29スレ264

家鴨雛は月で鳴く 第二回


顔から黄色っぽい塊だけ手拭いで拭った美晴は、
にっこり笑ってぱくぱく口を動かすネギの股間にじゃーっと手桶の湯を注ぐ。
「あああのっ!ごごごごごごめんなさいいっっ!!」
ネギはバタンと頭を下げる。本当ならダッシュで逃げ出したかったが、
肝心な所を握られたままではそれもかなわなかった。
「お風呂嫌いのお子ちゃま先生もちゃんと男なのね。
でも、ここは一番綺麗にしておかないといけないのよ、この後は特にね」
「うっ、ううっ…」
と言われても、ネギはそれを覚えるどころではない。
柔らかな手で一番敏感な所まで汚れを拭われ、とうとう真正面に何一つ隠す事もなく座っている。
見る見る内に先ほどまでの形を取り戻していくのを前に、美晴は又悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「元気な男の子ね、健康的」
笑った美晴がじゃーっと手桶の湯をネギの頭から浴びせ、ぺこりと頭を下げたネギがたたたと風呂場を出た。

何がどうなってこうなったのか、
恥ずかしさの余り逃げ出したい程だったのを辛うじて抑え、
黒服に勧められるままに浴衣を着て案内をされたネギは、
庵の一室でやはり浴衣姿で座る美晴の隣で布団の上に座っていた。
「ネギ先生」
「はい」
美晴の静かな、美しく透き通った声に、ネギは頬を染めてうつむいたまま答える。
あんな恥ずかしい所を見られて、こんな美しい人の顔をまともには見られない、それがネギの潔癖さだった。
“…裸?…”
それでも、ちょっと横を見ると、浴衣の胸元からはみ出しそうな豊かな膨らみ深い谷間がそのまま見えてしまう。
「ネギ先生は、素敵な男性です。素敵な男性であり、立派な雄です。
雌として、出来ればネギ先生の素敵な女性として、今だけでもいられれば幸せです」
美晴は、顔を上げたネギの頬を両手で挟み、唇を重ね舌を送り込んだ。
美晴に抱き締められ、ネギは美晴を抱き締める。ずっと触れたい、そうしたいと思っていた事をネギは自覚する、
ネギの腕の中にずっと望んでいた確かな質感が収まる。それは、意外なぐらいに華奢にも思えた。
“…やっぱり、女の人なんだ…”
「美晴さん、凄く、素敵な女性です」
「嬉しい」
軽く糸を引いて唇が離れた後、ネギは魂を抜かれた様に言った。

「ああ…」
美晴が浴衣の前をはだける。
もう、ネギは目を反らさなかった。たっぷりとした質感、それでいてしっかりと張り詰めた豊かな乳房。
そのいただきに可憐な程に尖った薄めの色の蕾に、ネギは吸い付いていた。
「…おっぱい…美晴さんのおっぱい…」
左手で美晴の乳房を揉みながら、吸い付いたままのネギは譫言の様に繰り返す。
その間に美晴の右手はネギの浴衣の裾を割り、腿をなで回し、中心へと近づく。
「もう凄く、熱くなってる」
「あっ、駄目っ美晴さんっ!」
トランクスから引っ張り出して掴んだ手が動いて早々、ネギのそこは見事に弾けていた。
美晴のおっぱいに感激していたのも忘れ、震えてうつむくネギの頭を美晴が左手で撫でる。
「凄く元気なのね、さっきもあんなに出したのに。
出すの、今日が初めてだったの?」
ネギがこくんと頷く。
「ネギ君の男の子の体に初めて女として認識された、凄く名誉な事。
こうやって、ネギ君と一緒に気持ちいい事するんだから」
「あっ、汚いですっ」
「だって、もう汚れちゃったでしょ」
自分の浴衣の裾でネギの男を拭った美晴は、堂々とそれを脱ぎ捨て、生まれたままの姿になった。
「さ、ネギ君も」
「はいっ」
美晴だけ、裸にしておく訳にはいかなかった。
美晴が立ち上がり、ネギもそれに倣う。
「どう、ネギ君私の裸?」
「凄く、綺麗です」
他に言葉も無かった。実際、そのプロポーション、成熟した女性の魅力は見事としか言い様のないものだった。
記憶を辿ると、他の何人かと違ってフルヌードこそ知らないがあえて一番近いのは那波千鶴かも知れない。
だが、ネンレイサショウと言われようがオバ

