逆まる
寮の部屋で、和美が浴室を出る。
バスタオル一枚巻いた姿で和美がリビングに入ると、二段ベッドの下段にネギが横たわっている。
眠ってはいない、ラフな格好で目を開けてシーツを見ている。
ネギがのっそり起きあがり、和美の前に立つ。
抵抗もしない和美は、拳法使いでもあるネギにころりと転がされていた。
貪る様に乳首を吸われるのを感じながら、和美は宙を舞うバスタオルを見ていた。
いっそ、怖いだけ嫌悪するだけなら、罰に浸る事も出来たのに、
その内そう思えてしまう変化が自分の体にも心にも沸き上がる、いつもの事だった。
図書館島地下書庫。
その日も一日の授業が終わり、近くを通りかかったハルナは。チラと親友の姿を見た。
のどかとネギが、楽しそうに談笑しながら散策している。
そして、手近な閲覧室に入り、密室ではない閲覧室で本を開きながら熱心に語り合う二人の微笑ましい情景。
それを見たハルナの胸がチクリと痛んだ。
地下図書館の一角で、のどかがべこりと頭を下げ、ネギは手を振ってのどかと分かれる。
本来ならば送っていくのが当然の紳士の振るまいなのだが、
のどかはこれからの時間もう一つ二つ仕事が残っていた。
ネギは、地下図書館の奥を進み、ミニチュア蟠桃を静かに見上げていた。
“…超さん…もし今、今の僕をあなたが誘ったとしたら…”
「よっ」
「あ、ハルナさん」
ぺこりと頭を下げるネギに、ハルナが苦笑して缶ジュースを放る。
「あ、すいません」
二人は、並んで蟠桃の囲いに腰掛けた。
「ネギ君」
「はい」
「結構無理してるでしょ」
「え?」
「ごまかし無用、引いて見てるとさー、結構分かる、分かっちゃうんだよねー。
大切な人だからこそ、心配掛けたくない、負担掛けたくないとかさー、どうでもいい人間には結構分かるんだ」
「どうでもよくありませんよっ、ハルナさんは僕の大切な…」
「大切な?」
ハルナは少し意地の悪い質問をした。
「大切な、生徒で、友達で、仲間で…」
一生懸命言い募るネギを前にハルナは優しく笑った。
「うん、分かってる」
ハルナがネギの頭をぐしゃぐしゃと撫で、そのネギの顔が下を向くのを見た。
「おっ」
ハルナは、右腕にネギの体重を感じた。
「少し…こうしてていいですか?」
「どーぞどーぞ、大歓迎よネギ君」
その内、ハルナの右手に座り、ハルナの右腕に寄りかかるネギの体がずれ、
途中でつっかえた所でハルナはネギが倒れ込まない様に左腕でネギの体を抱える。
眠っているのかと思ったらそうではない、考える事をやめているだけの様だ。
「疲れてるね、ネギ君、心が」
「こんな所があったんですね」
ハルナに連れてこられた個室閲覧室でネギが言う。
「関係者IDのちょっとした特権でね」
「すいません、ハルナさん」
「いちいち謝る事じゃないって」
ハルナが苦笑する。
「じゃあ、適当にぼーっとしてなよ、何かあったら私の携帯に、
適当な時間に迎えに来るから」
ネギに背を向けて歩き出したハルナが、がくんと足が止まるのを感じた。
「ネギ、君?」
「ごめんなさい…行かないで…」
親友の顔が一杯に広がり、罪悪感アラームがMAXで鳴り響く。
でも、ネギが見せた初めてかも知れない弱い子供の顔、礼を尽くしてお願いする事すら出来ず、
ぎゅっと背中に縋って全身で求める。
「分かった、ネギ君、どこにも行かない」
ハルナは、絶対に言ってはいけない出来事が出来た事を悟った。
二人は並んでソファーに掛ける。
二人は、しばらくじっと押し黙っていた。
不意に、ネギが体をハルナの正面に回す様に抱き付いた。
そのまま、ネギは顔をハルナの胸に埋めたまま動かなくなる。
以前はハルナ自身がした事があるとは言え、
いくら子供と言っても、男の子がこれはまずいと頭の中で考えながら、ハルナは拒めなかった。
今のネギをたしなめる事も引き離す事も出来なかった。
そして、ハルナの体はそれとは逆の行動を取っていた。
震えるネギが、ハルナの柔らかさを感じて包まれていたいのなら、そうしてやろうと。
ハルナの腕がネギを抱いた。
その腕の中で、ネギはすりすりと頬ずりをする。
