷問で痺れの残った四肢は蜘蛛の糸でさらに拘束さ
れており、逃走はもちろん抵抗する権利すらも奪われている。
口から喉にかけて汚いペニスに犯されてしまい、肉棒と精液の味と匂いで汚染されてしまった。
異臭を放つ肉棒から噴き出した欲望を飲まされ、有り余る量を顔や髪にかけられたせいで、亜子
の頭からは白い欲望がぽたぽたと落ちている。生臭い牡の匂いが顔に染み付いてくる嫌悪感に、
亜子はどうすることもできず耐えるしかない。顔を拭くこともできない現状で、亜子の綺麗な顔と髪
には白い欲の塊がどろどろと、まるで蛆虫の群れのように這っていた。
(……こんな数に襲われたら、ウチ、どうなってまうか……でも、名前とか喋ってしもたら―――)
後にはもう何もない。亜子は明日菜たちを売るか、地獄を見るかの瀬戸際に立たされていた。
そして、亜子の心を揺さぶるように、鬼蜘蛛の大群はその凶器を勃起させて接近する。黒々とし
た異形の肉塊たちは咽かえる臭気を纏いながら、とろとろと透明な粘液を滴らせて亜子の穴を狙
っていた。
「い、嫌やっ……どっちも嫌やあっ!」
亜子は赤い瞳で蜘蛛たちを睨んだが、精液塗れの顔にその目は蜘蛛を刺激してしまうだけであ
る。そんな亜子を蜘蛛たちは、しかし無反応で取り囲んでいる。
「みんな、もう一度言うけれど、順番を守ってね」
ハルナの声が合図になった。蜘蛛たちは一斉に亜子に飛びかかり、亜子の視界を蜘蛛の大群
が覆い尽くした。
「い、いやああああ―――っ」
もう囲んでしまえば意味はないと言うのか、亜子を縛っていた糸をぶちぶちと切断しながら、無
数の蜘蛛の脚が亜子の脚の間や腰、腹や首、肩の下に潜り込んでくる。亜子を御神輿のように持
ち上げると、真下に一匹の蜘蛛が器用にも仰向けに潜り込んできた。
「ああっ!」
巨大な蜘蛛の胸(?)に落ちた亜子の周囲に何匹もの蜘蛛が犇めき合った。それぞれが腐った
ような匂いのする肉塊に欲望を漲らせており、獲物に挿入するのを心待ちにしている。
「んあっ! や、やめ、て……う、あっ……ひ、ひうぅ……」
左右から蜘蛛の不気味な形の口が、亜子の小ぶりの胸山にしゃぶり付いてくる。腫れて血で汚
れていたが蜘蛛たちは気にもせずに、亜子のピンク色の乳首に吸い付いて舐め始めた。
「え、えっ!? あっ、こんな、あ!?」
左右から違う蜘蛛に胸を貪られ、それぞれ異なる感覚が亜子の身体に響いてくる。右の蜘蛛は
舌(?)で亜子の突起を、まるで表面にだけ熱を伝えるように優しく転がしてくる。左の蜘蛛は突起
を舌でべろべろと舐め、時には甘噛みして刺激してくる。片方が薄皮を一枚一枚剥いていく丁寧さ
を持っているならば、もう片方は一気に全ての皮を剥いてしまうような勢いがあった。
(お、おかしい……こんなん、ゼッタイにおかしい……寝てる間に、何か―――)
「ああっ、はああ、あっ! くぅ、ぅ……」
亜子の乳首は蜘蛛の舌に弄ばれて反応し、蜘蛛の口の中で熱を帯びてぴんと立ち上がってい
る。火山が噴火してマグマが流れていくように、亜子の肉山からどろどろと蜘蛛の唾液が流れ落ち
て、胸の間に溜まっていった。そして胸に加えられた圧力は別の感覚に変質して、亜子の肉体を
震わせていく。それは異様に研ぎ澄まされていた、官能の悦びに違いなかった。
「ふっふっふ。やっと気付いたのかなぁ」
ハルナがにやりと笑って、試験管に入った黄色い液体をちらつかせる。
「木乃香が作った媚薬だよ。亜子ちゃんが気持ちよく眠っている時に、用量の10倍を投薬してお
いたから、はっきり言って狂えるよ。どうやら、効いてきたみたいだね」
「………!」
亜子の顔に戸惑いの表情が浮かぶ。てっきり無理矢理に犯されると思っていた亜子は、間違え
てもそこに大きな快感が存在するとは思っていなかった。おそらくは暴力の延長の陵辱だろうと考
えていて、痛みに耐えることばかり考えていたのだが、変な意味で裏をかかれた気分だった。
ちなみに、この頃、エヴァも同じ媚薬を円に飲まされていたが、そんなことは亜子は知る由もな
い。
「そ、そんにゃもんで……、あふっ!? そ、そんなところ舐めやんといて、あっ! ああっ!」
寒気のような電流が全身を駆け巡る。蜘蛛の舌が伸びたのは亜子の胸だけではなかった。亜子
のベッド代わりになっている蜘蛛の口は、亜子の股間から少し昇ったところの、大きな肉の割れ目
の隙間にあった。
そこにある窄んだ穴を、蜘蛛の舌がぴちゃぴちゃと音を立てながら舐めている。周囲の毛をべっ
たりと唾液で濡らして、舌の先端がその穴に入り込む。すると亜子はびくりと震えて、その穴はきゅ
う、と縮んで舌を締め出そうとし、身体には微弱な電流が走った。
(お、お尻の穴……舐められて……気持ち悪いのに、こんなに……っ!)
