逆まる
(本ルート再開、>>16or>>19から続く)
「おいで下さいませー、御主人、様…」
「ありがとうございます」
路上でにこっと笑みを向けられたメイドが、渡そうとしたチラシが無事その相手に渡っていた事も忘れ
ぽーっと立ち尽くした。
「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様」
何気なく入口を見た客たちは、思わずほうっと息を吐いた。
これも電車まがいのカップルと言う事か。
しかし、電車との最大の違いは、この時点で思い切りバランスがとれている。
片や美人女子大生と言う表現がぴったりの、スタイルも顔も見事な美女。
片や高校生ぐらいの白人の少年。一拍おいて女性客やメイドまでがきゃっと声を上げてしまう程の
見事過ぎる赤毛のイケメン。
そんな世の中の不公平を具現化したかのごとき美男美女カップルは、
時々女性の方が不敵な笑みを浮かべながら、にこにこ笑って楽しそうにオムライスを食べていた。
「おおーっ、すっげーっ」
「何なにー、あのイケメンくーん」
「でも女の方もレベルたかーい」
ゲームセンターで、千雨はふっと笑みを浮かべて銃を置く。
とは言っても、ネギの点数には圧倒的に叶わない。
「おい、お前マジでこれ初めてか?」
「ええ、これも面白いですね」
ナギ化したネギが遠巻きにきゃいきゃい言われながらにこっと笑い、
遠くに卒倒者が出た事にも構わず千雨に言う。
「やるじゃねぇか」
「やりますね、千雨さん」
パックが中央に寄った所で、ハイパーホッケーのコートを挟んでネギと千雨がバチバチ火花を散らす。
「きゃー、頑張ってー」
声援を送った三人組の女子○生に、ネギがにこっと笑顔を返す。ネギがパックに視線を戻した頃には、
三人組の中央で少女が卒倒していた。
「面白かったですねー、色んなお人形さんもあって」
変身したままのネギと千雨が入った店で一通りフィギュアを見て表に出た頃には、
アキバの街にも夕日が差し込んでいた。
「でも、なんか全体的にアニメとかで見たのより胸が大きい様な…」
「仕様だ、気にするな」
そう言って、千雨はすたすたと歩き出す。
今日一日は、千雨に任せきりだった。
「何か、ちょっと疲れちゃったな」
「え、そうですか?どこかでお休みしますか?」
「ああ、じゃあ、あそこで」
「えーっと、あれは、お城、じゃないですよね…」
「この格好で二人で入るには丁度いいトコだ」
「ん、んー…」
「おはようございます、千雨さん」
気が付くと、千雨の目の前にいつものガキの笑顔があった。
眼鏡がない、後頭部がネギの膝の上にある事に気付き、千雨は真っ赤な顔であわあわと身を起こす。
「ここは?…確か…」
「千雨さんが連れて来てくれたんですよ」
記憶を辿り、周囲を見回す。その手の部屋にしては比較的シンプルな作りだった。
「千雨さん、よく寝てました」
「…そうだな、こんなによく眠れたのは久しぶりだ」
千雨が、側にあった眼鏡を掛ける。
「毎日毎日、バレないか明日何をされるか、嫌な事辛い事そればっかり考えてたからさ。
ネギ先生、ここ、何する所だか知ってるか?」
ネギは小さく頷いた。
「ネギ先生、見たのか?私の事、私の、その、あれだ」
「はい」
ネギは、小さいがハッキリと答えた。
「どうだった?」
「凄く…辛くて、嫌でした」
「そうか…ネギ先生がそう言うんならそれが本心なんだろうな。ネギ先生ならさ
だけど、そう思わない奴もいる、一杯いる、分かる事なんてほとんどないんだ」
千雨の、どこか諦めた様な答えに、ネギは下を向いたままだった。
「辛くて、嫌でした」
下を向いたまま、ネギが絞り出す様に続けた。
「千雨さんが苦しんでいるのが伝わってくる、それなのに、忘れられないんです。
千雨さん、絶対そんなの嫌なのに、又見たいって、もう一回だけ見たいって思ってる自分がいるんです」
馬鹿正直と言うか馬鹿誠実と言うか、千雨は、くくくと喉を鳴らして笑わずにはおれなかった。
「そりゃそうだろ、お子ちゃまにはちょーっと刺激が強すぎたんじゃねーの」
千雨は不敵に笑った。
「でもっ、僕はっ、僕は千雨さんの先生でっ…ん…」
皆まで言い終わらぬ内にキスをされ、ぎゅっと抱き締められていた。
「欲情するのは当たり前なんだよ、あんなの、そのためだけに作られてんだから、
私が嫌がってるのも本当だけどさ、見ちまったもんはしょうがないだろ」
「ごめんなさい」
ネギがしゅんと小さくなった。
「じゃあ、責任とってくれます?」
「はい?」
「見られちまったのは仕方ないとしても、あんなの私だって思われるのも嫌なモンで、
ちゃんとさ、私は、私は人を信じていいのかどうか、ネギ先生、教えてくれますか?」
「…はい」
分かった様な分からない様な、だが、何かが伝わっていた。
シャワーを浴び、バスタオルを巻いて出て来た千雨を前に、
ベッドに掛けたネギは既に息を荒げて頬をほんのり染めていた。
「随分反応いいな、んー?」
千雨がニヤッと笑い、ネギが下を向いた。
「今まではジェントルマンが不作法してあわあわしてるだけだったのによ、
ああ、あれか、こっから先の事思い出してハアハアしてんのかマセガキが」
図星を突かれたネギが顔を横に向けた。
「そうそう、こーんな事してたりねー」
千雨が、ズボンのファスナーを開けその中を探ると、中からぴょんと興奮したものが飛び出した。
「はううっ!」
「ん、んふっ、どーお、ネギせんせー、気持ちよさそうとか思って見てたー?
実際はどうですかー、ネギせんせー、んんっ、んっ」
「あうっ、あ、すごく、あっ、だめっ、だめ千雨さんあー…」
最終更新:2012年01月28日 15:46