476 :第38話「終わりと始まり」 ◆LsUrNEsQeQ :04/05/22 22:05 ID:Cj93cjBU
楽しかった時間が、過ぎていく……。
昨日から亜子も中学3年生になった。
「ふわあーあ。眠いなあ……」
今朝は部活の朝練がないのでゆっくりできるが、新体操の自主練習に行くというまき絵に起こさ
れてしまい、テレビの朝の占いコーナーを梯子しながらまき絵と朝ごはんを済ませた。
と言ってもまき絵はパンを漫画のキャラのように口に咥えて、
「ひっふぇきふぁーす」
と言って学校に行ってしまい、亜子は約2秒間まき絵と朝食の時間を共有しただけだった。
後はまき絵が焼いてくれたパンにマーマレードを塗って、一人でもぐもぐと食べる。
朝はご飯とお味噌汁と納豆が好きな亜子だったが、帰納的に導き出された「納豆とまき絵の法
則」からそれは実現に至っていない。
(うーん、まき絵、大丈夫やろか……昨日の今日やのに)
亜子はまき絵のことが少し心配だった。
まき絵は昨日、桜通りで眠っているところを保護されたのである。
亜子は、あまり無理をしないようまき絵に注意した。まき絵は笑いながら聞き流していたが、当人
に自覚がないだけで、身体の中では何らかの変化が起こっている可能性も否定できない。
(まあ、考えすぎかなあ……。あんまりしつこく言うとまた「亜子は心配性なんだからー」とか言わ
れるだけやし……)
亜子は朝食の片付けや歯磨き、着替え、そして朝に誰でもすることを済ませると部屋を出た。
本当に楽しかった毎日が……。
女子寮から駅までは近く、歩いても数分で着く。
ただ、ここは無数の学校が集まっている麻帆良学園都市である。電車は学生で混んでいて滅多
に座ることはできない。亜子はいつものように吊り革を持って立っていた。
普通なら英単語帳で勉強するなり、読書の時間に充てるのが有効な時間の使い方かもしれない
が、亜子は特に何もしていない。試験前なら話は別である。
「まったく、きっちりと予定を立てておかないから、いつも締め切り間近に焦ることになるのです」
よく知った声がしたと思ったら、亜子の後ろに夕映・のどか・ハルナが立っていた。夕映は文庫本
を読みながら、横のハルナと何か話している。亜子には気付いてないらしい。
「うん、うん、よーく反省してるからさ、一生のお願い! 夕映、のどか、原稿のアシやってえー」
「パル、この前の本の時も、一生のお願いって……」
「ううっ……」ハルナは言葉に詰まった。
「前の一生を終えて、生まれ変わっている」
「えぇー」
「きっとパルはエイリアンで、もう数十回の世代交代を繰り返しているのでしょう。ここにいるパルは
見た目は同じですが、おそらく新世代なのです。ですから一生のお願いを使える」
「ゆ、夕映ぇ……」
「情報伝達のメディアは頭のアンテナですか? それで仲間からの電波を受信するのですね」
「も、もう、意地悪言わないでさぁ……バイト代出すから、ねっ? ねっ?」
「バイト代って、この前はエッチな本3冊……あんな本、困るよー」
「マザーシップの仲間を呼んで、トーンとベタをやってもらいなさい」
「パル、やっぱりあの本返すよー。誰かに見つかったら……」
「そもそも『一生』というのはですね―――」
「あー、もういい。分かったわよっ。明日から徹夜よ! 完徹よっ! 一人で仕上げてやるっ!」
「カンテツ? 国語辞典に載っていますか? その単語」
(何や、ウチにはよう分からへん会話やなあ……)
亜子は苦笑しながら会話を聞いていた。小さい声だが、近いので勝手に耳に入ってくる。
「で、今回の本の内容は?」
「今回の本は、一人の少年が、ヒロインを助けるために蜘蛛のモンスターたちに戦いを挑んで敗
れ、そのままお尻の処女を散らしちゃうっていうシナリオなんだけど……」
「ええー。可哀想だよー。勝たせてあげなくちゃ駄目だよー」
「大丈夫、お尻の処女を失って、そのまま愛に目覚めて蜘蛛と結ばれちゃうから」
「ヒ、ヒロインの立場は……」
「はっきり言って、その少年はアホですね」
「ヒロインも蜘蛛だから大丈夫。テーマは人間と人外の愛」
話しかけて意見を求められても困るので、亜子はそのまま黙っていた。
