29スレ308

「あの鈴を明日も聴かう」



「お早うございます、まき絵さん」
目を開けると、笑顔のネギが覗き込んでいた。
「んにゃ?」
「なんや?」
「えっと…」
「んー…」
「あれ、ネギ君、えーっと私…」
まき絵が頭を振って周りを見回すと、自分の体が野っ原に大の字に寝転がっていた。
後ろに、石の遺跡が見える。
「霧の中を出歩いたもので、同じ所をぐるぐる回って歩き疲れて寝ていたみたいですね」
にっこり笑ったネギが言う。
「あっ、そっかー…ごめんねネギ君」
「いえ、無事見付かって良かったです。戻りましょうか、お姉ちゃんも待ってます」
優しい笑みを浮かべたネギが皆に背を向ける。
夏美も首を傾げているが、立ち上がったまき絵には何か違和感があった。
この違和感、前にも何かこんな感じがあった様な、頭の隅に引っ掛かっている様なない様な。
「んにゃ…なーんか、すっごく面白い夢見てた気が…」
「…ナギさん…包帯…」
「カッコイーこたろー君…な訳ないか…」
「さあ、行きますよー」

「ご馳走様でした」
テーブルの前に正座した刹那が合掌し、皿を台所に持って行く。
「お粗末様でした、あー、せっちゃんそこ置いといて」
「とんでもない」
「ええからええから今日はうちやから、準備せぇへんと遅れるえ」
「では、そろそろ行きましょうか」
ネギを中心に643号室を出る。
「おはよー」
「おはよーございますネギせんせー」
「お早うございます」
いつもの通学路、駅から学園に向かいながら賑やかな挨拶が交錯する。


「…さん…いいんちょさん…」
「え、あ、はいっ!?」
ぼーっと頬杖をついていたあやかがハッと我に返る。
「あの、いいんちょさん、第6章66ページを…」
「ああ、ごめんなさい私とした事がどうしましょうネギ先生の前でこの様な失態を…」
「いえ、いいんですよいいんちょさん…」
「どーしたいいんちょ?」
「夏休みボケー?」
実際珍しい失態に、クラスの中からもヤジが飛ぶ。
「いいんちょさん、色々大変ですからね」
「むむーっ…」
そのネギの笑顔を、まき絵が注視していた。
あれからずっと感じている違和感。その一端がここにある様な気がする。
しかし、その一端が、このネギの笑顔から決して消えない僅かなかげりである事を
バカピンクが理論化して理解するのは難しかった。
「いえ…」
こほんと咳払いしてあやかが立ち上がる。
大変?そんな事は無い。
すっくと立ち上がったあやかが見事な発音を披露する。
新学期の始まりにしては、むしろ平穏過ぎる程だ。
「それから、一学期に預かったレポートお返ししますね」
「はーい」
ネギがとんとんと教卓の上でレポートを揃え、皆の返事を聞いてから一人一人レポートを返していく。
「どうだったー美砂ー?」
「いやー、あはは…」
「はい、…春日美空さーん」
「はいっす…」

ガシガシガシガシ
「涼風」で体を洗い、髪の毛を洗い終わったネギがシャワーを浴びていた。
「あれ、ネギ君?」
「はい」
ネギが振り返ると、クラスのみんなの姿があった。
シャワーコーナーを出たネギは、ぺこりと頭を下げて裸女の群れ、
それも飛び切りの美少女集団をするすると通りぬけて脱衣所に向かった。


「行ってきまーす」
「おはよーございまーす」
「きりーつれーい」
「はい、次美空さん」
「さよーならー」
「ただいまー」
「おかえりー」
「いただきまーす」
「ごちそーさまー」
「お休みなさい」
平穏な日常が続いていた。
平穏な日常の平穏な放課後、この日も、ネギは一日のお仕事を終えて部屋に戻り、
このかの美味しい手料理をいただいてお風呂に入って布団に潜り込んだ。

日付が変わってから、ロフトの布団を出たネギは、ベッドの上でぼーっと正座をしていた。
そして、もう一度立ち上がり、梯子を下りる。
そのネギと互いに背を向け合った刹那の目は薄く開き、決して代わりは務まらない事を痛感する。
僅かな音と共に、ネギは部屋を出る。