(この間小一時間)

言われようが、
留年無しでネギの生徒をしている事に違いはない、らしい千鶴と美晴では大人びた雰囲気がやはり違う。
加えて、さすがあれだけの武道家、締まる所はぴしっと締まって若々しい娘の弾力と
大人の柔らかさの配合、たっぷりと膨らみぷるんと張りのある白い乳房は圧巻だった。
「ネギ君も、逞しくて、格好いい」
一組の男女が、生まれたままの姿で改めて抱き合い、互いの体温を感じながら唇を、舌を貪った。
「んふふっ、お腹の上でむくむくしてる、元気な男の子なのねネギ君」
「だって、美晴さん綺麗で、柔らかくて…」
「今度は、私を気持ちよくしてね」

布団の上で仰向けになって僅かに身を起こし、大きく脚を開いた美晴の前で、
ネギは這いつくばってそこから目を離せなかった。二人とも丸裸のままだった。
美晴が手招きし、ネギが美晴に這い寄る。
「綺麗な指、あんなに鍛えて逞しい、厳しい鍛錬と武勇伝を物語ってるこんなにタコがあるのに、繊細な指…」
美晴はネギの手を取ると、そのネギの指で自分が気持ちのいい様に動かし始めた。
「こうやって…周りからゆっくりと…
ここが、一番敏感な所、敏感過ぎてちょっと力を入れても痛い、から…
ここに入るの、どう?」
「ぐにぐに柔らかくて、何か、ぬるぬる…」
「ふふっ、もう、濡れて来たのかな私?
ネギ君にエッチな所触られるだけで、気持ちいいとこうやって、
そう、その奥にもね…あ…ああっ…」
ビクッと痙攣した美晴を前に、ビクッとしたネギが顔を上げる。
ちょっと不安げなネギに、美晴は少し息を荒げながら優しい笑みを浮かべる。
「ネギ君、ネギ君の指、凄く気持ち良かったからあんな風になるの。
ネギ君、今からそれじゃあ将来すっごい女泣かせになる。
ネギ君のもビンビン、もう我慢出来ないって。
私の、溢れ出してる所にそう、指じゃないのをここにっ」
「うっ、くっ…」
ネギは、促されるまま、自分で握って狙いを付けながらぐいっと貫いた。
ぬるぬるとこすられ締め付けられ、目から火花が出そうなものを覚えながら、
ネギは体が求めるままに腰を使う。だが、それも長くは続かない。
「つっ、あっ、ああっ…」
「んんっ…」
気が付いた時には、牡の方は些か幼い一組の男女が、生まれたままの姿でその身をつなげたまま、
ぎゅっと抱き合い熱い息を吐き続けていた。

「んーっ、いい運動したー♪」
のんびりと庵の檜風呂に浸かる美晴の前で、腰掛けに掛けたネギがうつむいて手桶の湯を被っていた。
ネギの脳裏に、あの時の美晴の顔が蘇る。
ぎゅっと抱き合ったまま、上目遣いに見た美晴の顔。
頬を赤く染め、荒い息を吐いて喘いでいる。無防備で途方もなく可愛い。
“美晴さんも、気持ち良かったのかな?”
そんな事、ストレートに聞ける性格ではない。
「ネギ君立って、こっち向いてくれるかなー」
「は、はいっ!」
反射的に従った後、それがあからさまに恥ずかしい姿だと気が付いても後の祭りだった。
美晴がざばーっと音を立てて湯を上がり、その美しい裸体がネギの前で丸見えになる。
「今度はちゃんと、綺麗に出来たかな?」
そんな美晴がネギの前に跪き、豊かな胸も丸見えにちらっと上目遣いで見上げると、
それだけでネギの頬がかあっと熱くなる。