正しい判断だろう。
あっと言う間に、消えていく……。
「学園生徒のみなさん、新入生のみなさん、おはようございます。こちらは生活指導委員会です。
今週は遅刻者ゼロ週間です。始業ベルまでは15分、余裕ある登校を心がけましょう。今週遅刻し
た人には当委員会よりイエローカードが進呈され―――」
麻帆良学園中央駅に着くと元気なアナウンスが流れている。恒例の遅刻者ゼロ週間が始まった
のだ。サッカー部の関係者がイエローカードを貰うと少し恥ずかしい気もする。
「おはようございますぅー」
「おはよー」
セグウェイに乗った葉加瀬が亜子を追い抜いて坂道を上っていった。セグウェイは何度見ても
不思議な乗り物であるが、葉加瀬から見れば走っている亜子が不思議なのかも知れない。
亜子が少し速いペースで走っていると、前に桜子と鳴滝姉妹がいた。
「おはよー」「亜子ちゃん、おっはよ―――」「おはよっ」「おはようです」
「桜子は、今日はラクロスの朝練ないのー?」
「亜子ちゃんこそ、今日はサッカー部の練習ないんだ」
挨拶を済ませた4人仲良く並んで走り始めたが、列はすぐに乱れた。
「ラクロスってさあ、走れないと駄目なんだよね―――っ」
「そんなんサッカーもいっしょやわ―――」
「甲賀忍軍のボクが一番速いよ―――」
「えっ? ま、待ってくださいです! て言うか、走らなくても遅刻しないですよ……っ!」
ドドドドドド、と走り始める4人、しかし史伽だけ遅かった。
いつの間にか所属団体(?)の名を背負った徒競争になっていたが、たまにあることではある。4
人とも落ち付いて改めて歩いていると、後ろから明日菜、ネギ、木乃香がやってきた。
「おっはよ―――ネギ君」
「おはよー、ネギ先生――っ。それ何の遊びや―――?」
亜子が挨拶したネギは、明日菜の肩に担がれている奇妙な体勢で登校してきた。
(さすがは明日菜や……子供とはいえネギ先生を担いであのスピード……)
力がない亜子には多分できないだろう。少し明日菜の運動能力を羨ましく思いながら、亜子はそ
のまま学園の門をくぐった。
たくさんの友達と一緒に過ごす学園生活が続くのに、何の疑問も持たないままに。
ああ、あかん、戻るんや……ネギ先生の部屋にいったらあかん……
亜子がネギの部屋を訪れたのはその日の夜だった。
「先生、ウチなら十歳の男の子がパートナーでも、いいですよ」
風呂場に乱入してきたオコジョを撫ぜながら、亜子はにっこりと笑ってそう答えた。
英語の授業の質問に対する亜子の答え、それはネギを受け入れるというものだった。
(ふふふ……困ってる困ってる)
十歳の少年が恋人とは現実味が無さ過ぎる。むしろ恋人というより姉弟である。
戸惑っているネギの反応に微笑ましいものを感じながら、亜子は目を細めてさらに言った。
「ウチ、先生の事、好きやから」
「い、和泉さん!?」
「しょーもない理由で、人を簡単にフリよるアホもおるけど、先生は、そんなんと、違うよね………」
「え、それって、どういう意味―――」
亜子は何も言わずに膝を折って、ネギに目線を合わせた。近くにきたネギの顔はあどけなくて可
愛らしい。汚れていない澄んだ瞳が、そのまま彼の心を表しているようである。
そのままネギの背中に手を回して、亜子は一気にネギを抱き締めた。男性を抱き締めるのは久
しぶりである。自分でも少しドキドキしているのを自覚しながら、ネギの温もりを感じとっていく。
(ネギ先生……ウチより背も小さくて、年下で、先生やのに、ウチ、この子を求めてる……)
それは紛れもない本心だったが、本気ではない。
亜子の脳裏にフラれた思い出が甦る。成り行きでキスまでは許してしまったが、「ヤらせてくれた
ら付き合う」という要求を拒んだためにフラれてしまった。
亜子はセックスなどは、本当に理解し合えた人とするものだと思っている。きっと自分は、本当に
愛し合った人にその処女をあげると信じている。だからこそ、想いを寄せた相手のその発言はショ
ックが大きかった。セックスしてから付き合うなど信じられない。
もちろん、ネギと性交したいとは全く思っていない。のどかやまき絵、いいんちょなどは、本気で
ネギを恋人の対象として見ているのだろうか?
