逆まる
「気持ち良かったですよ、ハルナさん」
静かなぐらいのネギの声だった。
「凄く気持ちよくて、僕のここ、僕のとハルナさんのでこんなにぬるぬるしちゃって」
裸の腕で涙を拭ったハルナはその場に跪いた。
そして、柔らかくなったものを口に含んだ。
親友を裏切り、年上としてネギの間違いを正す事も出来なかった。悪いのは自分。被害者でなく加害者。
そうであるならば、今、こうやってネギを慰めてしまった、受け容れてしまったのならば、
今だけでも、最後までネギと一緒に、言い訳じみた真似はやめよう。そう言う女になろう。
「んふっ、もう、大きくなって来たよ、ネギ君」
ハルナは、笑顔を作ってネギを見上げた。
「ハルナさんのお口、すごく気持ちいいです」
「そう、じゃあ、もっともっと気持ちよくしてあげるっ!」
じゅぽじゅぽと音を立ててハルナの口から出し入れされた。それが更に加速されていく。
「はっ、あっ、ハルナさんっ、あっ…」
「ネギ君、ネギ君いいよ、いいよっ」
「ああっ」
限界まで反り返ったものが口から外れ、噴水はハルナの顔の真ん前で空中に脈打って噴き出した。
「あっ、ハルナさんっ」
「んっ、んんんっ…ほら、綺麗になった。上がって待ってて、始末しちゃうからさ」
「はい」
ネギが素直に脱衣所に向かい、ハルナはシャワーを金具に掛ける。
眼鏡を置き、座ったままシャワーを浴びて顔を洗い始める。掌で顔を覆ったまま動かなくなる。
いつもの特徴的に凝った束ねが解かれて波打ち、いい匂いのする髪の毛がシーツの上に自然に広がる。
すらりとしていて、それでいて出る所は出ている、大人の女性もかくやと言う
その見事な裸体が余す所無く横たわる。
その中でも見事な膨らみが頂きに可愛らしいぐらいの蕾を添えてふるふると質感を示し震えている。
その母性の象徴に目的通り唇を寄せると、僅かに顔をしかめ複雑な声を響かせる。
ふくよかな膨らみ、だが、跳ね返る様な弾力。
体中弾力に富み、すべすべと滑らかな若さ一杯の手触り。
手を伸ばし、唇で触れる内に、その肌はほんのりと上気し、耐えきれぬ様にヒクヒクと振動を伝える。
哀しみをたたえた瞳に刺されながら、浅ましいほどに猛ったものを中心に沈め、
熱く柔らかな中に包み込まれる。
目の前で形のいい鼻が膨らんでふっくらとした頬は赤く染まり、
罪にさいなまれ、静かな哀しさに満ちた瞳からは別の意味の涙が溢れる。
白い喉が反り返り、哀しくも熱い鳴き声が部屋に響く。
何度となく蘇っては消えない情景、表情、声、そして全身に残る感触。
そして、それに溺れた後にぽっかりと開く黒い隙間。
それでも、浴室のドアが開いた瞬間、ネギは瞬時に思考を停止していた。
「だーれ、出しっぱなし…」
女子寮643号室の浴室に入った明日菜の目が点になった。
明日菜の視界に、ユニットバスで壁に両手を着いて
これからアメリカで職務質問でも始めようかと言うネギの解けた後ろ髪と尻が見えた。
「ごっ、ごめん入ってたんだ」
「あ、ごめんなさい、すぐ上がりますから」
「いいのいいの、ごゆっくりー」
ネギの背中に錯乱のほほほー笑いを浴びせて明日菜が退散した。
「…絶対、変…」
ドアを閉め、明日菜がぽつりと呟く。
「オッケー♪
きょうもちうは元気だぴょーん♪」
カチッ
「オッケー♪
きょうもちうは元気だぴょーん♪」
カチッ
「オッケー♪
きょうもちうは元気だぴょーん♪」
カチッ
「オッケー♪
きょうもちうは元気だぴょーん♪」
カチッ
「オッケー♪
きょうもちうは元気だぴょーん♪」
カチッ
「ラ・ステル、マ・スキル・マギステル…」
詠唱が終わると、校舎裏の魔法陣から上がる光の粒が徐々に金色の小さな塊へと結実していった。