「あ、はぁ―――っ! ひい! あっ、ああっ! なんやこれ……や、止めてえ―――っ!」
お尻の穴を舌で責められる悦びを、亜子は必死に否定しようとする。そんな亜子の抵抗を嘲笑う
ように、蜘蛛たちは舌を使って亜子の胸やお尻の穴、脇や太ももの内側、首や耳などを責めてい
き、ぴちゃぴちゃという音が身体中から聞こえてくる。開発すらされていなかった場所から引き出さ
れていく性感が、亜子の精神を苛ませていった。
(こ、このままじゃ、ほ、本当に狂わされる……でも、身体が言うことをきかへん―――ああっ!)
「あっ、あかん、だめ、やっ! あっ! あんっ! ふううう……ふあっ! あっ! ああっ!」
精液でどろどろの顔が仄かに紅潮してきて、赤い瞳は恐怖とは別の感情で潤みつつある。
淫裂からはとろりと愛液が滲んでいたが、蜘蛛たちは決してそこを責めようとはしなかった。
まるでピアノのドレミファソラシドのように、違う所を責められる度に僅かに違う悲鳴を上げなが
ら、亜子は身体中を舐めまわしてくる舌たちに戦いを挑む。手足を振りまわして何とか責めから逃
れようとするが、蜘蛛たちはその抵抗も楽しんでいるように亜子を責めていった。
「ふ、ああっ! あっ! ああっ! ああん! も、もう、許し……ひあっ!? あっ! あ!」
それは虫は違えど、獲物をゆっくりと弱らせていく蟻地獄のようであった。
亜子の抵抗が疲労と官能で潰えていくのを、蜘蛛たちはじっ、と観察している。
*
「ふふふ、亜子ちゃん、本番はまだまだこれからだよ―――っ」
「ねえ、ハルナ」
にやりと嗤うハルナの後ろから、のどかが話しかけてくる。
「ん? 何よ?」
「まだ、これ続けるの……?」
ハルナはのどかを見て笑った。
「ふふふ、なーに言ってるのよ、のどか。調教はこれからじゃない」
「う、うん、それはいいんだけど、でもなんか……手段と目的が入れ替わってない―――? 私た
ちの目的はあくまで、ネギせんせーを明日菜さんの呪縛から解き放つために、明日菜さんをやっ
つけに行くことだったよね? じわじわ亜子さんを責めるんじゃなくて、さっさと明日菜さんの情報を
吐かせて追跡しようよ―――。亜子さんの調教より、明日菜さんを―――」
「んなこと言ったって、亜子ちゃんは名前を吐かないし。それにせっかくノってきたんだしさー、もう
ちょっとぐらい愉しませてよ。あんただってさっきまでスタンガンで遊んでたじゃん。今更そんな…」
「で、でも、ハルナ約束したよね……。明日菜さんをやっつけるの手伝ってくれるって―――」
「そりゃしたけど、私だってやりたい事とかあるし。ここで止めたら鬼蜘蛛ちゃんも可哀想でしょ?」
「……わ、私とこんな蜘蛛のどっちが大事なの……? はぶっ!?」
ハルナの張り手がのどかの頬を強かに打ち、のどかは尻餅を付いた。
こんな蜘蛛? 私の描いた鬼蜘蛛ちゃんに何てこと言うのよっ!
