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火星人「なあ、1つ忘れていないか?」
俺「なんだっけ?最近物忘れが激しいんだ。昨日の夕飯さえ思い出せないんだ。」
火星人「じゃあヒントをやろう。 ヒント1:最初であったときの約束」
俺「・・・?」
火星人「ヒント2:外出」
俺「何を言っているのかわからないな・・・本当に」
火星人「・・・最近の日本人はボケが流行しているのか?」
俺「全世界に言えることだと思うな。」
火星人「そうか。お前のわたしに対する態度がよく理解できた。今日はもう寝る。」
俺「ちょ、おま・・・行っちゃったか。」
俺「それにしても・・・約束なんてしたっけ?」

翌日。
俺「むう・・・やはり夏といえど布団は気持ちいいな・・・」
俺「なんか抱いてる気がする・・・昨日は抱き枕はもちこまなかったんだけど・・・?」
火星人「起きたか、このケダモノめ」
俺「なっ!お前か!」
火星人「何だ?わたしが寝ぼけてお前の布団にもぐりこんだ、というベターな展開を想像しているのか?」
俺「それしかないだろ」
火星人「なら、わたしが全てを教えよう。お前は、押入れで眠っていたわたしを無理やり連れ出し、
    強姦したのだ。」
俺「な、なななな・・・」
火星人「いくら火星人といえども、これほどの侮辱は無い。どう責任をとってくれるのだ?」
俺「ま、待て。証拠がないぞ!それにお前、生殖器ないだろ!」
火星人「なら・・・確認するか・・・?」
俺「喜んで」

俺は、その時ほど敗北感と幸せにつつまれた経験をしたことがなかった。確かに、シオンの花園は存在していたし、
そこから白濁し、穢れきった液体が汚染していたのも事実だった。・・・まあ童貞も捨てれたからプラスマイナスゼロ
といったところだろう。

人間は本当に単純だ。光の屈折率をいじって幻覚を見せられていたことに気づかないのだから。byシオン

火星人「と、いうわけで責任を取ってもらおう。」
俺「責任?何をすればいいんだ?」
火星人「わたしとの約束を果たしてもらう。」
俺「ああ、昨日のか・・・。
  ・・・まさかと思うんだが、地球観光の話か?」
火星人「そのまさか、だ。ようやく思い出してくれたか。」
俺「で、俺に案内しろと?」
火星人「そうだ。よくわかってるな。」
俺「そりゃどうも・・・」

俺「さて、手始めに原爆ドームにでも行こうぜ」
火星人「なんだ、それは?」
俺「原爆ドームは原爆ドームなんだよ!現地についたら説明してやるよ」
火星人「まて、そこは遠いのか?」
俺「うーん、バスで1時間ちょっと、てところか。」
火星人「そうか。それならあれを使ったほうが早く着きそうだ。」
俺「早く・・・?ワープでもするのか?」
火星人「いや、ワープなんて火星人単体ができる芸当ではない。それなりの機器が必要なんだ。
    今回使うのは、乗り物だ。」
俺「火星の乗り物か・・・。こんなことを体験できるのは地球で俺ぐらいかもな」
火星人「わたしと会うという体験でもお前一人だ。
            ・・コード入力、#189¥ZF(AB+168)*18@1995」
ドドドドドドド
俺「地震!?」
火星人「心配するな、すぐおさまる」
俺「お、おさまってきたな・・・。・・・・・・乗り物ってこれなのか?」
火星人「ああ、知ってる人間は知っているだろう。地球名称“トライポッド”だ。」

俺「おおお、俺知ってるぞ!某映画の火星人が地球を侵略するときに使ってた兵器じゃないか」
火星人「まあ、凡用戦闘兵器なんだけどな。しかし地球がわれわれ火星人をあそこまで監視していたとはな。
    兵器の情報まで筒抜けだ。」
俺「つーか、トライポッドって地球でいう自動車みたいに、火星ではポピュラーなんだな」
火星人「いや、これは地球で言うと軍事用貨物飛行機あたりだな。」
俺「は、軍事・・・?」
火星人「ほら、いいから乗るぞ」
俺「いざとなったら怖いもんだな・・・」

