悲しみの向こうへ ◆irB6rw04uk
「この…」
ティアナは部屋の中で自分の足を動けなくしている氷と格闘していた。
この氷付けになった足を冷静になって見てみると、不自然だということに気がついた。
普通こんなカチカチに氷付けにされてしまったら、とてもじゃないが血行の悪い足なんてすぐに腐り落ちてしまう。
しかし、実際足の先まで感覚はあったし、少し冷たいなぁとぐらいにしか感じない。
(もしかしたら…)
と思って足に力を入れていたのだ
「ふぅんのぉお………えぇい!!」
今、ここにある全ての力を足に回す。
するとバキン!!と音を立てて足に纏わり付いていた氷が砕け散った。
「やった!」
すぐにティアナは立ち上がる。あれだけ凍り付いていたのに足は自由に動いた。
「はやく…」
ディバックを掴み、肩にかける。そして辺りをキョロキョロと見渡す。
本当ならティアナは何も武器を持っていないし、戦場に行っても足手まといにしかならないからここで待っているべきなのだろう。
しかし、先ほどどうしても無視することのできない声が聞こえてきているのだ。
5分前くらいに…浩二の声が聞こえた。
「ア……アアアアアアアア!!!」
っと激痛が襲ったことによる悲鳴だと思う。
その悲鳴を聞いてから背中に毛虫が這いずり回っているような感覚が押し寄せてくる。
浩二を幼い日に見た兄の姿にダブらせたことを今は後悔している。
兄は殉職したのだ…つまり、任務に行ったきり帰ってこなかったのだ。
今、浩二は『殺し合いに乗った奴の迎撃』という任務に行った。
殉職という言葉が脳内から離れない。そんな訳無い、そんな訳無い。
だってあんなに笑いながら出て行ったじゃない。
あの笑顔は嘘だって言うの?
そんな訳無い。
あいつはヘタレで馬鹿であほで大間抜けでぐうたらで働きもしない駄目人間で怠けてばっかり…
だけど、いつまでも自分の考えを貫き通すやつだった。
あいつは「俺は死なんぞ、絶対に」って言った。
あの言葉は嘘ではない言葉だった。
あいつがそう言ったから絶対死なないんだ。
なのに…何で涙が…
浩二…
ティアナは階段を駆け下りた。
◆ ◆ ◆
「嘘………」
ティアナはそこの床にぺたんと座り込んだ。
最初は誰が誰だかわからない、とてもむごい殺され方をした死体だと思った。
手足は無くなっており、断面は鋭い…刃物のようなもので切り落とされたのだろう。
そして全身は大きな力で殴られたかのようにボコボコにへこんでいる。
きっと中の骨は内臓はぐちゃぐちゃのばらばら…
精肉店のゴミ箱の中身みたいになっているだろう。
ふと気づく…気が付かなければどんなに良かったのだろうか?
残った腕にカードが一枚握られている。
そのカードは『死者蘇生』
浩二最後の武器といった死者蘇生だった。
ティアナの瞳孔が急激に広がった。
「まさか…あんたなの?」
「………」
死体は言葉を発することはできない。
「嘘だって言ってよ!」
「…………」
「ねえ!!」
ティアナの悲鳴に近い声が響くだけで浩二は話すことも動くこともできなかった。
少し距離を置いて浩二を見る。
ぼろぼろだが生きている時、浩二が着ていた服を着ている。
ぐちゃぐちゃの顔だがどこかチンパンジーの面影がある。
1つ浩二との共通点を見つけるたびに浩二が死んだんだと認識させられる。
まだ1回しかお姫様抱っこしてもらってない。
プレゼントも1回しかもらってない、お返しもしてない。
1回しか下着も見てもらってない。
まだ一回しか『ティア』って呼んでもらってない。
「なのに…なんで死んでるのよ…この馬鹿!!」
涙はあふれて止まることを知らない。胸が苦しくて痛くて…
「馬鹿、ばか、大馬鹿!!」
あんたなんか…居なくなればいいってずっと思ってたんだから。
居たって居なくたって、どうてこと無かったんだから。
ずっとイライラするだけだったんだから。
さっきわたしを助けてくれたけど、助けてくれなくたって…わたし一人で全部できたんだから。
抱っこされたってうれしくなかったんだから。
「ティアって呼ばれたってうれしくもなんとも無かったんだから…」
「………」
浩二は喋らない。
聞こえるのはティアナの泣く声だけだ。
「もう、あんたなんか知らない!!」
ティアナは浩二に背を向けて先ほど彼女がいた部屋に走った。
ティアナが去ったすぐ後に外山と博之が死体をつめるための箱を持ってやって来た。つまり入れ違いになったのだ。
◆ ◆ ◆
部屋に戻ったティアナは今まで押し殺していた感情を爆発させた。
「うわぁぁぁああああああああぁぁあん!!」
なんで私にはこんなにも力が無いの?
人一人守ることができないの?
本当に守りたい人その人ができたのに何で守れないの?
なんで殺すの?
そんなに願いをかなえてほしいの?
70人もの命を犠牲にして叶えてほしい願いって何?
心に残ったのは自分の無力に対する悔しさとこのゲームへの激しい怒り。
そして、浩二への未念。
そのとき、ささやきが聞こえた。
『優勝者はちゃんと元の世界に帰してやるし、何でも願いを一つ叶えてやるのサ』
あった…あるじゃない…私にも願い…
答えは意外にも近くにあったのだ。
あのピエロとコウモリと生きている価値無しを足しては願いをピエロとコウモリを引いたような奴は言っていた。
願いを叶えてやるっと…
ティアナの口がにやりと笑う…
自分にはなのはさんみたいに魔力も無いし、水銀燈みたいに特殊能力もあまり無い。
しかし、やってやる…必ず黄泉帰えらせてみせる。
このゲームをぶっ壊して、あの二人に願いを叶えてさせるために。
そう簡単なのだ。このゲームをまず壊す。そして願いを叶える技術を持ったあいつらに願いを叶えさせる。
私の願いは1つなんかじゃ納まりきらない。一千個と二千個でもまだ足りない。
わたしが願いを叶える方法を手に入れるまで待っててね…浩二。
ティアナは浩二からもらった特別な飴を大事そうに握った。
【E-4 塔内部/一日目・昼】
【ティアナ=ランスター@魔法少女リリカルなのはStrikers】
[状態]:魔力ゼロ、精神的疲労(自分でほぼ回復)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式*2(食料一食分消費)、ダンボール@メタルギアシリーズ、本『弾幕講座』、ヴェルタースオリジナル@ヴェル☆オリ
[思考・状況]
1:永井博之と水銀燈と合流する
2:武器を手に入れないと…
3:とりあえず『なのは』『けいこ』『アリス』の捜索の為に西の城へ。
4:殺し合いに乗っていない人達を集める
5:その後、どうにか殺しあわずに済む方法は無いかを考える
6:人殺しはしたくない
7:主催者を捕まえて願いを叶えさせる
※ダンボール@メタルギアシリーズの効果に気付いていません。
最終更新:2010年03月18日 11:26