29スレ024

逆まる


「ごっつぉーさん」
ごくりと喉を鳴らした千雨が、ぺろりと唇を嘗めて言った。
跪いた千雨がちろりとネギを見上げると、もう泣き出しそうな顔をしていた。
「ん?なんか舌に引っ掛かったな、紙かこれ?」
さあっと顔から血の気が引くネギを前に、千雨がにやっと笑った。
「ふーん、ネギせんせー、生徒のエッチビデオでそーゆー事してたんだー」
「ごめんなさいごめんなさいっ!すごく痛くなって、それで、こすったら、やめようやめようって…」
言い募るネギを前に、千雨はとうとう腹を抱えて笑い出した。
「いや、それ普通だから。でもまー、女子寮暮らしも大変だよなー」
立ち上がった千雨がネギの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
「でも、ちゃんと洗っとかないとな。ほら、シャワー行くぞガキ、
きちゃないまんまこのちう様の相手する気か?」

「ったく、そっちの方が自殺でもするんじゃねーかって洒落ならんだろ、
先生なんだからオ○ニーぐらいで落ち込んでんじゃねーよガキ」
「あううー…ごめんなさいー…」
「大体、これあのオサルの仕事だろうが」
千雨が、浴室で座ったネギの頭をガシガシ泡立てながら言う。
「んー、こっちの方も洗ってほしーってかー?
ビンビンに期待してんぞガキー」
「はうううっ!じっ、自分で洗えますっ!」
「いいか、ちゃんと中まで洗うんだぞー」

ベッドルームの真ん中で、千雨とネギはタオル一枚の姿で向かい合って立っていた。
眼鏡を外し、タオルを床に落とした千雨の頬は、ほんのり赤く染まっている。
「どう、かな、先生?生の、素の私」
「きれいです、凄く」
ネギは、それだけ言うので精一杯だった。
「ネギ先生も」
ネギは、こくんと頷き、うつむきながらタオルを落とした。
「やっぱガキの癖にいい体してんな、ったく、馬鹿みたいに鍛えやがって。
そっちの方はまだまだお子ちゃまだけどな、お子ちゃまの癖にしっかり欲情してる。ほら、こっち見る」
バツ悪そうに見上げたネギは、千雨の自然な優しい笑顔を見た。

「格好いいですよ、ネギ先生」
ネギは背伸びをし、求められるまま千雨を唇を重ねる。
ぎゅっと抱き締められ、恥ずかしく変化した所がすべすべと柔らかい千雨の体に押し付けられる。
でも、それも受け容れてくれそうだとネギは思った。
唇の離れたネギは、まだ目のやり場に困っていた。
「いいんですよ、ネギ先生、ネギ先生に見られるために脱いだんですから。
…でも、あんましジロジロ見るんじゃねーぞ、ガキ」
「は、はい」
「ここから、どうするんですか、ネギ先生?毎晩そう言うの妄想してたんでしょう、
お勉強の成果見せて下さいネギ先生。
って、いきなし顔射とかかましたらグーパンチだけどな…って、おいっ!」
ひょいと両腕で背中と脚を抱え上げられた千雨の顔が見る見る真っ赤になる。
そして、千雨の体は、ふわりとベッドの上に横たえられ、ネギがすぐ側に上る。
ネギの手が段々と近づく、触ろうとしている、思い通りの、展開…
「…いやああああっ!」
ギクッとしたネギが、ベッドの上で丸めた体を震わせる千雨を前に哀しい顔をして手を引っ込めた。
「あっ、あああ…ごめんなさい、ごめんなさいネギ先生、ネギ先生、いいから…」
ネギは小さく首を横に振る。
「お願いネギ先生抱き締めてお願い、嫌なの、みんな、みんな嫌なまま、みんなみんな怖いまんまなんて嫌なの、
私、私ネギ先生がいいの」
子供の様に言い募る千雨を、ネギがぎゅっと抱き締める。
「あったかい、ネギ先生…」
再び、唇が重ねられた。
そして、千雨がネギの掌を胸の膨らみに導く。
「いいん、ですか千雨さん」
千雨はこくんと頷く。
「本当に、辛くないんですか?」
「いいって言ってんだろ遠慮してんじゃねーよ触りてえんだろガキがっ!」
それは、涙声だった。
不意に、タカミチなら、ちゃんと千雨を慰めて導く事が出来るのではないかとネギは思った。
だけど、高畑みたいに大人じゃない、包み込むには小さすぎるネギに出来る事、すべき事は、
他には思い付かなかった。
ネギは、千雨を静かに横たえ、改めて千雨の胸を掴む。
「綺麗な胸、柔らかいです」
「先生、ネギ先生の手なんだよね、ネギ先生の手が触ってるんですよね」
「はい、僕です、千雨さんの目の前にいるのは、僕です」
「ありがとう、ネギ先生」
笑みを浮かべる目尻から涙が溢れる。