「あうっ、ち、ちょっ美晴さんっ汚いっ…」
「いいの、ネギ君のだから、可愛くて格好いいネギ君の…おっ、んっ…」
「はうっ、美晴さん気持ちいいっ、まっ、またっ…」
“…ふふっ、女の子みたいな声…”
美晴は、その可愛らしい声を楽しみながら、
あっと言う間に硬くなり、そして温かな美晴の口に放出を遂げたものから離れる。
“…飲んでる?美晴さん、僕の、セイエキ…”
「ネギ君の、一杯頂きました。
あんまり美味しいものじゃないけど、ネギ君が私の前で出したの、一杯飲んだ」
ごくんと喉を鳴らした美晴が、にっこり笑いながらその口で改めて綺麗に後始末をする。
「あっ、あああっ…」
巧みに舌で撫でられ、背筋にぶるぶると伝わって来ているネギが風呂場に高い声を響かせる。
「んんっ、もう、熱くなって、大きくなってる。
さっきあんなにしたのに、私の口の中にもネギ君ネバネバしたの一杯出して」
「はうぅぅ、美晴さんが、美晴さんが凄く、凄く綺麗で凄くエッチで…」
綺麗なお姉さんに優しい口調で際どい言葉を連ねられ、ネギは考える間もなく言い募っていた。
「そうよ、私凄くエッチなの、ネギ君の可愛い声聞いてるだけで、もう恥ずかしい所とろとろして来てる。
ネギ君みたいに可愛くていい男と裸の付き合いしてるんだから、凄くエッチな気分になってる。ネギ君は?」
「は、はい、僕、僕も凄くエッチな気分、オチ○チンも、凄く硬くなって、
また、美晴さんに、僕…」
立ち上がり、堂々と我が身を晒しながら堂々と言う美晴を前に、ネギも逃れる事は出来なかった。
「いいよ、ネギ君、ぬるぬるになってるのよく見えるでしょう…あうっ!」
風呂桶に腰掛けた美晴の、
言われた所にネギは自分でも認めた程ギンギンになっているものをぐいっと押し込んだ。
かなぐり捨てた様な美晴の激しい声がネギの頭と繋がっている所にビンビン響く。
その美晴も又、ネギが搾り出す熱い声に酔い痴れていた。
ここで共に極みに達し、この後また美晴が優しく後始末した後も、
余り広くもない浴槽の中で座らせたネギの上に大量の湯を床に排出しながら美晴がぐいぐいとのし掛かり、
揃ってのぼせ上がりそうになりながらも獣じみた声を響かせた二人の交わりは果てしもない程に続いていた。

「あ、ネギ」
女子寮周辺で、戻って来たネギに明日菜が声を掛ける。
「見かけなかったけどどこ行ってたのよ?」
「ええ、ちょっとお天気も良かったのでその辺で」
「ふーん、そう」
明日菜が寮に戻った後、刹那がそっとネギに近づく。
「美晴さんの所ですか?」
刹那の囁きに、ネギの頬がぽっと赤くなる。
「ええ、ちょっと」
ネギが苦笑いする。
「先方の迷惑もありますので、余り喋らないでおきましょう」
「はい、そうしましょう」
ほっとした様に言うネギの側で、刹那の目は鋭いものになっていた。

既に陽も落ちた後、竹林では、刹那と黒服班長が向かい合っていた。
「桜咲刹那がアポイントだけでも取りたいとお伝えいただけますか?」
刹那の言葉に、少しの間携帯で通話していた。
「ここでお待ちを」
少し待たされた後、姿を現した美晴は黒髪を紐でポニテに束ね、剣道の胴着袴姿だった。
「今夜は月が綺麗です」
言って、美晴が手にした二振の竹刀の一方を刹那に突き出す。
「私に何か話しがあるのでしょう?
大いに語り合いましょう。防具も用意しますか?」
一瞬戸惑いを見せた刹那だったが、すぐに竹刀を受け取った。
「結構」
「プロの目ね」
「あなたとは一度心ゆくまで剣を交えたかった」
「私もよ」