大きな鈴の髪飾りを取り出し、髪の毛をツインテールに束ねる。
色違いのカラーコンタクトを入れる。
クギバットとサバイバルナイフは必要ない。
ふらりと部屋を出て、夜の空気を吸いながら一回りして戻って来る。
この際、見付かったらその時はその時、反応を見てやりたいと言う思いすらある。
しかし、幸いにもと言うべきか、誰にも見とがめられなかった。
部屋に戻り、鏡の前に立つ。
「…だよねー、千雨ちゃん♪…
…な、訳ねぇよな、はは…」
「何を、してるんですか?」
ぎょっとして振り返った千雨は、その目の前の光景、表情、体の震えに、最悪の事態を察知した。
「何を、してるんですか、千雨さん?」
「ああ、これ?あれだ、なんつーかその、気晴らしっつーかほら、な…」
「…バカにするなああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!」

「言霊!?」
刹那が瞬時に飛び出す。
「せっちゃんっ!?」
刹那の羽の中で、木乃香も真剣な声で言う。



全て滅びよと言わんばかりの、荒々しく、哀しい声だった。
「わ、悪かったっ!私が悪かった、ネギ先生の、ネギ先生思いきり抉った。
な、分かってる、悪かったの分かる、だから…」
「あいつも、アスナさんも、みんな、みんなみんなバカにして…」
「いや、マテ…」
「みんなみんなみんな…千雨さんまでえええっっっ!!!」

ネギの黒い拳は、姿見を貫通していた。
「…どうして、よけなかったんですか?」
「私なんかに避けられるタマかよあんたの戦車二台分パンチが。
それに、体が動かなかったっつーか、私も、ぶん殴られて当然の事したし…」
「死んで、ましたよ」
「先生が、私の事、生徒の事、殺したりするかよ。
それより、ヤバイんじゃねぇか?」

「はぁ、はぁ、はぁ…こっちの方がマジ死ぬかと思った…世界樹か…」
力ずくで杖に乗せられ、魔法障壁を前面に窓を突き破り超高速で向かった先は、
世界樹の根元だった。
「つっ…」
「ネギ先生、大丈夫…」
ネギが小さく光るものを引き抜き、腕から一筋血が流れていた。
「こんな事のために…僕だってあんな辛い思いして、頑張って…こんな事のために…」
「分かってる」
「なのに、それなのに、みんな、あいつも、アスナさんも…
アスナさんも、知らない間にあいつと…」
「それは、ほら、一般人もいた訳だしさ、神楽坂は神楽坂なりに、
自分のせいで、自分が理由でみんな巻き込んだって責任感じて、それで…
ああ、とにかく、いい加減これ外すな、うざいだろ…」
「僕が…僕が、弱いから、僕が子供だから頼りないから情けないから…
だから、だからあいつも、アスナさんも、みんな僕の事、誰も…」
「なっさけないわねー」
涙を堪えていたネギが、ぎょっとしてそちらを見た。
「ホント、バッカじゃないの?
そんな過ぎた事いつまでもグジグジと、そんなだからガキだって言ってんの」
「…何してるんですか千雨さん?」
ネギが問いかけるその声は、それだけでも血が噴き出しそうな切れ味。
身震いしそうになったが、千雨はひるまなかった。
「なんでもかんでも一人で抱え込んであんた結局だーれも信じてない。
そんなだから大切な女の子一人、さっさと愛想尽かされちゃうんでしょ」
「…怒り、ますよ…」