「うんっ」
興味深そうに掌で胸の弾力を楽しんでいたネギが、可愛らしく尖った乳首にちゅっと吸い付いた。
千雨の上げた声にネギが千雨の顔を見ると、千雨は小さく頷いていた。
「んっ、んんっ、くすぐったい、でも、気持ちいい。手、もちょっと優しく、
女の胸って結構敏感だからさ」
「はい、千雨さん」
ネギはあくまで素直だった。素直な上に器用だった。
「あんっ、はんっ…」
千雨は、自分の声が段々大きなものになっている、
溢れ出す感触が気持ち悪い程になりつつあるのに気付いていた。
「こらっ、ガキっ」
「うぷぷっ」
「いつまでおっぱいちゅーちゅーしてんだ、あー?」
ネギは、顔を胸に押し付けられながら、右手を下に導かれる。
さりさりとした感触の後、ぬるっとしたものに触れた。
「ほら、ほら先生」
ネギは、促されるままにそちらに目を向ける、それから、そこが女の人の一番恥ずかしい所だと気が付いた。
「ネギ先生の手が、口が気持ちいいから、そしたらこんなになるの、
もっと、もっと気持ちよくして、こうやって…はああっ…」
「こう、こうですか」
「そう、そうだっての、いちいち聞くなっ、あうっ」
千雨に導かれていたネギが、すぐに自分で手を動かし始める。
更に、思い切って唇を寄せ、舌を這わせる事まで始めていたが、
そのことごとくが恐ろしい確度で図に当たっていた。
「あのっ、千雨さん、大丈夫ですか、なんか、凄く…」
「凄く、凄くいいんだよっ、何言わせんだよガキッ…おいっ、なんだよっ」
不意に、ネギがその場に座り込んだ。はあはあと息を荒げている。
「我慢、出来なくなったか?」
千雨の問いに、真っ赤になったネギがこくんと頷いた。
確かに、痛さが伝わるぐらいに突っ張ってはみ出したピンク色の先から
はとろとろと輝くぐらいに溢れ出している。大噴火の予感に焦るのが見て分かる程だ。
「いいか、ここ、ここだぞ、ここに入れるの分かったかガキ」
「わわ、分かりましたっ!」
大きく脚を開いて指で広げる事さえして見せた千雨の恥も外聞もない指導に、
追い込まれたネギが動きだし…
「ひっ、ひぐっ、うええっ…」
はーっと息を吐いた千雨が、腹から胸にネギの興奮の跡を大量に残しながらガコンとネギに拳を振り下ろす。
それから、テッシュで拭うと、下を向いて啜り泣くネギを抱き締めた。

「千雨さん…」
「慌てるな、私は逃げない、もう、先生から隠れたりしないからさ。
次があるんだからさ、つっても、男の場合限度あるらしいけどな」
「千雨さん…」
千雨の苦笑に、ネギもようやく笑みを見せ、唇を重ねた。
「千雨さん、あったかい…僕の、また…」
「ああー、エロカギが又盛ってんの、きっちり分かってんぜ。
ああ、そう、そのまま楽にしてろ…」
「…あっ!」
その、女の子の様な声を前に、あやかや美砂がヨダレを垂らす心境が千雨には急激に理解出来た。
「あっ、あ、あああっ!」
甲高いぐらいの二人の声がそれ専用に作られた部屋にシンクロする。
ベッドに座ったまま、気が付いた時には目の前に興奮した千雨の顔、千雨の髪、千雨のおっぱいがはね回って
恥ずかしい所をぐにゅぐにゅと包まれ表現も分からない快感に耐えようとする事しか出来ないネギ、
自分からネギを自分の体に呑み込むと共に、
まるで体の中の敏感な全てを魔法の棒でかき回されている様な衝動に全身を突き動かされてた千雨。
「あっ、あー…」
後を引く甘い声と共に、突っ張った全身から脱力した二人が、静かに互いのぬくもりにその身を預けた。

「…ったく…ガキの癖にやり杉KOかよ…」
ベッドの上で、自分の膝の上で寝息を立てるネギの髪の毛を撫で、千雨が言った。
「ま、私も全身ガタガタ喉ガラガラだけどな…どんだけ末恐ろしいんだよこのガキ…」
優しい笑顔を浮かべた千雨は、天使の寝顔から唇を奪うと、静かにネギをベッドに横たえ立ち上がった。

「ん、んー…」
目を覚ましたネギが、きょろきょろと周囲を見回す。
部屋はしんと静まりかえり、得体の知れない不安がネギを襲う。
「千雨、さん…」
ネギは、側に置かれた紙切れに気付いた。

信号を渡って少し歩いていた千雨の視界に、不意にパーカーのフードが見えた。
体に、熱い感触が走った。
「…ちうたんは…オデのモンだー…」
千雨は、歩道に膝を着く自分に気が付いた。
立ち上がり、一歩踏み出した千雨は前のめりに倒れ込む。
立ち上がろうとしたと思ったらいつの間にか歩道に仰向けになっていた千雨は、
路上に自分の眼鏡を見た。
「君っ!」
「ちょっ、大丈夫っ!?」
「いやああああっ!!」