竹がぶつかる音と枯れ葉を蹴る音だけが、恐ろしく長い時間に感じられた。
美晴は、竹林から近くの林に移動していた。
たっ、と前に跳び、振り返った美晴の前に、
樹上から着地した刹那が間合いを詰めていた。
一度、竹刀が交わり両者が交差する。
振り返った美晴がとっさに片手で受け流そうとし、刹那の一撃で竹刀を弾き飛ばされる。
次の瞬間、刹那は息を呑んでいた。
竹刀を大きく上段に振りかぶった刹那の喉元に、美晴が袴から抜いた白扇が突きつけられていた。
「参りました!」
刹那が竹刀を置き片膝を着く。

「最後、反則っぽかったけど良かったのですか?」
檜風呂の湯船で寛いでいた美晴が言う。
「とんでもない、実戦なら死んでいました。あれに反応出来ないのであれば敗北は当然の結果です」
風呂場の腰掛けに掛けた刹那が言う。
「いい汗を掻きました。久しぶりに剣をもっていい試合をする事が出来た。ありがとう」
湯船で美晴が真面目な口調で頭を下げ、刹那は慌ててそれに倣う。
「いえ、とんでもない。私の方こそ突然押し掛けた上に、あなたの様な練達と剣を交える事が出来た…」
「どうかした?」
「…あなたとああして剣を交え、ごまかしは出来ません。
正直、複雑な思いがあります。
あなたは、全てを手に入れた人だと伺いました。そして、見るからに美しく輝いている。
あれだけの剣を身に着けるのにどれだけの修練を重ねて来たか、少しは分かるつもりです。
しかし、若輩とは言え、私はこれまで剣だけ、そのためだけに生きて来たそれだけの人間です。
そんな私が、全てを手に入れようと言うあなたに遠く及ばない」
「誰か、守りたい人でもいるのですか?」
湯船から美晴に尋ねられ、腰掛けに掛けた刹那はドキッとしていた。

「血の滲む様な修練を重ねた真っ直ぐに一途な剣、誠実で清々しく、気持ちよく剣を交える事が出来ました。
そんなあなたなら、きっと思いを果たす事が出来ます」
「その様な迷いも嫉妬も詰まらないもの、堂々と力強い剣、お手合わせ感謝します」
優しい笑みを浮かべ、頭を下げた美晴に、刹那が改めて頭を下げた。
「美晴さん」
「はい」
「ネギ先生はこちらに?」
「ええ」
「どうして?」
「ふらっと遊びに来て茶飲み話をして帰って行きました。妬いてる?」
「ままままままさかっ!先生は、十歳で、先生で、そのっ…」
直球をぶつけて悪戯っぽい笑みを浮かべる美晴に、真っ赤になった刹那が背を向ける。
「私は好きだけど、ネギ君」
「はははははいっ!?」
「彼、誠実で紳士で凛々しくて、それで素直で純朴で可愛いくて、凄く魅力的な男性。
まあ、私が言ったらさすがに変態の域入るけど、五歳ぐらいなら年の差の内に入らないでしょう?」
「そそそそそんな、決して私はその様な…」
「あら、ネギ君の事気にならない?」
「いいいいいえ、その、確かにはい、ネギ先生は才気溢れて、年相応に可愛くて、
魅力的だとは思いますが、その、私など、
私は見ての通りの武骨なだけの、背も低い、美晴さんや皆さんみたいに色恋沙汰などその様な…」
「刹那さん可愛いじゃない」
刹那が気が付いた時には背後から両肩を掴まれていた。
刹那の両肩を掴む美晴の掌、刹那の背中に触れた柔らかな膨らみにビクッと震えが伝わる。
その美晴の右手が刹那の右手を取ると、刹那は早鐘の様な自らの鼓動を自覚せずにはおれない。
「綺麗な黒髪、真っ白でピチピチ弾ける若さ一杯のお肌。
このしなやかな手にこれだけのタコを作って、
それ程一途に剣に打ち込んで、そこまでして誰かを守りたいと願う真面目で誠実でとても優しい。
だから真っ直ぐで綺麗な瞳、とても魅力的」
鏡には、真っ赤な顔でドギマギしている刹那と優しい笑みを浮かべた美晴の顔が写っていた。
立ち上がり、背を向けて脱衣所に向かった美晴が扉を閉じた後、
腰掛けに掛けた刹那はぷしゅーっと湯気を噴きながら、あやかの気持ちを痛感する。
彼女は、美晴は、絶対に、危険だと痛感していた。