俺「って、うおおおい!これに乗って行くのか!?」
火星人「あたりまえだ。さっきもそう言ったろう。」
俺「じゃなくて、こんなのが街中歩いてたら自衛隊に攻撃されるぞ。」
火星人「そうなのか。でもあの空に白い雲を引いてるのはなんだ?」
俺「空・・・?まさか、戦闘機?ばれた!?」
火星人「大丈夫だ。フィジカルキャンセラーでダメージを負うことはない。
    それにしても、わたし達が目当てではなさそうだ。」
俺「うー・・・俺の目ではもう見えないな」
火星人「お迎え・・・か。」

火星人「おい、早くトライポッドに乗り込むぞ。」
俺「え?マジっすか?」
火星人「死にたくないのなら、乗るといいぞ」
俺「・・・?」
結局俺はいびつな形をするその兵器に乗り込むことになった。乗り込んですぐに、ドゴーン、と大きな
破裂音がトライポッドの操縦室までを揺るがした。窓に顔をべったりとくっつけ、俺は破裂音がした方を見た。
俺「煙・・・?」
火星人「先手を打ったか。おい、システムを起動させる。それまでこの目隠しを嵌めててくれないか」
俺「いいけど・・・なんでさ?」
火星人「人間状態だと火星人特有のパルスが脳から生じなくなる。だから一時的に火星人に戻るだけだ。」
俺「つまり恥ずかしいんだろ」
火星人「・・・」

俺「お、動き出したのか?」
俺が目隠しを嵌め、数秒経った後にトライポッドがゆっくりと横に揺れだした。内部にあるスピーカーのようなものから
明らかに地球の中のどの言葉にも当てはまらない言葉が発せられ、シオンもそれに対応しているようだった。
そのやりとりがしばらく続いた後、スピーカーがブツリ、と会話の終了を告げる。
火星人「ミサイルが来るぞ、衝撃に気をつけろ」
俺「え?うおおおおっ!?」
火星人「奴らめ、アトミックを使ったのか。もうトライポッドじゃ勝ち目は無さそうだ。」
俺「な、シオン何を――」
火星人「緊急脱出プログラム作動。」
シオンが小さな声でそうつぶやくと、内部でビーッビーッ、と警告音が鳴り響いた。気がついたときには俺たちはトライポッド
の足元にいた。

俺「あ、目隠しが取れてる」
火星人「トライポッド、操作タイプを遠隔操作に変更。フィジカルキャンセラー最大出力で展開。
    ・・・耳を押さえろ」
俺「あ――」
無我夢中で俺が耳を押さえるのと同時に、西の空から巨大な円柱っぽいのが飛んできて、トライポッドの目の前で壁に
ぶつかるかのように止まった。そして炸裂。
火星人「大丈夫か!?」
俺「あ・・・うん」
俺が両手を耳から離し、顔を上げるとシオンが初めて感情をむき出しにし、俺につっかかってきた。しかしシオンは、次に
とんでもないことを言い出した。
火星人「まず、最初の破裂音は自衛隊の戦闘機のものだろう。」
火星人「そして、今のミサイル攻撃も、戦闘機をやった奴らだ。」
火星人「そいつらは―――火星人だ」

俺「火星人って・・・」
火星人「口で物を伝えるのはもう少し時間が必要なんだ。だから、もっとも速い方法でやるぞ。
    ・・・目をつぶれ」
俺「は、はい!」
火星人「ちょっと苦しいかもしれないが、我慢をしろよ」
俺は目をつぶり、心の臓をバクバクいわせながら、シオンの行為を待った。
5,6秒ぐらいすると、シオンらしき生暖かい息が俺の眉間にふわりと当たる。ああ、生きる星は違っても呼吸は全宇宙共通
なのだ。
ブスッ
俺「うァーッ!」
火星人「我慢しろ!オスだろう!?」
俺「おおおお俺の額に針がぁーっ!」
火星人「これはわたしの情報をお前の脳に直接伝達する擬似神経だ。もう少しで抜くぞ」
俺「・・・!」