「お願い……それ以上聞かんといて……な?」
フラれた事をこれ以上思い出してしまうと泣きそうなので、亜子は流れを変えた。
どうやら失恋したことで、思った以上にダメージを受けていたらしい。
傷ついた人間は弱く、そして卑劣になる。普段はできないことを許してしまう。
(これは復讐や)
(英語の時間に失恋を思い出させた先生への、ウチからの甘い復讐なんや……)
ものすごい悪女になった気分。とても気持ちがよい。
(本気とちゃう。走り続けて疲れた時に、少しだけ休むのと同じ……)
(休んで疲れがとれたら、また走り始める。その場に止まり続けるやなんてありえへん)
(寂しいのを慰めてもらうだけ……先生から言ってきたんやし、かまへんよね……)
「い、和泉さん……」
ネギの吐息を感じるほどにまで、唇が接近した。
純粋なものに触れる悦びと、純粋なもので遊ぶ悦びが心に満ちる。
(このまま、この綺麗な心を弄んでやるんや……)
(ウチが男にされたように……)
「んっ……」
心の準備をさせないうちに唇を奪う。
(キスは初めてやったんやろか? パートナーとか、ませたこと言っとったのに……)
ネギの口に唾液を流し込み、舌をネギの舌に絡み付かせて、そちらからも来いと誘う。
ネギもだんだんと舌を動かすようになり、亜子の唇に貪るように口を押し付けてきた。
口を合わせるというそれだけの行為が、様々な感情を呼び起こしていく。
(先生、そんなにウチが欲しいん……?)
(遊ばれてるだけやのに……)
優越感と征服する悦びに浸りながら、亜子はネギと長いキスを愉しんでいた。
カモが口を開いたのは、ちょうどその時だった。
まだ……まだ、戻れる……
「でも、和泉さんにパートナーになってもらう気は、ありません」
魔法使いに関する一通りの説明を終えた後、ネギから出た言葉は亜子を揺らした。
「な、なんでっ?」
亜子が驚いてネギを見た。
心臓がドキドキしているが、これは興奮しているからではない。マイナス側に傾いた心が警報の
ように、不安を鼓動にして現しているのである。
フラれた時の状況と今の状況が、少しずつ重なり始めていた。
「和泉さん、授業の時に言っていましたよね、「フラれました」って。僕は先生だから、和泉さんが落
込んでいるのなら相談には乗ります。だけど、その人の代わりにはなれません」
真剣なネギの顔に、亜子は怖くなって一歩下がった。
(イヤや……そんな顔でウチを見やんといてよ、ネギ先生……)
いつもの優しい子供先生は、そこにはいなかった。
目の前のネギは怒っている。その目は鋭く亜子を睨んでいた。
(子供のくせに……)
(ウチがどれだけ傷ついているか、知らんくせに……)
(こ、怖い……)
「ちゃう! ウチは、そんな事思ってません!」
内心思いまくっていたのだが、肯定できるはずもない。
フラれて寂しかったから、先生に代わりの相手になって欲しかった。
自分でも嫌悪を覚えるような「弱さ」を見透かされた事に、亜子はとてもショックを受けていた。
「……和泉さん、僕が和泉さんに魔法の事を説明したのは、カモ君が話すところを見られたからで
す。確 かに今、僕はパートナーを必要としていますが……僕もパートナーを、選びます」
亜子はその言葉の意味を理解するのに、少し時間がかかった。
「ひ、ひどいわ……それって、ウチはネギ先生からお断りって事!?」