翌日昼近く、エヴァ・リゾートを出た643号室+護衛のいつもの登校班の前に、
カモを跳ね飛ばしてリムジーンが停車した。
「あ、いいんちょ」
ガーッと窓が開き、そこからあやかが一同に顔を向ける。

「急ぎますので用件を申し上げます。
美晴様から夕食のご招待を受けました。
出来ればあなた達もと言う事です。
ただ、美晴様にも事情がございます。もし応じていただけるなら三十分以内に集合して欲しいとの伝言です。
美晴様のお忍びの情報はそれだけでも株価、世界情勢に関わります。
余り大人数で騒ぎにならない様にお願いします」
「分かりました、どこで…」
キーキー喚くカモを余所に、随分と居丈高な話に明日菜がむっとする間もなくネギが即答していた。

「どこ、ここ?」
黒服を追って山道を歩きながら、
リムジーンからジェット・ヘリを経て、既にここに至るまで用意されたサンドイッチと紅茶で昼食もすませた
明日菜が怒る気も失せたと言う口調で言う。
それでも、高原の別荘地の敷地に入ったと言う事は認識出来た一同の前に、
ラフな格好に茶色いサングラスを掛けた美晴が姿を現した。
「いらっしゃい。こちらから招待しておいて、色々無理を言ってごめんなさい」
「とんでもございません。美晴様のお立場を考えましたら…」
あやかが頭を下げ、一同それに倣う。
「今日はお招きいただきましておおきにー」
「お久しぶりです、近衛のお嬢様」
頭を上げた美晴が、サングラスを外してにこっと笑った。
「…あっ…」
「お嬢様、お知り合いで?」
「京都の野点で、一回だけ会うた事ある。すごい綺麗な人やなーって」
「あの折は結構なお点前でした。
お嬢様こそ、すっかりお綺麗になられて、誰か、もう意中の人でもおいででしたか?」
「ややわー」
悪戯っぽい笑みを浮かべた美晴に木乃香は手の甲を頬に添え鈴を転がす様に笑う。
「むーっ…」
呼び出しの経緯もあり、明日菜は何となく不愉快が消えない。
ラフな姿も、実際まだ若い美晴をはつらつと見せてよく似合う。
洗いざらしのTシャツにジーンズは、美晴の抜群のプロポーションをストレートに表現している。
「何てかさ」
明日菜が刹那に囁く。
「調子いいって言うか、引っ張り込まれそうって言うか…」
「それなんです」
刹那の口調はやけに真面目なものだった。
「あれ、いいんちょに神楽坂さん」
「アキラ?」
美晴の後ろから、てくてくとワンピース姿のアキラが姿を現した。

「アキラさんも来ていたんですの?」
「あれから色々話が弾んだもので、こちらのプールに招待しました」
美晴が何でもない事の様に言うが、刹那は仕事柄その意味する所を分析してしまう。
これだけの手練手管をもってすれば、人間一人失踪しても分からないと言う事だ。
「プールもあるんや」
「ええ、水着も用意出来ますよ。夕食前にいかがですか?」
美晴がにっこり笑って言った。

「ネーギー」
呪われるとしか思えない明日菜の声に、プールサイドでほーっとしていたネギがハッと振り返る。
「お美しい…」
だが、ネギが明日菜の餌食になる前に、あやかが前で手を組んで陶然と呟く。
実を言うと、明日菜自身、ほーっと見とれていた事を自分で認めたくないと言うのが本音だった。
一同、借り物の水着で、デパートかと思わせる品揃えからまあまあ可愛らしいのからスポーティーなのまで
好みに任せて基本中学生ぽいのを遠慮無く借りていたが、
ざっくりとVネックの黒いハイレグワンピースと言う主を選ぶ水着に
完璧に魅力を引き出された美晴の登場は、性別を問わず見る者の目を奪っていた。
「美晴さん、すっごいスタイルええなぁ」
「ありがとう」
ここで出会ってからしばらく、
妹の様にまとわりついた木乃香のストレートな言葉に、美晴がにこっと笑顔を返す。
「ほらー、ネギ君も見とれてもうて」
「あううー、このかさーん」
そんな木乃香の隣で、美晴がくすっと笑った。