「ごめんなさい、本当なら向こうで休んでいる所を」
「何を仰ります」
金色の塊が言葉を発した。
「大マスター様のお呼びと言う事は、即ち…」
ネギは、小さく頷いた。
「マスターのマスターとしてお願いします、力を貸して下さい」
「とんでもない」
「ちう様のご恩に報いる時、どれだけお待ちしていた事か」
「ちう様の仇は我らが仇、どうぞ、我らにやれとお命じ下さいマスター」
「…愛されていたんですね、千雨さん」
ネギは、静かに笑顔を見せた。
洗い髪がベッドの上に散る。
和美は、二段ベッド上段の床を見上げながら、
下段ベッドに横たわり、されるがままネギに裸体を晒している。
探り回り柔らかさを味わう掌吸い付く唇、その内指が、舌が、和美の本性を暴き出さんと
恐るべき的確さで探り出し、和美に声を上げさせる。
天井は、ネギの顔になった。
僅かに前後に動きながら、歯を食いしばって我慢している。
それは、男の喜びを先延ばしにしているだけには見えない、とても哀しい顔。
その時を迎えた後、和美はネギの頭をぎゅっと抱き締めた。
「はあ…はあ、はあ…はあ…」
窒息しそうな弾力から抜け出したネギと和美の目と目が合う。
和美は覆い被さるネギを抱き締め、唇を貪り合った。
「あんっ、んっ、あんんっ」
激しく喘ぎ、黒髪を揺らすハルナを目の前に、
図書館島個室閲覧室のソファーに座るネギの心、瞳はふと空虚なものを見せていた。
だが、それは失礼な事だとネギは考える。
何より、ハルナと繋がっている自分の男はそれを許す程枯れてはいない。
「あんんんっ!」
乳首に吸い付かれたハルナが声を上げる。
ネギは、そのままハルナにぎゅっとしがみつく。
「んっ、んんんんんっ…」
下半身だけをこね回す様な二人の動きが少しの間続き、ハルナが顎を反らして白い喉を見せる。
ハルナの乳首から口を離し、ハアハアと荒い息を吐くネギの頭を、ハルナがぎゅっと抱き締めた。
「あっ、ハルナさんっ、あっ…」
散々積み重ねていても、こんな風に子供の顔を見せるのがわざとに見えない。
ソファーに座ったままのネギの股間に顔を埋め、
自分の中で放って柔らかくなったものを口に出し入れしながらハルナはつくづくそう感じる。
ソファーの上で仰向けになるハルナ。すこしぽっちゃりとして、それでいて背は高く、
豊満な柔らかさに溢れる全身を惜しげもなく目の前にして、冷たい風の吹き込み続けるネギも生唾を飲んだ。
温かなハルナの口で満たされ、奮い立ったものが荒々しく突き入れられる。
「はあっ、はあっ、ああああっ…」
もう考える事もなく、激しく前後に動き続けた。
力尽き、覆い被さるネギをハルナはぎゅっと抱き締めた。
これがどう言う事か、ハルナは言葉としては分かり過ぎる程分かっているつもりだった。
親友への裏切り、そして、子供への誘惑。
ネギの望み等言い訳にならない。ネギは聡明な男の子だ、心の痛手でちょっと迷ったとしても、
年上の女性としてどうすべきだったか等分かり切っている筈だった。
それを、ことごとく正反対の行動で、ネギを泥沼に引きずり込んだ、
ネギを抱く腕、その端正な美貌を見る瞳に、彼の抱く罪悪感は刺す様に伝わって来る。
でも、一方で自分しかいない、のどかには無理だ、そう言う思いが消せなかった。
ネギはのどかを守ろうとする。一歩引こうとする。自分で抱え込もうとする。明日菜は素直ではない。
どんなに間違っていても、お姉さんとして甘えさせてあげる事は自分にしか出来ない、
一線を越えた暗いものを分かち合った自分にしか出来ない、ハルナの心も又、泥沼の罠の中にあった。
最終更新:2012年01月28日 15:51