思い出以上になりたくて ◆KKELIaaFJU
人との出会いは一期一会。
時期や出会い方が違うだけで……最高にいい出会いもあれば。
どんな相性のいい相手同士でも――最悪の破滅に導いてしまうこともある。
だからこそ、彼女は人と人との出会いを大切にしていた。
――――『ここ』に連れて来られるまでは。
◆ ◆ ◆
あれから、しばらく歩いた。
『あの場から逃げた自分は間違っていない』
そう何度も心の中でいい聴かせながら歩く。
自分の行為の正当性を肯定するかのように。
(近くには人は……いないようやね……)
地図の示す通りであれば間違いはないはずである。
希は大きく溜息を吐き、辺りを見渡す。
……人の気配は感じられない。
(中に誰かおるんかな……)
左手で研究所の扉を開ける。
ゆっくりと……出来る限り気配を消して、音を立てずに。
左手に縛斬・餓虎を持ち、いつでも護身は出来るように準備はする。
(……ッ!?)
最初の部屋で希が見たのは破壊された痕跡。
思わず、目を瞑りたくなるような光景。
しかし、希は決して目を逸らしたりはしない。
あの化け物たちならばこれくらいの惨状を作り出すくらいはできそうだ。
あの守護霊? 幽霊?のようなもので戦っていたポルナレフ。
そのポルナレフの仲間らしき学ランの男――承太郎。
その二人相手を手玉に取っていた名前がわからない眼帯の少女。
そんな奴らの戦いを目の当たりにしたら、そんな考えに至ってしまった。
(……そんな人らには学校に近づいて欲しくないわ……)
国立音ノ木坂学院。
最初から決めていた絶対に行かないと決めていた場所。
希は3年間その学校に通っていた。
一度の転校もせずに、同じ学校に通い続けた。
そこが自分の『場所』と初めて思える所だった。
その『場所』で出会えた『奇跡』。
この殺し合いでその『場所』も『奇跡』を奪われた。
「ホンマ……勘弁してほしいわ……」
思わず、声に出てしまった。
溜息を吐いて、希は思もう。
あの少女―――繭と言ったか。
あの化け物どもばかり集まるここにただの少女達を呼んで彼女は何がしたいのか?
狩られるための小動物(ターゲット)として呼ばれたのか?
必死に生きるために戦って死ねとでも言いたいのか?
だが今、そんなことを自分が考えても埒が明かない。
ただ、あの繭という少女が非常にスピリチュアルな雰囲気を醸し出していたのはよく覚えている。
(……絵里ち、穂乃果ちゃん……ウチは『穢れた奇跡』にもう縋るしかないんよ……)
この汚れてしまった手ではどんなに綺麗な『奇跡』を掴んでも汚れてしまう。
ましてやこんな殺し合いで叶うような『奇跡』だ。
だが……今はそれでも構わない。
一人で研究所の奥をどんどん歩いていく。
非常に静かな自分の足音だけが反響しているのだけがわかる。
人の気配どころか、奥はまだ綺麗な状態であった。
そして、未だにここが何を研究している研究所なのかもわからない。
(…………どういうことやねん)
思わず声に出してツッコミたくなった。
そう考えた時、ふと時間が気になった。
放送の時間が近づいて、もうそろそろのはずだ。
希は一先ず、近くの部屋に入った。
その部屋にあったのはテーブルと椅子と一台のコンピューターだけであった。
(このコンピューター使えるんかな……?)
腰を掛ける前にコンピューター周りを調べてみる。
コンセントは差さっている。
しかし、ディスプレイは真っ黒で自分の貌しか映さない。
電源のスイッチらしきものを押してみるが、壊れているのか全く反応しない。
「………ほんまわけわからんわ……」
ここに着いて何度目かの溜息が零れそうだった時であった。
『――正午。こんにちは、とでも言えばいいかしら。二回目の定時放送の時間よ』
――二回目の放送が始まってしまった。
「…………」
まずは禁止エリアが発表された。
この研究所の隣のエリアが指定されていた。
ここが禁止エリアでない、今はそれだけで十分だった。
『それじゃあ、きっと一番欲しがっているお話、ここまでに死んじゃったみんなの名前を言うわよ』
希は大きく息を呑む。
(絵里ちと穂乃果ちゃんは大丈夫やろうか……)
会いたくない二人の顔が過る。
それと同時に別のことを思ってしまった。
(……出来ればあの眼帯の女の子が神父さんや承太郎と呼ばれた人を殺してくれてるとええんやけどね……)
初めて人の不幸を願ってしまった。
自分の胸の中で罪悪感に似たようなドス黒い感情が沸き上がっている。
固唾を呑み、繭の声に耳を立てる。
知らない名前。
知らない名前。
知らない名前。
知らない名前。
知らない名前。
知らない名前。
「……………え?」
……………。
……………。
……ことりの仇で自分の右手をこんなにした男。
……自分が見殺しにした男。
……………。
……………。
その名前で死者の発表は終わった。
もうその声を聴きたくなかった。
太陽が沈んだ。
太陽が無ければ星や月はもう輝くことはできない。
虚ろな目には黒いディスプレイに反射したただただ弱く惨めな自分の顔だけが映る。
自身の頬に涙が伝っていくのが、はっきりとわかった。
「…………穂乃果ちゃん…………」
μ'sのリーダー。
自分の大切な友達。
いつもひたすら真っすぐで皆を引っ張っていた。
彼女には言葉に出来ないほどの感謝している。
あの伸ばした手には皆が救われた。
絵里もにこもことりも……。
ここにはいない、海未も花陽も凜も真姫も……。
自分だって。
――――彼女の大切なものはこの理不尽な場所でまた奪われてしまった。
零れ落ちる涙が止まらない。
溢れ出る感情を抑えきれない。
色々な感情がぐちゃぐちゃに混じり合って自分でも分からない。
放送が終わって数分経ってもその場を動けなかった。
ただただその場から動きたくも何もしたくなかった。
「絵里ち……ウチはどうしたらええんや………」
親友の名前が自然と出てしまった。
会いたくないはずなのに今は無性に会いたい。
会って何をしたいのか? 何を話したいのか?
それは自分でもわからない。
―――今は力が欲しかった。
―――彼女は自分たちの夢を守る力が欲しかった。
【D-4/研究所内/日中】
【
東條希@ラブライブ!】
[状態]:精神的疲労(大)、右手首から先を粉砕骨折(応急処置済み)
[服装]:音ノ木坂学院の制服
[装備]:縛斬・餓虎@キルラキル
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(8/10)、ヴィマーナ@Fate/Zero(4時間使用不能)
基本方針:μ's全員を生き返らせるために優勝狙い。
0:??????
1:集団に紛れ込み、隙あらば相手を殺害する。
2:にこと穂乃果を殺した相手に復讐したい。
3:絵里ちには会いたくない……?
[備考]
※参戦時期は1期終了後。2期開始前。
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最終更新:2016年03月20日 06:37