「頑張れー、アキラー」
「美晴様あぁあぁあーーーーーーーーっっっ!」
「あんたそれでもいいんちょ!?」
「アキラさんも頑張って下さいましーっ!」
燦々と輝く高原の太陽の下、時折パラソルの下で絞りたてのジュースを頂きながらはしゃぎ回り、
ことごとく美晴が辛勝したアキラと美晴の真剣勝負を観戦した後、一同は牧場に移動する。
「すっごーいっ!」
すぱーんと的中させる刹那に明日菜が手を叩いてはしゃぐ。
「かっこえー、せっちゃん」
「お見事です」
乗馬スタイルの美晴がにっこり笑い、下馬した刹那が下を向いて頭を掻く。
「いや、どうも…久しぶりですけど見事な駿馬です。と、言うより、この一式揃っていると言うのが…」
流鏑馬スタイルで下馬した刹那が衣服を摘んで苦笑する。
「私も時々やりますけど、幸い取り寄せる事が出来ました」
「美晴さんとせっちゃんやったらサイズ違い過ぎやもんなー」
「そうですね、美晴さんは背も高くて胸も大きいですから、私などとはとても…」
「そろそろ、あやかさん」
「はい」

声を掛けられたあやかが跪かんばかりに返答し、美晴と並んで歩き出す。
「あれ、このか、刹那さんは?」
「あの辺の暗闇の中ちゃう?せっちゃんそろそろ始まるでー」
果たして、凛々しい乗馬服の美女を乗せた駿馬が二頭、姿を現した。
「あー、どっちかってと…いいんちょ頑張れーっ!」
「ほな美晴さんも頑張ってー!」
「どちらも頑張ってくださーいっ」
「あっさりクリアするなーっ!」
「あうううーっ」
「お見事でした」
障害物トラックを一周し、下馬した美晴があやかに手を差し出す。
「さすがですわ、美晴様。わたくしなど未熟を痛感するばかり」
「私も最近忙しいですから、すぐに追い付かれてしまいますよ」
「むむーっ…」
下馬して笑顔で握手する二人を、明日菜はちょっと不審な表情で見ていた。

ポニーに乗り、牛乳やらヤギ乳やらをいただき、
一同はテニスコートに移動していた。
「ネギ先生なんと凛々しい美晴様も…」
テニスになった途端にハイテンション追い打ち追い込み属性と化して明日菜と死闘を展開していたあやかが、
その後のコートに現れた二人のテニスルックに両手を組んでほーっと嘆息した。
「では、6ゲーム1セットを先取した方が勝ちでいいですね?」
ネットを挟んで向かい会ったネギに美晴が言った。
「はい」
美晴が地面で弾ませていたボールは、ゲームスタートと共にネギのコートに音と共に叩き付けられ跳ね返った。
「フィフティーン・ラブ」
美晴がにっと笑って言った。
「す、凄い…」
明日菜と刹那が呆然と呟く。
「当然ですわ」
あやかが言う。
「美晴様は二度に渡る中学チャンピオン、その最後の表彰式で…」
「あー、分かったいいんちょその先言わなくても…」
顔を押さえる明日菜は、前方を見て息を呑む。
「んまぁ、ネギ先生なんと凛々しい…」
その瞬間ネギが戦闘モードに入ったのは、誰の目にも明らかだった。
果たして、ネギの打ち込んだ弾丸の様なボールに美晴が追いすがり、打ち返している所だった。

「アスナさん、見えますか?」
「え?あ?リボン?」
「そう、あの黒いリボン、あれは封印です。
短時間用の様ですが、明らかに魔力を封印してる」
「うん、私も見た事ある」
「それだけ、本気だと言う事です…」
丸で銃弾でも叩き合っているかの様な凄まじいやり取りに、ギャラリーも言葉を失う。