「ふんっ、お子ちゃまが怒ったらどうだって言うのよ?
ほら、やってみなさいよ、バ、カ、ネ、ギ」
世界樹の枝と言う枝、葉と言う葉が、その下一面に広がる下草が、揺れた。
嵐が、渦巻いた。
「それで、終わり?つっ…」
身に着けていた衣服全てが端切れと化し、剥き出しになった乳房に吸い付かれた千雨が、
ぐっと押し付けられる歯の感触にうめき声を上げる。
「んっ、んんっ、んっ…」
千雨のうめき声も何も、とにかく、ネギは千雨の膨らみにむしゃぶりついていた。
「…ニセ、モノ…バカニシテ…」
チラッと一番大事な所に目を向けたネギの頭から、
隅っこの理性にちょっとはよぎっていた悪いかなと言うのが瞬時に吹っ飛んだ。
「んんっ!」
一番大事な所を乱暴に触れられ、千雨は悲鳴を上げそうになった。
ネギは、かちゃかちゃとズボンを下ろしていた。
あの日からずっとぶつけたくてたまらなかったものが形になった様だ、
元々器用で繊細なネギの指が、千雨のそこを蹂躙し、早々に行き先を探り当てる。
千雨の裸体を目の当たりにし、自分の身の下に押さえ付け、
さっきからズボンの中で激しくなる一方だった熱さと痛み、
僅かな知識と共にネギは突き動かされるままにそうしていた。

大の字に寝転がった千雨の両足の間に、ネギはぺたんと座っていた。
どろりとした液体が、幾筋もの赤いものを交えてあふれ出ている。
「あっ、あ、あ…」
ぱくぱくと口を動かすネギの前で、千雨は髪飾りとコンタクトを外す。
「あ、あ…んっ!」
千雨が、ネギに飛び付いて、唇を奪った。
「んっ、んんっ、んんんっ」
押し倒されたネギの、目の前には、長谷川千雨がいた。
「さー、この始末どう付けてくれるんですかね?天才エロ教師さんよ」
「あうっ」
「ふんっ、さっきまであんなビンビンにぶち破ってた癖に、正気に戻ったらあっつーまにこれかよ。
結局、一歩引いてるだけだろ。欲しがる事も求める事も抱く事も、みんな諦めて結局てめぇ一人だ。
そんな奴誰が信用するかよ。ここまでやっといて、逃がさないぞ、ネギ先生」
「はい」
ネギは、覚悟を決めたかの様に言う。
「そうだよこのごーかん魔。そうだな、あんたへの罰は…私を抱いてみろ」
「え?」
「そうだよ、例えてめぇの体は罰を受けても心のどこかじゃしんしんそーしつなんて思ってる、
そんな事させねぇよ。ネギ・スプリングフィールドが腹くくって責任もって、
その情けないモンで女一人、長谷川千雨をネギ・スプリングフィールドが抱いてみろよ、
それでネギ・スプリングフィールドがその後決めてみろよ」

「いいんですか?」
ネギが少しムッとした様な口調で言い、千雨もぐっとネギを見る。
カチンと二人の前歯がぶつかり合い、再びネギが千雨を押し倒した。
「柔らかくて…ぷるぷるしてる…べたべたしたるけど…」
「てめぇのツバだ、我慢しろ。ふんっ、よーやくこの長谷川千雨様の美乳をてめぇで味わう気んなったか」
「きれーです、千雨さんのおっぱい」
ネギは、ぽーっとした表情で千雨の可愛らしい乳首をちゅうちゅう吸い続ける。
「それで、こっちは…」
「んっ、いいか、女のここは敏感過ぎるんだよ、あんまし急に中心攻めまくっても痛いだけだ。だから…」
「ああ、周りから静かに触るんですね」
「あ、ああ…んん…んんっ…」
「あの…千雨さん…」
優しい手触りを続ける内に、ネギは、いつしか千雨の息づかいがやたらと荒くなっている事に気付く。
「ビビリの癖に才能はスーパーAクラスかよ…いいんだよ、ほらっ」
「あっ…」
「さっきてめぇが出したのじゃねーぞ、奥の方から私の体がぬるぬる出して、
気持ちよくなって来たらこーやって男を受け容れる準備すんだ」
「は、はい」
「そうだ、よ…いいっ!?いっ、あ…」
「千雨さん、さっきから、ここが気持ちよさそうだったから」
「あ、ああ、そうだ、ここが一番いいんだ、てめぇが器用なのよーく分かったから、
そろそろてめぇもいってみようか」
じゃないと指だけでマジ失神と言う語尾を呑み込み、千雨がうわずった声で言う。
「んっ、ん…」
「あの、大丈夫ですか、千雨さん?」
「ああ、さっき、ちょっと乱暴過ぎたからな…」
「ごめんなさい…」
「いいから、あっ…」
「あっ、僕、勝手に…千雨さんと繋がって千雨さんの中が、あっ、気持ち、い、あっ…」
「ふん、まるで女の子だな、キモイ声出しやがって、いや、いい感じだから気にすんな。
むしろそう言うのが好きな…てっ、あっ、おいガキあっ、ああっ…」
「あっ、千雨さん、千雨さん僕っ、僕また千雨さんっ」
「いい、いいっ、ガキ、ネギ、先生、ネギ先生いいっ、あっ、ああああっ…」