遠くで、何か騒ぎが聞こえる。
仰向けに倒れた千雨が、真っ赤になった自分の掌を見る。
“…力、入んない…レイヤーとしては、やっぱ、言うトコなのか?…
…なんじゃあこりゃあああーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!……”
ある意味のみにおいては幸いな事に、声にする力は無かった。
空に、優しい笑顔が見えた。
そこに、お人好し共が寄り集まる。
「待て、待って、私も、私も、行くから、ちょっと、待って…
何、だよ、待ってよ、お願いだから待って…
信じなかったから?私が、私がみんなを信じなかった、から?
恥ずかしかったんだよ、そうだよ、知られたくなかったんだよ、恥ずかしかったから…
ごめんよ、だから、待って、待って…また、連れてって…みんなで、魔法、の、国…」

「いい事も悪い事もみんな、きちんと話して来ます。
ちゃんと決着を付けてから、又、先生と会えれば嬉しいです。
その時に、伝えたい事があります。
色々有り難うな、首洗って待ってろや、ガキ
I’ll be back」
メモを握りしめて走っていたネギは、歩道の渋滞に苛立ちを覚え、人混みを抜ける。
「通り魔?」
「怖いわねー」
「女の子が刺されたって、中学生ぐらいの」
「うわぁ、血の海ぃ」
「いちお救急車乗ったけど無理だろ」
「ほら、これニュース」
「うわー、心肺停止…今死亡確認ですかー」
黄色い縄張りの中で、鑑識員が度の無い眼鏡を拾っていた。

「警視庁は、長谷川千雨さんをサバイバルナイフで刺して殺害したとして…
被疑者死亡のまま少年の書類を東京地検に…」
「少年は、現場から…離れた公園のトイレで首を吊って死亡しているのが発見され…」
「少年の部屋には壁一面に無数の長谷川さんの写真が貼られていたと…」
「引きこもりでバーチャルなゲーム感覚でリセットすればいいと…」
「奉仕活動で触れあいの体験を…」
「中学生でネットアイドルとしてHPを作っていたと…」
「ネットの中での虚像がですね…」
「二次元で中学生の女の子しか愛せない○○○○○萌○族と言う…」
「アニメやゲームでは中高生や子供までもが性的な対象になっているものが…」
「やはり規制していかなければならないのでして…」
「中学生がネットの世界で無防備に…」
「中学生がネットで犯罪に巻き込まれると言う…」
「やはり、中学生がネットとケータイを持つと言うのが…」
「だからゲ○ム脳の恐怖と言うのがですねー」

「ご面倒をおかけしました、会長」
「いやいや、社長にはまだまだ稼いでいただかないといけませんからなぁ」
「全く、面倒な事をしてくれて、警察に多少顔が利くとは言っても、
余計な事を喋られるとまあ、さすがにうちのトップだけに下手すると会社ごとアボーンですから」
「いやー、さすが社長お若いですなぁ、そうなるとうちとしてもまあ色々と困りますからな。
後の事もうまくいっているみたいですな」
「それも親分もとい会長が手際よく片付けて下さったお陰でしてはい、
まあ、マスコミ関係には色々伝手もありますし」
「目立ちたがり屋のネットアイドルだかが一人、事件でも色物と言う事ですか」
「まあ、そう言う事になりますな。今後ともどうぞ」
「この業界、持ちつ持たれつ、そちらが稼ぐからこそこっちも潤うと…」
校舎裏で、和美がテープを止めた。
ネギが小さく頭を下げてその場を離れる。
和美がガックリと膝を着いて泣き崩れた。
「さよちゃん、私、私が…」
さよが小さく首を横に振る。
和美は、かなり早い段階から事態を掴んでいた。
しかし、一つだけ分からない事があった。
だから、ネギには言えなかった、千雨の気持ちが分かっていたから。
人見に映し出される千雨の姿、形は見えても心は見えなかった。
何かの事情で千雨がぐれてしまっているだけなら、これが知れたら千雨の恋は完全に崩壊する。望みが絶たれる。
それをする権利が自分にあるのか…
「今更分かっても遅すぎる…ネギ君、今、教えてくれて有り難うって…
私が、信じなかった、千雨ちゃんの事信じなかったから、なのに…」
顔を覆う掌の向こうで、涙は止まらなかった。

「ネギ、大丈夫かな…」
慌ただしく日々が過ぎ、放課後の廊下を行く明日菜が言った。
「随分、落ち着いて来られた様ですが」
刹那が言った。
「だから、心配なんでしょ」
「そやなー」
やはりうかない顔の木乃香が言う。
「…こないだも、部屋でなんか巻物みたいの開いてブツブツ言うてたし…」

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最終更新:2012年01月28日 15:48
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