「私の負けです」
「さすが、美晴さん、強いです」
「ん?」
明日菜が不審な声を出す。
6-4で壮絶な試合が終わり、その熱気の中で握手をしたものの、
その掌の柔らかさに気が付いたネギの頬が別の意味でぽーっと赤くなる。
「それではそろそろ、汗を流して夕食の支度にしますか。
ここなら第一浴場棟がいいでしょう。
レディー・ファーストでいいですね、ネギ先生?それともネギ先生も一緒に入りますか?」
「!?いいいえっ、レディー・ファーストでお願いしますっ!」
悪戯っぽい笑みを浮かべた美晴に、ネギがわたわたと顔の前で手を振って言う。
「こんなに汗掻いてー、一人で入ったらあんたろくに洗わないでしょ」
「いえっ、大丈夫ですっ!」
明日菜の詰問に、ネギがムキになって答える。
「ですって、さ、行きましょう」
「むー」
何となく面白くない明日菜だが、ここで余り粘るのは、さすがにネギが少し可哀相でもあり気が引けた。

「すっごい…」
第一浴場棟のちょっとした銭湯を思わせる施設で汗を流し、脱衣所に戻った明日菜は、
バスタオルを体に巻いてストローでスポーツドリンクを飲む美晴を目にして思わず口走っていた。
「やなぁ、ほんまスタイルええわぁ」
同じく、バスタオルを巻いてこれから着替えて上がろうと言う木乃香がはんなりと言った。
「アスナさんも凄くスタイルいいみたいだけど」
「そうですね、アスナさんはそう言われますけど胸も大きい方ですし、
私などよりずっと女っぽいです」
「もーっ、刹那さんっ」
美晴の言葉に、脱衣所で体を拭きながら刹那と明日菜が言い、明日菜が苦笑いする。
「スタイルがいいと言えばあやかさんにアキラさんも…」
美晴が言う。
「いいんちょあのタッパであの細さ、絶対異常だっての」
「何かおっしゃいましたオサルさん?」
「別にー」

「でも、美晴さんも皆さんも、そう考えると本当に見事なスタイルで、
背も高くて締まる所は締まっているのに胸も大きくて…」
「あーせっちゃん、自爆せんでええから」
「あら、刹那さんスタイルいいわよ。
このすっきりしてるのがきりっとしてる刹那さんのイメージぴったりで、ね」
「そうそう、それが格好ええねんせっちゃん。もー真っ赤になってせっちゃんー」
いじいじしている所に後ろからぎゅっと抱き付かれ、思い切り背中に弾む弾力とストレートな言葉に
刹那の真っ赤な顔から湯気が噴出する。
「でででも、本当に美晴さんその、胸大きいですね。
あれ程の剣を振るうとは信じられないぐらい」
「やっぱり大きいと邪魔なん?」
「そうですね、余り大きいと…美晴さんの場合は背も高いですから、全体に大きいのかも知れませんが…」
「んー、こないだ計った時は170、93、60、90だったけど」
「はわー」
木乃香が重ねた手の甲を頬に乗せ、刹那は論外とばかりにぽかんとする。
「93で…カップも結構ありますよね」
下着を着け始めた美晴を前に、不意にアキラが口を挟んだ。
「これはFだけど」
「あ、はは、そうですね、美晴さんの域までいきますと、もうそんな些細な事は。
実際、私の知る限りでもそんなの突き抜けてる人がいるにはいますし…」
刹那が乾いた声で言う。
「ごめんなさい、可愛いかったから…
何か、最近また大きくなって、ちょっと邪魔だしこれ以上大きくなるとデザインが…」
「そうね、手頃なのだと…」
もごもごと言うアキラに美晴が手際よくアドバイスし、他の面々もしっかりと頭に刻んでいた。

「それでは、私はそろそろ支度をしなければいけませんので、
後は案内させます」
「分かりました」
あやかが答え、浴場棟の一角で美晴が皆と一度別れる。
「ふーっ…」
浴場の脱衣所では、ネギがこれからお風呂に入ろうとシャツに手を掛けている所だった。
さすがに、目覚めた今となっては自分から一緒に入るとは言えない。
とは言え、自分で入って上手に洗えなかったら美晴さんの前で明日菜にどんな恥を掻かされるか分からない。
「なーにため息なんかついてるの?」
はっとしてネギがそちらを向くと、
テニスルックの美晴がにこにこ笑って右手をグーパーしていた。

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最終更新:2012年01月28日 16:23
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