脳に俺じゃない誰かの意識が流れ込んでくる。シオンだ。ぶっとい擬似神経を通って、大量の情報が流れ込む。
火星人「情報移入完了。通信感度良好。」
火星人「まず、突然攻撃を仕掛けてきた火星人について説明をする。彼らは火星軍の者たちで、わたしを連れ帰りに
    やってきたようだ。さっき、トライポッドの中でわたしと彼らの通信が聞こえたろう?」
ああ・・・あのなぞの言葉での会話のことなのか・・・?
火星人「内容を要約すると、“帰って来い。実力行使も許されている”という感じだ。わたしはそれにNOと答えた。
    だからさきほど、トライポッドにミサイルが発射された。」
火星人「わたしが何者なのか?それは前にもいったように火星人だ。それ以上を伝える必要は無い。」
火星人「このままだと火星軍はわたしを連れ戻すついでに、地球に大規模爆撃を仕掛けるだろう。
    地球に被害を与えないためにはわたしが自ら火星に戻るのがいいのだが、他の星の者たちを助けるつもりも
    ない。」
火星人「しかし、お前だけはわたしが守る。火星人として。・・・お前の同居人、シオンとして」

俺「・・・」
火星人「情報送信終了。回線を切断する。」
俺「なあ、シオン・・・」
火星人「安心しろ、通信は10秒程度だったぞ」
俺「おい、本当に火星人と戦うのか?」
火星人「そうだ。情報が行き届かなかったのか?」
俺「そういうわけじゃ・・・」
火星人「だったらわたしと間を取れ。身体が吹き飛ぶぞ。」

火星人「これから思念武装で突撃する。心配はいらない。わたしは冥府の魔王とよばれた“兵器”だ。負けはしない。」
俺「・・・」
火星人「最後に謝罪を聞いてくれ」
火星人「お前がわたしを強姦した、というのは嘘だ。」
シオンがはっきりとそういった瞬間、砂が舞い上がり、道路の上にシオンの姿はなかった。空を見上げると細長い
ごつごつしていて、身体にいくつもの砲身を備えたモノ、いやシオンが天空を目指し、ただただ飛んでいった。

シオンはしばらく飛ぶと、上昇をやめ、身体を東の空へ向ける。東の空にはおびただしい数の飛行物体。おそらく火星の
兵器だろう。あの数でもシオンじゃ敵わないのでは、と思った瞬間だった。
シオンの砲塔一つ一つに力が凝縮されたような光球が出現した。シューティングゲームによくありそうな「チャージ」と
いった感じだろうか。俺とシオンの距離が十分に開いていても、光球の威圧感を感じる頃、シオンがそれらを一斉に放った。
シオンの光が東の空を一瞬にして包んだ。すると火星の兵器たちは爆発することも無く蒸発していった。じきに、光が全世界を
包み込み、やがて俺も気絶した。


俺「・・・ここは、俺の部屋?」

火星人「目を覚ましたのか?」
俺「・・・え?」
火星人「言っただろう。わたしは負けないと。」
俺「ああ、あー・・・」
火星人「ただ、力を使いすぎたようだ。もう、人間の姿を保っては・・・」
俺「おいっ!ち、じゃないシオン!」
倒れたシオンは、まるで金メッキがはがれるように、もとの火星人の姿に戻っていった。

火星人「・・・。」
俺「起きたな。」
火星人「・・・。」
俺「疲れて声もでないんだな。無理しなくていいぞ」

火星人「わたしは・・・人間の状態では・・ないのか」
俺「ああ。でもシオンはシオンだろ。」
火星人「くさい台詞だな・・・お前が使うような言葉じゃないぞ」
俺「はいはい、けが人は安静にしてろってこった」
火星人「・・・そうだな」

シオンが火星の大艦隊を一瞬で消滅させた翌日。
火星人「おい、起きろ。何時だと思ってる!?」
俺「ちょ、おまえまだ安静にしてろって!」
火星人「わたしはもう全快した。人間にも化けれるまでにな」
俺「そうか。火星人は体力絶倫なことで」
火星人「わかったらさっさと起きろっ!
    あああ朝飯も用意したんだぞ!」
俺「マジですか!?エビ三昧とか?」
火星人「よくわかったな。褒美として生エビを与えてやってもいいが。」
俺「俺は生エビは食えないの!あ、おい。そんなに急ぐなよ!」
俺は弾む心を胸に、布団を飛び出した。食卓にはお世辞にも上手とはいえない料理が几帳面に並べられていた。
さっさと食べろ、とせかすシオン。俺は箸を持ち、火の通って無さそうなエビのソテーを口にした。
「おいしい。」
ただ、単純にそう思った。
食後、シオンは原爆ドームに行こう、といいだした。俺も了承し、準備を整えた後に家を出た。あたりにはなんら変化
のない、いつもの風景が在った。

                               [ fin ]

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最終更新:2006年08月28日 01:04