「……は、ハルナ」
信じられないと言った顔で、のどかは大声で叫んだハルナを見る。
「何よ?」
「ハルナ、最近おかしいよ……何ていうか、性格が変わったって言うか、病的って言うか……」
スケッチブックに絵を描かされてるみたい……
「なんか、何よりもアーティファクトが大切みたい。アーティファクトを貰った日だって、ハルナって木
乃香さんの話も聞かずに帰ろうとしたし、ハルナがアーティファクトの能力に酔うのは別にいいと思
うけれど、そればっかりってのは、その―――」
「うるさいなぁ。それなら一人で明日菜を探しに行けばいいじゃない!」
のどかは無言で俯いてしまった。
「一人で明日菜のところに行って、一人で喧嘩して、一人でやっつけてくればいいでしょ! ほら、
さっさと行けばいいじゃない! できるならやってみなよ! 戦闘能力の欠片もない、しかも敵の名
前が分からないとまったく役に立たない自慢のアーティファクトで、警備されてる病院に突撃してき
なよっ! あんたなんか誰かの後ろにいなきゃただの役立たずじゃん! デカイ口叩かない!」
「は、ハルナ……」
「あー、はいはい。もう決定ね。もう少し調教して遊ぶ。文句なし。いいね。おっ、いいぞいいぞ!」
亜子の調教の方を向いたハルナの後ろで、のどかはぼそりと呟いた。
「最初っから『心を読めるアイテム』を創ってくれればいいのに………からできないんだよね」
ハルナはぴくりと耳を大きくし、鬼気迫る顔でのどかを見る。
「今、なんて言った?」
「最初っから『心を読めるアイテム』を創ってくれればいいのに………
画力とアイデアが足りないからできないんだよね―――
「だってそうでしょ? ハルナが創ったアイテムですごいのはみんな、他の絵や武器を写しただけ
だもん。「精神を壊す黒い本」は私のアーティファクトを絵にして改造しただけだし、あの「背負う
翼」はなんかの漫画のパクリだし、「鬼蜘蛛」だって式神の教本の挿絵を格好よく写しただけだし、
「メテオ」なんか理科の教科書写して炎に似せたトーン貼っただけだし―――」
「な、なんだって……」
ハルナは怒っているというより、傷ついた顔でのどかを見る。
「普段、半ズボンの子供やホモの漫画ばっか描いてるから、脳味噌が特化しちゃって、アイデアが
枯渇して、完全にオリジナルの「心を読めるアイテム」が創れないんでしょ? 結局、ハルナはその
スケッチブックを全然使いこなせてな……あ゛あ゛あ゛―――っ!?」
がぶっ!
「……は、ハルナ、ぁ……? あ゛……あ゛、あ゛あ゛―――」
のどかが言葉を言い終わる前に、ハルナの牙がのどかの首筋に食い込んでいた。じゅるじゅる
と音を立てながら、のどかの血液がハルナの口に満ち満ちていく。
「ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ」
ハルナは涙目になりながら、のどかの声を噛み潰していく。のどかの手がばたばた暴れながら
ハルナの背中を叩き、服を掴んで引き離そうとしていた。
しかしハルナはのどかに食らい付いて離れず、のどかの顔はみるみる貧血で蒼くなっていく。
「ぁ、る、な……や、め゛、てよ、ぉ……あ……あ……あ゛あ゛あ゛……」
「ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ」
「は、る、な、ぁ……どうして……こんな……ひ、ど、ぃよ……」
「ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ」
涙目で睨んでくるハルナに、のどかが口をぱくぱくさせながら話しかける。
「……め、がぁ……かすむ…………あ、やまる、から………………あ゛…………」
のどかの手から力が抜けて、だらりと垂れ下がった。
「ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―
――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ」
「……ご……めん………・・・…ご……めん…………いうこと………き……く、から……………
や、めて………なんか……」
「ふぅ――――――っ。ふぅ――――――っ!」
ハルナに血を吸われるのどかの声が、段々か細くなっていった。
「…………………………………………………………………………あ゛あ゛………………………
……………………………………きゅう、けつ、きなのに………よるが、くらい…………………
…………………………はる、なの…………………かおも、なにも………………………………
………………み、えな、ぃ……………………………………………………………………………」
ハルナがのどかから牙を抜くと、のどかはそのままよろめいて、鬼蜘蛛の上から転がり落ちてい
った。のどかは胸が上下しているので、死んだりはしていないようである。
「げぷ……」
口をのどかの血で汚したハルナは、呆然として倒れたのどかを眺めていた。
倒れている親友を見下ろしながら、
牙にかけた親友を味わいながら、
後悔の念を瞳に宿しながら、
「私のせいじゃない」
ポツリと呟いて視線を逸らす。
「これは全部、亜子ちゃんのせいだよ。もう思いっきり、徹底的にやらないとね―――」
桜子が消えて、のどかも消えて、
一人残ったハルナは蜘蛛の大群に囲まれて、ただ虚ろな視線で亜子を見る。
自分の中で納得させているような時間が過ぎると、亜子に異常な感情が向かっていく。
絵師と司書の狂騒祭。
祭りの後に残るもの。
そんなものは無いのかもしれない。
濁った瞳で倒れているのどかの周りでは、鬼蜘蛛たちが困って顔を見合わせていた。
≪to be continued≫
最終更新:2012年03月04日 00:05