ハジケなくちゃやり切れない ◆DGGi/wycYo
浮かぶ想いの情景には 君がいるんだよ 笑ってるんだよ
許したくないの? 求めていないの? それでもまだ――
✻ ✻ ✻
黒いスクーターに乗った少女と、白い巨大犬に乗った少女。
同じ道路沿いに移動している2人が鉢合わせするのに、さほど時間は掛からなかった。
「定春ストップ!」
前方のライトと影を見て、紗路は乗っていた定春を一旦停止させようとする。
だが定春は先ほどのことがあってか言うことを聞かず、徐々にライトとの距離は縮まって来る。
このままではぶつかる――! そう判断した彼女は思わず、定春をカードの中に押し込めてしまった。
尻餅を付いた紗路の目の前で、黒いスクーターが停止する。
「だ、大丈夫ですか?」
心配してくれたのか、スクーターに乗っていた少女、小湊るう子が手を差し伸べてくる。
幸いどこかを痛めたなんてことはなかったようで、手を掴んで立ち上がる。
互いに最低限の警戒はしつつも、敵意がないと分かり軽く自己紹介、情報交換を済ませた。
元いた世界での経緯、この殺し合いの場に来てからの出会い、別れ――
「そうだったの……小湊ちゃん、大変な目に」
「るう子でいいですよ。それで、花代さ……遊月に会ったというのは……」
遊月。その名前を反芻するたびに、先刻の出来事を思い出す。
「遊月ちゃんは……何だか様子が変だった。
変だったというか、私の願い……と言っていいのか分からないんだけど、それを聞いたらいきなり私に突っ掛かってきた。
そんな願いならやめてしまえって、今考えると何だか物凄く焦ってるように思えた」
それを聞いて、るう子は何か考えるように黙り込んでしまった。
まさか。
今の小湊るう子の知る『紅林遊月』は願いの代償を知っている筈。
セレクターバトルでは願いを叶えるのはルリグであり、彼女自身がその願いを叶えることは出来ないと理解している筈なのに。
バトルの方法が殺し合いに変わったことで、再び願いを叶えようと躍起になっている?
そもそも今、『紅林遊月』として生きているのは――
「違う……時間……」
やっぱり変だ。
今の紅林遊月――“花代さん”は、そんなことをするような人柄だとは思えない。
つまり。
「桐間さんが見たのって、過去の……?」
時間軸のズレ。何のためかは分からないが、それしか辻褄が合わない。
でも、本当にそうだったとしてもどうすればいいのだろう。
今まで通りだったら説得して彼女を止められたのだろうが、そうは行かない。
殺し合いの場ともなると、下手に刺激したらこちらの命が危険に晒される可能性だってある。
「るう子ちゃん?」
紗路の呼び掛ける声にも耳を貸さず、考える。
彼女の進行方向や話から考えるに、遊月の向かった先は……?
「ちょっと、るう子ちゃんってば!」
「……ん、あ、すいません」
駄目だ、これ以上は考えが纏まらない。心なしか頭がぼーっとする。
「顔が赤いわよ……? ちょっと熱あるんじゃないかしら」
額に手を当ててみる。確かに熱っぽい。
「あはは……色々ありすぎた所為か、風邪ひいちゃいましたかね……」
「どうしようかしら……どこか休める場所があればいいんだけど」
紗路も困り果てたようで、地図と睨めっこをしている。
このままるう子を放ってはおけないし、紗路にとっても今後の行き先を決めることは非常に重要な課題だった。
千夜を探さなければいけないのは当然だが、市街地、というよりラビットハウスにはまだ近づきたくない。
一番近いのは神社だが、るう子の言っていた車椅子の少女や不吉な気配がまだ近辺をうろついている可能性もある。
旭丘分校という場所に向かうなり、温泉で体を温めるなりといった手もあるが……。
何より移動手段をどうするか。
るう子は御覧の有様だし、定春はさっきの出来事で機嫌を損ねた可能性がある。
少なくとも今はカードから出そうという気は起こらない。
徒歩ではやはりるう子の具合が心配である。
残りは必然的に彼女の乗ってきたスクーターに2人乗りということになる。
「桐間さんって、運転出来るんですか?」
とりあえずるう子を後部に座らせて、私はハンドルを握る。
こうなったらヤケっぱちだ。一か八かやるしかない。
「別に私もシャロって呼んでもらって構わないわ。
あと、しっかり捕まっててよ。私これからどうなるか分からないから!」
「……え?」
困惑するるう子の目の前で、紗路は青いカードを取り出した。
そして、缶コーヒーをぐいっと、一気に飲み干した。
✻ ✻ ✻
「さぁ~、飛ばして行くわよ~! イェ~イ♪」
「しゃ、シャロさん?」
桐間紗路は、カフェインを摂取するとハイテンションになる特異体質の持ち主である。
しかも困ったことに、本人はその間何が起こっていたかの記憶が一切ない。
彼女はそのまま勢いに任せ、スクーターを急発進させた。
「シャロさん、本当に行き当たりばったりで大丈夫なんですか!? というか逆方向……まあいいや」
「大丈夫大丈夫~! 風が気持ちいい~♪」
こうなってしまうとカフェインが切れるまで止まらないのだなと悟り、るう子も深く追及するのは止めた。
2人を乗せたスクーターは、市街地から離れる形で走り去る。
どこに行き着くかはるう子にも、まして紗路自身にも分からない。
全てはカフェインに委ねられることとなったのだ。
【E-4/道路上/黎明】
【桐間紗路@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康、カフェインによるハイテンション、スクーター運転中
[服装]:普段着
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(8/10)、青カード(9/10)
黒カード:不明支給品0~2 (確認済み)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない。みんなと合流して、謝る
1:風が気持ちいい~♪
[備考]
※参戦時期は7話、リゼたちに自宅から出てくるところを見られた時点です。
※小湊るう子と情報交換をしました。
※カフェインは1、2時間程度で切れると思われます。
【小湊るう子@selector infected WIXOSS】
[状態]:微熱、スクーター乗車中
[服装]:中学校の制服、チタン鉱製の腹巻
[装備]:黒のヘルメット着用
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(9/10)
黒カード:黒のスクーター@現実、チタン鉱製の腹巻@キルラキル
不明支給品0~1枚、宮永咲の不明支給品0~2枚 (すべて確認済)
宮永咲の魂カード
[思考・行動]
基本方針: 誰かを犠牲にして願いを叶えたくない。繭の思惑が知りたい。
1: 遊月、浦添伊緒奈(ウリス?)、晶さんのことが気がかり。
2: 魂のカードを見つけたら回収する。出来れば解放もしたい。
3: シャロさん……?
[備考]
※参戦時期は二期の8話から10話にかけての間です。
※桐間紗路と情報交換をしました。遊月が過去から呼ばれたのではと疑いを持ちました。
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最終更新:2015年08月31日 22:31