「僕は和泉さんの事を、生徒としては信頼しています。でも、フラれて寂しいからパートナーに志願
して くるような人を、僕はパートナーとして信用できません。ごめんなさい」
ぺこり、と頭を下げるネギ。
「う、うう……そ、そんなん……う、ひっく、えぐ、……」
亜子は涙を流して、顔を真っ赤にしながらネギを睨んだ。
ネギは怯みもせずに、それを見つめ返す。
どちらが年上で、どちらが年下なのか、亜子は分からなくなってきた。
(ネギ先生は真剣やったんや……)
(ふざけて、中途半端な気持ちで接してはいけないことやったんや……)
(でも、でも……)
「先生の、言う事、えぐ、多分、正しいと、ひっく、思うけど……思うけどぉ……」
亜子は限界だった。これ以上、ネギの視線に耐えることは、できそうになかった。
「先生の、あほぉ―――っ!」
亜子は部屋を飛び出した。
ああ、この後、ウチは……。
…………………………………………………………ん
……………………………さん
……………こさん
*
「―――こさんっ! 亜子さんっ! しっかりしてください!」
倒壊した薬局の中で、ネギは瓦礫を背中で支えて亜子を守っていた。背中には壊れた建物の重
量がかかっているが、絶対に潰されるわけにはいかない。辺りは真っ暗で何も見えなくても、四つ
ん這いになっているネギの真下からは、微かに亜子の呼吸音が聞こえている。
明日菜はどうやら無事らしく、のどかを助け出しているらしい。しかしネギと亜子は脱出できそう
になかった。
「亜子さん! 亜子さん……うぐっ、う……」
ゆっくりと、しかし確実に、上に乗っている瓦礫はネギと亜子を押し潰そうとしていた。
「あ、兄貴!」カモの声がした。近くにいるらしい。
「亜、子さん……」
「………ネギ、せんせい……」
暗闇から、か細い女の声が聞こえてきた。間違い無く亜子の声である。
「兄貴! 今の声は」
「よか……った……無事だったんですね……」
「……ネギ、せんせいも……また話せるやなんて、思ってなかった、です……」
暗闇に阻まれて、すぐ傍に居るはずのお互いの顔は見えなかった。
「夢を見てました……何十年も前の出来事のような、気がするけど……一週間前までの、夢……」
「あ、亜子さ……ん……」
大量の出血でぼやけ始めた意識を、ネギも必死に維持していた。
「ごめんな、さい……あの、日の、夜……ウチ……どうか、してました……ごめんなさい」
「僕こそ……先生、らしいこと、何一つ……で、きま、せんでした……」
「先生……」
「何ですか?」
「ウチを、パートナーに……して、ください……」
一瞬の静寂。
「……」
「一人は、もう、嫌です……まき絵に会いたい……裕奈は何してるんやろ……アキラは元気やろ
か……み、みんなと、前みたいに……いっしょに……でも……もう、無理みたいやから……で、で
も……一人は……いや……あ、あの時は、ふざけてました……でも、今は……本心です……」
「……な、何言ってるんですか……無理って……すぐに、前と変わらない、毎日が……」
「ウチには、パートナーになる、資格……やっぱ、ないですか……」
絞り出すような。
今にも消えそうな、小さい声だった。
「………カモ君」
カモは魔方陣を描いた。いつものふざけた様子はなく、無言だった。
仮契約の魔方陣から光が溢れ出して、闇を消し去り二人を包みこむ。
「……ネギ、せんせ、い」