母なる世界樹の下で、一組の若い男女、と、言うかどちらとも余りに幼い男女が、
共に熱く息を荒げ、互いの体温を確かめ合っていた。
千雨が、きゅっとネギを抱き締める。
「僕が…千雨さんを…」
「ああ、確かに、受け取ったよネギ先生」
「はい…あの…」
「ん?」
「あの…お願い、していいですか?」
「なんだ?」
「いえ、やっぱりいいです」
「おい、何だよそれ気になるだろ、今更隠し事かよ?」
「いえ、でも、やっぱりこれは…」
「言ってみろ」
ズンと迫る千雨に、ネギは叶わなかった。
ごにょごにょと口を動かすネギの前で、千雨は髪の毛を鈴の髪飾りでツインテールに束ね、カラコンを入れた。
「…うっ、う、うっ…うわあぁああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーんんんっっっ!!
アスナさあぁーーーーーーーーーんんんんっっっっっ!!!」
胸に顔を埋め号泣するネギの髪を撫で続ける千雨の頬に、一筋熱いものが伝い落ちていた。

「よう、色男」
白々とし始めた空の下、女子寮へと街を歩くネギが足を止めた。
「コタロー君…ちょっと稽古、いや、決闘、してくれるかな?」
目を見開いた小太郎が、ニッと犬歯を見せた。
「おおっし!ヘロヘロの腑抜け野郎毎日ドツキ倒すのもいい加減イジメじみて嫌気差してたトコや。
女の匂いぷんぷんさせてる奴に一片も負ける気せぇへんわ」
「学園祭で、コタロー君が夕映さんに言われた事の意味、教えてあげるよ」

再び平穏な一日が始まり、平穏な授業が始まり、平穏に下校して平穏な一日が終わる。
「よう」
フードを被ったローブ姿で進むネギに、朝靄に隠れながら建物に背中を預けた小太郎が声を掛ける。
「行くんだろ、てめぇのお姫様取り返しに」
「わっくわくするなぁ、こりゃ腕の奮い放題実戦経験の積み放題、武者震いやで勘違いするなや」
「コタロー君、千雨さん」
「ネギくーん」
「このかさんに、刹那さんっ」
「うち、うちな、アスナの思い大事にしよう思うて、
アスナが守ってくれた、だから自分の事を大切に、そう思ってた…
…でも、やっぱりあかんかったみたい。守られてばかりなんて、やっぱり嫌やわ」
にこっと泣き笑いする木乃香の隣で刹那が頷く。