「柔らかい、ハルナさん…」
ネギは、手を伸ばしてそろそろと掴んだ。
そして、器用な指先でボタンを外し始めた。
ハルナは、自分が何をすべきなのかよく分かっていた。
ネギのためにも今、ここで今の内に間違いは正さなければならない、ネギのためにならないと言う事も。
だが、現実には、ハルナの手は背中に回っていた。
背中に回ったハルナの指は、薄い布地の下の下着の留め具に伸びていた。
それは親友への裏切りでしかないと言う痛みを覚えながら、止められなかった。
そして、二人は重なりながらソファーに倒れ込んだ。
開かれた制服ブラウスの中、緩んだ下着をずらしてその下、
柔らかさと温もりを顔一杯に感じていたネギは、その頂きで既につんと突き出したピンク色の蕾口にしていた。
されるがままにネギを感じていたハルナは、重なっている下半身の方が
何かもぞもぞと動き出している事に気が付いた。
もぞもぞと落ち着かなく感じながら、ハルナは、やや知識が偏っていてもそれが何であるかを把握した。
「はうううっ…」
「あっ、ごめっ…」
ハルナも動き出した所、ハルナの意図とは逆にどんどん二人の下半身が絡み付きこすれ合う。
何かをずらそうと手を伸ばして掴んだ所、ハルナは止めすら刺してしまっていた。
ばっと離れたネギの顔は蒼白だった。
「ちょっ、ネギ君っ!」
駆け出すネギを、ハルナは追う事は出来なかった。それは、純然たる物理的な意味で、
ネギは考えもなしに魔法強化をフル稼働させていたが、幸いにもと言うべきか防御力強化はさ程でもなかった。
「はうっ!」
そして、この部屋はオートロックだった。
「シャワーまでついてるんですね」
「一拍ぐらいなら出来る様になってるからね」
磨りガラス越しに会話が交わされていた。
「あっ、あのっ、ハルナさんっ!」
物音に振り返ったネギは仰天した。
元々、ハルナは女子寮育ちにガサツと言える性格が重なって、タオルを巻いて入浴すると言う習慣は無い。
先ほどまでの狼藉が嘘の様に、狭いシャワー室に堂々と全裸で現れてはネギもわたわたと腕を振り上げてしまう。
その有様にハルナは苦笑した。
立ったままそこの汚れを落としていたネギが慌てる前に、ハルナはちょこんと座った。
「クスクス、まだお子ちゃまみたいだけど、もうちゃんと男の子なんだね、ネギ君」
「ごめんなさい…」
「謝る事じゃないって。あーんっ…」
思わず腰を引いたネギの前でハルナが苦笑する。
「ぱくっ、て、されるとでも思った?いけないなーネギ君、お子ちゃまがどこで覚えたのかなー?」
「はううー、ごめんなさーい」
暗い思い出が蘇る。まさか、だとは言えない。
「ここまで許してもー、そんなに簡単にそんな事してくれる訳ないんだからねー、
ま、ネギ君ならいいかもだけど」
「あ、あうっ、ハルナさんっ」
「ふーん、こんな風に汚れてるんだー」
ハルナは、掌でボディーソープを泡立てると、経歴を疑いたくなる手際でそこを泡立て
シャワーできれいに洗い流した。
「ふふっ、またビンビンになっちゃったね、刺激強すぎたかなー」
ハルナの軽口が止まらない。それは、いつも通り何でもない事と自分に言い聞かせている様でもあった。
だが、立ち上がったハルナの顔から一瞬笑みが消えた。
「はっ!ネ、ネギ君っ!?」
ハルナは、ぐっと真剣な目をしたネギに壁際に追い込まれていた。
「ネギ君?ネギ…いっ…」
「あれっ、ハルナさん、ぬるって入っちゃいましたよ」
ネギの顔には不敵な笑みが浮かんでいた。
“…こ、怖い?…でも、これ、私が…”
「あうっ、うんっ、だって、ネギ君可愛いから…」
「ハルナさん、ハルナさん凄く気持ちいいですよハルナさんっ…」
「んんっ、ネギ君の、ネギ君の硬いのが…」
「ハルナさん、ハルナ…」
ネギは、壁を背に立つハルナをぎゅっと抱き締めながら全身を震わせ、注ぎ込むに任せた。
「うっ、うっうっ、うっ…」
はあはあと荒い息を吐くネギの上で、ハルナの啜り泣く声が聞こえた。
ネギは、謝る事はしなかった。只、ハルナの全身の温かさ、柔らかさを全身で繋がりながら貪っていた。
最終更新:2012年01月28日 15:49