「亜子さん……」
二人は光の中で、再び唇を合わせた。
それは触れ合う程度の、
ささやかなキスだった。
ただ、それだけだった。
「あ、ああ……」
亜子の赤い瞳から、ぽろぽろと涙が零れ落ちた。
「温かいです……とっても、温かい……せんせい、ありがとう……」
この一瞬は、何時間にも及んだ陵辱では絶対に得られなかった。
亜子はようやく、自分のことを本当に思ってくれている相手と、キスができたのだった。
愛情ではないかもしれないが、気持ちは伝わってきた。
「亜子さん……」
仮契約の魔力が、亜子の身体に染み渡っていく。
亜子は微笑んで、そっと目を閉じた。
穏やかな顔のまま、
ぴくりとも動かなくなった。
背中から流れ出した血、
流れ過ぎて止まっている。
呼吸の音、
聞こえない。
「あ……こ……さん……?」
時間が止まってしまったように、
眠り姫のように
「亜子さん! 亜子さん!」
仮契約の魔法陣が消えると、まるで亜子の眠りを守るように闇が満ちた。
少年の嗚咽が響き渡る中、
闇に仮契約カードがひらりと舞っていた。
*
「全てが分かち合おう、全てが終焉する喜びを」
木乃香の形をした魔力の塊はくすくすと嗤った。
学園都市は広大であり、どこに敵が潜んでいるか分からない。
ならば全体を一気に潰してしまえば間違いなく、敵を全て屠ることができる。
「さっきの隕石、300発ぐらいコピーするのにどれくらいかかるん?」
「10分ほどです」ハルナの口がぱくぱくと主人の質問に答えた。その目に意志はない。
「なら、すぐにでも始めて」
300発の隕石による麻帆良学園都市への同時爆撃。
オセロの白を全て黒に変えるようなものだろう。
「みんなで祝おう、消える街を、後に宿る息吹を、在る者の時間を、在る物の歴史を、その全てを」
「神々の気まぐれは偶然の奇蹟、必然とは積み重なる偶然の塔、魔法が起こすは必然の奇蹟」
「奈天の上溝・彼岸の糸括―――まずは命と光の源、乾いた湖、源に近過ぎた不幸」
「母なる大地、光らない鏡、源に遠過ぎた不幸、13の衛兵を従えし王、円環の貴族」
「我に続け、この域に系を成し渦巻け、岩の姉妹、夜空の嬰児300柱」
「輝く力、惹き合う絆、星の始まりは星が知る、星の行く先は星が知る、星の願いは星が知る」
「星空は広がる敵の頭に、星空は映る敵の目に、嬰児が織り成す遊戯の果てに」
「希望、破滅、天、地、狭間の星空、天と地が重なる、それは終わり」
「地上へ注げ、夢幻の星雲、空よ落ちて踏み潰せ敵を―――」
300の隕石を制御しようと、魔力の塊は新しい魔法を創り出し、呪文を謳い始めた。
刻々と、静かに破滅への時は刻まれていく。
*
全ては終わってしまった、はずだった。
「か、カモ君……」
「兄貴……」
カモの尻尾は立ちあがり、まるで闇に潜む何者かに怯えるようにぷるぷる震えていた。
「た、確かに、仮契約は相手の潜在能力を引き出せる、けれどよお……」
その声も震えている。目の前の現象に圧倒されている。
あり得ない。
絶対にあり得ない。
いくら吸血鬼化していても、それだけでは
「な、何だ……この魔力……こんな魔力、まるで―――」
ここまで魔力が大きくなることは、まずあり得ないはず。
しかし、それなのに
亜子の身体には鼓動が戻り、凄まじい量の魔力が洪水のように闇に溢れ出していた……。
<続>
最終更新:2012年03月04日 00:16