みたいなことを言ってみようと思ったものの、そんなに大声で叫んでいたら誰かに見つかって殺されかねない。
なので、あくまでも心の中で叫んだ気分になる。
一種の自己満足である。
冗談はさておき、早く家に帰りたいと心の底から思う。
このままだと野宿が確定してしまう。
これでも健全な学生として過ごしてきたつもりだが、それ故にそんなサバイバルスキルは持ち合わせていない。
「まいったね、こりゃ。世界が平和でありますように」
自分の心を落ち着かせるべく、好きなゲームの主人公の口癖であり、呪文をつぶやいてみる。
不思議なことに意外と気分が楽になる。
病は気からとはよく言ったものだと感心する。
心を落ち着かせたところで、ふと支給品の確認をしてみようと判断する。
余裕がかけらでもない時ほどそんな当たり前なことが眼中になかったりもする。
「まずは名簿から……っと、俺の知り合いは疾風さんと炎さん……。それに荒らし軍団か……」
信用できる人物は2人。
それ以外は迷惑なことに頭に蛆虫が湧いているような連中である。
だが、KENはどうにかやり過ごせるような気がした。
reionikusuと将軍に至ってはちょっと力を入れて物理で殴ればいい。
問題は津軽兄である。
話で聞いたことしかないが、どうやら夜な夜な包丁片手に絶叫を上げるような狂人らしい。
そんな人物と対峙することになったら俺はビビる、そしてちびる。
話だけによる津軽兄のイメージははち切れんばかりの筋肉を持った通称ムキムキマンとでも呼ぶべき人物である。
体力にはそこそこの自信があるし、遭遇した場合は全力で逃げようと密かに心に決めた。
草陰に隠れて長々と狼狽していると、そこに何者かが声をかけてきた。
「あの……さっきから何をやってるんですか?」
それは少女の声であった。
思わぬ声に思わず心臓が飛び出しそうになりながらも冷静を装い声を出す。
「イメージしろ!」
よりにもよって出てきた言葉がそれだった。
テンパると脈絡のない言葉が出てしまうのは仕方ないことだと思い、いろいろなものを諦めた。
「えっと……大丈夫ですか?」
「うん……なんかもういろいろとダメかもしれない」
始めが肝心という言葉があるが、既にファーストコンタクトの印象が最悪になっている自信があった。
向こうもどう言葉をかけるべきか戸惑っている様子を見せる。
「……私、今友達を探してるんですが今までこの場で誰かと会いましたか?」
自虐ネタとはいえ、スルーしてもらえたのは不幸中の幸いである。
さすがに少しでも印象を改善しておかないと後々辛いと豆腐の精神が叫ぶ。
「いや、ここに召喚?されて最初にあったのが君だけだね」
「そう……ですか」
少女は少し残念そうな声を出す。
このまま印象最悪のままというのもなんなので、一つ提案をしてみる。
「俺も一緒に探すよ。こんな危険な場所で一人でウロウロするのは危険だしさ」
「え?いいんですか?」
「さすがに女の子を一人にするのは良心が痛むし、俺の知り合いはたぶん大丈夫だと思うから」
少女は頭を下げる。
まじめな子だなと感心する気持ちと同じく、まじめすぎていつか誰かの嘘に騙されたりするんじゃないかと心配になる。
でもこの子くらいのいい子ならきっと優しい友達がいっぱいいるだろうし、その友達が何度でも助けてくれるんだろうなとイメージする。
「私、
鹿目まどかって言います。知り合いは美樹さやか、
暁美ほむら、
巴マミの3人です」
「俺は羽田シンク。知り合いは
切札疾風と
藤宮炎の二人だけ」
そして、言うべきか少し考えたものの、危険人物のことも伝えた。
びぶりお将軍はホモだが、女を根絶やしにしようとしてくる可能性もある。
警戒するに越したことはないだろう。
二人が歩き出してしばらく経った。
一向に人と遭遇しないのは運がいいからなのだろうか。
だが、それだと鹿目まどかの友人を見つけることはできないという二律背反状態である。
「そこの二人、止まれ!」
男の声だ。
語調の強さから考えて軍人に近いものだと考える。
揃って恐る恐る振り返ると白い衣装を着た男が立っていた。
その手には拳銃が握られている。
本物かどうかはこの際どうでもいいとしても、やはり銃というのは相手を威嚇するには十分すぎるものだと再認識する。
「君たちは殺し合いに乗っているのか?」
「乗ってない……」
「乗って……ません……」
「本当に……?」
「本当……です……」
しばらく沈黙が町を包む。
すると先程まで怖い顔をしていた男は表情を崩し、銃を下す。
「驚かせて悪かったね。僕はブリタニア軍のナイトオブラウンズ、
枢木スザクだ」
「……俺はグレタガルド軍のフラグファイター、羽田シンクだ」
キリッという擬音が似合いそうな口調でスザクの自己紹介に対抗してみる。
衣装とかその他もろもろがそれっぽいとはいえ、ブリタニア軍なんて聞いたことがない。
妄想には妄想で対抗するのが見栄っ張りの男の子の性というものだ。
「えーと……私は鹿目まどか、普通の中学生です……」
まどかは一人この場に不似合な自己紹介を申し訳なさそうにする。
心の中で、それが普通の挨拶だよとフォローを入れてみる。
「フラグファイター?聞いたことのない名前だけど、君はいったい……」
「あ、いやそこは気にしないでくれたら……」
まさか同じ穴のムジナにネタにマジレスされるなんて思っていなかった。
彼は軍人ごっこをしているらしく、俺たちの保護を申し出てきた。
しばらくはそれに付き合ってみるのもいいだろう。
3本の矢というものが本当なのだとすれば当分の間は無事に過ごせると信じたい。
世界が平和でありますように。ともう一度心の中で呟きながら。