「で、ござるな」
「アルヨー」
「パパラッチの目はごまかせないよネギ君♪」
「そーゆー事」
「ハルナさんのどかさん夕映さんっ!」
「いきなしゲームオーバーでした終わってました仲間一人減ってましたじゃ納得いかないでしょやっぱ。
それにさ、この娘たちにさ、いない人間、幻と闘えって、しかもそれが命の恩人。
そんな辛い恋はさせられない訳よ。やっぱり自分らできっちりケリ付けないと」
「そ、キッチリ決着付けないとね」
「ってゆーなさんまき絵さん亜子さんアキラさんっ!?」
「夏美姉ちゃんっ!?」
「いやー、これ才能って言うのか血筋なのかさ、なーんか変な記憶がチラチラしてたんだよねー。
で、しまいに、カグラザカアスナって誰ってお父さん小一時間問い詰めた訳。
ま、みんなも似たり寄ったりだったみたいだけどね。
ばっちり、思い出して来たよ。ハッキリ言ってかなりの部分私らのわがままのせいだった訳だし、
それより何より、アスナ一人にいいカッコさせられない、そんなので私たち、
アスナ一人でそんな事されて、それで終わったり出来ない私たち」
「ネギ先生」
「いいんちょさんもっ!?」
「ええ」
ネギに向けられたその眼差しは、真剣そのものだった。
「事情は伺いました」
「あー、ごめんネギ君、関節系で小一時間ぐらい責められてさ」
裕奈が後頭部を掻いて言う。
「しっかりと思い出させていただきました。
ネギ先生、今回も、3‐Aの、アスナさんの事で今回も置いてけぼりと言うのは、
この雪広あやか、もう、委員長の名が何と言おうが、もう、雪広あやかがもう許せない…」
「駄目ですっ!」
ネギは絶叫していた。
「あれから、彼らの一味の騒動で魔法世界自体が大混乱、国交断絶完全渡航禁止命令、
それを破って今ゲートを抜けたりしたら、今度こそ捏造抜きでよくて動物普通に死刑のお尋ね者。
そんな事、そんな事僕の生徒にさせる訳にはいかない。
アスナさんは僕が、僕が必ず…」
千雨が、ガコンとネギに拳を振り下ろす。
「そんなうまく行く訳ねぇだろ、てめぇ、刺し違えてでも、なんだろ?
そしたら今のてめぇとおんなじ思い、今度は神楽坂にもみんなにもさせるつもりか、あ?」
「むーっ…」
一斉に突き刺さる視線に、ネギがたじっとなる。
「相変わらずやかましい事だ」
「マスター」
エヴァの隣で茶々丸がぺこりと給仕の礼をする。

「名誉顧問」
「ん?な、なんだ?」
ネギからの意外な呼びかけに、エヴァが一瞬たじろぐ。
「名誉顧問、いいんちょさんと、それからゆーなさん達、お願いできますか?」
「おい、次のゲートまでに間に合わせるとなると、致死率99%の修行になるぞ」
「100パーじゃないんだよね?このまんま付いて行ったらまた、迷惑になるだけ今度は100パー死ぬ」
裕奈がずいと迫り、エヴァが不敵な笑みを浮かべる。
「付いて来い、仮契約は後でいいだろ」
エヴァがぞろぞろと新規メンバーを連行していく。
「さあて、ネギ先生、ネギ王子のお姫様、迎えに行くか。
今度こそ一人前の男としてな」
「あ、あの、千雨さん、その事…」
不敵に笑う千雨の前で、ネギが両手の人差し指をちょんちょん触れさせながら口ごもる。
「ああ、今回の神楽坂の事は、私からもこってり、いや、一発ぶん殴らないと気が済まないからな。
要はそれからだ、貸し借り無しんなったら誰がお姫様か、キッチリ決めさせてもらう。
それまではお預け、イーブン、そーゆーこった、な」
「はい」
「ほらほら、そこ何してんね、今まで腐ってたその性根、次のゲートまでキッチリたたき直したるさかいな」
「こないだ僕に負けたばっかりでまだそんな事言ってるー」
「アホッ、誰が負けた言うんや?」
「だって絶対有効打十発以上多かったでしょ」
「あれは」…
「また油断?」
「おーし、ケリ付けたるわっ!」
「いいよっ!」
「朝っぱらから町中で軍事演習始める気かてめぇらあっ!!」
叫んだ後、肩で息しながら千雨が木乃香、刹那を見る。
くすっと笑った二人を見て、千雨もばつ悪そうに肩をすくめ笑みを浮かべる。
そちらをチラッと見て、ネギが天を仰いだ。
“…薄っぺらなんかじゃない…絶対に取り返して、取り消させる。
だから、待ってて下さい、またみんなと一緒に、アスナさん…”
バシーンと背中に激痛が走り、ネギが小太郎を追い掛けるのを
千雨も、他のメンバーも嘆息しながら苦笑して眺めていた。
これから長い、辛い戦いが始まる、その前の一時。
だが、このみんなと一緒なら、きっと大丈夫。そう信じて。

-了-

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最終更新:2012年01月28日 17:36
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